コメディアンBJ Foxの脱サラゲームブログ

連載第12弾

イギリスのクリスマスは西部劇で過ごすのが1番! みんな「レッド・デッド・リデンプション2」をクリアしようよ!!

 イギリス、ロンドンの実家から「Merry Christmas!!」を贈ります! この記事は、一応2018年のしめくくりに掲載される年末コラムということになっているんだけど、僕はイギリス人だし、家族がアイルランド系カトリックでもあるし、優先順位から見ると、お正月よりも12月25日の方が大事なんだよね。昔、クリスマスの日に、朝早く起きて、サンタさんが何を持って来たかなぁ、というワクワク感。現在は違う。時差ボケの名残で朝早く起きてメールチェックしたら、GAME Watch編集部の中村さんから「最後の原稿はどう~?」という催促メールが来るだけ。「Merry Christmas to you too!」って返したんだけど、そうだね、日本だと12月25日とは、普通に出勤する火曜日だった。

 それはさておき、僕の実家のクリスマスの日は、昔からゲームの日だった。僕と弟が小学生だった頃、つまり、まだサンタさんが現役だった頃、ふたりの間で1個のNES(ファミコン)のソフトをもらって、交代しながらプレイした。

 もう少し近い話だと、「Borderlands」や、「Gears of War」などの充実した協力キャンペーンのあるゲームをクリスマスまでストックしておいて2人でプレイした。今振り返って考えると、4年前くらいの「ララ・クロフト アンド テンプル オブ オシリス」のパズルアドベンチャーは特に印象が残る。

 今年は、もちろん「スマブラ」だ。昔は、母は、自分がクリスマスディナーの支度をやって息子たちがゲームばかりやっている様子に対して相当愚痴をこぼしていたが、今は、めったに会う機会のない兄弟を昔ごとくパジャマ格好で仲良くゲームをプレイしている様子を見て、以下のような写真を取りたがるほど懐かしく思ってるらしい。

左が僕、右が弟だ

 さすが、「スマブラ」のパワーは凄いね。これぞイギリスの実家のクリスマスの風景!ピカピカのクリスマスツリー、お菓子で溢れている赤いクリスマス靴下、そして大型テレビ。ちょっと見えづらいが、テレビの右下に、ちょうどNintendo Switchの本体の前には、母が子供の頃からずっと大事にして来た、陶器のキリストの降誕のジオラマが違和感なく飾られている。天使、東方の三博士、そして聖家族。

 「スマブラ」についてはまだ追加ファイターDLCのスケジュールが見えてないけど、世界中の注目を集める提案としては、各宗教の代表が「スマブラ」で対戦して、どれがベストなのか決めたらどうかな? 何世紀にも渡る紛争よりもワンスマッシュの方が早いだろう。もちろんジョークだ、提案だけだ。「BJ、炎上するネタはやめてくれ!!」って中村さんから怒られるのがちょっと怖くなって来たからこの話はここまでにする。

【BJ Foxの最新イギリスゲーム事情】
突然だけど、イギリスのゲームショップを紹介します!「GAME」という非常にベタなネーミングのショップがイギリス最大手だ。どの街にもあり、ゲーム新品、中古やグッズなどを販売している
棚から見ると「RDR2」か「スマブラ」が目立った。公式「RDR2」グッズまで販売しだした! 日本でも売ってよ、ロックスター!
来年のヒット作がどれになるか「予約ゲーム」から選ぶ場合、Biowareの「Anthem」となるだろう。日本であまりニュースが出ていないかもしれないが、さすがにBiowareの評判が相当高い
日本のゲームショップの大きな違いの1つは色だ!まだまだXbox Oneの緑が見え、PS4のエリアと同様な配置
そして、Steamのダウンロードコードも販売していた。もしかして、クリスマスプレゼントようにおいてあるかもしれない

 それはさておき、年末と言えば年末企画だよね。

 GAME Watchの年末企画では、僕の「2018年のゲームトップ3」を書き上げて、元ロックスターの僕のことだから、もちろん「レッド・デッド・リデンプション2」がその中に入っている。多分、1位を取ると思う。「RDRオンライン」はまだほんの少ししかやっていないが、シングルプレイは一応クリアして、あのくらい深いゲーム体験は他になかった。「GTAV」よりも素晴らしかった。「GTAV」ほど売れないだろうし、「GTAV」のほうが好む人も山ほどいるだろうと理解していながらも、やっぱり僕には「RDR」だ。

 さっき“元ロックスターの僕のことだから、もちろん「レッド・デッド・リデンプション2」がその中に入っている”と述べたけど、その“もちろん”が間違っているかもしれない。逆にロックスターのファンの中では、期待度が高すぎて失敗する余地が十分あっただろう。ロックスターのファンほど厳しい人はいない。

 「スター・ウォーズ:最後のジェダイ」は個人的にはかなり楽しめたアクション映画だったのに、「スター・ウォーズ」ファンの間では、シリーズのレガシーを裏切った#%&映画だっただろう(すみません、また炎上的な内容なので自主規制させて!)。

 ファンはいつも厳しい。特に「GTAV」から5年間以上待たされただけに、「RDR2」に向けるまなざしは厳しい。でも、今、「RDR2」をクリアした今、自信を持って“もちろん”トップ3に入っていると言えるようになった。満足感を持って、ゲーム開発のビジョンに対して畏怖の念を抱いて、しかもゲームの最初の方に抱えた、操作に対する不満をしっかり乗り越えて言えるようになったね。

【ブレイスウェイト荘園のワンシーン】
「RDR2」のストーリーの後半に差し掛かろうかというこのシーンは忘れられない。このシーンでは、自分がヒーローか悪役か初めて疑い始めた

 「RDR2」をクリアした僕は、もう1度「RDR2」に対する想いを伝えたくなった。それはこういうことだ。

 「RDR2」の後半、つまり、CHAPTER 4以降をプレイしながら「このゲーム作りは本当に勿体無いなぁ」と思っていた。ゲームのネタバレがいけないことなのは当然だけど、このゲームは、CHAPTER4、CHAPTER5、そして最終CHAPTERのCHAPTER6まで、どんどん新たなエリアやフィーチャーが追加されていく。

 非常に大ざっぱな意見だが、普通のゲーム作りだと、新たなエリアやフィーチャーはゲーム前半に実装を終えてしまい、後半はそれまでに身に付けて来たスキルを駆使してストーリーをこなしていくものだ。そしてゲーム世界は広くなるどころか、クライマックスに向けてどんどん狭くなっていくのが普通だ。

 僕が好きな映画や脚本を書いているコメディドラマもそうだ。前半に「問題・課題」を挙げ、真ん中くらいにその問題が全て明確となって、後半にその問題を解決していく。前半では、ヒーローのストーリー、悪役のストーリー、そして場合によってヒーローの動きを誤解している刑事さんのストーリーなど、いろんなスレッドが別々に走っているが、後半では、それがどんどん狭くなり、最後に1個の狭い部屋に置いて全てのストーリーが結晶してクライマックスが語られる。

 もちろん、「RDR2」にもクライマックスもあるのだが、CHAPTER6になっても全体的な世界が広くなっている風に作っている。これはプレーヤーとしては凄い体験だ。クリエイターとして「畏怖」を何度も感じた。でも、同時に「勿体無いな」とも思った。せっかくここまで細かく作っているのに、多くのライトプレーヤーはそのことを知らないまま「RDR2」から離れていっているからだ。

【「RDR2」の後半シーン】
なんと「RDR2」のプレーヤーの5割くらいは、以上の画像を見ても「RDR2」だとわからないかもしれない。明治時代のアメリカの大都市や熱帯島からカヌーから風船まで、このゲームの展開が様々な方向に暴走するのだ

 PSNトロフィー集積サイトの統計によると、CHAPTER3をクリアで解除されるトロフィー「抗争の終わり」の解除率は約45%に留まっている。つまり、当時の産業化のメッカをディテールたっぷりに再現している大都市サンドニを半分以上のユーザーは1度も目にすることなく、ゲームから脱出しているというわけ。CHAPTER5にしか出てこない、これは「アンチャーテッド」が始まるのではないかと思わせられるくらい、湿気がモヤモヤしている「グアーマ」の熱帯島にも行かずにゲームをやめているわけ。そして“もちろん”CHAPTER6のドラマチックのエンディングを見ずに、次へ行ったわけだね。これは勿体無さすぎるよ!

【「RDR2」の後半ミッション】
ミッションの展開やシナリオの多様性も評価すべきだ。西部劇なのに、ミッションが様々な面白い形で、「作業的」なやつが少なめ

 これはもちろんゲームの最後までプレーヤーを誘導できなかったゲーム作りにも問題があるだろう。だけど僕は、このゲームをクリアした今、愚痴ではなく、畏怖しか覚えていない。だからこそゲーム作りが勿体無いと思って、愚痴どころか、より多くのプレーヤーに「RDR2」の素晴らしさをわかって貰うために、編集部に「年末コラムでもう1度『RDR2』を取り上げていい?」とお願いしたわけだ。

 確かに2010年に“あの「GTA」のメーカー”が西部劇のオープンワールドゲームを初めて出した頃と比べて驚きが少ないかもしれないが、ゲーム展開については「RDR2」のほうが驚きが大きいと思う。そしてゲームの最後の最後まで驚きが容赦無く続くんだよ。

 最後に言いたいのは、このゲームが完璧なPrequel(前編の続編)になっているということだ。ここまでプレイして、Arthur Morgan擁するダッチギャングと仲良くして、場合によっては仲良くしなかったとしても、「RDR1」の悲劇的な結末をもう1度見てみたくなる。「スター・ウォーズ」は、PrequelやSequelを見すぎてお腹がいっぱいとなってしまったけど、「RDR2」は長時間プレイしてもまだまだお替わりしたいぐらいだ。まだ「RDR2」をクリアしていない人、途中で投げてしまったという人はぜひ最後までプレイしてみてほしい。それではまた来年!

【「レッド・デッド・オンライン」もあるぞ!】
シングルプレイが終わったら次は「レッド・デッド・オンライン」が待っている。無口な主人公やクレージーなNPCなどで「GTAオンライン」のDNAが感じるが、ほんの少ししかやっていない。BETAが終わり本格的なサービスが開始してからやろうかな。僕の「RDR2」の旅はまだまだ続く

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