レビュー

”飛びかかり”の爽快感!「Marvel’s Wolverine」は孤高の爪が切り裂く、大人向けダークヒーローアクションの傑作

【Marvel’s Wolverine】
9月15日発売予定
価格:
通常版(パッケージ版/ダウンロード版) 8,980円
デジタルデラックスエディション 9,980円

 マーベル・コミックきっての人気キャラクターであり、野獣のような荒々しさと複雑な過去を抱えるローガンことウルヴァリンを主人公に迎えたアクションゲーム「Marvel's Wolverine」が、いよいよ9月15日に発売される。販売はソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)、開発は「Marvel's Spider-Man」シリーズなどで知られるInsomniac Gamesだ。

 本作は、これまでの同社の作風から想像する以上に「暗く、そして残酷な」大人向けの世界観が貫かれた、渾身のアクションゲームとなっている。

 舞台となるのは、ミュータントの存在がまだ一般世間に広く知られていない現代。世界中のミュータントたちは孤立し、彼らに害を及ぼそうとする勢力によって極めて危険な状況に置かれている。かつてボリバー・トラスクの脅威に対抗すべく結成されたものの、今やわずか4人しか生き残っていない絶望的なミュータント部隊「チームX」。一度はチームを去り「ウルヴァリンの役目は終わった」と考えていたローガンだったが、かつての因縁と孤立無援の仲間たちを救うため、再びその手からアダマンチウムの爪を解き放つことになる。

 今回、発売に先駆けて本作の先行レビュー用ビルドをプレイする機会が得られたので、究極のウルヴァリン体験の魅力や、戦闘システム、設定の奥深さをお届けしたい。

【『Marvel's Wolverine』最新映像】

人類はミュータントと共存するべきか、支配されるべきか、滅ぼすべきか?

 物語は、記憶を失い、荒野を野獣のようにさまよい歩く主人公のローガンことウルヴァリンと、「謎の男」との出会いから始まる。

 本作ではウルヴァリンの失われた記憶を取り戻すことが物語の目的の1つとなっている。ローガンが所属する「チームX」には原作同様、セイバートゥースやミスティークなどのメンバーが所属しており、彼らと共闘してミュータントたちの平和を守るための戦いを行なっているというのが本作の主な流れだ。

 敵対組織としては、ミュータントを排除する思想を持つ科学者ボリバー・トラスクが率いるトラスク社が登場し、ミュータントを拉致するなど、ミュータントの平和を脅かす活動を行なっている。ほかにもボリバーが雇ったサイボーグ傭兵集団「リーヴァーズ」なども登場し、ウルヴァリンたちの行く手を阻む。この辺りのヴィランのチョイスが原作との関連付けを想起させ、名前を見るだけでテンションが上がってくる。

 さて、原作におけるウルヴァリンと言えば「X-MEN」のメンバーとしての立ち位置が有名だが、本作は「X-MEN」の流れと異なる時間軸で、オリジナルのストーリーが展開する。

 本作のテーマの1つとして「ミュータントと人類の関係性」が掲げられている。そもそも「X-MEN」では、原作初期のころからこの一貫したテーマが根底に流れており、本作でも同様に、人類に差別され、虐げられるか弱きミュータントたちを守るために活動するのが「チームX」のメンバーという構図になっている。

 ウルヴァリンは、「X-MEN」の中でも比較的早い段階で追加となったキャラクターだ。初期のメンバーではなかったが、その人気からあっという間にレギュラーのメンバーとなり、数多くの「X-MEN」作品のほか、1990年代のアーケードゲーム、さらにはウルヴァリンを主役とした映画や本作「Marvel's Wolverine」のような単独作品も数多くリリースされている。

 個人的にウルヴァリンで驚かされたのは、そのミュータント能力だ。爪を出し入れし、格闘スタイルで戦うウルヴァリンだが、そんなウルヴァリンの主なミュータント能力はヒーリング(超回復)という設定は、あのいかつい風貌からは想像がつかないユニークなアイデアと言える。加えて野生動物並みの鋭い五感というミュータント能力も持っており、これらのミュータント能力が、結果としてパワーファイターとしてのアクションの裏付けとして使われているあたりも、ウルヴァリンの魅力の1つとなっているのだろう。

 さて、ここからは原作の「X-MEN」におけるキャラクターたちの立ち位置について言及する。本作に登場するキャラクターたちの原作での立ち位置はストーリーにも深く関わることからネタバレ的な要素にも繋がるため、あらゆる情報を遮断してゲームに挑みたい人は、次項のゲームの話に進んでもらえれば幸いだ。

謎の金属「アダマンチウム」の刃を体内に埋め込まれたウルヴァリン

 ということでそんな「チームX」を率いるリーダーに抜擢され、ウルヴァリンを救った「謎の男」として登場するのが、エセックスだ。え、エセックス?と違和感を覚えた人は「X-MEN」のシリーズに詳しい人だろう。エセックスと言えば、過去の原作などで登場した際には、ミュータント虐殺集団の黒幕など、ヴィラン側のミュータントとして登場していたからだ。そんな彼がなぜミュータントを保護する「チームX」のリーダーに?

 いきなりとんでもない疑問に遭遇してしまったが、どうやら本作では、物語を分かりやすくかつ、ウルヴァリンを主人公として再構成するために、こうしたゲームオリジナルの設定が多数採用されているようだ。そもそも「チームX」自体が、本来はヴィラン側のミュータントであるセイバートゥースやミスティークが仲間にいるなど、かなり変則的な設定だし、エセックスについてもミュータントを保護するという行動そのものは、人類の進化に興味があるエセックスにとって矛盾しない行動原理の1つと言える。加えて原作では、人類と共闘するエピソードもあるようなので、ゲームオリジナルとしてこういう過去があったという設定になっていても不思議ではないと言える。

 その一方で、ヴィランとしてのエセックスと言えば、人の記憶を改ざんする能力を持つミュータント……そして、本作のローガンの目的の1つは、エセックスと出会う前の記憶を取り戻すこと……ん?これってつまり……とまぁ、この辺りのストーリーについて、これ以上掘り下げるような野暮な真似はしないが、本作をプレイする上で、強く意識しておきたい要素の1つなのは間違いない。こうした過去作品のキャラクターイメージから、本作の展開などを予想したり、考察する余地があるのもマーベル・コミック原作ゲームの楽しみ方の1つだ。

爽快感抜群の「飛びかかる」。「レイジ」ゲージを管理して戦闘を有利に

 「Marvel's Wolverine」のゲームとしての魅力は、やはりウルヴァリンのアクションに尽きる。操作はシンプルながら、そのスピーディーなアクションはどれもかなり爽快な作りとなっており、特に個人的なお気に入りは、アナログスティックの操作と三角ボタン1つでターゲットした相手に「飛びかかる」攻撃アクションだ。押した瞬間に目にも止まらぬスピーディーな動きで、あっという間に敵に掴みかかり、敵に攻撃を仕掛けられるので、抜群の爽快感が味わえる。しかもそこそこ距離が離れた相手に対しても文字通り「飛びかかる」ことができるため、銃などに頼らない近接ファイターとしての優れた能力と言える。

 基本的なアクションは、飛び掛かるほかにも四角ボタンの「切り裂く」や「ラッシュ」アクションがあり、基本的な戦闘の流れは、「飛びかかる」で一気に距離を詰め、「切り裂く」や「ラッシュ」で敵にダメージを与えてトドメを刺すという組み合わせが中心となる。

 ほかにも四角ボタン3回でコンボラッシュを決め、最後に三角ボタンのコンボフィニッシュで締めるといった連続アクションも数多く用意されている。

 さらには四角ボタンの長押しで相手にひるみダメージを与えられる「スラストキック」などもあり、ひるみダメージを一定量蓄積させることで、相手はひるみ状態となり、通常攻撃でダメージが与えられない相手などにもダメージが通るようになるなどのメリットがある。

本来なら射撃するような距離であっても単身「飛び掛かる」ことで攻撃できるアクションが爽快!
攻撃してもダメージが与えられない相手には「スラストキック」でひるませて攻撃すれば撃破できる。このアクションも豪快!

 戦闘で敵を倒したり、特定の戦闘アクションが成功すると、体力ゲージの下にある「レイジ」ゲージが貯まる。レイジには段階が設定されており、これがレベル2になると体力が0になった際に復活できる「ラストスタンド」が利用できるようになるほか、戦闘時のアクションも強化されるなどの恩恵が得られる。

 防御面においては、L1ボタンによる「パリィ」があるのが面白い。敵の攻撃を受け止めることで相手にひるみダメージを与える。ほかにも、この手のアクションゲームではお馴染みの「回避」については丸ボタンで対応し、1度押しで回避、2度押しでローリングアクションで敵の攻撃を回避できる。

新たな「テクニック」でウルヴァリンを強化!その名を体現する大技「トルネード・スピン」

 敵を一定数倒すとレベルが上がり、新たなテクニックが獲得できる。一般的にはスキルと同じもので、レベルが上がるごとに新たなテクニックツリーが開放可能になる。テクニックツリーはシンプルなので、後半に進むと凝ったカスタムも行なえるが最初のうちは、開放されたものを順次開放していくことで、もりもりとウルヴァリンが強くなるのが気持ちいい。

 テクニックでは、前述の能力をさらに強化したり、新たな効果を付与できる。例えば「ヒーリング・ストライク」のテクニックを獲得すると、ひるんだ相手に三角ボタンで攻撃することで大ダメージを与えられるようになり、さらに体力が回復できる効果が追加される。

 ほかにも大技「特殊テクニック」も用意される。例えば「トルネード・スピン」は、発動することで近距離にいる複数の敵を一斉に切りつけられる大技となっており、敵に囲まれた時に使うと気持ちいい。特殊テクニックはクールタイムが設定されており、1度発動するとしばらく利用できないなどの制限がある。

 ほかにも「アダプテーション」と呼ばれるDNAの調整により、特殊なパッシブスキルが手に入るものも用意されており、ゲームプレイ時のフィールドに落ちているアイテムを回収してポイントを貯めることで、新たなアダプテーションが追加できる。

 また、ウルヴァリンの見た目を変更できる「コスチューム」についてもユニークな仕組みが採用されている。フィールドに落ちている素材を集めることで、豊富なコスチュームが利用可能になっていく。これらコスチュームそのものは見た目の変更のみとなっているのだが、新たなコスチュームを開放するほど、ウルヴァリンの最大体力ゲージが増加する仕組みとなっているのだ。普段着ているコスチュームはそのままで、恩恵だけが得られる、かなりありがたい仕組みと言える。

 なお、コスチュームについては、ほとんどのシーンにおいては、自分の好みのコスチュームを使ってゲームを遊ぶことができるが、物語の都合上、強制的に特定のコスチュームを着ることになる場合もある点は補足しておきたい。

 基本的に戦闘サイクルが終了すると、超回復の能力を持つウルヴァリンは体力が全開になる。ただし、戦闘サイクル中はテクニックでの回復手段以外には回復手段がないため、戦闘中はなるべく敵の攻撃をかわしたり、受けないようにしてダメージを受けないように立ち回り、体力が減ってきた時にはテクニックによる回復効果をうまく利用して立ち回ることになる。

防御アクションの「パリィ」が成功すると金属音とともに相手がひるみダメージを受ける
特殊テクニック「トルネード・スピン」は複数の敵も同時に切り裂いてダメージを与えられる
豊富なコスチュームが用意されており、フィールド内に落ちている素材を集めることで開放される。開放するほどウルヴァリンの最大体力が上がる仕組みなので、常用コスチュームは変更する必要がない点はありがたい

獣の五感を駆使したステルスアクション

 ここまで、戦闘アクションを中心に話をしてきたが、ほかにも敵地に潜入した場合などは、ステルスアクションが楽しめる。ウルヴァリンは野生の獣のような研ぎ澄まされた五感を持っているので、壁越しでも人の動きなどが把握できるし、感情の状態も把握できる。そのため、敵地潜入時などであっても、敵の兵士がどこにいるのか、こちらに気が付いているかといった情報が色で判別できるのだ。

 さらに相手に気が付かれずに敵の後ろに回り込めている時は、三角や四角のワンボタンアクションのみで敵を暗殺できる。

 敵地の移動時などは、ウルヴァリンの超人的なフィールドアクションが楽しめる。なお、本作におけるフィールドアクションは、ジャンプ時に目標地点が提示されたり、普段あまり使用しないスライドアクション使用時などは、チュートリアルのように操作ボタンが提示され映像もスローになるなど分かりやすくなっているほか、バトルと絡めて特定ポイントで特定のボタンを押す「QTE」のようなシステムも導入されているので、こうしたアクションが苦手と言う人でも、テンポよく楽しみながら、映画のようなド迫力の演出が堪能できる。

 フィールドには、前述の「コスチューム」や「アダプテーション」の素材以外にもレベル上げに必要な経験値がもらえるボックスや、ウィスキーを集める「コレクション」なども用意されており、エリア内をブラブラと動き回るのも楽しい作りになっている。

ウルヴァリンのミュータント能力により、遮蔽物越しでも敵の位置や状態が分かるのでステルスアクションも随所で導入されている。見つかってもやり直し、ではなくそこからバトルがスタートだ!
「QTE」のようなシステムで難解なアクションをシンプル操作化してあり、操作はそこそこにド迫力の演出が楽しめる

 一方でちょっと気になったのは、本作のバトル時などの難易度設定だ。本作では5段階の難易度が設定されている。筆者はもともとあまりアクションゲームが得意ではないため、ノーマルに該当する「ミュータント」ではなく、1つ簡単なイージーモードに相当する「ハンター」をチョイスしてゲームをスタートした。

 ところが、最初のボス戦からいきなりクリアできず、何度もウルヴァリンを血の海に沈めることになってしまった。難しさの理由は簡単で、敵の防御不可攻撃の回避タイミングがかなりシビアなところだ。相手の動きを見て、タイミングよく回避行動を取る必要があるのだが、タイミングがかなりシビアで何度やっても回避先に敵の攻撃が飛んできてしまうのだ。

 タイミングのシビアさについてはパリィも同様で、敵が攻撃してくると分かったタイミングでパリィしたはずが、先に敵の攻撃を受けてしまったり、ボタンを押すのが早すぎて失敗する場面が多く見られた。

 もちろん最初のボス戦については、まぁボスなので多少手応えがあるのは仕方ないと考えてステージを進めていたが、その後ステージを進めていて、複数の敵との戦闘では、さらに多くの血を流す羽目になってしまった。防御不可攻撃を行なう敵が大量に出現し、囲まれてタコ殴りにされてしまうと、回避行動やパリィ、特殊テクニックでは倒しきれず、回復が追いつかなくなってしまうのだ。

 本作における戦闘中の回復手段としては、前述のテクニック「ヒーリング・ストライク」がある。これを使うことで、敵にダメージを与えると同時にこちらの体力を大幅に回復できるのだが、こちらも相手をひるみ状態にするまで時間がかかることに加えて、タイミングよくひるんだ相手に攻撃が入れられず、回復どころか敵に囲まれる羽目になってしまう。

 途中からは何度リトライしてもクリアできなくなってきたので、やむを得ず、最も簡単な「ある物」モードに変更することで、乗り切れるようになった。ただし、このモードにおいて、ウルヴァリンは不死身の存在となり、戦闘中に体力が0になった場合も、半分くらいまで体力が回復するようになる。ストーリーのみを楽しむならこのモードを選ぶのが無難だろう。

 しかし「ある物」モードは、無敵コマンドを使ってゲームをプレイするようなものなので、できれば普通にゲームをプレイできる中では最も簡単な「ハンター」については難易度をもう少しゆるくしてほしかった。特に防御アクションについて、多少早めに押してしまった場合でもパリィが発動してくれれば、かなりスムーズに相手をひるませられるようになるので、この辺りは改善を期待したいところだ。

防御アクションのタイミングがどれもシビアなので複数の敵を相手にすると、イージーモードのはずの「ハンター」モードでも戦闘がかなり厳しくなってしまう
「ある物」モードは実質無敵モードとなっており、体力が0になった瞬間に半分くらいまで一気に体力が回復する仕組み。ストーリーを楽しむだけならこのモードを選ぶのがベストと言える

期待を裏切らないバイオレンスな手触りと、世界をまたにかけるミュータントたちの群像劇

 以上、「Marvel's Wolverine」のレビューをお届けした。ウルヴァリンの超人的なアクションは、操作していてとても興奮する体験となった。もちろん、原作やアニメ、映画などでもその狂暴さは堪能できていたが、やはり自分で操作して敵を容赦なく切り殺す感触はゲームならではの楽しみ方と言える。

 ストーリー面においても、前述のローガンとセイバートゥース、ミスティークたちの複雑な人間関係が今後どう展開していくのかなど気になるポイントは目白押しだ。加えて、今回はあえて名前を出していないが、原作では切ない展開となった、とある女性ミュータントともゲーム内では新たに出会うことになるのだが、そういったちょっと切ないエピソードの数々もウルヴァリンのストーリーの見どころの1つと言える。

 これまでの「誰もが憧れるスーパーヒーロー」ではなく、自分を見失い葛藤しながらも、仲間のため、己の正義のために爪を振るう「ダークで生々しいウルヴァリン」の生き様を是非堪能してみてほしい。