レビュー
「アサシン クリード ブラック フラッグ RE:シンクロ」レビュー
リメイクと侮るなかれ。開発の“決断力”を感じる貫禄の最新作
2026年7月9日 06:18
- 【アサシン クリード ブラック フラッグ RE:シンクロ】
- 7月9日 発売
- 価格:8,360円~
ユービーアイソフトの「アサシン クリード ブラック フラッグ RE:シンクロ」が7月9日に発売される。本作は、2013年に発売されたメインシリーズ第6作目となる「アサシン クリード IV ブラック フラッグ」のリメイク作品。主人公エドワード・ケンウェイの物語はそのままに、グラフィックスやアクション、海戦を最新のゲームとしてふさわしい形に進化させている。
アクションや海戦については、こちらの先行レポートでも詳細に紹介しているので、ぜひ目を通してほしい。本稿では序盤から中盤にかけてのゲームの流れを追いながら、「RE:シンクロ」での新要素についてレビューしていきたい。
海賊の黄金時代を描いたシリーズ屈指の人気作が進化して復活
最初に、改めて「RE:シンクロ」の舞台となる時代とエリアの特色、主人公エドワード・ケンウェイについて紹介したい。
舞台となるのは1715年。海賊の黄金時代と呼ばれる時代で、現代のキューバやバハマ、ハイチなどカリブ海の島々を舞台に海賊が暴れまわった。陽光煌めく南国の風景や、透き通った海、陽気なカリビアンミュージックなど、他のシリーズとは一線を画した陽気な雰囲気が特長だ。
主人公エドワード・ケンウェイは酒と自由を愛する海賊で、それまでのシリーズ主人公、アルタイルやエツィオ、コナーらとはまったくタイプの違う人物として描かれている。それは海賊船にフォーカスしたシステムも同様だ。本作ではターゲットを暗殺して回ることよりも、むしろ愛船ジャックドー号でスペインやイギリスの商船や軍船を襲ったり、船体を強化・カスタマイズして、より強力で派手な船に仕上げていったり、稼いだ金で拠点となる港町を発展させたりといった海賊プレイに重きが置かれている。アサシン教団とテンプル騎士団の戦いというメインストーリーはあるものの、海賊稼業に勤しんでいる時間が圧倒的に長いし、実感としてはこちらがメインコンテンツと言っていい。
当然、「アサシン クリード IV ブラック フラッグ」発売当時にも、「これは『アサシン クリード』といえるのか」という批判はあった。だが、それでも本作がシリーズ屈指の人気作となっているのは、こうした海賊船を取り巻く要素の完成度が高く、魅力的に構築されており、多くの人を惹きつけたからに他ならない。「RE:シンクロ」でも新たな船乗りの歌や新将校など、愛船ジャックドー号での航海がより楽しく、濃密なものになるような要素が多く追加されている。
新たなカットシーンやエピソードがエドワードの内心をより映し出す
クエストの中で断片的に語られる、エドワードのイギリス時代の回想シーンには新たなカットが追加されている。例えば、デュカスを倒した後に挿入されるキャロラインとエドワードの口論シーンを例にとると、「アサシン クリード IV ブラック フラッグ」では農場の稼ぎに不満で仕事を辞めてしまったエドワードに愛想を尽かしてキャロラインが出ていくシーンが回想される。エドワードはそんなキャロラインに大声を出して非難する。
「RE:シンクロ」では、同じ場所に挿入される回想シーンが、エドワードがキャロラインの父親に殴られあしざまに罵られながらも、今の生活から抜け出す野望を捨てることができず、まだ見ぬ西インド諸島への想いを募らせるというシーンに変更されている。
ここに限らずセリフ回しなども過去作よりもワイルドさが薄れて、より繊細な部分が垣間見えるようなキャラクター像になっている。タフでクールなハードボイルドというヒーロー像が、10年以上の歳月を経て、弱さも持つ等身大のヒーロー像へと再解釈されているように感じた。
カットシーンでキャラクターがアップになった時の細かい表情の演技も各所に追加されており、以前は引きの画面だけだったカットシーンにも、表情が見えるアップのシーンが挿入されている。エドワードが海賊に身をやつしながらも内心に秘めた本当の想いを、プレイヤーに強く印象付ける。日本語版の声優陣による音声も相当数が新たに収録されており、細かな声の演技の違いも見どころだ。
旧作の現代編はデータライブラリとして再構成
また、大きく変更になったのが、いわゆる現代編と呼ばれるパートだ。「アサシン クリード IV ブラック フラッグ」では、アブスターゴが娯楽コンテンツを作るため、社員がアニムスでエドワードの記憶を追体験するという話の筋だったが、「RE:シンクロ」ではアブスターゴ社内を探索する要素はすべてカットされている。
代わりに「データライブラリ」と呼ばれる断片的な情報をゲーム内で集める新要素が盛り込まれている。ライブラリの中身は、オープニングムービーとしても登場する「エゴ_ようこそ_起動[破損]」という動画や、被験者らしき人物のブログ、映画「カリブ海の悪魔」の新しいトレーラーなど多岐にわたり、旧作ではアブスターゴ社内で得ていた情報が、収集物として再構築されている印象だ。
特に気になるのが「エゴ_ようこそ_起動[破損]」だ。最初はカリブ海の記憶をセールスするアブスターゴ社の平和なプロモーションムービーだが、途中から次第に雰囲気がダークになっていき、「ようこそ、闇へ」という不気味なメッセージと共に唐突に終了する。「RE:シンクロ」には多様な収集要素があるが、その中でもかなり気になるものの1つだ。
街も海も一新。カリブ海の空気をリアルに描くビジュアル表現
ハバナやナッソーなど物語の舞台となる主要都市は、テクスチャから見直され美しく進化している。街中にはどこか物悲しげなギターの音が響き、夕方になると草むらの中をふわりふわりと蛍が飛び交う。スコールの中、酒場の片隅でラムを片手に零れ落ちる水滴を眺める。潮風混じりのまとわりつくような湿気や、泥と草の匂いまで想像させる南国特有の空気感がある。
街中でのパルクールは自由度が上がり、よりオープンワールドらしい感覚で街を探索できる。街中では、隠された財宝や船乗りの歌の歌詞、美術品を探す楽しみもある。
海上の風景もさらに美しくなっている。海のうねりや白波のリアリティは、「アサシン クリード IV ブラック フラッグ」の時点でも実写かと見まがうほどだったが、「RE:シンクロ」ではそれがさらにレベルアップしている。島を取り巻く岩礁のごつごつした岩肌や海に反射する陽光の眩しさなど、光の表現力が上がった分南国の強い陽光が生み出すコントラストの美しさが際立って見える。
陸近くのエメラルドグリーンの海に透けて見えるサンゴ礁や、嵐の海でビルのようにそそり立つ巨大な波、突然発生する竜巻、クジラのブリーチングや、船と並んでジャンプしながら泳ぐイルカたち。そんな海の美しさ、怖さ、壮大さをゲームプレイの中で感じることができる。
一撃必殺の爽快さは健在。尾行ミッション改善でより戦略的に動ける
本作はスキルツリーのような複雑な成長要素がない代わりに、シチュエーションに応じて多彩な攻撃手段や手数の多いアクションシーンを楽しむことができる。特にテイクダウンの種類は多く、多彩なフィニッシュ演出が用意されている。
武器は剣、ピストル、吹き矢、ロープダートなど複数を使い分ける。単調な攻撃を続けていると敵に対応されるので、武器を変えたり、ロープダートを使った引き寄せやガード崩しなど様々な動きを駆使して戦うことになる。カウンター攻撃はなくなり、回避と受け流しを使い分ける近作の戦闘に準じた操作になっている。二丁拳銃を連射しながら肉弾戦もこなす「ガン=カタ」的な動きなど、ワイルドで海賊らしいアクションもある。
攻撃で使える手数はメインクエストを進めることで増えていく。最初はピストルも1丁しか持っていないが、ジャックドー号を手に入れた前後でホルスターを増やすための狩りをするミッションが発生する。同時にクラフト要素もアンロックされるため、狩りや交易で動物の皮を集めてホルスターを強化していけば最大4丁までピストルを装備することができるようになる。
しゃがみ歩きやカバーアクションでステルスを維持しやすくなっており、ステルスのまま暗殺対象に近づけば、強敵でも一撃で倒すことができる。例えばテンプル騎士の1人ジュリアン・デュカスは2丁拳銃の使い手で遠距離から強力な攻撃を放ってくる上に、人間離れした見切りでこちらの剣をぬるぬると避ける序盤の強敵だ。だが、そんなデュカスも気づかれる前にマスト上からエアアサシンを決めたり、手すりの外から暗殺したりすれば、一撃で倒すことができる。
侵入ルートを練り上げ、時間をかけて敵に気づかれないよう定位置についた末に、一撃で強敵を仕留めることができるのが、「アサシン クリード」シリーズの醍醐味だ。アクションゲームが実は苦手という筆者のようなタイプでも、パズルゲームのようなステルス潜入に成功すれば、圧倒的な強さを実感できる爽快感を味わうことができる。
また、「アサシン クリード IV ブラック フラッグ」の尾行ミッションでは、ターゲットの周囲に表示される円形の範囲から外れるとミッションが失敗していたが、「RE:シンクロ」ではこの要素がなくなったことで移動の自由度が上がり、行動の選択肢が広がっている。
航海、略奪、拠点開発。海賊稼業はやはり本作の核
陸上での暗殺や戦闘が現代的に整理された一方で、本作の核となる海洋での体験も格段に進化している。海賊行為はもちろん、カリブ海の島々を巡って未発見の島に到達し、そこでお宝を探したり、島を占拠している勢力を倒して解放したりする。銛を使ったサメやクジラ漁、謎の海域の調査、アサシン教団からの暗殺依頼など、やれることは文字通り山ほどある。
メインクエストやテンプル騎士の討伐も、あちこちの島に点在しているので移動の大半は船を使うことになる。ジャックドー号での航海は手動と自動が選択できる。手動では、船長として自分で操舵輪を握る。自動航行は、マップから目的のミッションや場所を選択し、「パスファインダー」で航路を設定したのち、「追従」を選ぶと海上に表示される目的地への白線に沿って自動的に移動してくれる。また、一度到達した味方勢力や中立の島へは、高速移動できるようになる。
海上にはスペインやイギリス、テンプル騎士団の船が行き来しており、襲ったり襲われたりすることで海戦が始まる。複数の砲弾を撃ち込む側砲や遠距離の敵に向かって打つ臼砲、追いすがってくる敵に向かって投げる樽爆弾など、様々な武器を駆使して相手を行動不能にした後は、甲板での肉弾戦に移行する。ここで一定数を倒すと残りの兵士が降伏して戦闘は終了する。砲撃の応酬とラムでの突撃は派手な演出で迫力があり、帆船同士のかっこいい海戦を存分に堪能することができる。エドワード自体にはアビリティ強化のようなものがないが、船は強化することでどんどん強くなっていくので、そんな成長を感じられるのも楽しい。
ジャックドー号は、外見、防御、武器、倉庫など多くのアップグレード要素がある。さらに拠点となるグレート・イナグア島の施設整備が船のアップグレード条件に入っているので、こちらも手が抜けない。序盤から中盤にかけてはお金を稼いでもまったく追いつかず、暗殺も信条もどこへやらで金儲けに血道を上げることとなる。だが、そうして屋敷が綺麗になり、拠点が賑わい、船が強くなっていくのはかなりの満足感がある。
中盤の物語を盛り上げる新将校とのミッション
また、「RE:シンクロ」では前述したとおり、3人の新将校が新たに登場する。序盤を終えると、「神父」の異名を持つ警衛長アベル・ガルヴァオと船大工のルーシー・ボールドウィンを仲間にするためのクエストが発生する。
事前の発表などで、新将校には独自のストーリーが用意されていることは知っていたが、実際にプレイしてみるとそのボリュームに驚いた。ルーシーは最初囚人船に収監されているため、潜入して救出しなければならない。彼らを仲間にするまでのドラマはもちろん、それに付随するミッションやカットシーンも、かなり遊びごたえのある内容だった。また、彼らを仲間にすることで、ルーシーなら防御、神父なら攻撃を強化する能力を使うことができるようになる。
神父は船上では兵士たちの規律を正す警衛長だが、陸戦も得意としており、砦攻略で内部に攻め込む時などは、一緒に戦ってくれる。
名作の記憶を損なわず、今遊ぶ意味を加えたリメイク
あまり日数がない中でのレビューとなり、今回は十分にプレイできなかった要素もある。略奪した船で船団を組み、交易や襲撃のミッションをこなす「ケンウェイ艦隊」は今回あまりプレイできなかった要素の1つだ。20時間ほどプレイしたが、サブ要素に寄り道していると、体感としてはまだ序盤を抜けたばかりという印象だった。
今回「RE:シンクロ」をプレイしていて強く感じたのは、本作をリメイクだと知らない人は「アサシン クリード」シリーズ最新作だと思っても不思議がないくらいのグラフィックスの作り込みと、プレイ体験の新しさがあることだ。
12年前とは環境そのものが進化しているのだから、コストをかければ見た目を最新にすることはできるだろう。だが、ファンの多い名作を、過去のプレイ体験の良さを引き継ぎつつ、新しい要素を盛り込んでもう一度プレイして良かったと思わせるのは簡単ではない。まして本作を、2026年に発売されるゲームとしてふさわしい体験へと進化させるには、相当な決断力が必要だったはずだ。
様々な要素が取捨選択され、あるものはそぎ落とされ、あるものは新たに追加されている。中心にあるのは、かつて本作をプレイした時の感動を損なわないという姿勢だ。その軸を変えることなく、今遊ぶ意味のある作品に仕上げた開発陣には賛辞を贈りたい。
未プレイの人はもちろん、かつて本作をじっくりやり込んだ人もぜひ新しくなった「アサシン クリード ブラック フラッグ RE:シンクロ」で今一度エドワード・ケンウェイの冒険を追体験してみてはどうだろうか。

















































































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