レビュー

「カルドセプト ビギンズ」レビュー

ここから始まるセプターへの道。未経験者こそ遊んでほしいシリーズ最新作

【カルドセプト ビギンズ】
7月16日 発売予定
価格:
Switch通常版(パッケージ/ダウンロード) 6,380円
Switch特装版(パッケージのみ) 12,980円
Switch 2 Edition通常版(パッケージ/ダウンロード) 7,480円
Switch 2 Edition特装版(パッケージのみ) 14,080円
Switch 2 Editionアップグレードパス(ダウンロードのみ) 1,100円

 1997年に初リリースされ、“セプター”と呼ばれる熱狂的なファンを生み出したカード&ボードゲーム「カルドセプト」シリーズ。その待望の最新作「カルドセプト ビギンズ」が、7月16日にネオスから発売される。価格はSwitch通常版が6,380円より。

 ファンタジー作品に登場するクリーチャーやアイテム、魔法などをカードに見立て、ブック(カードデッキ)を構築し、スゴロク状のボードの上で領地を広げ、そこから得られる“総魔力”を競い合う――。そんなシリーズ伝統の基本ルールはそのままに、本作では初代「カルドセプト」で語られた物語の前日譚が描かれる。

「モノポリー」に近い感覚のボードゲームと、トレーディングカードゲームを融合した独自のルールが展開する

 オリジナル版の開発を手がけた大宮ソフト監修のもと、「街コロ」などで知られるグランディングが開発を担当。キャラクター&クリーチャーデザインに松浦聖氏、サウンドにノイジークロークを迎え、10年ぶりの完全新作としてセプター達の期待を集めている。

 弊誌では3月に2章までプレイした試遊レポートをお届けしているが、本稿ではそれを踏まえ、さらに先の章までプレイして見えた本作の魅力をお伝えしていく。本作の基本的なルールなどはそちらを参考にしていただきたい。

【「カルドセプト ビギンズ」1stトレーラー】

新たな開発体制のもと、10年ぶりに還ってきた「カルドセプト」シリーズ最新作

 初代「カルドセプト」が世に送り出されたのは、今から29年前の1997年10月のこと。「マジック:ザ・ギャザリング」(当時ホビージャパン)や「ポケモンカードゲーム」(当時メディアファクトリー)などのトレーディングカードゲーム(TCG)が世に浸透しつつあった当時、筆者もユーザーだったセガサターンでTCGが1人でも(←ここが大事)手軽に遊べるということで、比較的早い段階から本作に注目し、ソフトも発売日に購入した。以降も主に携帯ゲーム機で発売されたシリーズを中心に楽しんできた身だ。

 「カルドセプト」のゲームデザイナーであり、本作の開発にも携わる神宮孝行氏は、当時の雑誌記事で「野球や将棋のような完成度の高いルールのもとに味わえる“理詰めの面白さ”を目指した」と同作についてコメントしている。

 初代で構築されたルールが、現在もさほど変わらずに継承されている事実は、神宮氏が目指したゲームデザインがその時点でいかに完成されていたかを証明している。29年前に構築されたシリーズの原点をまだ未体験という人は、7月30日に発売される初代の移植版「カルドセプト ザ ファースト」を、本作の前後に遊んでみるのもいいかもしれない。

【『カルドセプト ザ ファースト』アナウンストレーラー【Culdcept The First】】
初代「カルドセプト」に新機能などを搭載した「カルドセプト ザ ファースト」は7月30日に発売予定

 本作は「ビギンズ(=始まり)」のタイトルが表す通り、初代「カルドセプト」の前日譚を描いている。

 世界を創造した女神カルドラの手によって作り出された“創造の書”「カルドセプト」。太古の時代、神々の戦いによって打ち砕かれたカルドセプトの破片は、石板状のカードとなって世界に四散した。やがて、そのカードの力を引き出せる「セプター」と呼ばれる者たちが地上に現れる。

【『カルドセプト ビギンズ』神話ムービー】

 プレイヤーはセプターの少年「カムル」となって、「王立学府セプトアカデミア」に転入。最初の石板使い「オリジン」の痕跡を追いながら、「異能者」としての能力を覚醒させていくことになる。

“異能者”として同窓の生徒達の注目を集めるカムル。後に王国の命運を握る存在へと成長していく

 初代の前日譚という設定はあるものの、今回プレイした範囲では、過去作の知識がなくても問題なくストーリーを楽しめるように感じられた。その一方で、人頭杖「ゴリガン」の登場や、過去作を匂わせる演出など、往年のセプターなら思わずニヤリとする要素も各所に散りばめられている。

人頭杖のゴリガン。ストーリーの途中で登場し、カムル達に助言を与える

カムルが主人公のメインストーリーに、別視点で進められるサイドストーリーも用意

 試遊レポートでもお届けした通り、ゲームの基本ルールやシステムは歴代シリーズのそれに則っている。前作「カルドセプト リボルト」のような大胆なシステム変更はみられず、むしろシリーズの原点に立ち戻った印象だ。

基本的なゲームシステムは序章で少しずつ覚えていける。ヘルプも充実しているためわからないことがあれば参照してみよう

 メインモードである「ストーリー」では、複数のマスで構成されたマップがあり、プレイヤーは手持ちのカード40枚で構築した「ブック」と、行動に必要な「魔力(G)」を持って、ストーリーに準じて登場するセプターとの対戦を行う。マップによっては、同時に複数のセプターを相手にする展開もある。

本作の舞台となる「バブラシュカ大陸」。このワールドマップ上に各章の物語が展開されていく
各章にはストーリーに準じた対戦相手が登場。提示される難易度によってその強さも変わる
一つのマップを3人で競う章。バトルや駆け引きが頻繁に発生する

 マップには、スタート兼ゴール地点となる「城」と、チェックポイントの「砦」があり、それらが「土地」のマスで繋がっている。プレイヤーはカードを1枚引いた後、8面ダイスを振って出た目の数だけ進み、すべての砦を巡って城へと戻るのが基本的な周回の流れだ。道中で止まった土地に手札の「クリーチャー」を召喚して領地を増やし、バトルや土地の開発、周回時のボーナス、通行料のやり取りなどを経て「総魔力」を規定値まで増やし、その段階で先に城へゴールした者が勝者となる。

ダイスは8面体のものを使用する。出目の差が大きいため進行には波があるが、ダイスの数や目をコントロールするスペルカードも存在する
総魔力を増やすには、土地にクリーチャーを配置して領地とし、該当の土地の通過時や、城か砦に止まったときに行える「領地開発」で土地レベルを上げるのが効率的。高レベルの土地は相手に狙われるリスクもあるので、防衛にも気を配ろう
土地には属性があり、同属性のクリーチャーを配置すると、バトル時に地形効果によりパラメータが上がる。また、同属性の領地を複数持つと「連鎖」が発生し、土地の価値が上昇する
総魔力は「総資産」、手元の魔力は「手元資金」のような関係性で、セプターの行動には後者が不可欠。魔力が枯渇するとカードが使えなくなり、バトルや占領もままならず、ただダイスを振って進むしかなくなってしまう

 ストーリーごとのマップのバリエーションも凝っていて、行き止まりの先に砦があり折り返し移動を強いられるマップや、2つの円環状のルートが「橋」で繋がったマップなど、移動ルート自体が戦略に直結するものも多い。さらに城や砦以外にも、セプターに特殊な効果をもたらす施設なども登場する。

2箇所の行き止まりに砦が配置されたマップ。Uターンして戻る必要があるため、その道中にある領地の攻防がカギとなる
「聖堂」のあるマップでは、属性別の「護符」を購入できる。同属性の土地の価値が上がると護符の価値も上がって総魔力に影響する、いわば株券のような存在だ

 ストーリーモードには一律の難易度設定はなく、各マップに設定された難易度を基準に進めていく仕組み。マップの形状、相手セプターの人数、彼らが使うブック構成や行動のクセなどが絶妙に調整されており、特に初見時は相手の狙いが読めず、手こずって敗北してしまうこともあるはず。

バトルは相手の領地に止まった際、任意に仕掛けられる。土地のレベルが低く、通行料が安いうちは戦わずにスルーするのも一手だ
バトルはクリーチャーのAT(攻撃力)とHP(体力)で決する。相手を倒せば土地を奪うことができ、倒せなければ防衛側の勝利となり通行料として魔力を支払うことになる
バトル時にアイテムカードを併用すれば、クリーチャーを強化できる。ただし、特定のアイテムを使えないクリーチャーもいるため、それを踏まえたブック編集も重要だ

 筆者も中盤のマップで何度か苦汁をなめることになったが、この試行錯誤こそがセプターとしての成長に繋がる部分であり、決してマイナス要素ではない。勝敗に関わらずカードは手に入るし、報酬の「コイン」を使えばショップでカードを購入できるので、ブックを再構築して何度も挑戦してほしい。

8章で対峙する「ガーディアンキラー」。特殊なスペルカードでこちらを翻弄し、着実に領地を拡大してくる強敵だ

 また、カムルが主軸となるメインストーリーの裏で、異なる時間軸や別視点の物語が描かれる「サイドストーリー」の存在も確認できた。カムル以外のキャラクターを操作し、場合によって固有のブックを使用するなど、メインとは一味違う手応えのゲームプレイを楽しみながら、本作の世界観をより深く味わうことができるのだ。

マップ上のタブを切り替えることで挑戦できるサイドストーリー。本編とは異なる視点での対戦が楽しめる

ブックの枚数が40枚になり、ビギナーにも編集がしやすくなった

 セプターの戦術の要となる「ブック」は、本作より40枚のカードで構成されるようになった。従来の50枚から10枚減ったことで、対戦が長引いた際にカードが一巡するペースが早まったことに加え、必要なカードを絞り込みやすくなったため、ビギナーが迷いがちなブック構築のハードルが少し下がっている。同時に、上級者にとってはよりコンセプトを尖らせた、洗練されたブックを組む楽しさが増している。

ブック編集は本作の醍醐味。最大60冊まで保存可能で、カバーデザインやブック名、解説文などを自由に設定できる。また文字列のコード入力によるブックの読み込み機能もある

 登場するカードは全400種。土地の占領やバトルを行う「クリーチャー」、戦闘時にクリーチャーを強化する「アイテム」、ダイスを振る前に使用して敵味方の戦況をコントロールする「スペル」の3種類に大別される。能力や効果のバランス調整は非常にシビアに行われており、「これさえ入れておけば勝てる」という万能なカードは存在しない。

これがカード図鑑。未入手のものはシルエットで表示され、フレーバーテキストだけを閲覧できる
ストーリーモードでは、初めて見るカードを相手が使ってきた際、味方キャラクターがその特徴や注意点を解説してくれる親切設計だ
ストーリーモードでの勝利時には、まとまった数のカードが手に入る

 ブックを組む際には“同名カードは4枚まで(特殊なE[エクストラ]カードは1枚まで)”という条件のもとに40枚を厳選するわけだが、自由度が高く選択肢も多いため、筆者も最初はどのカードを選ぶべきか悩むこともあった。しかしゲーム序盤から使える2種類の初期ブックが非常に扱いやすく完成度の高い内容なので、まずはこれをベースにして、手に入れた新しいカードを導入していくのがオススメだ。

最初に使えるブックは、2つの属性を主体とした使い勝手のいい2冊。これを直接編集したり、コピーして一部を差し替えたりしながら、編集のコツを掴んでいこう
強力なカードほど召喚や使用に必要な魔力のコストが高かったり、手札を犠牲にするなどの特定の条件を求められたりする絶妙なバランスで設定されている

 「このカードとこのカードを組み合わせたら強いのでは?」と考えて、自ら編集したブックで勝利できたときの喜びはカクベツだ。しかし次の対戦では、そのブックがあっさりと敗れてしまうこともある。一筋縄ではいかない奥深さこそが本作の醍醐味である。

 ブックは最大60冊まで保存できるので、対戦相手の構成や発売後に活発化するであろうコミュニティでの編集例などを参考にしながら、自身のプレイスタイルに馴染むお気に入りの一冊を作り上げていただきたい。

カードショップで買える「カードパック」は、特定のラインナップからランダムでカードが手に入る、現実のトレカのパックを買うようなワクワク感のある要素だ

ボードとカードが織りなす、「カルドセプト」ならではの濃密な心理戦

 ゲームプレイにおける手触りのよさや、松浦聖氏の手がける魅力的なビジュアルのクオリティは試遊の段階でも十分に感じられたが、腰を据えてプレイすることで、改めて「カルドセプト」ならではの駆け引きの奥深さを再確認できた。

ブックはマップや相手のブックとの相性もあるので、色々と試していただきたい

 相手のブック構成やカードの使い方、マップ上での行動から見える相手の性格、そしてダイスの出目やカードのドローといった運の要素。これらが複雑に絡み合うゲーム展開は、COMを相手にするストーリーモードであっても非常に刺激的で、一喜一憂させられる。

 これがプレイヤー同士の対戦となれば、その熱量はさらに跳ね上がるだろう。自分でプレイするのはもちろん、上級セプター達のハイレベルな対戦を観戦することも、一つのエンターテインメントとして成立するのではないだろうか。

オンライン対戦時は、ストーリーモードの進行度に応じてアンロックされるアバターや称号をカスタマイズして楽しめる

 ノイジークロークによるサウンドは、松浦聖氏が描く世界にもマッチしていて、各マップには舞台背景や対戦相手のイメージを強調する楽曲が用意され、目標魔力直前のラストスパートに入って盛り上がりを見せるパートは毎回聴きどころになると思う。耳にする機会が多いであろうブック編集画面やワールドマップ、バトル時などの楽曲もキャッチーで筆者もお気に入りだ。

 筆者も久々に味わったセプターとしての至高の体験は、まだシリーズに触れたことがない人にこそ、ぜひ味わっていただきたいもの。経験者はもちろん、ビギナーへの配慮や間口の広さも意識されていて、隅々まで丁寧に作り込まれたクオリティは、10年ぶりの最新作にふさわしい仕上がりだ。この夏、あなたも1人のセプターとして、盤上での熱い戦いに身を投じてみてはいかがだろう。