レビュー

映画「大長編 タローマン 万博大爆発」レビュー

濃厚さ最高潮で描き切る105分。でたらめが過ぎるタローマン完全新作

【映画「大長編 タローマン 万博大爆発」】
8月22日 公開予定

 映画「大長編 タローマン 万博大爆発」(大長編タローマン)は、タローマンファンを期待以上の濃厚さで塗りたくってくるような映画になっている。

 「大長編タローマン」は、もともと2022年にNHKで放送されていた5分番組「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇」の映画化作品。「1970年代に放送されていた」という設定で、芸術家・岡本太郎の作品や言葉が散りばめられ、ときに巨人や奇獣として具体化していること、また1970年代特撮風のカラフルでザラザラとした映像のテイストも特徴的だ。

「大長編 タローマン 万博大爆発」ポスター
【映画『大長編 タローマン 万博大爆発』予告編(60秒)【8月22日(金)公開】】

新作長編は「マイナスに飛び込め」精神で生まれた

 話の中心になる「タローマン」は、岡本太郎の思想を体現する巨人。奇獣と戦ったり戦わなかったり、ただただ遊んでみたりと、かなり気まぐれな行動をする。でたらめで何をするかわからない、しかし、それが岡本太郎の言葉や考えへとつながっていく。

 NHKの番組としても、特撮番組としても、岡本太郎がテーマの番組としても異質中の異質であり、岡本太郎さながら「なんだこれは!」という映像が濃密に続いていく。たった5分という短い時間ながら、「謎の特撮を見た」という強烈な印象が残る番組となっていた。

奇獣たち

 「大長編タローマン」は105分あるのだが、最も驚くのは新作としての長編を105分やりきっているところだ。テレビ版の濃密なテイストやテンポはそのままに、過去と未来を巻き込んだ壮大な話が展開していく。監督の藤井亮氏によれば、「長いものをちゃんとつくる」のは大変だとわかっていたものの、岡本太郎の「マイナスに飛び込め」などの言葉が体に染み込んでおり、どんどん辛い作業に向かっていった結果が本作なのだそうだ。

105分、長編映画としてやりきっている

未来と過去を巻き込む壮大なでたらめ

 「大長編タローマン」の舞台は、1970年の大阪万博。そこへ、「宇宙大万博」が開催されているという2025年(昭和100年)から、反万博集団が万博を破壊しようとやってくる。

 さらに、タイムスリップしてきた未来人「エラン」によれば、未来でも「宇宙大万博」が破壊されようとしており、それを止めるために「タローマン」のでたらめな力が必要だという。未来の万博を守るため、CBG(地球ぼうえい軍)は2025年へ向かう……。

 本作で描かれる2025年は、1970年当時に想像されていた未来世界となっている。建物は透明なパイプで繋がれ、そのなかを自動車が移動していたり、宇宙人との交流が一般的であったり。合理化も進み、どこまでも「秩序」が保たれ、治安を乱す「でたらめ」は忌み嫌われている。

 そんな壮大な物語のなかでタローマンは何をするのか、未来で何が起きているのか、テレビシリーズと同じノリで果たして105分持つのか、見どころはいろいろあるのだが、最終的にはリアルな2025年の「万博」にも結びつくテーマが立ち上がってもくる。そこに突き刺すようにして紹介される岡本太郎の言葉が、また味わい深い。

 藤井監督はテレビシリーズ制作時に岡本太郎の言葉をすべて読み込み、シリーズ内で「出し切った」そうだが、映画製作にあたってもう一度読み込んで臨んだそう。「あまりに岡本太郎が染み込んでいるため、いま“岡本太郎抜き”をしている最中」と語っていたが、劇中ところどころで挟まれる岡本太郎の言葉はどれも印象的だ。

 公開日は8月22日。味わい深さが増すため、ぜひ大阪万博2025が開催されているタイミングでご覧いただきたい。

タローマンが繰り出すでたらめに注目だ
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