レビュー

「Avowed」レビュー

濃厚なストーリーとハードな戦闘が楽しめる骨太な海外産RPG。日本語対応が待ち遠しい

【Avowed】

2月19日 発売予定

価格  スタンダードエディション:9,680円

プレミアムエディション:11,990円

 2月19日、アメリカのゲームスタジオ・Obsidianの新作タイトル「Avowed」が発売される。本作は同じくObsidianが手掛けた「Pillars of Eternity」シリーズと世界観を共有しており、 “RPGの名手”として呼声が高い同社の新作に期待をかける読者も多いことだろう。

 また「Pillars of Eternity」は日本語に対応しておらず、有志による日本語化Modを導入する必要があったが、「Avowed」では日本語に正式対応するため、より多くのゲーマーがプレイすることになるだろう。当初は発売直後より日本語を選択できる予定だったが、品質確保のため提供延期となり、発売1カ月後のアップデートで実装される予定だ。

 今回は「Avowed」の先行プレイの機会をいただいた。英語版でのプレイとなったため、本作の世界観を深くまで理解することは難しかったが、広大な世界で織りなされる物語や自由なビルドで戦える戦闘シーンなど、3章までクリアした段階でのレビューをお届けしたい。なお、本稿の和訳は筆者によるものであることも留意して欲しい。

 「Avowed」はXbox Series X|S/PC向けに2月19日発売。サブスクリプションサービス「Xbox Game Pass」のUltimateプランや「PC Game Pass」加入者の方は追加料金なしでスタンダードエディションをプレイできる。また本誌では過去2回、本作開発陣のインタビューも実施しているため、こちらも参考にしていただければ幸いだ。

【【Avowed - Pre-Order Trailer】】

シリーズをプレイしていなくても楽しめる! 広大な世界で織りなされる物語

 まず先述のように「Avowed」は、「Pillars of Eternity」シリーズと世界観を共有しているが、本作の舞台「Living Lands」はシリーズ初登場の地域となっている。ストーリーも別軸として展開され、「Pillars of Eternity」シリーズをプレイしていなくても存分に楽しむことができるので、「Avowed」からプレイし始めるユーザーも安心してほしい。

 「Living Lands」は自然豊かな地域で、至る所で木々や水場、そこに生息する幻想的な動植物の姿を見ることができ、そのどれもが高品質なグラフィックスで描かれており、この世界をオープンワールドで冒険できるというだけで心躍る。また本作には過去作と共通する部分、繋がりを感じさせる表現もあるとのことなので、「Pillars of Eternity」ファンはより一層楽しむことができるはずだ。

本作の舞台となる「Living Lands」は自然豊かで幻想的な地域となっている
全体マップを見る限り、フィールドは広大だ

 本作は「Living Lands」に蔓延している謎の疫病の正体を解明する任を受けた主人公が、多くの謎に直面するところからストーリーが始まる。プレーヤーは容姿や素性を自由に設定して「Living Lands」に飛び出していくことになる。

 本作のストーリーはいい意味で“複雑”。疫病の影響でクリーチャーと化した敵との戦いや仲間たちとの出会い、陰謀を感じさせる動き、島と主人公に纏わる多くの謎が張り巡らされている。キャラメイクで設定した素性によって会話の選択肢などに変化もあり、何を選択したかによって世界にも変化がある。今回は英語でのプレイだったため、物語や設定、会話の全てを把握することは難しく、これらを発売日から日本語で楽しめないのは少し残念な一方、日本語化が遅れるのも仕方がないと思えるくらいキャラクターとの会話や各種テキストは豊富なものとなっている。日本語版ならば、本作の世界観を存分に楽しむことができるはずだ。

 また、剣と魔法の王道ファンタジーの世界ではあるものの、武器として銃が登場するなど本作独自の設定も目を引くものがあり、ストーリーや世界を理解するための探求が、プレーヤーを楽しませてくれることは間違いない。

自由にキャラメイクをしてゲームスタート
本作のストーリーは、主人公の乗った船が味方に攻撃され沈没するところから始まる。なんらかの陰謀や謎を感じさせる導入だ
会話のテキストは膨大かつ、素性やステータスによって選択肢が変化する。周回するたびに異なる展開と遭遇しそうだ

 なお、本作の物語はクエストをクリアすることで進行していく。メインクエスト以外にもサブクエストやイベントが豊富に存在し、そのどれもが報酬を得られるだけでなく世界観の理解を助けてくれる。町にいるNPC達が交わしている会話からも様々で、時にはクエストの攻略に役立つ情報を得られるのだ。

 また、寄り道要素はサブクエストだけでなく、フィールド探索の素材集めや宝箱を探したり、そのついでに敵を倒してレベリングしたりといったことができる。フィールド探索は自然を眺めたり、ダンジョンや遺跡に潜ったりといったことを楽しむこともでき、ファストトラベルでストレスなく移動も可能なので、それだけで充分に面白い。

小さいながら活気ある港町や、人が集まる市場など、さまざまな町が存在する
場所にもよるが、多くの町とフィールドはシームレスに繋がっている。町を出たら直ぐに敵が待ち構えているということも
探索を通じて宝箱を発見したり、罠が設置されたダンジョンに潜ったりといった冒険も楽しめる

一人称視点と三人称視点の切り替えが可能。戦闘は中々ハード

 本作は一人称視点と三人称視点を自由に切り替えることができ、どちらの視点にもそれぞれメリット・デメリットが存在する。一人称視点は、戦闘時には敵の近接攻撃に対処しやすくなり、オブジェクトとの距離感も掴みやすい。なにより、プレイ時の臨場感が増すことは大きな利点だと感じた。

 一方の三人称視点は、集団との戦闘で敵の位置を把握しやすく、遠距離攻撃等を回避しやすくなったり、視界が広くなるため探索時の見落としを減らすことができる。筆者は画面酔いをしやすいタイプなので、基本的には三人称視点でプレイし、戦闘時やアイテム回収、ギミックの起動時など一人称のほうが対処しやすいと感じたときに切り替えを行なった。ゲーム自体は一人称視点をベースに作られてはいるものの、三人称視点でも全く違和感なくプレイができた。筆者のように画面酔いしやすい人にとっては非常にありがたい機能だ。

一人称視点は臨場感が高く、近くのものを視認しやすい
三人称視点では視界が一気に広がる。なお、三人称視点に切り替えても操作には変化がなく、移動方向へキャラクターが向きなおすといったことはない

 戦闘では、自分好みの武器を使用し、自由なビルドで戦うことができるのがポイントだ。ファンタジー世界らしく、装備品には剣や斧、槍といった近接武器や盾、弓、魔法の杖、グリモア(魔法の本)などが存在するが、同時に銃火器も選択肢にあるのが本作の特徴。オーソドックスな片手剣+盾ビルドや、右手に片手斧・左手にグリモアを持った一風変わった組み合わせ、杖と銃を装備した遠距離特化の魔法ガンナーといった風に、自由な発想で装備を選択することができる。

 また、武器の組み合わせは2セットまで登録でき、戦闘中に切り替えることが可能。大剣や弓といった両手武器と、片手武器と盾を組み合わせた装備を登録し、状況に合わせて切り替えるといったプレイができる。ただし、装備の切り替えモーションはやや遅いため、とっさに装備を切り替えて盾で防御をするといったことは難しくなっている。

オーソドックスな剣と盾のビルド
両手武器は火力が高いだけでなく防御も可能
銃とグリモアの遠距離ビルドも可能。なお、どの装備も右左どちらの手でも装備できるほか、両手ダガーや2丁拳銃といったビルドも可能

 本作はレベルアップでステータスを上げることができると同時に「ファイター」、「レンジャー」、「ウィザード」の3種のスキルツリーのうちどれかを進行することが可能。近接攻撃を強化するファイターを進めて両手武器の火力をアップしたり、ウィザードを選択し魔法の威力を上げたりといった風に、自分の使いたいビルドに合わせて、ステータスと各ツリーを上げていくといいだろう。

レベルアップ毎にステータスとスキルツリーを1段階づつあげられる

 ツリーを進めることで使用できるようになるスキルは、常時発動するパッシブと、プレーヤーのタイミングで発動するアクティブに分かれている。アクティブスキルを使用するには本作のマナである「エッセンスメーター」を使用するほか、クールダウンが設定されているので連発は難しく、的確なタイミングで使用する必要がある。

 また、魔法には炎や氷といった属性が存在し、敵を燃やし続けてダメージを与えたり、凍らせて次の攻撃の威力を上げたりといった効果をそれぞれが持っている。こうした属性攻撃は戦闘だけではなく、探索時には道中のツタを燃やしたり、水を凍らして足場にしたりといった風に、ギミックを突破し道を切り開く際にも活躍する。

スキルをとることでパリィもできるようになる
グリモアを装備すれば魔法が使用できる
魔法を使用して道を開くギミックも
ストーリーの進行で解禁される強力なスキル「ゴッドライク」。画像のものは自分のライフを回復できるがクールダウンが長い

 本作の戦闘は集団戦が多く、筆者としては少し難易度が高いと感じた。バトルでは敵の攻撃を的確に対処しながら攻撃をしていくことが求められるが、敵も容赦なく背後からの攻撃や遠距離攻撃を繰り出してくる。難易度をノーマルから一つ下のイージーに下げても、序盤から敵に倒されることがあった。

 とはいえ、しっかりとレベリングをしてビルドにあったスキルツリーを進めたり、装備を強化していけば戦闘は自然と楽になってくる。また、たとえ倒されたとしても、トライ&エラーの中で敵の攻撃への対処法や、スキルを使った立ち回りを把握していけば、だんだんと戦闘のコツが掴めてくるので、キャラ・プレーヤー自身双方が成長していくのを感じながらプレイすることができる。

 本作では、敵に連続で攻撃を与えたり、盾のスキルを使ってパリィを決めることで敵のスタンゲージを削ることができる。最大まで削ればスペシャルアタックが発動し大ダメージを与えることが可能。これを決めることができれば攻略がぐっと楽になるほか、自身の上達を感じられるポイントにもなっている。

敵は集団で襲い掛かってくるため、油断すると直ぐ倒されてしまう。ポーションのような回復アイテムもあるが、即時回復ではないのも難易度が高く感じる要因
敵をスタンさせて強力な一撃を叩き込めれば爽快感を味わえる
チャージから繰り出すパワーアタックは、ガードの上からダメージを与えられる
倒されても1度だけ復活できるシステムも存在。こちらがクールダウンだとゲームオーバーになる
場所によってはステルスで敵をやり過ごしたり、不意打ちも可能なので、探索中に敵の姿を見かけたら狙ってみるといい。ステルスからの攻撃は強力なものになる

仲間と共に戦闘。キャンプで装備の強化も

 先述のように本作の戦闘は少しハードではあるものの、何も主人公一人で戦いに挑むわけではない。ストーリーを進めれば一緒に戦ってくれる仲間がパーティに加わり、より効率的に敵を倒すことができるようになる。仲間は攻撃してくれるだけでなく、敵のヘイトもかってくれるので、仲間を盾にして自分は遠距離から攻撃するようなプレイも可能だ。

 なお、仲間は保有するスキルで道中のギミックを解除してくれるなど、探索時にも役に立つ。前述した通り、ギミックは主人公の魔法でも解除できるが、グリモアを装備していないといけなかったり、ギミックを突破する際の魔法使用でもエッセンスメーターを消費することになるので、基本的には仲間に解除してもらうことになる。

本作では仲間も一緒に戦ってくれる

 また、当然仲間は物語にも関わってくるが、その在り方はプレーヤーの選択によって変わってくる。仲間との交流は特定の場所で利用できる「キャンプ」内でも可能で、こちらも会話の選択肢は非常に豊富だ。

 キャンプでは体力の回復や、体力を回復できる料理を作ったり、アイテムの保管や装備の強化も可能。また、パーティを強化できる「トーテム」も設置できる。今回のプレイではトーテムを設置できなかったが、探索などを通じてパーツを全て集めればトーテムが完成し、設置可能になるようだ。このように、装備の強化素材や食材、トーテムの部品などを集めるためにも、、様々な場所に足を運ぶことが重要になっている。

キャンプではライフを回復できるだけでなく、仲間と会話することもできる
クラフトでは探索で集めた素材を用いて装備品の強化や料理が可能。探索を通じてゲームの進行が楽になる要素は多いので、様々な場所に足を運ぶことが攻略にも繋がってくる。
クエストなどで手に入る特殊な装備の強化も可能。こちらはエンチャントを強化できる

海外産RPGの魅力が詰まった作品。一カ月後の日本語化が待ち遠しい

 このように「Avowed」は、広大なフィールドや自由度の高い探索とビルドシステムや一筋縄ではいかない戦闘、幻想的な世界観が生み出す独自の雰囲気、膨大なテキスト量の会話やジャーナルに下支えされたプレーヤーの選択で変化する物語など、海外産のオープンワールドRPGファンが期待している要素を充分に盛り込んだ作品となっている。

 実際、戦闘は“ソウルライク”のような難易度を感じさせる瞬間もあり、非常にやりごたえのあるものになっており、上達の楽しみを感じることができるはずだ。言語が分からなくても探索は楽しく、収集要素やレベリングをこなしながらマップを徘徊するだけでも時間が過ぎていき、「時間を溶かす」RPGの醍醐味を感じることができる。

 筆者としては、本作の最大の魅力は世界観の掘り下げや、会話によって変化する物語にあると感じたので、一カ月後の日本語追加アップデートが待ち遠しい。もちろん、海外言語でのプレイでもなんとなく把握できる部分もあるほか、戦闘も面白いので、日本語版が待ちきれないという人は一足先にプレイしてみてほしい。

広大なフィールドでの冒険がプレーヤーを待っている