インタビュー
「サイレントヒル 2」開発陣インタビュー
オリジナル版の伊藤暢達氏や山岡晃氏とリメイク版のBloober Team、両開発陣がこだわりを語る
2024年8月19日 16:00
- 【SILENT HILL 2(サイレントヒル 2)】
- 10月8日 発売予定
- 価格:
- 8,580円(スタンダードエディション)
- 9,790円(ダウンロード版デラックスエディション)
コナミデジタルエンタテインメント(コナミ)は、10月8日に発売を予定しているプレイステーション5/PC用サイコロジカルホラー「サイレントヒル 2」のメディア向け体験会を開催。その中で開発陣によるQ&Aセッションが行なわれた。
ステージには、リメイク版のプロデューサーである岡本基氏。リメイク版の開発を手掛けたポーランドのBloober Team。オリジナル版を手掛けたコンセプトアーティストの伊藤暢達氏。そして、両タイトルのサウンドを制作したコンポーザーの山岡晃氏が登壇した。
リメイク版の開発に必要なのは「サイレントヒル」への愛情
――オリジナルスタッフである伊藤さんと山岡さんと一緒にリメイク版を制作されていかがだったでしょうか?
岡本氏:「サイレントヒル 2」は非常に長く愛されてきて、ユーザーにとても絶賛されているタイトルなのでオリジナル感を大事にしたかったです。そのため、原作を手掛けたオリジナルのスタッフが携わることで非常に深い作品を作り上げることができました。
――山岡さんに質問したいのですが、本作で新たに書き下ろされた楽曲はありますでしょうか?
山岡氏:曲は全曲書き直しています。オリジナルの曲をパーツで使っているんですけど基本は全曲変えています。オリジナルでアレンジしていますし、トータルでいうと9時間分くらいの曲数なんですけど、これをサウンドトラックにするのはどうしたらいいのかなと今考え中です。
25年前の音楽がずーっと愛されていてもちろん嬉しいんですけど、やっぱりリメイクの新しい「サイレントヒル 2」ということで新しさをもって、これからゲームを始めてやる人にとっても感動みたいなものを感じてもらいたく全曲変えました。
――リメイク版に登場するクリーチャーは、原作との違いはあるのでしょうか?
伊藤氏:基本的には各個体の細かな変更があります。原作で、ある人物のストーリー的にこうしたらよかったのになというのがあったので、少し変えたのが1体か2体はいます。プレイしていただければ原作との違いもわかると思うので、その違いを考察していただくのも今作の楽しみになってます。
――開発会社サイド(Bloober Team)から特に皆さんに注目してほしいポイントなどはありますでしょうか?
Bloober Team:本作をプレイしてくださった皆様(来場者)はご存じかと思うのですが、今回の作品では、ゲーム全体のレベルデザインからあらゆる要素を煮詰め直して、ゲーム体験全体として上手く成立するようにしています。
――リメイク版の開発をBloober Teamに任せた理由は何でしょうか?
岡本氏:「サイレントヒル 2」をリメイクするにあたって世界中のスタジオを見て回ったんですけど、やはり「サイレントヒル」シリーズに対して愛情の強いチームを選びたいということで、いくつかの候補の中でBloober Teamの愛情がもっとも強いと確信したので開発をお願いしました。
伊藤氏は当初はリメイク版に携わる予定はなかった
――オリジナル版では少々間延びしていた部分がとてもテンポが良くなっていると感じましたが、こういったゲームのプレイ感などは意識していたのでしょうか?
Bloober Team:難しい判断ではあったのですが、間延びしている部分は詰めたり、今どきの作品らしく盛り上がりを加えるよう検討していたのですが、最終的には原作の表現に近づけつつ調整する形になりました。
――リメイクされた今回の「サイレントヒル 2」は、シリーズにおいてどういう存在になるのでしょうか?
岡本氏:リメイク版「サイレントヒル 2」はシリーズのクオリティのスタンダードであるので、この「サイレントヒル 2」を自信をもってお届けすることによって、その他すべての「サイレントヒル」シリーズのクオリティを保証するというか、コナミが自信をもって(世に)送り出しているということを訴えていきたいと思います。
――過去のインタビューで、コナミサイドは「完全に同じものは作りたくない」、Bloober Teamは「原作を変えたくない」という意見をぶつけ合ったとありましたが、実際にはどうだったのでしょうか?
岡本氏:最初のスタート時点でいうとクリーチャーのデザインを全て丸っと変えようという案もありましたし、サウンドの方も新しい方向性といいますか、今も新しいんですけど、さらに新しいものにしようという案はありました。
オリジナルクリエイターのお2人は非常にクリエイティビティが高いので、“リメイクなんだけど完全新作になるようなイメージで作りたい”ということだったので、最初の時点では全くデザインの違うクリーチャーのアイデアを伊藤さんから頂いたこともありますし、新作としての「サイレントヒル 2」という議論をしたこともあります。
Bloober Team:おっしゃる通り様々な案があったのですが、最初は一切変えずにいこうとしました。その後、様々な議論を重ねた結果、現在の市場で通用する作品にしたいという思いもあり、現在の形になっています。
――山岡さんと伊藤さんに質問なのですが、長い期間を経てリメイク作に携わることになった気持ちはいかがでしょうか?
山岡氏:セルフカウンセリングっていうんですか? 音楽とかゲームを作るにあたって自分の25年前の生き方とか、何を考えてどんな生活をしていたのかというところから入っていって、この新しいリメイクを作り始めました。
それで結果としては、実は思い出せなかったんですよ。自分がどんな考えと生き方で「サイレントヒル 2」に挑んだのかが思い出せなくて。自分との問答の毎日で、すっごい苦しかったですね。
当時のそのまんまリメイクするのはある種簡単なんですけど、やっぱり25年経って、昔から好きな人にも、新しくこのゲームを遊ぶ人にも受け入れてもらえる作品にしたかったです。
少し話がズレるんですけど、当時「サイレントヒル 2」の制作をしているときってお金が無かったんですよ。みんなが大好きなローラのテーマとかは実はベースが入ってないんです。ベースが買えなくて(笑)。なのでギターのチューニングを下げてベースに寄せていたんですよ。
そういうギリギリのときでも、世の中に対して、みんなに受け入れてもらいたいという気持ちが良い物を作れるというか。そういうことを忘れちゃっててリメイクを作るときの葛藤がありましたが、自分が作品を作るときはそうやってますね。
伊藤氏:自分は2019年頃に、「サイレントヒル 2」のリメイクに参加してくれないかと岡本さんからDMが来たんですよ。そのときはオリジナルの「サイレントヒル 2」をいじる必要は全く無いと思っていたので断る予定でした。
ただ、参加しないで全く違う方向性に行ってしまうよりも、参加して尽力しようと思い参加しました。原作のコアの部分は変えずにガワを全く新しいものに変えたほうがリメイクとしての意義があると当時は思っていました。
最終的にこのような形になりましたが、「サイレントヒル 2」をまだ遊んだことがない人に対して、原作のインパクトをどのようにして感じてもらえるかに注力しました。
セッションのラストで新トレーラーがメディア向けに先行公開。岡本氏のコメントも
Q&Aセッションの最後には本作の最新トレーラー映像がメディア向けにお披露目された。これは2001年に公開された原作のトレーラーをベースにしており、ここでもBloober Teamの「サイレントヒル」シリーズ愛が垣間見える。
最後に岡本氏は「コナミとBloober Teamは『サイレントヒル 2』のストーリーをとても大切にしているということが伝わるトレーラーだったと思います。このトレーラーを見て、ユーザーの皆様に安心してもらえるんじゃないかと思います」とコメントし、Q&Aセッションは終了した。
(C)Konami Digital Entertainment
※ゲーム画面は開発中のものです。