レビュー

「逆転裁判456 王泥喜セレクション」レビュー

ナルホドくんとオドロキくんのW主人公で繰り広げられる「逆転裁判6」

 2016年に3DSで発売された、「逆転裁判6」。本作は、ナルホドくんとオドロキくんのW主人公構成になっており、「クライン王国」と日本がメインの舞台となる。

 「クライン」といえば、「逆転裁判123」で登場した綾里真宵(あやさとまよい)ちゃんや、綾里春美ちゃんらが使う霊媒術「倉院流霊媒道」、その総本家がある「倉院の里」。その源流となるのがクライン王国である。クライン王国は代々霊媒師の女性が王となって国を治めてきており、裁判にも霊媒で出た結果を取り入れているような霊媒の国。そのため裁判は、実質霊媒で犯人を確認するだけの場のようになっている。

本作の舞台のひとつとなる、クライン王国

 本作は、「逆転裁判5」の時のような大きな変更点こそないものの、新システムの「御魂の託宣」が導入された。御魂の託宣とは、新ヒロインであるクライン王国の姫巫女・レイファの霊媒によって被害者が死の間際に感じた感覚を映し、写った映像にレイファが託宣を下すもので、託宣との矛盾点を指摘していく。

水鏡に映る、死者の最期の記憶
最期の記憶は、五感が文字となって現れる。その映像の解釈をレイファが託宣として下すので、映像と託宣の矛盾点を突きつける
レイファの舞のシーンでは、霜月はるかさんによる歌が流れる。楽曲自体は3DSの時のままだが、3DSのスピーカーで聴くよりも音が美しく響き渡っているように感じられる

 第1話では、ナルホドくんがクライン王国に降り立ち、観光ガイドを頼んだボクト・ツアーニが殺人事件の犯人として捕まってしまうところから始まる。そしてナルホドくんは、ボクトくんの裁判で何故か弁護席に誰もいないことに気付く。思わず弁護席へと飛び出したナルホドくんだったが、クライン王国では弁護士が悪であるような扱いをされていることを知るのだった。

クライン王国の裁判に弁護士は不要だと言われるが……
第1話から、素晴らしい盛り上がりを見せるストーリーになっている
ポット・ディーノの歌が未だに頭にこびりついて離れないプレーヤーも多いのではないだろうか

 第2話では舞台を日本に移し、オドロキくんが主役となる。ナルホドくんがクライン王国へと旅立っている間、日本では大劇場にて、マジシャン・成歩堂みぬきのマジックショーが開催されていた。しかしそのマジック上で、ショーの出演者が死体となって突如出現。過失致死の疑いで、みぬきちゃんが逮捕されてしまうのだった。

 オドロキくんとココネちゃんは、みぬきちゃんがマジックを失敗などするはずがないと信じて、ナルホドくんが不在の中でみぬきちゃんを助けるために奔走する。

みぬきちゃんは大きな舞台に立つまでに成長

 本作のライバル検事として席に立つことになるのは、ナユタ・サードマディ検事。クライン王国出身の僧侶で、「裁判にて罪人を裁くことが被害者の魂の救済になる」と信じており、弁護士は救済を阻む存在だと、憎しみにも近い感情を持っている。一見優しそうな雰囲気のナユタ検事だが、弁護士のことを「ド腐れ弁護士」と言ったりと、かなりの毒舌。国際検事として世界中で活躍している。

ナユタ弁護士。本作ではとにかくクライン王国が深く関わってくる

 「逆転裁判5」から導入された「カンガエルート」や、カガク捜査、ココロスコープ、みぬく、「逆転裁判123」で登場したサイコ・ロックなど、様々な要素が「逆転裁判6」では引き継がれており、非常に良いバランスのゲームとなっている。

事件を整理できる、カンガエルート

 「逆転裁判6」はオドロキくんの物語の集大成と言える内容で、シナリオのボリュームも歴代一。偉大な先代主人公・ナルホドくんとのW主人公を、立派に勤め上げられるキャラクターになっているので、楽しみにしていてほしい。

「王泥喜セレクション」というタイトルの通り、「逆転裁判456」はオドロキくんの成長を見届ける内容だ

「逆転裁判456」は今プレイしても名作だ

 筆者は元々「逆転裁判1」からリアルタイムでプレイしている本作シリーズのファンだが、「1」~「3」は3DSやHD版、iOS版などが出る度に何度もプレイする機会があったものの、「4」~「6」はあまりそういう機会に恵まれなかった作品なので、プレイし直す機会がなかなかなかった。

 なので今回の「逆転裁判456 王泥喜セレクション」で随分と久しぶりに「4」「5」「6」をプレイしたのだが、改めてプレイしてみるとオドロキくんの成長ぶりに、うるっと来てしまう場面もあった。「逆転裁判456」を一気にプレイすることで、オドロキくんの解像度は確実に高まるはずだ。

「逆転裁判5」でココネちゃんという後輩を迎えてからは、事務所の先輩として頼もしい姿も見れるようになるオドロキくん

 「逆転裁判456」は、これまで以上に被告人も真犯人も脇役も個性的なキャラクターが多いが、だからこそ「次は一体どんなサプライズがあるんだろう?」とわくわくしてしまう。シリーズごとに、エピソードごとに、こんなにも次に出てくる登場人物たちが楽しみな作品は、他になかなかないだろう。

「逆転裁判5」の第2話で登場する天馬ゆめみちゃん。真性の怖がりで、常にお札を持って歩いていて、オドロキくんのことは赤鬼だと思い込んでいる。「逆転裁判5」からは3DCG化されているので、お札を張るアクションなども全て細かく作り込まれていて良い

 謎解きについては「逆転裁判6」>「逆転裁判4」>「逆転裁判5」くらいの難易度となっており(あくまで筆者の体感である)、特に「逆転裁判6」は全シリーズ中でも一番と言っていいくらい、丁寧に作り込まれていると感じられる。もしも「逆転裁判1~3」はプレイしたが、「逆転裁判4~6」は触れる機会がなかったという人がいたら、このチャンスにぜひプレイしてほしいと思うし、ファンが思い出を振り返るのにもぴったりだ。

 特に「逆転裁判4」は、ニンテンドーDSでの発売当時、「ナルホドくんの落ちぶれた姿が悲しい」等、シリーズファンからは少々不評な作品ではあった。筆者も当時は同様に感じ、少し悲しい気持ちにもなったのだが、改めて今プレイし直すととても面白い作品に仕上がっていると感じた。

 それは、「ナルホドくんが戻ってくる」という事実を先に知っていることが大きいように思う。当時無精ひげのナルホドくんを見ていられずにやめてしまった、というようなプレーヤーがいたら、まさに本作でプレイし直してみてほしい。改めてプレイすると、特にナルホドくんは落ちぶれているように見えて、きちんと正義漢なキャラクターを貫いていると感じられた。

 今、こうして改めてプレイをする機会に恵まれたことで、全編を通じてシナリオの質の高さをしみじみと感じた次第である。「逆転裁判4~6」を一気にプレイできるから本作だからこそ、自信を持ってオススメしたいと思う。

特に嬉しいのはバックログ機能。見落としてしまった発言を、しっかり確認し直せる
背景なども全て高解像度化されているので、「調べる」で調べたい場所もわかりやすくなっている