レビュー
「Marvel's Spider-Man 2」レビュー
2023年10月16日 23:00
空を飛べるウェブ・ウィング登場! 多彩なアクティビティは撮影や科学要素も
広大なニューヨークをウェブでスイングして駆け抜ける。サム・ライミ監督が2002年の映画「スパイダーマン」で提示したビジョンは世界中の人を魅了した。「Marvel's Spider-Man 2」ではPS5で緻密に描き出されたニューヨークを、コントローラを使って自分の手で飛び回ることができる。ビルの壁にウェブを貼り付け、垂直の壁面を駆け上がり、空中で体を捻って跳ぶことができる。この爽快なウェブアクションは、本作の大きな魅力だ。
「Marvel's Spider-Man 2」ではこれまでのシリーズのウェブアクションに加え、「ウェブ・ウィング」で滑空することも可能だ。ウェブ・ウィングを使えばウェブを引っかけられない低い建物ばかりの地域でも高速に飛び抜けることができる。スイングと組み合わせ、より自在に飛び回ることが可能だ。
さらにニューヨークには「気流」がある。ビル風や排気口、鉄橋の間を吹き抜ける風など、気流の激しいところを見つければこれまで体感できなかったスピードで空中を移動できる。今作でもこれまでのシリーズ同様地域間を短時間で移動できるファストトラベルが用意されているが、この気流の存在で長距離を移動するのが楽しい。飛び回りながら気流を探して移動するという新しい要素が加わっている。
ウェブ・ウィングは「ハンタードローン」というアクティビティでも活躍する。空を飛ぶ鳥形のドローンを追いかけるアクティビティなのだが、ドローンの後ろならばスリップストリームでずっと飛び続けることができる。ビルの谷間を飛んでいくドローンを追いかけ続けるフライトゲームのような感触だ。
他にも多彩なアクティビティが用意されている。「マルコの記憶」は町中に散らばった砂の結晶から生み出されるサンドマンの分身を倒し、サンドマンがなぜ凶暴化したかを探っていく。「ハンターの拠点」はクレイヴンの配下を倒していく。
拠点での戦いは正面から戦っても良いが、隠れて敵を倒す「ステルス要素」も楽しいところ。特に、敵の目をかいくぐり警報装置などを止めればいざ戦闘になっても有利に戦える。ステルス状態を維持できたまま拠点の敵を全滅させたときの爽快感は大きい。蜘蛛の糸を天井に張り巡らせることもできるので自由度の高いステルス戦闘が可能だ。
もちろん戦闘だけがアクティビティではない。「フォトマラソン」はステージ中の様々な場所を撮影するコンテンツ。ニューヨークの名所案内ではなく、ストリートパフォーマーや、バスケットコートでの対戦、時には交通事故の諍いなど、ニューヨーカーの日常を扱った撮影が多く、スパイダーマンが飛び回るニューヨークに親しみをもたらしてくれる。
収集要素としてはマイルズの叔父アーロンの「プラウラーの金庫」もある。アーロンはヴィラン・プラウラーとして活動していたが更生し、その遺産をマイルズに与える。プラウラーはニューヨーク中に隠れ家を持っていて様々な仕掛け出入り口を隠している。マイルズはこれらを突破し、プラウラーの装備を手に入れていくのだ。
筆者が「Marvel's Spider-Man 2」で特に楽しかったのが科学要素。ピーターは優れた科学者であり、今作ではファウンデーションの研究を手伝うというアクティビティでこの要素が掘り下げられている。化学物質を選別するため分子の構造を解析したり、遺伝子組換え実験を行ったりする。ゲームとしてはシンプルなパズルなのだが、ピーターの科学者としての一面をきちんとピックアップしているところが良かった。
何本ものストーリー、多彩なキャラクターが交差するメインストーリー
アクティビティをクリアしつつメインストーリーを進めていくのが「Marvel's Spider-Man 2」の大きな流れだ。アクティビティやメインストーリーをクリアしていくと経験値や装備のパーツ、「ヒーロートークン」などが手に入る。
「Marvel's Spider-Man 2」ではピーターとマイルズ、さらには2人共通の3つのスキルツリーがあって様々な技を強化できる。さらにはガジェットや、ステータスも強化可能だ。アクティビティに挑戦するほどスパイダーマンは強化され、ストーリーやアクティビティを進めるのが楽になる。じっくり時間を掛けて様々な要素に挑戦していくのをオススメしたい。
メインとなるストーリーだが、いくつもの核となる要素がある。「ピーターとハリーとの関係」、「マイルズとミスターネガティブ」、「クレイヴン」、「炎をあがめるカルト」などなど。ここにピーターやマイルズの知人もからみ複雑に進行していく。
筆者が好きなのはピーターとMJ、ハリーが遊園地に行くエピソード。ここでは本当に多彩な遊園地の乗り物やゲームが用意されていて、とても楽しい。これはストーリーエピソードの1つとなっており再び訪れることができないため、ぜひすべての遊びをコンプリートしてほしい。ジェットコースターで歓声を上げたり、バスケットボールを投げ込むミニゲームなど、遊園地らしい遊びが詰まっている。
マイルズが学園生活を応援するストーリーも楽しい。高校生の様々な活動を応援するエピソードは戦いの多い本作において清涼剤のような爽やかさがある。「日常の中のヒーロー」、「親愛なる隣人」というスパイダーマンならではの要素だと思う。
一方で、本作においてはクレイヴンのストーリーの掘り下げがもう少しだったかな、という印象を持った。ハンターとしての妄執を感じさせる場面はあるのだが、直接対決する場所や、彼自身の想いをスパイダーマンにぶつける場面が少なく感じた。
これはおそらく開発者が意図したものだとは思う。クレイヴンをあえて無機質な恐ろしいヴィランとして見せ、ハンターの拠点での通信などで彼の隠された一面を掘り下げるという演出プランだと思うが、ヴィランとしてのキャラクター性が薄く感じてしまった。ちなみにクレイヴンは2024年公開の映画「クレイヴン・ザ・ハンター」で主役として映画となる。クレイヴンがその能力を覚醒させるエピソードのようで、こちらも注目したい。
メインストーリーにおいては現時点で語れない要素も多い。ぜひプレイを進め、驚いてほしい。スパイダーマンだからこそ、様々なキャラクターの本作ならではのアレンジ、そしてシリーズ作品だからこそのキャラクターと関係性の掘り下げを楽しめる。何よりもスパイダーマンとしてニューヨークを飛び回るだけで楽しいのだ。発売日を心待ちにしてほしい。
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