レビュー
「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」レビュー
2022年8月25日 00:00
一癖も二癖もある登場人物達の腹を探り、真実を見つけ出す
「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」は登場人物も印象深い。プレーヤーに強力な印象を残すキャラクターとしてはやはり「クーノ」は外せない。死体に石をぶつけてるという信じられない遊びをしているクソガキだ。
クーノは自分のことを「クーノ」と名前で呼ぶ、見た目より幼稚な言動が目立つ少年で、反抗的な態度は見せるもののその言動は薄っぺらい。実はクーノの子分のような女の子「クーノス」の方に何か秘密があるのでは? という行動も見せ、見た目や言動に似合わず深掘りできるキャラクターだ。反抗的だが素直なところがあるし、内面には色々な葛藤を抱えていそうである。
大男の用心棒をなんとかすり抜けることでたどり着ける、問題が発生中の組織の奥には大きな椅子に座っているでっぷりと太った男が待ち構えている。彼は「イヴラート」、湾岸労働者組合の代表だ。彼は主人公の弱みを既に握っていて、余裕のある態度でこちらを扱ってくる。こいつのデカイ尻を蹴り上げてやりたいとだれもが思うはずだ。
イヴラートとの出会いは本作前半の1つの山場となる。彼はこちらに心理的ダメージを与えようと巧妙な話術で誘ってくるので、ダメージを受けても回復できるよう、回復アイテムを準備してから挑もう。
くたびれた老人や不満を抱えた労働者ばかりがいるように見えるこの街で、ひと味違う存在感を放っているのが個人用のボートに乗っている裕福そうな女性「ジェイス」。実は湾岸労働組合で生じたストライキ問題を解決するために訪れたようだ。彼女は他のキャラクターと全く異なる立場にいる人間なのが話していてわかる。ジェイスは湾岸労働組合とは別会社(ワイルド・パインズ社)の代表として今の街の状況を見ている。イヴラートとの関係も気になるところだ。
他にも様々なキャラクターが登場する。ちょい役ですら印象深いのが本作の面白いところ。その中で主人公の相棒となるキムは頼もしい相棒だ。事務的で生真面目な彼は記憶をなくし捜査どころかその日の宿代すら払えない主人公をサポートしてくれる。
彼自身は人種差別的な思想や、縄張り争いをする警察にも懐疑的だ。プレーヤーが常識から外れた行動をしたときは冷たく批判したりするが、全体的に協力的で主人公を助けてくれる。本作の"良心"と呼べる人物だ。
「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」は、自分の記憶すら戻らないという謎だらけの状況の中で、複雑な背景をもつ殺人事件に挑む。雪や雨が降る暗い空気の中、退廃的な雰囲気の街を歩き、かすかな手がかりを追っていく。ストレートに事件が進展していくタイプではなく、プレーヤーがこの世界を知っていくことで徐々に手がかりが増えてきて、事件の本当の背景が明らかになる、という感じだ。
本作の"やりこみ要素"の1つとして、"主人公の欲望を解き放つ"という遊び方があるだろう。記憶をなくすほど酔っ払う主人公の欲望は凄まじい。ハーブに興味を持つし、酒への衝動は強い。そしてカラオケへの渇望……。これらに付き合ってたら物語が進まないと思い今回は真面目な選択をした。本作は選択によっては即ゲームオーバーになりかねない場面がいくつかあるのだ。
このため、こまめにセーブすることが求められる。もちろんオートセーブもあるのだが、より細かいセーブも心がけておきたいところだ。ただ、ゲームオーバーになるような選択も面白そうなのが本作の魅力の1つでもある。破滅的な選択がどんなとんでもない方向に物語を動かしていくか、それも本作の楽しみ方だ。何度もプレイしゲームの隅々まで味わいたくなる作品である。