レビュー
「やわらかあたま塾 いっしょにあたまのストレッチ」レビュー
お勉強感ゼロ。みんなで気軽に楽しめるパーティーゲームとしても秀逸
2021年12月2日 00:00
- 【やわらかあたま塾 いっしょにあたまのストレッチ】
- ジャンル:あたまのストレッチソフト
- 発売元:任天堂
- 開発元:任天堂
- プラットフォーム:Nintendo Switch
- 発売日:12月3日
- 価格:
- 3,278円(税込、パッケージ版)
- 3,200円(税込、ダウンロード版)
“あたまをストレッチする”というNintendo Switch用ソフト「やわらかあたま塾 いっしょにあたまのストレッチ」が12月3日に発売される。
あたまのトレーニングといえば、2005年5月に発売されたニンテンドーDS用「東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング」が脳トレブームの火付け役として知られており、当時はDS本体を品薄にさせるほどの大ヒットになった。
それから約1カ月後の6月に発売されたDS用「やわらかあたま塾」は、「脳を鍛える大人のDSトレーニング」の大ヒットの影に隠れがち。実はこちらもミリオンセラーを記録する大ヒット作だ。その続編となるのが、今回発売される「やわらかあたま塾 いっしょにあたまのストレッチ」。世界中のプレーヤーと非同期対戦できる「ゴーストバトル」といった新モードが搭載されている。
新たにSwitchで登場する今作を先行体験する機会を得られたので、レビューをお伝えしよう。
5ジャンルに分かれたストレッチを収録
本作に収録されているストレッチ(ゲーム)は、先に発売されたDS用「やわらかあたま塾」と、Wii用「Wiiでやわらかあたま塾」から厳選されたもの。過去のシリーズ作品をプレイしたことがある人には見覚えのある内容もあると思うが、ゲームシステムは異なる部分もある。まずは何も知らない前提でプレイしてみた。
最初に、メイン(1人用)とパーティ(2〜4人用)を選ぶ。今回はメインからプレイ。すると「ハイ! ハイ! ドーモ ドーモ!」とテンション高く、ユルいキャラクターが出迎えてくれる。本作の先生役となる、塾長のハカリ先生だ。曰く「カタイあたまをもみほぐす、さまざまなもんだいをよういしています」とのこと。
続いてプレーヤーのプロフィールを設定する。誕生日、スタイル(性別?)、職業、キャッチフレーズ、外見など。ゲーム内容に影響は与えないようだし、後から編集もできる。設定が済んだらいよいよゲームスタート。
最初にプレイするのは「ストレッチ」。「直感」、「記憶」、「分析」、「数字」、「知覚」の5ジャンルのゲームが、ジャンルごとに4つずつ収録されている。まずはハカリ先生の誘導に従い、「直感」の1つ目にある「えあわせモグラ」をプレイした。
「えあわせモグラ」は、画面の上部に表示された絵を見て、画面の下部からモグラ叩きの要領で出てくる絵を叩くストレッチだ。上の絵に含まれるものを叩けば正解となり得点、間違えると減点となる。1つ終わるとすぐ次が出てくるので、60秒の制限時間内に、ひたすら問題を解き続ける。
数回連続で正解すると、「クラス(難易度)」がアップする。難易度は最初の「幼児クラス」から、「初級クラス」、「中級クラス」、「上級クラス」、「エリートクラス」、「超エリートクラス」という6段階が用意されている。正解を続けると、上の絵と下のモグラの数が増えていき、どんどん難しい問題が出てくる。間違えると減点されるが、制限時間もなくなっていくので急かされる。
制限時間が終わると結果発表。得点は「やわらか度」として評価され、得点に応じてハカリメダルとコインがもらえる。コインは10枚集めるたびに、外見を変更できるアイテムが手に入る。
あとは各ジャンルのストレッチをプレイしていき、「やわらか度」を計測していく。いずれのゲームもボタン操作とタッチ操作の両方でプレイできる。
難易度に「幼児クラス」とあるが、ゲーム内容を見るに、全てのゲームのルールを理解して遊べるようになるのは小学生くらいからだと思われる。ゲームの中には未就学児でも遊べそうなものはあるので、親と一緒にプレイする分には大丈夫そうだ。
バラエティ豊かなゲームを次々とプレイしていくと、自分の得手不得手が見えてくる。筆者の場合、「記憶」の問題はどれも手ごたえがあるのだが、「知覚」は悩む物が多い。ただ苦手と感じた割に得点が良かったりするものもある。総じて瞬発力を求められるものは高得点、熟慮を要するものはダメだった。性格が出ている。
目指すは金のハカリメダル、そしてその先に……
「ストレッチ」全てのゲームを一通りプレイしたところ、半数ほどのゲームで高評価の証となる金のハカリメダルを獲得できていた。ハカリメダルは金、銀といった色の違いに加え、1〜3の星の数で評価が細分化されている。
ゲーム選択画面に戻ると、「ストレッチ」の横に隠されたゲームモードがあった。ハカリ先生によると、「ストレッチ」の全てのゲームで金のハカリメダルを獲得すると何かがわかるという。ということで、銀だったゲームを再びプレイして金に変えていく。
ちなみに操作については、概ねタッチ操作の方が素早く回答でき、得点も高くなりやすい。パッド操作は特にアナログスティックで急ぐ操作をするとミスしやすいので、記録を狙ってプレイするならタッチで遊ぶ方がよさそうだ。ただしテレビ画面で遊びたい時はパッドを使わざるを得ない。
その辺りの理解もあって、初回で銀だったものも2回目のプレイで全て金に塗り替えた。長年のゲーマー経験を持ってすれば、どのゲームも1回やれば要領を掴むのは容易なことよ……と、ひとり鼻を高くしていると、隠されたゲームモードが開いた。そこにあったのは「超ストレッチ」。
「超ストレッチ」でも、「ストレッチ」と同じ5ジャンル×4つのゲームをプレイする。違うのは、各ゲームが開始時点から「上級モード」になっていること。「ストレッチ」で難なく金を取れる筆者には、「中級モード」まではもはや手ごたえがないと感じたので、高難度で始まる「超ストレッチ」はむしろ具合がいい。
いざ挑戦してみると、最初の「上級モード」はまだ普通に遊べる。しかし正解を続けると、すぐに難易度が上がっていき、最難関の「超エリートモード」に突入する。正解するのが難しいものや、かなり時間がかかってしまうものも多く、得点が伸びない。
「超ストレッチ」でもやはりハカリメダル制度は健在。ゲーム的には歯ごたえが出てきて面白くなったが、苦手なゲームで金のハカリメダルを獲得するのはかなり大変そうだ。熟練のゲーマーでも、1日で全クリアとはいかないであろう。本作をボリューム不足と嘆くことはなさそうだ。
2人プレイはハンデ戦や高難度戦など自由度高し
次は家族と2人プレイを試してみた。ゲームは1人プレイの時と同じ内容で、左右に画面を分割してそれぞれにプレイする。2人プレイまでならタッチ操作も可能だが、2人並んでSwitchの画面に手を伸ばすと少々狭苦しいので、Joy-Conを本体から取り外して1人ずつ持って遊ぶ方がいい。
2人プレイの場合、1問ごとに先に正解した人に20点、後から正解すると8点、間違えると0点というルールで、誰かが100点に到達した時点でゲーム終了。プレイするゲーム数は1〜5問で最初に選択する。ゲームはその都度自由に選択するか、ルーレットによる選択かを選べる。
各ゲームが始まる前には、プレイする難易度を選べる。ここで面白いのが、プレーヤーごとに異なる難易度を選べるところ。同じ難易度にすれば同じゲーム内容での対戦になるが、難易度を変えると出される内容が別々のものになり、内容に関わらず回答速度で順位が決まる。つまりハンデ戦ができる。
筆者は妻と対戦してみたが、先に一通りプレイしている優位さもあり、同じ難易度だと筆者が圧勝してしまう。そこで筆者の難易度を1つ上げてみると、ぐっといい勝負になった。相手によって難易度を調整して、接戦になればかなり盛り上がる。
ちなみに1位のプレーヤーが80点以上を取った時点で、2位以下が50点以下の時には、その次の問題で2位以下が正解した時にはボーナスとして50点が加算される。かなり理不尽な一発逆転要素だが、ゲームとしては圧勝で終わるより盛り上がる。
さらに遊び方を変えるべく、難易度をあえて2人とも最高の「超エリートコース」にしてみた。こうなると全ての問題がかなり難しく、1問ごとに時間がかかる。ただ回答時間は1問ごとに10秒以上あるので、じっくり考えれば解けるものが多い。もちろん先に答えた方が高得点ではあるのだが、瞬発力より思考力が求められるようになり、ゲームの味わいが変わってくる。大人同士の対戦ではこちらの方が楽しめそうだ。
規定数のゲームを終えたら、合計点で最終順位が決まる。2人でもなかなか盛り上がるので、4人なら順位も混沌としてかなり楽しめそう。どのゲームもルールは簡単なので(必ずしも問題が簡単なわけではない)、初めてプレイする人でもすんなり遊べて、なおかつバリエーションも豊富とくれば、パーティーゲームとして間違いなく優秀だ。
習熟度を試す「テスト」や非同期対戦モードも用意
ゲームモードはまだある。「テスト」では5つのジャンルから各1ゲームずつ連続でプレイし、総合的な「やわらか度」を計測する。1つ1つのゲームでやることは「ストレッチ」と同じ内容となる。
5ゲーム全て終了すると、各問題の得点が合計される。ジャンルごとの得点もレーダーチャートで示され、良し悪しも一目でわかる。また合計点に応じて「あたま段位」が認定され、段位が上がるとコインがもらえる。「ストレッチ」で得点が伸びてきたなと思ったら、プレイの目標の1つとして遊んでみるのがいい。
「ゴーストバトル」は、他のプレーヤーと非同期対戦できるモード。プレーヤーがストレッチやテストでプレイした内容を記録し、他のプレーヤーと対戦させる仕組みだ。今回は発売前ということでオンラインモードは試せなかったが、オンラインで世界中のプレーヤーと競うモードが用意されている。ほかにもフレンドや家族(同じSwitch本体でプレイしている人のデータ)、プレーヤーに割り当てられるゴーストIDによる検索でのプレイも可能。
オンライン接続が不要な家族との「ゴーストバトル」を試してみると、他のユーザーが遊んだゲームのデータを選び、2人プレイと同じ形式で対戦できた。相手はあくまで過去のプレイデータなので、自分のプレイに影響を及ぼすことはないが、家族やフレンドと好きな時に対戦気分で楽しめる。
お勉強感なく、楽しみながら知らず知らずにあたまのストレッチ
本作でハイスコアを目指してプレイしていると、今までと違う物の見方に気づいたり、効率のいい考え方を見つけたりする。それが日々の生活においても、効率化や新たな気づきに繋がる。
本作の効果を真面目に分析すればそういう話になるが、筆者が思うに本作の魅力は、トレーニング効果そのものよりも、「あたまをトレーニングしていると感じさせないゲームデザイン」にあると思う。
本作は1日1回きっちり遊んで衰えた脳を若返らせよう、という意図を感じさせる内容にはなっていない。好きな時に好きなだけ遊んでくださいという、普通のゲームの姿勢だ。もちろん他の脳トレ系ゲームを否定するわけではないし、本作を毎日地道に遊ぶなというわけでもない。
本作は純粋にゲームとして楽しめることを柱にし、お勉強っぽさを感じさせないようにしている。中には計算をさせるゲームもあるが、数式を直接表示したりせず、あくまでゲームの中で計算が必要になるよう作られている。
素直にゲームを楽しみ、より高得点を取る方法を考えているうち、自然とあたまのストレッチに繋がる。勉強嫌いの子供でも楽しみながら暗算力や発想力、直感力を鍛えられる。大人も何気なく遊ぶだけで自分の得意分野と苦手分野を自覚し、鍛えられる。ゲームとして家族みんなで楽しみながら、知らず知らずのうちにあたまを鍛えられるのが、本作の魅力だと思う。
筆者は小さな子供を持つ親だが、子供がずっとゲームで遊んでいるのはどうかと思う。そこで「このゲームならもっと遊んでいいよ」と本作を手渡せる……のかどうか。本作であたまを鍛える価値はあるとは思うのだが、「こういう学び方もアリだね」と言える“やわらかあたま”を持つ親になれるかどうか、本作に試されているような気がする。
© Nintendo