PS Vitaゲームレビュー
SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)
独特な“救済と生贄”、“選択と覚悟”で会心の出来!
- ジャンル:
- アクション
- 発売元:
- 価格:
- 5,980円
- 発売日:
- 2013年3月7日
- プレイ人数:
- :1~4人
- オンライン:
- :マルチプレイ対応(アドホック、Wi-Fi)
- CEROレーティング:
- :D(17歳以上対象)
(2013/3/28 16:35)
“力の代償を支払う覚悟はあるか?” 魔法を駆使して戦う「魔法使い」となって異形の魔物を狩るPlayStation Vita用アクション「SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)」。メインコンセプターをcomceptの稲船敬二氏、開発をマーベラスAQL、プロデュースと販売をソニー・コンピュータエンタテインメントが行なう、3社が共に挑んだ新進気鋭の新作タイトルだ。
強烈なビジュアルをした魔物達を相手に、多彩な種類の魔法を“犠牲を払い”発動して戦う新機軸のバトルスタイル。本作はいわゆる「狩りゲー」だ。魔法使いという存在を徹底してダークに描き、そしてマルチプレイではアドホックとWi-Fi通信によるオンラインプレイと、どちらでも最大4人で共闘できる。本稿では、その独特さ、そしてプレイ感をお伝えしていこう。
―― Story ――
絶対的な不条理から、物語は始まる。何の説明もなく狭い牢獄に閉じ込められている、残忍な魔法使いに飼われた奴隷それが、主人公だ。刻々と死の瞬間が近づく中、1冊の「本」が目の前に現われる。それは記述された内容が実際に体験できるという不思議な効力を持つ魔術書だった。プレーヤーの前に現われた1冊の「本」。正確に言うと「本の姿をした化物」である。主人公の敵なのか? それとも味方なのか?想像を絶する闘いの幕が開く。生きる魔術書「リブロム」に記されたマーリンの秘密を追うストーリー
魔物の討伐を生業として生きる魔法使いの物語が描かれる「ソウル・サクリファイス」。欲深き人間が変わり果てた魔物を断罪として殺し、魔法という力のために命を生贄にし代償を得る。そうしていつしか魔法使い自身も人ならざる者へと近づいていく。蔑まれるダークヒーローの物語だ。
物語は、おぞましい血肉のような色をした牢獄から始まっていく。いつなのか、どこなのか、何もわからない。主人公ことプレーヤーは、マーリンという、すでに人とは言えない姿をした強大な魔法使いに囚われているのだ。同じように囚われていた者は、目の前でマーリンにその命を摘まれてしまう。明日は我が身だ。だが、今のままでは太刀打ちはできない。
そんないつ殺されるやもしれない牢獄の中で、主人公はリブロムという生きる魔術書と出会う。リブロムのページにはある魔法使いの体験、そしてそのパートナーだったマーリンの過去が記されており、それを読んだ者はその過去を追体験できるというのだ。マーリンの秘密を探り生き延びるために。主人公はリブロムを読み進め、壮絶な過去と魔物との闘い、魔法使いという存在の闇を体験していく。
こうして始まっていく本作だが、このリブロムの中が本作ではメインメニューとなる。ここから本編ストーリー、サイドストーリー、フリーミッション、そして通信での最大4人共闘プレイへと進めるようになっていて、まるで電子書籍のページをめくるかのような感覚でメニューに触れていくという、独特な作りだ。この書籍感覚を活かした「読み物(世界設定やストーリーテーリングなど)」も随所に織り込まれている。
本作のバトルは「クエスト」を受けてその目標を達成するというもの。ゲーム性としては、いわゆる「狩りゲー」のひとつだ。ターゲットとなる魔物の殺害または救済、魂や気のかけらを一定数集める収集系のクエストなどもあって、目的を達成すればクエスト達成になる。
ストーリーでは、ストーリークエストと言える追体験の「バトル」と、テキストで描かれる「ノベル」が交互に展開されるというスタイルになっている。描かれるのは、この世界における魔法使いという存在ゆえの、良い意味で“常軌を逸した”物語だ。
そもそも本作における魔法使いという存在自体が非常に独特だ。魔法使いは右手に“犠牲による代償として得た力”を宿す。それが魔法だ。植物を剣に変え、鉱物を盾に変え、巨人の骨で巨大な拳の力を得る。それらを供物として犠牲にすることで得る代償の力が魔法なのだ。さらに強大な「禁術」と呼ばれる魔法は自身の身体を犠牲にする。全身の皮膚であったり、脊椎であったりだ。その上には、他者の命を代償に発動できる、より強大な「代償魔法」もある。
魔法使い自身の力を高める、いわゆるステータスアップのためにも犠牲が必要となる。力を得るなら犠牲が必要というのがこの世界の絶対的なルールだ。魔物の命を生贄とし、右手に宿すことで魔法の威力をより高めていく。だが、強大な力を行使する代償として、その者もまた人ではなく魔物へと近づいていく。
この世界の魔物はみな、元は動物や人間だ。欲望に支配された人間が魔物に成りはてる。また、強大な力を手にした魔法使いもまた、魔物になる。そうした魔物に変わり果てた魔法使いを、魔法使いが殺す。そしてまた、新たな魔物が時折生まれていく。生贄として右腕に取り込んだ他者の記憶が流れ込み、自分の記憶なのか、生贄にした者の記憶なのか、それすら定かではなくなっていく。
本作のストーリーを“常軌を逸した物語”と表現するのは、そうしたこの世界の魔法使いならではの後悔や苦悩、困惑に満ちているためだ。そのテイストには、ある種の禁忌(タブー)に近いような危険な魅力も漂っていて、物語の続きはどうなっていくのか、ある魔法使いとマーリンの旅はどのような結末を迎えるのか。強く興味を呼び起こすになっている。ハマると一気に遊びこんでしまうほどに惹き付けられた。