PCゲームレビュー
シムシティ(ダウンロード版)
ソーシャル性が楽しい刺激的な「マルチシティ要素」。連携の歯車はぎこちなくも面白い!
(2013/3/12 00:00)
ソーシャル性が楽しい刺激的な「マルチシティ要素」。連携の歯車はぎこちなくも面白い!
本作は都市を作るゲームだが、最大16の都市を擁する「地域」全体をプレイするゲームでもある。ひとりで複数の都市をプレイしてもよいが、友達同士で各都市を同時プレイし、共同で地域を発展させていくマルチシティ要素が醍醐味のひとつなのだ。
このマルチシティ要素は、発売当初はサーバートラブルのおかげでまともに機能していなかったが、数日を経てようやくこの機能がまともに動作するようになってきたので、筆者もいろいろと試してみた。本作のマルチシティ要素は、ポジティブな要素もネガティブな要素も否応なく影響を与え合うようになっており、それが各都市の戦略に影響を与え、さらにはプレーヤーの様々な感情を刺激してくれる。とても面白い仕組みだ。
特に、各種アップグレードが地域全体に伝播する要素が素晴らしい。僕は交通局、君は財務局、といった役割分担で互いの都市発展を加速したり、資源を生かした特化を誰かが引き受けることにより、その恩恵を全体で共有することで、プレーヤー間で非常に建設的な関係を築くことができるためだ。
その一方で、犯罪者が別の都市に逃亡してきて悪さを働いたり、出稼ぎ労働者が大挙して想定外の渋滞を引き起こすようなネガティブ要素も、プレーヤー間で様々な連携をうながす切っ掛けとしてうまく機能している。
「こら!またお前の放火魔がウチに来たぞ!」
「うちのカジノが犯罪者の巣になっててな……。でかい警察建てるから、公安局を作ってくれ~」
「じゃあ、あとで財務局をそっちでよろしくな!」
という感じである。連携の形はいろいろあるけれども、各プレーヤーの選んだ都市設計の傾向やスピード、各都市の擁する地下資源の配分などによっても多彩に変化していき、毎回のプレイで違った流れを味わえる。
ただ、各都市での変化が他都市まで伝播するのに数分のタイムラグが発生する点に注意が必要だ。例えば他都市に資金援助をする場合、本作の通貨であるシムオリオンを積んだトラックが実際に、宛先の都市の役所へと走っていくのだ。
これが渋滞で詰まっていたりすると、いつまでたってもお支援を受け取れず、場合によってはそのまま詰む。電力や水道などの供給も、余力の変化が伝わるまでに少し時間がかかるため、ギリギリになって言われて整備しても遅いことが多い。何事も計画的にやっていこう。
みんなの力で「偉業」をめざせ!
都市開発に明確な目的があれば、本作のプレイはさらに面白くなる。その点でひとつの明確な目標となっているのが、複数都市で連携して建設する「偉業」である。
「偉業」には複数の種類があるが、それを建設すれば巨大な利益が得られ、ワンランク上の都市開発が可能になる点が共通している。例えば「アルコロジー」という偉業は、膨大な労働力を周辺都市に提供してくれる。警察や消防、医療などのサービスを必要とせずに巨大な人口が増えるようなもので、とてもありがたい施設だ。
その建設には大量の「合金」、「金属」、「テレビ」が必要になる。その原材料は地下資源である原鉱と石油なので、理想的には2つの特化都市があるとよい。その採掘施設に加えて加工施設、輸出入施設、各本部のアップグレードが必要になるので、少なくとも1都市は、鉱業および交易収入を極限まで突き詰めなければならない。
特化都市で不足しがちな労働力は、別の街で人口を増やすことで供給することもできる。ただし、勤め先の街で仕事をしているはずなのに、元の街では失業者扱いのままになっているという理不尽な現象が見られており、人口ファーミングをするなら治安問題に気を配る必要もある。
協力の形はいろいろあるにしても、最終的な出力は「合金」、「金属」、「テレビ」だ。そのための手段は何でも選んでいい。原鉱がなく、かわりにお金がいっぱいあるなら、原料をグローバルマーケットから輸入して偉業の建設現場に直接送り込んでもOKなのだ。
偉業を目指すことによる変化はまだある。偉業建設がスタートすると、大量の労働者が建設現場と都市内を行き来するようになり、凄まじい渋滞を生み出すのだ。場合によってはこれが破綻の引き金を引くこともあるので、交通をスムーズにするために都市の再設計も辞さない覚悟が必要である。
「偉業」はそうしてまでも目指す価値がある。「アルコロジー」が完成した暁には、普段よりも多くの工業地帯や商業地帯を、少ない公共サービスで維持することが可能になるからだ。その先にはまた、新しい形の都市設計が待ち構えている。さあ、ゴールを目指そう!