PCゲームレビュー

シムシティ(ダウンロード版)

プレイの度に新たな発見。細く長く遊んでいこう

プレイの度に新たな発見。細く長く遊んでいこう

労働力を外部に頼る実験中。1日に延べ80万人が訪問
新しい都市には、新しい風景と新しい発見がある
各種の「自然災害」も、毎回のプレイにピリリとひと味加えてくれる

 発売当初の混乱を越えて、ようやく快適に遊べるようになりつつある「シムシティ」。筆者もようやく「アルコロジー」を完成させ、労働力を完全に外部に依存する実験都市の構築をはじめたところだが、まだまだやることはありそうだ。

 ゲームの内容については期待通りの部分も、期待以上の部分も、期待外れな部分もあった。「Glassbox」による、いきいきとした街の風景。無数の糸が織り上げられるように成立するダイナミックな都市の変化などについては、まさに期待した通りのものを見ることができた。

 友達と複数の都市で連携して遊ぶ部分は、それがどんな面白さになるのか想像しきれていなかっただけに、期待以上だった。例えば、都市運営がうまく行かず大量の犯罪者を送り出すフレンドを中心に、否応なく対応を迫られる周辺都市。プレーヤーの一挙一投足が新たなチャレンジを産み出し、刺激的な時間が流れていく。

 しかし、道路まわりの仕様は期待外れだ。渋滞解消のために要求されるマイクロマネジメント。しっかりシミュレーションしているため、闇雲にバスや路面電車を導入すると逆に渋滞を悪化させることもある。渋滞のおかげで1日たっても街を出られない輸送トラック。それによって崩壊する経済。影響の伝播があまりにも極端すぎる気がする。ここでは詳述しないが、都市連携要素もなんだか計算の合わない事が多く、期待にそぐわない部分があった。

 それを踏まえた上でも、ここまでのプレイはとても面白い体験だった。意味不明な渋滞や、水資源の枯渇によりどうにもならなくなるなどの理不尽もあったが、ひとつひとつ、解決策を見つける度に、よりよい新たな都市を構築できるようになっていて、シミュレーションゲームとして非常に大きな手応えを感じている。

 新たに実験的な都市を作ってみることでも、また新たな発見がある。例えば、水源が枯渇して水の供給が不可能になる問題に対しては、下水処理場と、ろ過装置付きの上水ポンプを密着配置することで対応が可能だ。地下に貯まる汚水を浄水再利用することになるので、無限に水の供給が可能になるのだ。

 あるいは都市が要求する様々なものを、別の都市にアウトソースすることを考えてみよう。労働、買い物、各種インフラ、警察・消防・医療、ごみ収集など、本作では都市1つを動かすための様々なものが連動しているから、多彩な形があるだろう。美観重視の街を目指すのもいい。ひとつやふたつ、完璧な都市を作れたと思っても、まだまだ別の形を目指せるはずなのだ。

 そういった本作の性質を考えると、あまり急いでプレイして多くのものを見逃したまま「やりきった感」に包まれてしまうのはもったいない。じっくり日数をかけ、市民ひとりひとりの動きや、都市メカニズムの働きをよく観察しながらプレイすれば、まだまだ深いところに楽しみを見いだせることだろう。

 本作は「傑作」というには、もひと押し完成度を高めてほしい部分もあるが、じつに面白いゲームであることは間違いない。今後は「シムシティ4」や「シムズ」シリーズのように拡張パックで遊びの幅が広がっていく部分も大きいだろうし、末永く付き合っていきたいものだ。

【スクリーンショット】
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(佐藤カフジ)