(2013/3/8 00:00)
株式会社MSYは、RazerのXbox 360/Windows用ゲームコントローラー「Razer Sabertooth」を3月28日より発売を開始する。
Xbox 360コントローラーは、マイクロソフトによる純正品の完成度が非常に高く、ライセンス製品は専用のチップを埋め込む必要があってコスト高になるため、互換品のバリエーションが少ない。近年、ゲームコンソール用デバイスに力を入れているRazerにとっても、本製品は「Razer Onza」に続き、ようやく2モデル目のXbox 360用コントローラーである。
販売元のMSYによれば本製品は、販売価格4,000円~5,000円程度だった前モデル「Razer Onza」を完全にリプレイスするものだそうだ。そこでまず気になるのは本製品の価格だが、「Onza」から一気に倍の価格となり、9,980円。純正コントローラーが3つも買えてしまう高さである。
Razerとしてはまた一段と高級志向にシフトチェンジしたことになるが、果たしてそれだけの価値が本製品にあるのかどうか。それはRazerが本製品についていう、“あまりにも有利になりすぎるとして、トーナメントで使用禁止になるほど最強”との凄まじい謳い文句が真実であるかどうかに掛かっている。まずは基本スペックから見ていこう。
限りなく純正品の感触+6個のプログラマブルボタン
前モデル「Onza」から2倍になった価格が示す通り、本製品「Sabertooth」は単なるモデルチェンジ品ではなく、ほぼすべての面で仕様変更が行なわれている。同じなのは刻印されたRazerロゴぐらいだ。
変更点をざっと列挙すると、全体的な形状の見直し、トリガー、アナログスティック、メインボタン、十字パッドの仕様変更、マルチファンクションボタンの大幅追加、LCDの追加、ケーブルの着脱可能化、豪華なケースの追加、という感じになる。平たくいえば、構成要素の全部に仕様変更が行なわれている。
まず形状の変化。全体的にゴツゴツしていた「Onza」から一転、本製品のシルエットは丸みを増やして、ほとんど純正Xbox 360コントローラーとの違いを感じないほどになった。手触りを純正品に近づいたことで、使い始めの瞬間からスムーズに追加機能の活用を始めることができる。
[A]、[B]、[X]、[Y]のメインボタン部は「Onza」と同じく非常にクリック感の軽い独自スイッチを使用しているが、ボタントップの高さが変更され、純正品相当となっている。「Onza」ではコントローラー表面ギリギリまで埋没した形となっていたため、それはそれで利点があったのだが、誤入力の原因でもあったため、きっちりと各ボタンの存在感を指先で確認できる形状になったのだろう。これも合わせて、本製品のホールド感は純正品に非常に近いものになっている。
これはトリガーとスティックについても同様だ。トリガーは「Onza」の、いかにも拳銃の引き金風だった尖り気味の形状が破棄され、純正品と同様の滑らかな曲線を持つデザインに変更。抵抗も「Onza」のように緩すぎることはなく、純正品に限りなく近づいており、無意識に指が引っかかって誤爆するようなことがなくなっている。
スティック部分も純正品に近い、堅牢なものとなった。「Onza」のウリであった、スプリングテンション調整機構は破棄された。本製品のスティックは、ほぼ純正品と同じ感触だ。オーソドックスな機構となったおかげで、明らかに故障に強くなっている。筆者の個人的な体験だが、「Onza」のスティックは1週間でセンターが甘くなり廃棄せざるを得なかったほどだったので、この変更は歓迎したい。
それに加えてスティック部には、専用のラバートップ部品が付属しており、装着することで高い滑り止め効果を追加することができる。使い込んでツルツルになってしまった純正コントローラーのスティックに慣れていると、別次元のグリップ力を得られる。これは良いものだ。
このようにアウトラインで見ると、本製品は純正コントローラーに限りなく近い仕様をベースとし、その上に独自機能を載せる格好となっている。Razerの設計意図としては、良いところは素直に認めてマネをしよう、ということであろう。しかし「純正品を使えばいいじゃないか」で終わりとならないように、続いて本製品ならではの機能部分に話を進めよう。
追加機能の大きなものとしては、任意のボタン機能を割り当て可能なマルチファンクションボタン(MFB)だ。「Onza」では2個だったところ、本製品では一気に3倍の6個に増加されている。おもしろいのはその配置で、ショルダー部[LB]/[RB]の内側に2つ、そしてコントローラーの背面に4つという設計だ。
ショルダー部の追加ボタンについては、「Onza」では[LB/RB]と[LT/RT]の間に隙間なく並ぶような形で追加されていたため、標準の[LB/RB]とMFBのどっちを押しているかわからない状況になりやすかったが、本製品でのMFBはより内側、意識して指を伸ばさなければ押せない場所に配置されたことがひとつのポイントになっている。
コントローラー背面の4つのMFBは、さらに工夫を感じる形状と配置だ。トリガーを人差し指でホールドする際、ちょうどコントローラーの裏側に中指が来るあたりに、シーソー型の形状をを持つ2ウェイボタンを2個1対、追加してあるのだ。
この配置は秀逸だ。とくに力むことがなければ誤入力の危険がなく、その上で、直感的に押下することができる。感覚的には“中指用のトリガーが追加されたような感じ”である。中指を引き絞る操作と、跳ね上げる操作で2種類のボタン機能にアクセスできる。しかも、本来のホールド感はあまり損なわれておらず、むしろ心地よく感じられるくらいだ。
背面の1対の2ウェイボタンは付属工具を使って取り外すこともでき、いったん外してしまえば、本製品のホールド感はますます純正品の感覚に近くなる。着脱は10秒前後で完了できるので、プレイするゲームの種類に応じて変更すれば良い。
各MFBの機能はコントローラー単体でプログラムできる。中央下部にあるLCDの、右側のボタンを押すと「Program mode」が起動し、その状態でMFBのどれかを押し、同時に標準ボタン/トリガーのどれかを押すと、後から押したボタンの機能が該当のMFBに割り当てられるという仕組みだ。
基本的な仕組みは「Onza」と変わらないが、変更結果がLCDに表示されるおかげで使い勝手はぐっと向上している。そのほかLCD部は十字パッドの上下で「振動ON/OFF」、「バックライトON/OFF」、「テストモード」にアクセスできる。
テストモードというのは、スティックの入力量を0~100の数字で表示する機能だ。これが深刻に必要になるのは、スティックの入力がおかしくなったときだろうが、本製品の堅牢化したスティックで、それがいつになるかはわからない。「Onza」ではスティック周りの不具合が多数報告されていたので、プレーヤーに安心感を与えるための機能であろう。
もう1点、本製品で大きく改良されているのは十字パッド部分だ。「Onza」同様に4方向が独立ボタンのセパレートタイプだが、形状が完全に見直されている。
「Onza」の十字パッドボタンはギチギチに詰まっているせいで、押しこむ際に気をつけないと複数の方向を同時に押してしまうような事が多かった。それが本製品では、同じくセパレートタイプであるものの、各ボタンが小型化・ストロークが短くなり、ポチッと確実に押せるようになっている。クリック感は純正品の[A]~[X]メインボタンに近い。ようやく、純正品を超える十字パッドが提案された印象だ。
仕様変更のトドメはケーブル部分。なんとケーブルの着脱が可能になった。しかも本体側はオーソドックスなUSBソケットタイプではなく、独自設計の特殊端子である。昔良く使われていたPS/2キーボード端子をふたまわり小さくした格好の丸い端子に、さらにネジ機構つきのキャップが被せられているという構造だ。キュッと締めれば万力で引っ張ろうがまず抜けそうにない頑丈さである。
しかし、そもそもケーブルを取り外し可能にしたのはなぜだろうか。本製品に無線インターフェイスはないので、使用時は必ずケーブルを取り付けておく必要がある。おそらく、大会にマイコントローラーを持っていくタイプのプレーヤーに向けた仕様だろう。“有利すぎて使用禁止”になっていなければ、の話だが。
付属の専用キャリングケース(かなり上等なものだ)と合わせて使用すれば、運搬時にケーブルをグルグル巻きにせずにすむため故障リスクが減る。さらに、試合前に本製品を取り出すさまが、まるで“ケース入り拳銃”のようですごくかっこいい。
おそらくそれだけのためにこの仕様になっているのだが、それで価格が1,000~2,000円は上がっているのではないかと考えると少々複雑な気持ちではある。