★PS3/Xbox 360ゲームレビュー★

緻密に再現された南の国に革命の嵐を巻き起こせ!
ド派手で爽快なアクション大作登場!

「ジャストコーズ2」

  • ジャンル:アクションアドベンチャー
  • 開発元:Avalanche Studios
  • 発売元:スクウェア・エニックス
  • 価格:7,980円
  • プラットフォーム:PS3/Xbox 360
  • 発売日:6月10日
  • プレイ人数:1人
  • CEROレーティング:D(17才以上対象)

 スクウェア・エニックスはプレイステーション 3/Xbox 360用アクションアドベンチャー「ジャストコーズ2」を6月10日に発売する。ゲームの舞台は東南アジアにある架空の国「パナウ共和国」だ。本作はいくつかの島からなるこの国を「GTA」シリーズのような、オープンワールドとして再現している。東京都の約半分はあるというこの広大なフィールドで、プレーヤーは大暴れするのだ。

 パナウ共和国は雪をかぶった山脈から青い海、近代的な都市、のんびりとした農村と、場所によって様々な顔を見せる。一見、美しいこの島は軍事政権の大統領によっての支配されている。小国に不似合いな軍事基地がいくつもあり、飛行場やロケット打ち上げ施設、化学工場などもある。さらに大きな力を持った反政府勢力が潜伏し、一触即発の状態にある。この火薬庫のようになっている島で、プレーヤーはどんな嵐を巻き起こすのだろうか?



■ 軍事政権に支配された小国を開放せよ! 超人的な身体能力で大活躍

主人公リコ・ロドリゲス。左手のグラップリングフックで超人的なアクションをし、あらゆる乗り物を乗りこなすエージェントだ
東京都の約半分という面積のパナウ共和国。全てがゲームフィールドとして再現されている

 「ジャストコーズ2」は「ジャストコーズ」の続編となる。主人公は前作から引き続き、凄腕のエージェント、リコ・ロドリゲスだ。今作では全く新しい舞台、新しい勢力、新しいストーリーが展開し、グラップリングフックでのアクションなど新要素が多数盛り込まれており、本作がシリーズ初挑戦でも問題ないが、前作をプレイしていると、登場人物の再会など、ニヤリとさせられるポイントがある。

 今回、リコが向かうのはパナウ共和国だ。この国は大統領パンダック・パナイの軍事力を背景とした支配下にある。様々な場所に彼の像が建てられ、島のあちこちに小国にしては多すぎる軍事基地、軍港が作られている。小さな農村にもプロパガンダ用の放送をする施設が作られ、ライフルやマシンガンで武装した兵士が、住民達を威圧している。放送局は全て大統領への賛美を繰り返し、不利な情報は全てシャットアウトされている。

 リコはエージェントとしてパナウ共和国に降り立つ。彼の任務はこの国に潜む反政府勢力と協力し、政府の手からパナウを開放することにある。リコは本当の身分を隠し、国際的な殺し屋「スコーピオ」と名乗り、反政府勢力に接触する。現在この国では3つの組織が活動している。1つ目は非合法なビジネスを行ない市街地で活動する「ローチ」、2つ目は社会共産主義を掲げ様々な破壊工作を行なう「リーパー」。そして3つ目が宗教的な結束力で外国の技術や文化を嫌う「ユーラ・ボーイ」だ。

 各組織共に過激で、エキセントリックだが、リーダーはさらに輪をかけた変人揃い。ローチのリーダー「ラザク・ラズマン」は怪しい商人で、親しげな口調が腹に何かを秘めているのを感じさせる。リーパーのリーダーはギャング組織の女ボスという感じの「ボロ・サントシ」。ねっとりとした色っぽい口調でリコを誘い、辛辣な政府批判をささやく。ユーラ・ボーイの「スリ・イラワン」は過激な民族主義者だが、実は熱狂的な仲間を利用しつつ、陰謀を張り巡らせているようだ。

 どの人物も「国のために立ち上がる正義の戦士」といった雰囲気はなく、私欲のために動いているよう見え、各組織同士も対立している。しかも各勢力に力を貸す大国の影もちらつく。東南アジアの小国であるパナウ共和国に大国が興味を示す何があるのか? ストーリーに引き込まれる。3つの組織は別々に活動しているが、リコの活躍で勢力を増していく中、どう動くかも興味をそそられるところだ。

 「ジャストコーズ2」ではストーリーと共にリコのアクション、特に“グラップリングフック”を使ったアクションに注目だ。リコは左手にフックのついたユニークなガントレットをつけている。これがグラップリングフックで、フックにはワイヤーがついていて、建物などに撃ち込め、巻き取ることでリコの身体を瞬時に移動させることができる。フックを撃ち込んで高層建築をよじ登ったり、進行方向の木や地面に撃ち込むことで高速移動が可能だ。

 走っている車にフックを撃ち込み飛び乗ったり、襲いかかってくるヘリに撃ち込み、機体に取りつきパイロットを倒してヘリを奪う、ということすら可能なのだ。敵に巻き付けて引きずり倒すこともできて、映画「スパイダーマン」の様なスピード感のあるアクションが可能になっている。さらに、常に装備している「パラシュート」と併せることで、より多彩な動きが可能になっている。

 高いところから飛び降りパラシュートで速度を殺し、グラップリングフックを撃ち出して素早く移動、走っている車の屋根に移動し、橋の上まで来たらダイブ……などなどプレーヤーのアプローチでリコは超人的なアクションを行なう。「こんな事もできるのかな?」と次々と試してみたくなるポテンシャルを持っている。動画で自分のアクションを自慢するようなプレーヤーも出てきて欲しい。


左から、ローチのリーダー「ラザク・ラズマン」、リーパーのリーダー「ボロ・サントシ」、ユーラ・ボーイの「スリ・イラワン」。どの人物も革命に燃えるというよりも、何か目的があって勢力を拡大しているような“怪しさ”を感じさせる
グラップリングフックの超人的アクション。高いビルもぐんぐん上り、敵との距離を一気に詰めたり、敵に撃ち込めば引きずり下ろすことも。車やヘリに撃ち込んで肉迫し、奪うことすら可能だ
乗り物から飛び降りたり、崖から飛び降りて広げられるパラシュート。バイクやボート、飛行機など、リコは様々な乗り物を乗りこなせる


■ 破壊によって混沌の嵐を巻き起こし、この国の革命の炎をより強く燃え上がらせろ!

銃座からガトリングを取り外して建物を攻撃。カオスを入手できる
ミッションクリア時には大量の「カオス」が得られる。次のミッションや、ブラックマーケットでの商品がアンロックされていく

 「ジャストコーズ2」ではゲームのストーリーを進める「エージェントミッション」と、各勢力に荷担する「勢力ミッション」があり、これらに挑戦することでゲームが進行していく。このミッションをアンロックするには一定の「カオス」というポイントが必要になる。

 カオスは、言ってみればこのパナウ共和国の「混乱度」を示すパラメータである。リコは様々な方法でこのカオスを稼ぎ、パナウ共和国の混乱の度合いを上げていく。カオスはさらに、各勢力の活動拠点が増える「拠点制圧ミッション」やより強力な装備を購入できる「ブラックマーケット」といった要素もアンロックできる。カオスを稼ぎ挑戦するミッションを増やし、ミッションをクリアしていくことで、パナウ共和国を革命へと導いていくのだ。

 カオスはミッションをクリアすることで得られるが、ミッション以外でカオスを稼ぐには破壊工作をしたり、様々な拠点を占領する必要がある。特に多くのカオスが稼げるのが、軍事施設だ。カオスを稼ぐため、リコは単独で軍事施設の壊滅に挑む。このハチャメチャな戦いは、実は1番「ジャストコーズ2」らしいのではないかと、筆者は思っている。

 本作には「ヒート」という警戒度を現わすパラメーターがある。これは政府軍のリコに対する警戒度で、政府軍を撃ったり、施設や車両を攻撃するとヒートレベルが上昇し、撃退していくごとにより強力な抵抗に遭うことになる。カオスを稼ぐための戦いでは、このヒートがどんどん上昇していく。しかし実は、ヒートレベルが上がったときがチャンスなのだ。ヒートレベルが上がると、政府軍は装甲車やヘリを差し向けてくる。特にヘリを奪うことができれば、リコは強大な力を得ることができる。

 ヘリを奪うには、飛んできたヘリが近付いた隙を狙ってグラップリングフックを撃ち込めばいい。ヘリに何人か兵士が乗っている場合は、ヘリにフックでぶら下がったまま彼らと撃ち合う。そしてパイロット1人になったら、格闘で操縦席を奪う。パイロットをけ落としたら反撃タイムだ。攻撃ヘリの武装は強力で、軍事基地も火の海に変えられる。備えられている地対空ミサイルを破壊できれば恐れるものはほかのヘリくらいだ。

 基地や集落などの拠点には、「支援物質」が隠されている。支援物質は集めることでキャラクターの耐久力が向上するアーマーパーツや、武器や乗り物をカスタマイズできるパーツなどだ。破壊可能なものを全て破壊し、基地内に隠されている支援物質を回収することで、リコは拠点を占領できる。占領するともう政府軍は現われず、ボーナスのカオスが得られる。

 このカオスを稼ぐルールは大きな爽快感と、悪者を演じているような背徳感がある。見えるもの全てをぶち壊す、というのはとても派手で、楽しい。まさに国そのものに“混沌”をもたらすこのルールは、とてもユニークだと感じた。ヘリが来たらすかさず奪ったり、敵に囲まれたときはグラップリングフックで遠くへ逃げたり、ヒートを減らすために車を奪って距離を取るなど、ゲームをプレイしていくことで、戦いに馴れてくる。プレーヤー自らがエージェントとして経験を積んでいくのが面白い。


グラップリングフックでヘリにしがみつき、乗組員を倒して、奪う。リコの超人的な能力が、ピンチをチャンスに変えるのだ
建物を爆破しカオスを稼ぐ。中央は施設にいるリーダーで彼を倒すと士気が下がり、カオスが得られる。建物の場合、少し破壊可能なものとそうでないものがわかりにくい場合も
基地や集落にある支援物質を全て回収し、破壊可能なものを壊すとその拠点を占領できる。右は大統領のプロパガンダ施設で、壊すと大量のカオスが得られる
カオスと共に得られる資金で、ブラックマーケットから様々なものが買える。海外ではDLCとして配布されていたアイテムも、日本語版では最初から商品として入っている。右はその1つ、操縦性の高い「カオスパラシュート」


■ アクション映画の美味しいところ取り!? ふんだんに盛り込まれたド派手なシチュエーション

戦闘機で採掘施設を攻撃! スケールの大きなミッションも
ヘリで目標に近付く。スピード感のあるシチュエーションだ

 次に、ミッションの特徴を語りたい。ミッションでは様々な指令をこなしていく。本作のミッションの最大のセールスポイントは「派手さ」だと思う。本作は最初のミッションからいきなりド派手な戦いが展開し、プレーヤーの度肝を抜く。

 ゲームがスタートしたと思ったら、いきなり単身で軍事基地に突撃する羽目になり、銃弾をかいくぐり、銃座につけられたガトリングガンをもぎ装甲車やヘリを相手に立ち回り、基地の大爆発を後ろに脱出する。さらに休む間もなく巨大なビルの屋上にいる工作員と接触しなくてはならないことになり、ガラスをまき散らしながらビルの壁面を上がり、ヘリを奪って大暴れ、ジープやバイクで追いすがる軍を、車の屋根の上で迎え撃つのだ。

 思わず笑ってしまうほど派手なシーンが連続していくこの展開が、本作のオープニングミッションだ。この後、リコは自由に広大なフィールドを移動し、様々なミッションや破壊活動を行なっていく。スケールはどんどん大きく、シチュエーションは過激になる。「ジャストコーズ2」はものすごい勢いとパワーを堪能できる過激な作品だ。

 拠点攻略ミッションでは、各勢力の工作兵と共に軍事基地を攻める。様々なところで足止めを食って、「おい、お前が排除してくれ」と言われてしまい、ガトリング機銃の前に飛びこんだり、装甲車と単身戦わなくてはいけなくなる。しかも、自分の身だけではなく、工作員も守りつつ戦う事が求められる。拠点攻略ミッションは戦闘ヘリなど「ボス敵」が出てくるのも面白い。

 勢力ミッション、エージェントミッションのシチュエーションは多彩だ。敵の装甲車をかっぱらって勢力側に届けたり、要人暗殺、裏切り者の始末、破壊工作、放送塔の破壊……本作には過激なミッションがたくさん用意されている。これらのミッションを「ジャストコーズ2」ならではのアプローチでこなしていくのが楽しい。要人が乗っているリムジンを奪うのに、バイクに飛び乗りいきなり崖にダイブ! パラシュートを広げ、崖下のリムジンにグラップリングフックで飛び乗り、車の屋根の上から護衛を始末し逃走、という感じだ。もちろんこれ以外のアプローチも可能だが、「最短距離を突っ走る」という乱暴なやり方が実に本作らしい。

 軍事衛星を破壊するミッションはたった1人でロケット発射基地に殴り込む。ロケットは3基もあり、その1番上の衛星を破壊しなくてはならない。戦闘ヘリを奪うのが最も効率的だが、地対空ミサイルがリコを阻む。しかも何とか3基を破壊すると、実はもう1基あったことが明らかになるのだ! 最後のロケットは既に秒読み段階だ。リコはロケット基地に隠されていた戦闘機を奪い、上昇するロケットへ向かって機体を向ける。アクション映画のクライマックスシーンのような派手なミッションである。

 この他にも、戦闘機を奪って海底油田施設を破壊したり、走っている車に仕掛けられた爆弾を解除したり、ヘリから車に飛び乗ったり、いきなり“ニンジャ”と戦ったりする。その多彩で、悪ノリ気味なアイデア、派手なシチュエーションはぜひ体験して欲しい。ミッションはチェックポイントが用意されており、倒されても途中から再挑戦できるという点もうれしい。


最初と2番目のミッション。単身基地に突撃し、その後ビルの上のエージェントを救出する。この後、カーチェイスシーンもあり、本作の「派手さ」を実感できる
ロケット発射施設攻撃。人工衛星を打ち上げようとするロケット基地を強襲。ラストは戦闘機を奪って、発射されたロケットを追う
左は拠点制圧の際に現われるラスボス。中央は狙撃シーン。右は車につけられた爆弾を走ったまま解除するシーンだ
何故か登場するニンジャ。目標の車に飛び乗るため運転していた車の屋根によじ登ったり、リムジンを奪うために戦ったり、アクション映画のスタントシーンのような場面が山のように盛り込まれている

 「ジャストコーズ2」にはさらにレースチャレンジや、様々な場所に隠されている収集アイテムといったゲーム要素がある。「GTA」シリーズなどのオープンフィールドタイプのゲームの場合、最初はプレーヤーの行動範囲が限られていることがあるが「ジャストコーズ2」は違う。いきなりどこにでもいけ、拠点に攻撃ができる。

 だからこそ、戦闘目的でない“観光”も楽しい。ジェット機を奪って遠くまで出かけ、気が向いたところで脱出し、バイクを奪って農村を疾走、つづら折りの道を進むのが面倒くさくなって、グラップリングフックでショートカット、ヘリを奪って雪をかぶった山を越え、モーターボートを奪って南の国ならではの青い海を満喫……といったこともできる。

 海沿いの小さな町でたたずむのも、気の向くまま大都会のビルをよじ登るのも楽しいし、日が昇り、沈んでいく。刻々と変化する景色を眺めるのも風情がある。「ジャストコーズ2」はこの南国風の景色が広がるため、他のオープンフィールドタイプのゲーム以上に観光の楽しさがあると感じた。

 一方で、これだけの広いフィールドと、多彩な要素を盛り込んだからかもしれないが、破壊できる建物とそうでないものが見分けにくかったり、地上戦での駆け引きが大味気味だったり、戦闘ヘリが強すぎるため頼りがちになってしまうところなど、細かく“ゲーム”として見るともう少し煮詰められたかな、と思う部分もある。

 とはいえ、これだけのスケールを持ち、爽快感を感じるゲームはそうはない。ミッションに込められた様々なアイデアと、大げさすぎる展開はニヤリとさせられる。開放的な明るい南の国で大暴れ、主人公の行くところ、いつも大爆発である。アクション映画が好き、という人に強く、強く薦めたいゲームだ。


雪に覆われた高山地帯から、青い海まで、パナウ共和国は非常に豊かな表情を見せてくれる
バイク、車、ヘリ、時間によっても印象は変化する。どこに何があるかを把握することで、拠点の攻略も楽になる。国全体がゲームフィールドという本作は、実際に“歩いて”みることでそのスケールが実感できる

(C) 2010 Square Enix Ltd. All rights reserved.
Published by SQUARE ENIX CO.,LTD. Developed by Avalanche Studios.

(2010年 6月 9日)

[Reported by 勝田哲也 ]