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「英雄島」



 GMO Gamesが運営する「英雄島」は一見、オーソドックスな2DMMORPGに見えるが、実は中国では昨年サービスが開始されたばかりの新作だ。本作を一言で現わすならば「カオス」。しかもただのカオスではなく、そこには溢れかえらんほどのサービス精神が凝縮されているのだ。

 本作の舞台は、人類が滅亡してから数億年後の未来。この時代には、人間に敵意を抱くロボットが世界を支配している。科学の力で生き残った人類は、とある島で「ユニオン」と「エンパイア」の2つの勢力に分かれて国を作り、ロボットと戦っている。

 ロボットが敵のシリアスなSFのように思えるが、実際にはほのぼのとした牧歌的な風景に拍子抜けするだろう。緑いっぱいの島にいるのは、「これがロボット?」と思わずにはいられないファンタジックなモンスターたち。いきなり方向性がカオスだ。

 しかしこれはほんの序曲にすぎない。このレビューでは、外から見ただけでは分かりづらい「英雄島ってどういうゲームなの?」という部分をがっつり紹介していく。なお、ファーストインプレッションで詳しく紹介した「聖地」戦については、今回は軽く触れるにとどまっている。「聖地」戦の詳細は、こちらの記事を参照して欲しい。


「ユニオン」の本拠地「本城」にある役所。2Dならではの美しい風景だ




■ 「英雄」システムでいつでもどこでもクラスチェンジ

「英雄」はどこでも切り替え可能。レベルが上がると覚えられる数が増えていく

 本作は2D見降ろし視点のMMORPG。プレーヤーは「ユニオン」か「エンパイア」のどちらかを選んでキャラクターを作る。「ユニオン」は魔法が発達した国で青をイメージカラーとした優美な国。「エンパイア」は蒸気文明が発達した独裁者の国で、赤をイメージカラーにした剛健な国。国による能力の差はないので、好きなイメージの国を選べばいい。筆者はβテストを「エンパイア」で体験したので、今回は「ユニオン」に所属してみた。

 簡単なチュートリアルで、最初の「英雄」とペットをもらえる。「英雄」システムは、本作の戦闘を特徴づけるシステムだ。本作には他のMMOのようなクラスとか職業といった概念がない。その変わりに3つの属性を持つ「英雄」を自らに憑依させてその力を使う。属性は近接攻撃の「物理系」、遠距離物理攻撃の「射撃系」、魔法攻撃の「魔法系」の3つ。1つの属性の中でも「英雄」の種類によってかなり技にバリエーションがある。

 例えば、最初にもらえる「剣神」という物理系の「英雄」を憑依させる。すると、回転しながら範囲を攻撃する「ハリケンスラッシュ」、設置すると一定時間近くのキャラクターのHPを回復しつつ周囲にダメージを与える「命のトーテム」、クリティカル確率を上昇させる「凶暴化」、四方八方から連続攻撃を加える「阿修羅」の4つのスキルが使えるようになる。

 同じ物理系でも「邪神」という「英雄」では、ダメージを与えつつスタンさせる「地の牙」、視界を妨害する「砂嵐」、敵にウィルスを仕込む「バイオ」、大ダメージと共に攻撃と移動速度低下の弱体効果をかける「グランドスラム」と、行動妨害系の技が揃っている。また、英雄にはそれぞれに「英雄特性」がある。「邪神」ならHP上限が1%あがり、攻撃を受けた場合相手が10%の確率でスタンするといった、英雄独自の効果が付与される。

 これらの「英雄」を習得して最大2つまで同時に憑依させることで2系統、8つの技が使えるようになる。複数の英雄を覚えておいて、狩り、ボス、対人戦などの状況に合わせて最適な技に切り替えていくことができる。ただし、これらのスキルは覚えただけではダメで、使用してレベルを上げていかなくてはならないので、ある程度ターゲットを絞っていかなくてはならない。


「剣神」の便利な範囲攻撃「ハリケンフラッシュ」周りの味方全員のHPを回復してくれる「命のトーテム」
敵にウイルスを送り込む「邪神」の「バイオ」。感染した敵が死ぬと周囲の敵にダメージを与える射撃系の英雄「女獣」の「神狼降臨」は神狼を呼び出して使役するスキルだ




■ 心強い相棒のペットを育てて強化しよう

初期状態のペットは全員同じ形で、名前も「赤ちゃん」と共通。名前は好きなものへ変更できる

 もう1つの要素、ペットについては、すでにかなりのバリエーションを見ることができた。最初にもらえるペットは全員同じ形だが、そこから育て方によって姿や能力が変わっていく。

 心強い狩りのパートナーであると同時に、課金アイテムの「自動拾得の証」があれば、自動的にドロップアイテムを拾い集めてくれる。筆者が使った「土の神獣カード」は、レベルを上げていくと自動的にもらえるプレゼントに入っている、誰でももらえるカードだ。使うと、ペットはなんとなくどこかで見たような姿に変わる。

 ちなみに1日最大3回まで受けることができる「輸送クエスト」の報酬としてペットやカードがもらえることがあるらしいが、残念ながら筆者は入手する事ができなかった。なお、このペットやカードはユーザー間で取引可能なので、交易所から購入することもできる。

 また、ペットをレベル30まで育てると、進化させることができる。しかし、ペットのレベルが上がってくると、レベルに合わせた敵を倒さなければ経験値が入り辛くなる。このためプレーヤーも同時に強くなっていかなくては厳しい戦いになってしまう。


「土の神獣カード」を使うと形が変化フィールド上の拠点となる町には、いろいろなペットをつれたプレーヤーが集まる
輸送クエストは、輸送車を連れていくつかのポイントを回るというもの輸送クエストは適性エリアで1日3回のみ受諾可能




■ 基本は放置プレイでオッケー。お気楽BOT狩りと本気の対人戦

自動戦闘の設定画面。回復ポーションを飲むタイミングや、ペットの回復タイミングを設定できる

 ここで本作のバトルシステムを紹介しよう。基本は自動的にセットされた8つのスキルを使って戦う。もちろん手動で戦う事も可能だが、おそらくほぼ全員のプレーヤーが最も長い時間お世話になるのは、自動攻撃モードだ。自動攻撃モードは、ボタン1つで勝手に攻撃をし続けてくれるモードだ。いわゆるBOTだが、本作は何事にも放置推奨なので、画面の前にいない時には大量のポーションを抱えて自動戦闘にしておくことができる。

 ちなみに自分とペット以外にも、捕まえたモンスターを調教した自分の兵にしたり、スキルで呼び出すことのできる神獣や精霊を戦わせておいて、自分は座って見物する事もできる。フィールドの人気狩り場は、放置しているプレーヤーとそのペットたちで賑わっている。現状ではまだそれほど開放エリアが広くないにも関わらず(地図を見ると下の方に広大な空白地が広がっている)、同レベル帯に複数の敵が用意してあるために、狩りの選択肢も多い。しかもモンスターのリポップはほぼ倒すと同時というハイスピードなので、レベル上げに使う雑魚に関しては、奪い合いになる心配もない。

 非常に便利な自動攻撃だが、設定できるのは回復ポーションを使うタイミングだけで、後はスキルスロットにあるスキルを1から順番に使っていくだけなので、対人戦が発生する地帯にまで使用するのは少々危険だ。しかも本作では、到るところに対人戦が発生する要素がある。例えば、ペットシステムの所で紹介した「輸送クエスト」は、相手勢力のプレーヤーに邪魔される可能性がある。「労働者の鉱山」というダンジョンは、出入り口が「ユニオン」と「エンパイア」の2方向にあり、中でモンスターを取り合う対人戦が発生する可能性がある。

 もちろん他国のフィールドへも侵入可能なので、フィールドも対人戦エリアになりうる。特にレベル26~40までの狩り場「ゆうやけ牧場」と「最前線」は2つの国からの道が交差する場所にあるため、大規模な対人戦が発生しやすい。そんな状態なので、今後ゲームが成熟して高レベルプレーヤーが増えていくにつれ、放置に伴うリスクは増していくだろう。

 数ある対人戦要素の中でも、所属している勢力に関係なく、レッドとブルーの2チームに分かれてお互いの砦を奪い合う「聖地略奪戦」は人気のコンテンツだ。「聖地」にまつわるコンテンツは他にもあるが、現在対人戦ができるのは「聖地略奪戦」だけで、勝てばここでしか手に入らない素材やアイテムが手に入る。特に武器や防具の生産を進めようと思ったら、ここで手に入る武器と防具の「製造図案」が欠かせない。さらにメインクエストでも、何度も訪れる場所なので、対人戦に興味がないプレーヤーも訪れる。対人戦をやりたくて仕方がないプレーヤーにとっては、格好の戦場というわけだ。


人気のある狩り場は、まさに戦場の賑わい。だが敵の沸きが早いので、ほとんど休みなく狩り続けることができる


「労働者の鉱山」には、集めた「砂金」を経験値に交換してくれるNPCがいるフィールド上の拠点となる町には、いろいろなペットをつれたプレーヤーが集まる




■ 強くなるために「ギルドスキル」と「ギルドクエスト」を有効活用

ワープタワーに待ち受ける、対人戦の猛者たち。どうせならパーティーを組んで入りたいところだ

 レベルを上げる方法は狩りだけではない。まずは前述の「輸送クエスト」、そして「略奪戦」や「防衛線」などの「聖地」コンテンツ、「労働者の鉱山」で砂金を集めれば1日10回まで経験値と交換してくれるので、戦わずに育てることも不可能ではない。これらのコンテンツはほとんどソロでプレイ可能なので、野良でパーティーを組む機会はほとんどない。だが、対人戦を楽しみたいなら、ギルドへの加入をオススメする

 というのも、ギルドにはメンバーのみが恩恵を受けることができる「ギルドスキル」があるからだ。さらに「ギルドクエスト」という経験値稼ぎにも使えるクエストがある。この「ギルドクエスト」をこなすと、ギルドへの貢献度が上がり、専用のアイテムが報酬でもらえる。ギルドへの貢献度が高いプレーヤーは、個人用の「ギルドスキル」も覚えることができる。「ギルドスキル」を上げるには人数が必要なので、人の多いギルドの方が有利だ。しかし人数が多くなると、個人スキルの恩恵を受けにくくなる。

 「聖地略奪戦」に必勝の態勢で挑むなら、ギルドに入って息の合う仲間とパーティーを組んでの参加をおすすめしたい。ソロでの参加ももちろん楽しいが、チームで参加するとソロにはない戦略が生まれ、さらに複雑な楽しみ方を見いだせる。もちろんフィールドで偶発的に発生するRvRも同様だ。ギルドの加入申請は、時折聞こえてくる募集のシャウトに応じてもいいし、本拠地のギルドランキングの掲示板からも行なうことができる。


「ギルドクエスト」は、本拠地にある「バー」で受けることができる「バー」ではギルドのランキングを確認することもできる




■ やりこみ難易度はピカイチ! 様々な要素を持つ「生産」

生産画面。材料は少ないのだが、その少ない材料を入手するのは簡単ではない

 生産は、どちらかというとやりこみ要素の色合いが濃い。採集5種類、製造12種類、加工1種類と数が多く、上げるには各種の条件があるため全部の装備を自作で賄うのは現実には難しい。生産のための材料は、フィールドで探知機を使った採取のほかに、課金アイテムの「土地契約書」で借りる土地に施設を建ててそこで集めることもできる。

 契約した土地に「鉱山」、「炭鉱」、「伐採」、「牧場」、「農場」のいずれかから欲しい素材が取れる施設を建てると、1度で最大500個の資源が手に入る。この時、自分で現地に赴いて採れば500個すべてが自分のものになるが、人に採ってもらうこともできる。この場合、資源の一部は手伝ったプレーヤーのものになる。

 筆者が実際に牧場で試したところでは、制限時間60分のうち自分で採取したのは10分程度で残りは入ってきた人に任せたのだが、後からゲーム内メールで送られてきたぶんも含め352個を獲得できた。フィールドでこれだけの数を採取するためには、自動放置でも何時間もかかるので、手っ取り早く材料を集めたい人にはお得なシステムと言えるだろう。

 装備品を作る製造には「魔法」、「物理」、「射撃」の3系統があり、防具はいずれか1系統しか進められない。製造するには素材のほかに武器には「武器製造図案」が、防具には「防具製造図案」が必要となる。これは「聖地」戦の報酬を貯めるか、交易所でプレーヤーから買うか、ログイン報酬やレベルアップ報酬で入手するしかない。さらにレベルが上がってくると、また別の素材も必要になってくる。

 取引可能な生産品は、交易所で販売することもできる。また、ワープタワーで「フリマ」を開くこともできる。価格交渉が行ないたい場合は、こちらを利用してもいいだろう。生産できる品は1つのレベル帯に系統ごとに1しかないので、グラフィックのバリエーションは多くないが、等級によって性能に差が出るのでギャンブル的な楽しさがある。


賃貸可能な土地。現在はレベル2とレベル3の土地がある賃貸した土地に「牧場」を建設。制限時間は60分だ
中に入ると、すでに狩人に駆られたモンスターが死屍累々。このモンスターからアクセサリーの材料になる「骨」を採取できる「農場」では木材を採取できる




■ 親切で、少しノスタルジック。忙しい人でも楽しめるお気軽ゲーム

開きまくるお知らせ窓、デカいフォントで入るお知らせ。ユーザーインターフェイスはもう少し整理してほしいところ

 狩り、対人戦、生産、収集、ペット育成、自宅のデコレートに農作業と非常にコンテンツが豊富な本作だが、豊富すぎて何をすればいいのか迷ってしまうことがある。その辺りのフォローとして、しつこいくらいに表示されるウインドウがプレイの指南をしてくれる。大量にあるアイテムには、獲得方法、使用場所、使用方法が事細かに書き連ねてある。自宅には、常に横につき従って説明をしてくれる管理人がいるし、あちこちを歩き回っているNPCは、Tipsの役割を果たしている。

 クエストは自動移動で目的地に運んでくれるので、道に迷う心配はない。本拠地の移動なら、ワープが使えるのでどこでも一瞬でたどり着ける。チュートリアルを兼ねた初期イベントでは、必要な装備がすべてもらえ、「装備をして話しかける」というクエストや「回復ポーションを買って話しかける」といったクエストで装備も盤石だ。プレーヤーは言われるがままに動いているだけで、勝手にキャラクターが育っていく。だいたいレベル20くらいまでは、そんな風にあっという間に上がる。いたせりつくせりの親切システムだ。

 ただ便利なぶん、チュートリアルが終了した後何をやりたいかをしっかり決めて動かなければ、ただ漫然とレベルを上げるだけのゲームになってしまう。ペットを育てたいのか、装備を整えたいのか、生産を拾得したいのか、20を過ぎたらある程度自分で目標を定めてそこに向かって要素を集約していくようなプレイをしなければ、なんとなく目的もないままとりあえず自動攻撃モードでレベルだけを上げていく、という凡庸なプレイに陥ってしまう。便利な要素が多いからこそ、逆に積極的にプレイにかかわっていく姿勢が重要になる。

 クエストをクリアすると「ププププー」となんとなくノスタルジックでちょっとチープなラッパのファンファーレが鳴る。筆者はこのファンファーレがかなりお気に入りだ。このファンファーレの雰囲気こそが、「英雄島」というゲームを象徴しているように思える。「英雄島」はものすごい大作MMORPGではない。自動攻撃モードを使ったプレイスタイルは、どちらかというとブラウザゲームに近い。だが近年新ブラウザゲームが次々と発表されているのを見ても分かるように、放置をして自動的に育ってくれるというシステムは、忙しい日本人のプレイスタイルに合っている。

 3Dのゲームが多い中では、2Dのゲームは古く感じるかもしれないが、微妙なグラデーションを使った絵画的な背景は3Dにはない魅力があり、2Dゲームが好きというファンがいる。本作でも、海岸沿いの海の青さや、「ユニオン」本拠地の花が咲き乱れる役所など美しさにはっと心奪われる光景がある。普段は別のことをしながら気軽に遊び、時にはべったり張り付いて対人戦を楽しむ。短時間でも遊べるというキーワードを多くのゲームが気にしている昨今、気楽に遊べる本作はむしろ最新のシステムを採用したゲームと言えるかもしれない。

 現在は少々煩雑で、ゲームを古臭く見せる原因となっているユーザーインターフェイスについても、前回の運営スタッフへのインタビューで日本側のノウハウをフィードバックして見やすく改良していきたいと語っていた。それがいつになるかは不明だが、そういった努力を怠りなく続けて息の長いゲームを作り上げていって欲しい。


風景は心洗われる美しさだ


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Heroes Island<英雄島>is Designed and Developed by Shenzen Domain Network Software co., Ltd.
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Exclusively licensed to and published by GMO Games, Inc in Japan

(2010年6月10日)

[Reported by 石井聡 ]