★PSPゲームレビュー★
たった30秒で世界を救える 爽快感あふれる新感覚RPG 「勇者30」 |
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RPGという言葉を聞いて、まず思い浮かぶのが時間。長時間に及ぶ冒険。時間をまったく気にせず、ダンジョンの探索に励んでもいいし、村での買い物に没頭するのもよし。町の住人から情報収集。ワールドマップを自由に移動し、好きなようにモンスターと戦い、好きなように経験値を集め、好きなようにレベルアップをしてから目的地に向かい、悪の根源であるボスに立ち向かうというのがRPGというジャンルの主な流れだ。各アクションを行なうのに制限時間は特に設定されていないものが多い。
マーベラスエンターテイメントが発売した「勇者30」は、従来のRPGとは明らかに違う。タイトルに含まれた「30」という数字が重要な意味を持っている。正確に言うと、30は30秒を示している。その30秒は冒険をクリアするのに与えられたタイムリミットなのだ。
RPGの常識を覆した本作ではあるが、このタイトルにはRPGというジャンルの魅力が凝縮されている。普通のRPGと異なるのは、冒険が進行する速さ。一言で言うと、ビデオデッキの早送りボタンを押しているかのように、高速で進行するRPGなのだ。30秒という非常に短い時間の中で、印象に残る奥深い冒険が楽しめるのか?という疑問に対する答えは「イエス」だ。「勇者30」は、30秒でRPGのベテランの心さえも独り占めにするソフトなのだ。
グラフィックスが粗すぎて、遊ぶ気さえ起きないという声もあるかもしれない。しかし、昔のゲームへの明らかなオマージュであるその粗すぎるドットグラフィックスを克服すれば、「ファイナルファンタジー」に匹敵するような魅力に出会えるだろう。
■ 4つのモードで構成されたコンピレーション
最初から遊べるモードは「勇者30」、「魔王30」、「王女30」の3つだけ。これらのモードをクリアすると、「騎士30」が選択できるようになる |
「勇者30」は、4つ(プラスアルファ)のモードで構成されたRPGコンピレーションだ。メインモードはタイトル通り「勇者30」という、正真正銘のRPG。勇者になり、魔王達の「破滅の呪文」という強力な魔法が実行されるのを阻止するのが冒険の目標となる。
2つ目のモードは「魔王30」。ジャンルはいわゆるシミュレーションRPGだ。リアルタイムで変わる戦況の中で、様々な怪物を召喚しながら、フィールド上の敵を全滅するのが目標となる。
3つ目のモードは「王女30」。これは他のモードとは違うジャンルに属する。RPG要素もあるが、根本的には縦・横スクロールのシューティングゲームで、謎の病気にかかった王様の命を救うために、王女は城を出て、その病気を解決できる素材を集めるというストーリーが展開する。攻撃してくるモンスターを弓矢で撃ちながらステージを進み、ターゲットのアイテムを回収してから、城に戻るという流れとなる。
上記の3つのモードをクリアすると、4つ目のモードである「騎士30」が遊べるようになる。「最初から遊べればよかったのに」と思う人もいるのかもしれないが(自分もそう思った)、実は順番に各モードをクリアする必要があるのには理由がある。
各作品のストーリーは、女神歴という架空のカレンダーの中で進行する。「勇者30」が1番古い物語で女神歴100年に始まる。「魔王30」が女神歴200年で、「王女30」が女神歴300年というように、世界が同じでも、各作品の時代は違う。女神歴500年に始まる最後のモード「騎士30」を最初からプレイできると、前のストーリーがネタバレになるので、時代に沿って遊んでいくことが重要となる。
4つ目の「騎士30」は、コンピレーションの中でもっとも異色なモードで、アクションという部類に入る。騎士となったプレーヤーは、30秒後にフィールド上の敵を全滅させる魔法を唱えている賢者を、モンスターの群れから守り切らなければならない。
■ ポリゴン禁止のドットグラフィックスパラダイス
会話では、キャラクター達が画面に大きく表示される。ドットがさらに際立つ演出だが、レトロ嗜好な人にはたまらない!? |
「勇者30」のグラフィックスは粗すぎるほど粗い。ドットが大きすぎて、キャラクターがズームされる時、その輪郭さえもわからないほど。背景も意図的に低解像度で描かれていて、その手法から生まれるイメージは1980年代のゲームだ。
誤解しないで欲しい。これは批判ではなく、むしろ褒め言葉だ。そのレトロなテイストは「勇者30」の長所の1つだ。若年層はその粗すぎるグラフィックスを受け入れられないのかもしれないが、30歳を超えた僕は「勇者30」のレトロすぎる雰囲気に懐かしさを覚えた。昔の傑作を彷彿とさせるそのグラフィックスは大人のゲーマーの心を温めるようなパワーを持っている。言葉では簡単に説明できない、この気持ちいい感覚を味わわせてくれた開発チームに感謝の気持ちでいっぱいだ。
グラフィックスがシンプルなお陰で、ロード時間はゼロに等しい。最初から最後までディスクへのアクセスがないと言っても過言ではない。30秒という時間を鍵にしたゲームだけあって、ロードがないのはとてもありがたい。リズムが損なわれることなく、30秒のクエストを最大限に楽しむことができる。
■ 「勇者30」 たった30秒でRPGの全てを満喫できる!
魔王達は、クエスト開始時に小憎たらしいセリフを残しながら破滅の呪文を唱える |
まずは、本作のメインとなる「勇者30」モードを詳しく見ていこう。「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」を彷彿とさせるドットグラフィックスで構築されたミニワールドの中で、世界の危機を救う使命を持った典型的な勇者を操作することになる。世界は魔王達の手によって危機的な状況に陥れられようとしている。破滅の呪文で世界の壊滅を企てる魔王達を、勇者であるプレーヤーは阻止しなければならない。
冒険を選択するワールドマップから全てが始まる。最初は1つのクエストしか選択できないが、ストーリーが進めば進むほどクエストの数が増え、分岐点も現われ、隠されたクエストを発見することもある。
クエストを選ぶと、30秒以内に目標達成を目指す冒険の始まりだ。高速(光速?)で進行するバトルを繰り返して村へ。村に着いたら、ある奇跡が起きる。時間が止まる。そう。村にいる間はタイムカウンターを気にする必要がない。住人からの情報もゆっくり集められるし、店の品揃えものんびりチェックできる。
本当にたった30秒でクエストをクリアできるのだろうか?これについては、一概に「イエス/ノー」とは言えない。なぜなら本作に収録されているほとんどのクエストは、“頑張れば”30秒以内でクリアできるようになっているが、中には30秒でクリアするために1秒も余裕のないクエストも存在するからだ。
それではゲームの苦手な人にはクリアできないのかというと、そうではない。実は「勇者30」には、あるトリックがある。お金好きな「時の女神」が、時間と苦闘している勇者にこう提案する。「村の女神像にお金を納めれば、タイムカウンターをフルに回復してあ・げ・る!」。
タイトルに含まれた30は、実は実際の30秒ではない。なぜなら女神像にお金を払うことで、時間を残り30秒まで巻き戻すことができるからだ。ただし、この便利なコマンドを実行するにはお金が必要だ。その上厄介なのが、時間の巻き戻しを実行するたびに、時の女神に求められる金額が倍増する。時間の購入に必要なお金はどんどん増えるので、その金額をいつでも用意できるわけではない。
モンスターとの戦闘で得られるお金は限られているし、そのお金をアイテムの購入にも割り当てなければならないので、時の女神のサービスに頼りすぎるとファイナルボスとの戦闘で重宝する武器を購入できなくなる。時間の巻き戻しと武器の購入をバランスよく行なうのが、本作で生き残るための最も重要なポイントだろう。
クエストの内容は多種多様だが、最終目標はどれも同じ。それは、各マップに必ず存在する敵の城にいるボスを倒すことだ。しかし、最終目的地に直行できるはずはなく、城に向かう前にいくつかのステップを踏んでおかなければならない。
1つ目は勇者のレベルアップ。ランダムに遭遇するモンスターと戦い、主人公を強くする。戦闘では、勇者は自動的に戦ってくれる。戦闘の殆どが1秒程度で終わるので、勇者はあっという間に強くなる。たったの10秒程度で主人公のレベルが5程度まで上がるのは「勇者30」の魅力の1つで、言葉で説明できないくらい気持ちいい爽快感の源でもある。
2つ目のステップは、村での武器や防具の購入だ。強力な武器を持たずにボスに立ち向かうと苦戦するのは間違いない。HPを回復するハーブを売っている店もあるので、こまめに購入したい。ちなみにアイテムは、戦闘中でも□ボタンを押すことで使える。ボス戦に備え、回復アイテムを購入しておくのがベストだろう。
3つ目のステップは目標の達成。冒頭のクエストの目標は簡単で、ボスが潜んでいる城にほぼ直行で辿り着ける。しかし、ゲームが進むにつれて途中で様々なハプニングが発生し、城に行く前に新たな目標をクリアしなければならない場合もある。敵に捕らわれている住人を救って欲しいとか、洞窟の中に隠された宝を回収して欲しいとか、サブミッションの内容はバラエティーに富んでいる。そのサブミッションを遂行することで、ワールドマップの秘密のエリアへ進めるようになることもある。
「勇者30」のワールドマップでは、各クエストで獲得したランクや称号を確認できる。「ちょっと勇者」は、勇者としてまだまだ未熟ということだ | 特殊なクエストがたくさん存在する「勇者30」モード。例えばこの冒険は、セピア色に変わろうとしている世界を救うことが目的となるクエスト | ランダムに遭遇するモンスターとの戦いは1秒程度で終わることが多い。確実にRPG史上最速の戦闘と呼べるだろう |
つまり、「勇者30」のクエストは一本道ではない。フィールドには沢山の秘密が散りばめられており、それを全部見つけるのが本作の楽しみの1つだ。隠しクエストを見つけるためのヒントは、主人公と同行しているキャラバンの人々から得られるので、「勇者30」の全てを体験したいのなら、会話に耳をかたむけて欲しい。
ボスを倒してクエストをクリアすると、報酬として新しい武器が貰える。またリザルト画面では、費やした時間とお金が分析され、その度合いによりランクが決められる。立派な勇者になるためには、いかに少ない時間でクエストをクリアするかという、いたってシンプルな課題を達成するだけではダメだ。
クリアに費やした時間ももちろん大切だが、それと同等にサブミッションの達成や見つけた秘密などもリザルトに影響する重要な要素だ。良い結果を残したいのなら、時間の巻き戻し、アイテムの購入、レベルアップ、秘密の発見、サブミッションの達成、これら全てをバランスよく同時に進める必要がある。
装備の変更は、クエスト選択画面でしかできない |
完成度の高い「勇者30」モードだが、指摘点もいくつかある。1つはマップの分岐点がわかりにくいこと。マップを良く見れば、隠しステージがどこにあるのか察しは付くが、正直に言うと、分岐点の位置をワールドマップにも表示して欲しかった。分岐点は全てのステージにあるわけではないので、分岐のあるクエストを色分けなどでわかり易くして欲しかった。
もう1つはクエストに入る前の、装備を選択するパート。アイテムの説明文が一切ない為、装備品の強さをキャラクターの能力値から判断する必要がある。装備品の特徴についても、名前と色から属性を判断できるケースもあるが、初心者にはわかりやすい説明文が必要だったのではないだろうか。ギャラリーモードではアイテムの説明文を閲覧できるのに、本編中にそれがないのは納得できなかった。
装備といえば、最強装備を自動的に選択してくれる機能も欲しかった。クリアしたクエストにもう1度挑む場合、それ以降のクエストで獲得した装備品は装備不可能になる。再挑戦するたびに毎回、マニュアルで装備品を選択する必要があるので、面倒くさいと感じた。
また、クエスト進行中に装備を変更できないことも気になった。ミッションの前にどういうモンスターがそのステージで待ち受けているのか予想できないため、間違った武器を装備していた場合は、ワールドマップに戻って、装備品を選び直さなければならない。本編中も臨機応変に対応できるように、装備品を自由に選べれば遊び易かったかもしれない。
気になる点もいくつかあるが、まとめてみると「勇者30」モードはこのコンピレーションの最もよく出来たゲームだ。単体で発売されても、納得できるボリュームを持っている。各冒険は短いながらも、RPGというジャンルのエッセンスが凝縮されていると言っても過言ではない。既に述べたように、普通のRPGと唯一違うのが冒険の進行の速さ。その独特な速さ、絶妙なリズムのお陰で、このジャンルが苦手な人でも十分に楽しめるのではないだろうか。
タイムカウンターが減るにつれ、朝から夕方へと景色がだんだん赤く染まる。夜になるとゲームオーバーだ | RPGにおいて欠かせない要素の1つは乗り物。もちろん「勇者30」でも、船などの様々な乗り物が存在する | 敵の城に入るとボスとの戦闘が始まる。ザコとの戦闘でもそうだが、負けると感じた場合はLとRの同時押しで逃げられる |
■ 「魔王30」 ジャンケンのルールを活かしたシミュレーションRPG
最初から「勇者30」モードと同時に進められるのが「魔王30」モードだ。「魔王30」では、ある呪いで醜い姿と化したフィアンセの美貌を取り戻すため、呪いの張本人の行方を捜す魔王の物語が展開する。ジャンルはリアルタイムシミュレーション。といっても、選べるユニットと実行できるコマンドが非常に少ないので、リアルタイムシミュレーションの“ライト版”と言ったほうが正確なのかもしれない。
魔王は、3種類のモンスターを召喚しながらフィールド上にいる敵と戦う。○ボタンでパワー系のモンスター、△ボタンでスピード系のモンスター、そして□ボタンでショット(遠距離攻撃)系のモンスターを召喚できる。これら3種類のモンスターを、パワー系がスピード系に強く、スピード系がショット系に強く、そして、ショット系がパワー系に強いというジャンケンと同じルールに沿って使い分けながら敵と戦う。
魔王から広がる魔法陣は、彼の魔力の大きさを表している。それが大きければ大きいほど、召喚されるモンスターが強くなる。逆に言うと、モンスターを連続で召喚すると魔法陣が徐々に小さくなるとともに、モンスターも弱くなる。というわけで、残った魔力にいつも目を配りながら、そして、周囲にどんなタイプの敵がいるのかを観察しながら、ミッションを進めていきたいところ。
「魔王30」でも、目標(殆んどの場合、敵の全滅)を達成するのに与えられたタイムリミットは30秒だ。もちろん実際の30秒ではなく、フィールド上に設置されている女神像にタッチすることで時間を巻き戻すことができる。敵から獲得したコインを時の女神に納めれば、残り時間は30秒に戻る。ただし時間の巻き戻しすぎると、バトルリザルトの評価が悪くなるので注意して欲しい。
「勇者30」モードと違い、「魔王30」モードの寿命はとても短い。1時間ちょっとで全てのミッションをクリアできるのは残念だった。ストーリーの分岐も2つしかないし、ミッションの内容も殆んど変わらないので、ゲームの流れは少し単調気味に感じられた。
「魔王30」は、コンピレーションの中で1番インパクトに欠けている。しかし、「勇者30」の本当の結末を見る為には「魔王30」のクリアが絶対条件なので、必ず最後までプレイする必要がある。システム的には今ひとつだが、4つのメインモードをクリアした後に遊べるようになるラストモードが本当に最高なので、頑張ってぜひクリアして欲しい。
「魔王30」モードのワールドマップ。メインストーリーの他に、いくつかのサブストーリーが用意されている。その中には召喚獣が手に入るクエストもある | マップにある召喚獣のシンボルに触れると、それをそのクエストで使うことができる。敵の動きをしばらく封じるなど、召喚獣の持っている技の効果は様々だ | 悪影響を及ぼす特殊な石像を壊すことも、ミッションの目標の1つ |
■ 「王女30」 シューティングゲームで気分転換
「王女30」は、コンピレーションの中で唯一RPGとは関係のない、縦・横スクロールの昔懐かしのシューティングゲームだ。主人公は、王様の病気を治すための解決方法を探し続ける父思いの可愛い王女。シューティングゲームと言ってもタイムリミットはいつもの30秒で、城を出てから30秒以内にステージの最後に設置されている目標のアイテムを入手して、城に戻らなければならない。
王女は頼もしい兵士に担がれた台座に立ったまま、ステージの中を縦横無尽に動き回る。攻撃してくる敵をやっつける方法は弓矢。弓矢は、○、×、△、□の4つのボタンを使って放つ。△ボタンが上、○ボタンが右という具合に各ボタンが方向と対応しているので、周りの敵に向かって矢を直感的に撃てる。矢の威力などを高めるパワーアップアイテムもフィールド上に散りばめられているので、見つけたら必ず拾いたい。
またゲームを有利に進められるようになる要素として、「フィーバーモード」が搭載されている。フィーバーモードは、敵を撃破したり障害物を破壊すると増加する「士気ゲージ」がMAXまで溜まると発動。敵からの攻撃を一切受け付けない無敵状態になる。フィーバーモードをうまく活用できるようになると、クリア後に高いランクを獲得できる確率が上がるので、士気ゲージが一気に溜まるように、計画的に周囲の敵やオブジェクトを狙っていきたい。
フィーバーモードの活用など高度なテクニックが要求される場面が多いため、30秒でステージの奥まで辿りつくのは意外と難しい。ここでまた重宝するのが、お金好きな時の女神様からのスペシャルサービスだ。ステージの所々に敷かれた赤い絨毯の上に留まっている間、獲得したコインと引換えにタイムカウンターを回復できる。ケチすぎるとゲームオーバーの画面が頻繁に表示されることになるので、必要なときは赤い絨毯を利用しよう。
時間をテーマにしたシューティングゲーム「王女30」は、とても遊びやすく感じた。シューティングゲームのベテランなら、そのシンプルな流れとステージの構造に不満を抱くかもしれないが、個人的には30秒以内に全てを終えなければならないという絶妙な緊張感に完全にハマった。
唯一の問題はゲームの短さ。「魔王30」と同じく、1時間ちょっとあれば、全てのミッションをクリアできる。分岐点や秘密もあまりなく、クリア後にまた遊びたくなるような要素がないというのも残念なところ。結論を言うと、爽快感溢れるこの「王女30」をメインモードである「勇者30」のクエストの合間に遊んでみると、ちょうどいい気分転換になり、最大限に楽しめる。
城を訪れる住人達に話しかけると、新しいミッションを受けることができる。その中には、王女の弓矢を強化可能な素材が手に入るミッションもある | 苦労して貯めたコインは吸収されるが、赤絨毯の存在は必要不可欠だ。時間切れになるまえに、赤絨毯の上を通過して時間を回復しよう | 殆どのステージは横スクロールだが、縦に進むステージもいくつか存在する。その奥にボスが潜んでいるケースもあるので注意が必要 |
■ 「騎士30」 世界を救う賢者を守るのだ!
上記のモードをクリアすると、新しく追加されるのがこの「騎士30」モード。女神歴は500年。王女の物語から200年後の世界だ。今回の主人公はタイトル通り勇敢な騎士で、彼の務めはフィールドに存在する全ての敵を一掃するための強力な魔法を唱えている賢者を守り続けること。
ジャンルはアクション。方向キーで騎士を四方に動かし、賢者に襲いかかってくるモンスター達を拾った武器で攻撃したり、体当たりするなどして足止めする。もう1つ重要なアクションとして、賢者の手を握り、モンスターの少ない安全なところに連れて行くことができる。フィールド上に散らばっている棒や剣を拾うのにも、賢者の手を握るのにも○ボタンを使用する。
「騎士30」でも鍵を握っているのは時間だ。賢者が大魔法を唱える為に必要な時間は30秒。つまり、タイムカウンターがゼロになった時点で、賢者が魔法を唱え、敵を全滅させる仕組みになっている。騎士の目標はその30秒の間、賢者を連れ歩いたり、敵を気絶させたりしながら、体力的に弱い賢者を守る。簡単そうに感じるかもしれないが、実際にやってみると難しい。例えば、連れ歩いている間、賢者は魔法を唱えられなくなり、タイムカウンターも同時に止まる。むやみに賢者を動かさないことも大切だ。
敵は攻撃だけでなく、特殊な音を鳴らす鐘を打って賢者の魔法を邪魔することもある。その場合は、問題の根源である鐘を壊す必要がある。こういった邪魔者が絶えないステージでは、気の休まる暇もない。まったく攻撃せずに賢者を引き連れて安全なエリアを探すのもよし、同じ場所に留まり敵を気絶させながら賢者を守るのもよし。作戦は様々だ。自分に合ったプレイスタイルで楽しめるのも「騎士30」の醍醐味の1つだ。
個人的には攻撃ではなく、敵から逃げることのほうが殆んどのミッションで効果的だと思った。逆に武器を拾って使うことをややこしく感じた。何故なら、武器を持っている間、賢者の手を握れないので、ピンチの場合、すぐに賢者と安全な場所に逃げられないからだ。
武器を持っている状態で賢者の手を握るには、いったん武器を投げなければならないため(その為にはボタンを押しっぱなしにする必要がある)、その間に賢者が攻撃を受けてやられてしまうケースもあった。そういった理由で、攻撃よりも逃亡のほうを好んだ。別の視点から考えれば、わざと賢者から離れて敵を迎撃したり、強い武器を探しに行ったりするのもスリルがあっていいのかもしれない。
全体的に良くまとまった「騎士30」だが、このモードも1時間ちょっとでクリアできる。やり込み要素といえば、ステージの所々に秘密の武器が隠されていることがあるので、それらを全部探すことくらいしかない。
寝る時間を利用してボムなどのトラップを作ることができる「夜なべ」パート。何も作らずに寝ると、そのぶん体力とスタミナがアップする | 「夜なべ」パートで作ったトラップは、□ボタンで使用する。地面に肉を置くと、恐竜が騎士を追うのをやめるかもしれない | 賢者の魔法の詠唱が速くなる地面もある。敵をうまく足止めできれば、あっという間にクエストをクリアできる |
■ 4人でボスの打倒を競い合う満足のVSモード
ボスを倒すとゲームセット |
メインモードは1人用だが、友達と一緒に遊べるVSモードも用意されている。これもまた中毒性の高いモードで、「勇者30」というソフトの価値がさらに高まる。システム的には「勇者30」モードをベースにし、最大4人のプレーヤーが同じフィールド上でボスの撃破を競い合う。選べるマップは3つしかないが、その広さと町の数、店の充実など申し分ないので、長く遊べるボリュームになっている。
目標はまた、城に潜んでいるボスを倒すことだ。その強力なボスに立ち向かうためには、まず戦闘を通じて自分のキャラクターをレベルアップさせなければならない。獲得したお金で新しい武器を買うのも大切だ。
ストーリーモードと違うのは、店で売っているアイテムの数が限られていること。つまりライバルが武器を購入すると、それは1つしかないため買えなくなるのだ。簡単に言うと早い者勝ちということになる。
このVSモードでしか味わえない要素はもう1つある。ライバルが操作するキャラクターと戦うこともできる。戦闘で負けたほうはレベルが半分になるという残念な結果に。ライバル達のことを気にせず、できるだけ早く城に向かうか、わざと他のプレーヤーの邪魔をしながら進むか、それはユーザーの自由だ。
面白さ満点のモードだが、ゲームのルール、目標をもうちょっと豊富にして欲しかったというのが正直な意見だ。それは、ぜひ発売して欲しい続編で実現すると嬉しい。
選択可能なマップは3つだが、十分な広さと町の数が用意されているので長く遊べる | プレーヤー同士のバトル。負けたほうはレベルが半分になってしまう | 店で販売されているアイテムは、数に限りがある。必要なものはいち早く手に入れたい |
■ メインモードのやり込み要素とクリアした後のサプライズ
各モードは、「ふつう」と「むずかしい」の2つの難易度が用意されている。「勇者30」で「むずかしい」を選択すると村の中でも時間が経過するので、まずは「ふつう」でプレイして感覚をつかもう |
メインモードのやり込み要素として、まず全てのモードに2つの難易度が用意されている。例えば「勇者30」を「ふつう」で遊ぶ場合、タイムカウンターは村に入ると止まる。そのお陰で、残った時間を気にせず、ゆっくり買い物や会話が進められる。
ただし「難しい」レベルを選択した場合、村の中でも容赦なく残り時間は減っていく。そのため、ヒントが隠された住人の文章も急いで読まなければならない。上級者には後者のほうが刺激的だが、初心者やゆっくり文章を楽しみたいユーザーには前者のほうが向いているだろう。
やり込み要素のもう1つは、全ての称号の獲得だ。「勇者30」モードの各クエストには2つの称号が用意されている。例えば「洞窟好き」の称号の場合、名前から察するに洞窟に関係していると思われる。そのクエストを始めると、マップ内に複数の洞窟があることに気が付く。洞窟好きは、洞窟を前に何がしたくなる?その全てを探索したくなるのではないだろうか?
ということで、全ての洞窟に入ってクリアしてみるとどうやら条件を満たしたようで、その証としてリザルト画面の「洞窟好き」が白い文字で表示される。ほかにも、「ギリギリ」や「グルメ」などたくさんの称号が用意されている。ヒントがないからこそ、称号を獲得するための条件をいろいろ推理してみるのも楽しい。
やり込み派ユーザーに嬉しい要素は本当に後を絶たない。メインメニューでは「女神の部屋」という項目があり、それを選択すると今まで倒したモンスターや見つけた武器を閲覧できる。アイテムやモンスターの発見率がパーセンテージで表わされているので、全コンプリートまでどのぐらい残っているのか一目でわかる。
このほかにもドットグラフィックスバージョンのアイテムに加え、キャラクターや背景の素敵なイラストも思う存分に閲覧できる。各イラストには作家の名前と丁寧な説明文も付いているので、「勇者30」の世界観について深く知ることができる。
ネタばれになるので詳細は省くが、「騎士30」モードもクリアすると、「勇者30」の続きとなるモードが遊べるようになる。このモードでは、それぞれの物語の主人公達が一緒に戦う。その難易度は極めて高く、制限時間にも変化が起こる。
個人的に本作の最高傑作だと思うこのモードを遊ぶためには、4つのメインモードを最後までクリアしなければならない。メインモードは一癖あるものばかりだが、5つ目のこのモードを体験するためにもあきらめないでプレイして欲しい。そしてこのモードもクリアすると、また新たなモードが追加される。これもまた「勇者30」関連のモードで、難易度がさらに高くなり、ベテランには最高の試練になる。
「女神の部屋」の内容は、ゲームのコンプリート率によって増加する | クエストの合間にキャラクター達の綺麗なイラストが挿入されることもある。イラストやモンスターなどのデータは、「女神の部屋」でいつでも閲覧できる |
結論としては、「勇者30」は絶対に遊んで欲しいソフトの1つだ。
インパクトのない王道的なRPGに疲れた人は、このソフトならではの独特のリズムに圧倒されるに違いない。通常、RPGは時間をかけてゆっくり遊ぶジャンルだが、「勇者30」の場合はスタンダードなRPGとまったく同じことをたった30秒でこなす。
そして、もっと驚くべきことは30秒だけなのに、RPGというジャンルの全ての要素が揃っている。「ドラゴンクエスト」と「ファイナルファンタジー」シリーズへのオマージュである本作は、昔の傑作でよく出くわしたシチュエーションの百科事典としても考えられる。
「魔王30」や「王女30」などは、長さとやり込み要素の面で納得いかない部分もあるが(「勇者30」がメインモード、「魔王30」、「王女30」がおまけモードとして考えれば、納得できる内容ではあるが……)、メインモードの「勇者30」は紛れもなく傑作だ。クエストはバラエティーに富んでいるし、やり込み要素も豊富に揃っている。新感覚のRPGを探していたのなら、「勇者30」はぴったりのゲームだと思う。
(C)2009 Marvelous Entertainment Inc.
【Reported by ジョン・カミナリ】 | ||
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国籍:イタリア 年齢:33歳 職業:俳優、声優、タレント、テレビゲーム評論家 趣味:テレビゲーム、映画鑑賞、読書(山田悠介)、カラオケ(アニメソング) 主な出演作品:銀幕版スシ王子!(ペぺロンチーノ役、デビュー作)、「大好き!五つ子」(アンソニー・ジャクソン役) ブログ:ジョン・カミナリの、秘密の撮影日記 | ||
イタリアで6年間テレビゲーム雑誌の編集部員として働いたあと、新しい刺激を求めて2005年に大好きな日本へ。子供の頃から夢見ていた役者の仕事を本格的に始める。堤幸彦監督の「銀幕版スシ王子!」で個性的なマフィアのボス、ぺぺロンチーノを熱演。現在もTVドラマやTVゲームなどで、俳優・声優として活躍中。日本語を勉強し始めたのは23歳のとき。理由は「ファイナルファンタジーVII」や「ゼノギアス」などのRPGの文章を理解するため。好きなジャンルはRPGと音楽ゲーム。「リモココロン」のような個性的なゲームも大歓迎。お気に入りのゲームは「ゲームセンターCX」と「ワンダと巨像」。芸名はイタリア人の友達に、本人が雷のように予想不可能なタイミングで現われるからという理由で付けられた。将来の夢は、大好きな「龍が如く」シリーズに敵役として出演すること |
http://www.mmv.co.jp/
□「勇者30」のページ
http://www.mmv.co.jp/special/game/30/
(2009年7月2日)