先日に引き続き、今回は「バイオニック コマンドー」のマルチプレイモードのレビューをお届けする。ワイヤーアクションでマップ上を立体的に動き回れる本作だけに、同じマルチプレイでも他のサードパーソンシューティング(TPS)とは一味も二味も違う興奮が味わえるはずだ。すでに製品や体験版で遊んでいる人も少なくないだろうが、もしまだ未体験という人がおられたら、本レビューを参考に「バイオニック コマンドー」の世界に一刻も早く飛び込んできていただきたい。なお、レビューにはプレイステーション 3版を使用した。
■ マルチプレイモードは全部で3種類
マルチプレイモードは、世界中のプレーヤーと最大8人までのオンライン対戦ができるモード。「デスマッチ」、「チームデスマッチ」、「キャプチャー・ザ・フラッグ」の3種類が用意されている。
デスマッチは、時間制限内で撃破数を競うモード。ゲームの非公開・公開の選択、マップ(全12種類)、撃破目標数(20、30、50)、時間制限(5~30分、5分刻みで変更可)、非公開時の招待フレンドといった各項目が設定できる。チームデスマッチは、1対1ではなくふたつのチームにわかれて戦う形式になる。
キャプチャー・ザ・フラッグは、マップ上の自軍、敵軍拠点にフラッグ(旗)が立ち、自軍のフラッグを守りつつ、敵軍のフラッグを奪い自軍拠点へ運ぶというもの。マップ(全4種類)、フラッグ目標数(5、10、20)以外の設定項目は、デスマッチやチームデスマッチとまったく一緒だ。
マッチングは、現時点では非公開ゲーム以外は“検索”をかけたユーザーから順次自動で配分される形式。ルールを決めてプレイできるのはフレンドを招待する非公開時のみで、これはマッチングの機会をなるべく増やしたいからだと推察される。唯一マップに関しては、待ち時間の間に各プレーヤーから一定の投票があるたびにスキップする機能が設けられている。
ゲーム開始の最低人数は、各モード共通で4人。チームデスマッチとキャプチャー・ザ・フラッグは参加人数が多いほうが当然面白いのだが、現時点ではあまり人気がないのか、時間帯によっては人数が集らないことも多々ある。一方のデスマッチは、マッチング形式も手伝って(これまた時間帯によるが)ほぼ8人フルでプレイできる状況が続いている。
【デスマッチ】 | ||
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【チームデスマッチ】 | ||
【キャプチャー・ザ・フラッグ】 | ||
■ 全モード共通“アイテム出現ポイント”を頭に叩き込むべし
“参加することに意義がある”という人はさておき、弱肉強食のマルチプレイに挑む大前提として、まずはそれなりにワイヤーアクションをこなせることが大切。マルチプレイ専用のマップといっても、シングルで体験し培ったスキルはマルチプレイでも存分に活かせる。
各モードにおける総マップ数は前述のとおり。当然、マップ構成を覚えている人のほうが立ち回りは有利になる。さらに……ある意味もっとも重要なのが、マルチプレイで出現するアイテムは“種類、場所ともに固定”という点だ。マシンガン、グレネードランチャー、対空ミサイル、狙撃ライフル、アーマー、回復など、すべて固定。取得後は、一定時間が経過すると再び同じ場所に出現する。いずれのアイテムも使い方次第で、どれが1番強力ということはない。散見した限りでは、1発の威力が高い武器のほうが上級者には受けがいいようだ。
レーダーがないため、誰がどこにいるかは、ある程度まで接近して画面にプレーヤータグが表示されないとわからない。マップ構成にもよるが、アイテムは高所に置かれていることが多いため、最初の攻防は全体が広く見渡せるビルや高台などで行なわれるのが普通。慣れた人が多いと、スタート直後ひとつの武器アイテムに数人が同時に群がったこともある。先にアイテムをとるべく全員が一斉にワイヤーを伸ばした瞬間を目の当たりにしたときは、一瞬戦うことを忘れて大笑いしてしまったほどだ。
キャラクタの耐久力は、画面右下にゲージで表示される。ゲージは上下ふたつあり、上はアーマーアイテムを取得したときの残り耐久力(アーマーゲージ)、下はキャラクタ自身の耐久力(ライフゲージ)。アーマーを取っていれば、ダメージはアーマーゲージから減っていく。威力は武器によって異なるが、標準装備のタングステンでもヘッドショット時の威力は瞬殺レベル。死角から襲撃を受けたと思った直後、振り返る間もなく即コロリといったケースも珍しくない。安全第一という人は、どんな武器よりも先にアーマーを取りにいくべきだろう。ちなみに、ライフゲージ回復アイテムをとってもアーマーゲージは回復しないが、既にアーマーを持っていてアーマーそれ自体を再取得することは可能。あまり褒められた立ち回りではないが、減ったらすぐ取りにいく(戻る)というのも悪くない。
立ち回り方は、まさに人それぞれ。しゃにむに突っ込んでくる人はさすがに少ないが、立体的な起伏に富んだマップが多いため、相手の死角から一気に仕留めようと、誰もが常に動き回っているといった雰囲気。侵入できるビルの室内など、身を潜められる場所でジッとチャンスをうかがっている人も結構いる。ただし、狙撃ライフルはシングル同様に射線がハッキリと画面に表示されるため、狙撃対象よりも第三者に発見されてアッサリやられる姿をよく目にする。戦闘中はお互い目先のターゲットだけに神経が集中してしまい、いわゆる「漁夫の利」パターンで第三者が美味しい思いをする(もしくはされる)ことは珍しくない。全員が敵になるデスマッチでは、特に注意が必要だ。
チームデスマッチやキャプチャー・ザ・フラッグといったチーム戦は、皆がボイスチャットを利用していればよいが、そうでなければそれぞれのプレーヤーが“空気を読む”ことが重要となる……といいたいが、ある程度やりこんだ実感としては「空気を読める人が読む。それ以外は期待しない」といったところ。非公開のプライベートゲームでもなければ、組織的な戦い方などは相当難しいと思ったほうがいい。逆に「こっちの動きを見てサポートしてくれたのかな?」といった場面に出くわしたときは、猛烈な感動に襲われてしまうほどだ。
そういった部分が顕著に出るのが、キャプチャー・ザ・フラッグ。自軍の旗を守りながら敵の旗を奪うという二律背反をうまく進めるためには、何よりも味方同士の連係が必要なのだが、マップ上への出現地点がバラバラのため、三々五々それぞれ勝手に敵陣地のフラッグを目指していました、というケースがほとんど。両軍で同時に「敵フラッグを奪いました」といったインフォメーションが表示されたときは、思わず噴出してしまった。
誰か、もしくはお互いにフラッグを持った状態では、言葉は通じなくても「旗を持った敵を倒し、持っている味方は守ろう!」といった不文律ができあがる。こうなると、なんとなくではあるが「あぁ、チームとして戦っているな」と実感できる。ただし、1サイクルが終わると再びカオスな状況に陥るので、個人的には味方に意思表示できるジェスチャーやアイコンなどの機能が欲しかった。自発的に陣地の守備につき、(恐らく)偶然殺到した敵軍に人数差で圧倒されたときの寂しさは、言葉にしがたいものがある。味方との意思疎通が難しいため、チーム戦は個人判断の寄せ集めになりがち。それだけに、目前の状況を瞬時に判断してお互いフォローしあえた時などは本当に嬉しくなる | ||
「陣地? きっと他の誰かが守ってくれているよ」そう考えていたら実は誰もいませんでした! なんてことも珍しくない。チーム戦はなかなかカオスだ |
■ 敷居が低く誰でも気軽に遊べるのがポイント
元々ど派手な武器でバンバン敵をやっつけるようなタイプのゲームではないため、最初は「わりと地味かな」という印象を受けるかもしれないが、ワイヤーアクションで立体的に立ち回れるなど、他のTPSにはない独自のプレイ感覚が楽しめる。
マッチングのシステムやモードは“シンプル”の一言に尽きるが、カジュアルさ、わかりやすさという意味では、これでいいのかもしれない。最近は非常に凝ったオンラインマルチシステムを用意するゲームも増えてきたが、あまり多機能すぎても不慣れな人には敷居が高いものとなってしまう。FPSなどでマルチプレイを日々やりこんでいる人には物足りないだろうが、本編の延長線上で、軽くもしくは気分転換に遊びたいといった向きには最適だ。
最後に贅沢を言わせてもらうと、チーム戦で少人数になったときは縮小版マップに自動的に切り替わる、奇数マッチング時のフォローなどが欲しかった。現状、チーム戦は4人しか集らないことが多く(特にキャプチャー・ザ・フラッグ)、敵との遭遇機会がめっきり減り、下手をするとフラッグを奪ってから自陣に戻るまで1度も敵と遭遇せずに済むケースも少なくない。後者にいたっては説明不要で、どちらに配されたとしても「これはちょっとなぁ」と思ってしまう。シンプルさを考えるとマルチプレイはオマケ的な位置づけなのかもしれないが、個人的にはもう少し機能が充実していてもいいかな、と思う。
基本的には遭遇戦が起こりやすいマップ構成なのだが、それでも最小限の人数だと戦闘機会そのものが(当然ながら)減ってしまい、ちょっと寂しいことも……。贅沢な話だが、最少人数でゲームがスタートするときは自動的に範囲が少し狭まればよかったなぁと思う |
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□「バイオニック コマンドー」のページ
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(2009年 7月 2日)