モバイルゲームレビュー

戦国王子となって戦乱の世を駆け抜けろ
日ノ本の平和は王子の双肩にかかっている

「はじめて戦国王子」

  • ジャンル:新感覚歴史ノベルゲーム
  • 配信元・開発元:ケイブ
  • 利用料金:月額315円
  • プラットフォーム:iモード
  • 対応機種:FOMA 903i、703iシリーズ以上
  • 配信日:配信中(3月16日)
  • アクセス方法:iMenu → メニューリスト → ゲーム → ロールプレイング → はじめて戦国王子


 「レキジョ」なる女性が増えているらしい。「戦国乙女」と呼ばれる人たちもいる。どちらも歴史が好きな女子のことで、「○○(戦国武将名)カッコいい☆」と武将たちに恋してしまう人も多いとか。とまぁ、他人事のように書いてはいるが、自分だって十分、いやいや十二分にレキジョである。年齢が年齢だけに「○○さんカッコイイ」とはあまり言わないが、戦国モノのゲームやアニメ、マンガを偏愛しているし、愛用の携帯電話には石田三成と大谷吉継の家紋シールが燦然と輝いている。

 そんな私だから、美麗なイラストが踊る「はじめて戦国王子」のサイトを見たときはトキメイた。「私のために作られたゲームだ」とほんの少しだが考えてしまったほど。“戦国”で“王子”。なんて素敵な響きなのだろうか。




■ 独自路線のイケメン武将続々。戦国王子と楽しむ戦国絵巻

 まず非常に重要な事実として、「はじめて戦国王子」は、いわゆる“乙女ゲーム”ではない、と書いておきたい。「はじめて戦国王子」は、「はじめて」シリーズの第1弾ゲーム。「はじめて」シリーズとは“女性が今知っておくべき旬の話題や定番知識をゲーム感覚で身に付けられる”女子力アップ型コンテンツだという。

 女性を意識しているのだから、“イケメン戦国王子たちと恋愛を楽しむ”的なゲームなのかと思いきや、そうではないらしい。戦国王子本人になりきってテキストを読んでストーリを進め、カードを使ったバトルを行なうアドベンチャー形式のカードバトル。女性だけでなく男性も楽しめるゲームになっている。

 選べる戦国武将は現在6人。直江兼続、真田幸村、上杉謙信、織田信長、伊達政宗、武田信玄から1人を選んでプレイする。武将は最大12人まで登場するそうで、順次イメージイラストが公開されている。


【戦国武将】
直江兼続真田幸村上杉謙信
織田信長伊達政宗武田信玄

選んだ武将の情報や立ち姿も確認できる今後も続々とイケメン戦国王子たちが登場する予定

 ゲームは大きくストーリーモードと戦札(カード)バトルに分かれる。ストーリーモードはテキストを読み、選択肢を選ぶ形式。武将ごとに違うストーリーを読み進めることになる。1日に遊べるストーリーは1本だけで、続きは実時間で20時間後となる。選択肢を選ぶことで話が展開し、進め方によっては戦や一騎打ちへと発展する。戦いはすべて後述する戦札バトルで行なわれる。


ストーリーモードはオーソドックスなテキスト形式。1日1本ずつ読み進める1度読み終わった話は何度でも読み直せるのも嬉しい



■ 思わず熱くなるカードバトル。強いデッキ作成が勝利の鍵か?

バトル開始前には、武将イラストが大きく写るカットインが入る

 ゲームの肝は戦札バトルにある。ストーリーモードの中だけでなく、「武者修行」として、たくさんの参加者の中からランダムに表示される数名から対戦相手を選んで、1日3試合のバトルが楽しめる。「戦準備」でデッキを組み、「出陣」でバトルに突入。バトルを終えると経験値と戦功ゲージが貯まる。

 経験値と戦功ゲージは負けたときでもある程度は貰えるので、何度もバトルを繰り返すと少しずつだが強くなる。各ゲージはレベルが高い武将と対戦した場合に多く増えるようなので、武者修行の時は強い相手を選ぶのが早く強くなるコツとなる。もちろん、レベルの高い敵は強いカードを持っていることも多いので、負けない程度に強い相手の見極めが肝心だ。

 経験値が貯まるとレベルアップし、レベルに応じてキャパシティが増加する。各戦札(カード)には固有のコストがあり、合計がキャラクターのキャパシティ以下でなければならない。往々にして強いカードはコストが高いため、レベルアップすることでより強いデッキが組みやすくなる。


デッキに入れられるカードは15枚まで。15に満たない場合は基本カードが挿入されるカードには固有の強さや機能がある。キャラクターとの相性などを考えてデッキを組もう
「武者修行」はメニューから「一騎打ち」を選んで行なう。好きな武将を選んで戦いを挑もう


 バトルはデッキの中からランダムに表示される5枚の戦札から3枚を選んで行なう。相手の出したカードと比べて少しでも攻撃力(数字)の高い方が勝ちとなり、相手武将に1撃を加えられる。同じ攻撃力の場合は引き分けとして無効。1回のバトルで先に3回攻撃できたほうがバトルに勝利できる。


1度に場に出すカードは3枚。合計点で勝敗を競う


 カードにはそれぞれ固有の効果があり、攻撃力をアップして奥義を繰り出すものや、相手や自分の戦札を裏返してしまうものなどさまざま。選んだ武将によってスキルを発揮するカードもある。

 また各武将ごとに、直江兼継は青、真田幸村は赤といった固有のカラーが設定されており、武将と同じカラーのカードを組み合わせるとボーナスポイントが付加されることもある。数字だけを比較すると弱いカードも、使い方次第で強力なパワーを発揮できることもある。デッキを組むときにも、バトルを行なう場合にも、カードの効果は無視できない。頭脳をフルに使い、運を味方につけて相手武将を打ち負かしていく。

 


かわいらしいキャラクターが剣劇を繰り広げる。3本先取すると勝ちが決まる
カードの機能を駆使し、パワーアップすると奥義が発動する。カードを上手に組み合わせて積極的に奥義を狙おう
戦闘の途中に台詞が入ることも。勝敗が決すると経験値や戦功が貰える

 戦札を増やすには2種類の方法がある。1つはバトルをして戦功ゲージを貯めること。戦功ゲージが貯まると1枚カードを引けるようになり、ランダムにカードが手に入る。もう1つは「よろず屋」でカードを購入すること。戦札の入った「ワクワク福袋」が、150両、300両、600両(1両=1円)で用意されており、それぞれレア度の違うカードが入っている。のんびり楽しみたい人は、毎日武者修行に精を出してじわじわと戦札を貯め、手っ取り早く強くなりたい人は福袋で運試しをするといいだろう。

 長く遊んでいると、どんどんカードが溜まる。強いカードや使いやすいものは限られているので、次第に使わないカードやダブりカードが増えていく。使わないカードが溜まったら、カード合体で強力なカードを作り出せる。並カード20枚で上カード、上カード10枚で特上カードなど、余ったカードを使うとよりレアで強力なカードが手に入る。ただし合体に失敗してカードを失うこともあるので、実行には勇気とある種の諦念が必要かもしれない。


600両の福袋は強いカードが出る確率が高い。予算を考えながらどの福袋にするか悩もう
戦札合体により強力なカードが生まれる。失敗するとカードがなくなる事もあるので覚悟して臨もう



■ レアカードには美麗イラストが。カードに秘められた物語も魅力

 福袋や戦闘のご褒美として得られるカードは、戦闘に使う以外にもさまざまな楽しみ方がある。1つ目は単純にコレクション欲を満たすこと。2つ目はカードに秘められた物語を読むこと。最後は美麗なイラストを味わうこと。手に入れたカードはメニューの「ずかん」からいつでも確認できる。

 カードにはそれぞれ異なるストーリーが用意されており、手に入れたカードのストーリーを読める。歴史に基づくエピソードや武将をより深く知るための物語で、武将好きにはたまらないプレゼントだ。

 並や上ランクのいわゆるノーマルカードは文字情報のみだが、特上や最高級に属するレアカードには「戦札柄」と呼ばれる凛々しい武将のイラストが描かれている。それぞれの武将や関係する人々の別の姿が見られるレアカードで、武将ファンなら積極的に集めてイラストを眺めたい。なかなか手に入らないからこそレアカードなのだが、1枚でも手に入ると、戦闘にも武将ラブ心を満たすためにも、かなり有効なアイテムとなる。


それぞれの武将の美しいイラストはレアカードだけのスペシャルプレゼント



■ 城機能の実装で、世界が広がる。ユーザー同士の交流ツールも多彩

 サービスの開始当初は「シナリオを読み終えると次にすることがなくなる」、「武者修行が1日3回では物足りない」などの意見が寄せられていた。そんなユーザーの声に対する運営側の答えの1つは「戦国ひろば(城機能)」の実装だ。5月8日に行なわれた大幅なバージョンアップで、自分の建てた城や人の運営する城に所属できるようになったのだ。城主、またはお抱えの武将として城を大きくする合戦、つまり「国盗り合戦」に参加できる。城内には掲示板も設置され、仲間同士でコミュニケーションも深められるなど、城に登録することでユーザー交流も可能になった。

 合戦の形式は武者修行と同じ。対戦したい城を選ぶと、城に所属している武将がランダムに選ばれてカードバトルが始まる。バトルに勝利すると、自分の所属する城の石高がアップする。城の石高や順位が確認できるほか、石高に合わせて城アイコンも立派に築城されていくため、つい「我が城のために!」と夢中になってしまう。こちらは1日に対戦できる回数制限もなく、止め時を見失ってしまうかもしれないので注意。

 その後も機能追加や変更が行なわれている。最近のバージョンアップでは、複数の城に所属できるようになり、より国盗りバトルの自由度が増している。ユーザーにショートメールが送れる「矢ぶみ」や、フレンド登録にあたる「戦国ともだち(戦とも)」などの交流ツールも増えている。またキャラクターのパラメーターの上下に関連する「だいじなもの」などの機能も多く用意され、ゲーム世界を気に入ったユーザーが回遊できるシステムが構築されつつある。


築城はシナリオをクリアすると可能になる。誰かの城に所属するか城主になるか、楽しく悩もう
城に所属していると「国盗り合戦」に参加できる。我が城のために張り切ろう



■ ユーザーの声がゲームを変える。顧客満足アップは今後も続く

 リアルでもゲームでも、私にとってカードバトルは初めての経験だった。それぞれ違う能力を持つカードを集め、デッキを組み、戦略を考えながら場に出すという作業が面白く、毎日決まった時間に繋いではチマチマと武者修行に精を出している。最初は負けが込むことも多かったが、次第に勝ち方を覚え、強いカードを手に入れると、バトルの勝率も少しずつ上がっていく。これがまた心地いい。トレーディング・カード・バトルに熱中する人の気持ちがほんの少しわかったような気がする。

 このカードを使ったバトルは面白いのだが、シナリオの内容が少し気になった。筆者が選んだ武将は直江兼続で、上杉景勝の家臣としてストーリーを進めていく。が、この景勝がヘタレで情けないことこの上ない。自分自身はすっかり直江兼続気分だったのだが、有能な武将である自分が命がけで仕えようと思った殿がこの有様では……と、少しばかり悲しくなった。ドラマ「天地人」では北村一輝さんが演じている上杉景勝だ。独自解釈は悪いことではないけれど、ドラマを見ている人にはそのギャップについていけないかもしれない。

 「はじめて」シリーズは、忙しい女性が1日5分程度で遊べることもウリの1つのはず。確かに、シナリオを1本読むには5分もあれば十分。レベルアップにもつながる「武者修行」も、CPUが勝手に行なってくれるなど、時間短縮の工夫は見られる。ただ、サービス開始後の改良や変更はゲーム内で長い時間を過ごすための機能が多く、当初の目標とはズレてしまった気もする。サービス直後から遊び続け、ユーザーから寄せられた意見も興味深く眺めていたが、基本的には「もっと長く遊びたい」、「シナリオが1日1本だけなんて物足りない」との意見が多数だったのだから、顧客満足を高めるためのバージョンアップがなされているようには感じている。

 “週に1回バージョンアップする”のも「はじめて戦国王子」の重要な特徴。まだまだ多数寄せられているユーザーからの要望を取り入れつつ柔軟に姿を変えていくだろう。半年後、1年後にどんなゲームになっているのか、今後の進化を見守りたい。

(C) 2009 Cave Co., Ltd.

(2009年 6月 29日)

[Reported by 南奈実]