PS3/Xbox 360ゲームレビュー

DARK SOULS II

難易度の作り方には前作との違いがあり、より正統派に。探索のしがいは前作を遥かに凌ぐ

レビュー|難易度の作り方には前作との違いがあり、より正統派に。探索のしがいは前作を遥かに凌ぐ

マップは高低差をふんだんに使い、より自然で複雑な繋がり方をしている。篝火間の転送が最初からできるとはいえ、探索の苦労は前作を凌ぐものがある

 ここからは実際にプレイしてのレビューに入ろう。まず世界観だが、前作を踏襲しているとはいえ、それは遠い別の時代なのか、全く別の場所なのか。本作は新しい世界と場所と言っていい。シリーズを通して、虚無感を漂わせるグラフィックスは魅力だが、本作もまた、良い味わいの光景がそこかしこに広がっている。

 舞台となる失われた国「ドラングレイグ」と、その周辺のエリアは、前作以上に自然で複雑な繋がり方をしている。これも前作を経て開発がこなれたからだろうか。エリアの継ぎ目があまりわからないぐらいに、シームレスになっている。高低差も前作以上にふんだんに使っていて、シリーズに慣れたプレーヤーであっても把握しきれないほどだ。ちょっと複雑になり過ぎのようにも感じるが、そこは篝火間の転送が最初から可能な事で相殺されていると思える。

 マップの複雑さが増した事で大きく影響しているのは「アイテム回収率」ではないだろうか。今作は今まで以上にアイテムの点在っぷりが凝っている。アイテムの光は見えていても、「あんな場所のアイテムどうやって取るの?」と不思議に思える箇所も多い。そうしたところは大概、意外な工夫をしたり、思っていた以上の遠回りをするとたどり着けたりして、それがわかった時には「よく出来ているなぁ」と感心させられてしまう。

 マップ中のギミックもスケールの大きい、大がかりな物が増えた。レバーを操作して視界を覆うような巨大な橋がかかったりと、テンションが高まる仕掛けがたくさんある。一方で、プレーヤーを死へと誘うトラップは当然あるものの、いわゆる初見殺しなものはほとんど見受けられなかった。そうした意地の悪いトラップよりも、足場の悪い場所の方がよほど目立つだろうか。

 マップに関してもうひとつ言うと、足場もそうだが狭い場所での不利さ、たいまつという要素が加わった事による暗い場所の厳しさが、これまでの作品よりはっきりと感じられるようになった。狭い場所でいわゆる長物な大きい武器を振り回すことはできないし、室内の柱なども上手く配置されている。暗い場所ではたいまつを灯して進んでいくのだが、左手にたいまつを持っているため防御ができない。雑魚敵は1体なら問題ないが、2体以上だと厳しさが数倍となり、数の脅威もこれまでのシリーズ以上に感じられる。

 公式のプレーヤーサイトの統計情報を見れば、死因は敵の次が落下となっている。筆者の体感もあながち間違いではない、ということだろう。

 こうした変化を統合すると、今作はプレーヤーによって難易度の感じ方がかなりばらけるのではないかと思える。慎重さを欠いたいわゆるゴリ押しプレイだと、数の脅威に負けたり、アイテムを見逃したりすることが一気に増えるだろう。一方、慎重で丁寧に探索していると、初見殺し的なトラップが減っているぶん、それほどの難易度には感じないかもしれない。亡者で体力最大値が減ることもあり、どちらかというと、シリーズ作に親しんでいて熟練している人ほど逆にドツボにハマるのではないだろうか。

 こうした難易度作りの性質の違いを、前作からの進化と取るか、変化と取るか、はたまた違和感とするのかは人それぞれあると思うが、筆者としてはゴリ押しがしづらく、深みを増した正当進化と思えた。ナンバリングとは言え、同じ対応で突破できる内容ならガッカリだったが、本作はきちんと練り込んだ新しいバランスを提示している。まぁ、何にせよ誰もがプレイするとたくさんやられる事は間違いない。

たいまつを使えるようになった事も大きな特徴。左手装備を捨てて明るさを取るか、暗がりを手探りで進むかはプレーヤー次第だ

 今作では、大ボスではなく、道中の中ボス的な存在がものすごく多いのも印象的だ。マップのスケールもシリーズ屈指と思えるが、道中の厳しさ、一区切りまでの長さも、シリーズ最大ではないだろうか。それゆえか、中ボスを倒してもまだ先が続いている場面が多く、疲弊する事もあった。食べ物で例えるなら、前作が普通盛りなら、今作は大盛りという感じだろうか。そうしたところは前作よりヘビーで、好みが別れるところかもしれない。

 オンライン関連はゲームサーバー方式になったことで全般的に非常に快適。他のプレーヤーが書いたメッセージも、プレイ中の姿が見える幻影も、発売直後の時期だけあってわんさか出てくる。協力プレイの召喚サインも、場所によっては争奪状態になっているのか、書いてから速ければ10秒ほどで呼び出される。

 誓約も同様に快適だ。筆者はある場所を侵入者から守る誓約を主に楽しんでいるが、人の多い時間帯には次々に侵入者が検知され、敵対プレイが始まっていく。あまりにも矢継ぎ早に召喚されるため、止めたくなった時には急いで誓約の指輪を外したほどだ。もたもたしていると次の召喚にかり出されてしまう。この快適さは前作にはなかったものであり、本来の姿と言っていいのかもしれない。誓約プレイはユニークなものが多く、本作を長く楽しめるものにしてくれている。

ボスの数は前作よりも多いのではないだろうか。いわゆる大ボスだけでなく中ボスクラスもたくさんいる
冷たい風が吹きすさぶマデューラの地。呪われし者が身を寄せる場所だ
絶望という名の希望とは、優れたフレーズだ。まさに絶望に満ちた世界に、濃密なプレイ体験が秘められている

 最後に、個人的な想いも含めつつ、まとめさせて頂こう。

 筆者はゲーム専門のライターだが、趣味を仕事にするというのは実際のところ苦難の道だ(良い事だってたくさんあるが)。こうした仕事をして、無数のゲームに触れ、話題に触れ、最新世代を追い続けるうちに、好奇心が年齢による衰えとともにすり減っていき、感情の波が小さくなっていく。若い時にゲームから得ていた高揚がどんなものだったのか。それを忘れていく。残念ながら、それからは逃れられないようだ。ある意味それは、本作でいう闇の刻印に蝕まれ全てを失っていく様に例えられているのかもしれない。ゲーム好きという呪いにかかったヘビーユーザーは、時を重ねるごとにゲームプレイの知識と経験が膨大になるにつれ、味の想像がつくお粥のようなコンテンツでは興奮を得られない体質になり、体験は虚ろになっていく。

 だが筆者が本作をプレイすると、虚ろに沈んでいた好奇心と興奮がゆっくりと首をもたげ、目覚め始めた。「良いゲームがきたぞ、これだ」とスイッチが入っていく。老婆の告げる言葉は意味深で想像力をかき立てる。冷たい風が吹きすさぶマデューラの地はまるで自分の心象風景のようにも思えたが、心地よかった。この世界の先を、冒険の果てにあるものを知りたい。心躍る。ワクワクする。そういう気持ちにさせてくれるものは筆者にとって今はなかなか無いが、「DARK SOULS II」はそれを前作、前々作と同様に失ってはいなかった。

 いくつかの道があり、その先に待つ未知に対して想像力が働いていく。老婆が語った「夢にまで見る失われた地」、求めて止まないもの。それはゲーム好きが求める刺激的な体験と達成感を例えているのかもしれない。そう思えた。熟練してもなお、むしろ多くのゲームに触れてきたからこそ、虜になるような魅力が本作にはある。筆者にとって、これほど夢中になれるゲームは……例えるならば「希望」は、久しぶりだ。長々と書いたが、「DARK SOULS II」は相変わらずグッとくるタイトルというわけだ。

 本シリーズはPS3/Xbox 360世代が生んだ寵児と言っていい。同世代での3作品目ということで、見た目にわかりやすい進化は少なくなったが(グラフィックスが主なところで、実際はテクスチャの精細さとマップの陰影の質は上がっていると思えるが、パッと見て感じ取れるインパクトはさすがに少ない。それを味わうにはWindows版ということになるだろう)、作り込まれたマップと考え抜かれているレベルデザイン、オリジナリティの高いオンラインプレイは、3作目ならではの熟練したものがある。計算高く、無駄がなく、密度が濃い。ほんのわずかな区間を進むだけで、本作に対する想いが積まれていく。シリーズに慣れ親しんだ身からしても、想像外の仕掛けがあり、それに驚かされ、理解してからは「面白いことを考えるなぁ」と感心させられてしまった。

 シリーズ作を楽しんできて最新作を待っていた人は、安心して本作に挑んでもらいたい。もっとも、言われずとももう挑んでいると思うが。これからという人は、楽しみ方は自由だが、できれば一切の情報を遮断し、自分の力だけで挑んでもらいたいと思う。そうする事で、かけがえのない宝とも言えるゲーム体験が得られるはずだ。また、本シリーズにまだ触れた事がないというゲーム好きの人は、本作の最もホットなタイミングである今を逃す理由などない。

 よりハイスペックに楽しめるWindows版を待つ手もあるが、家庭用でいち早くプレイできる魅力、人が多いゆえのホットさも捨てがたいだろう。ちなみに筆者は迷ったもののWindows版も買いたいと考えている。Windows版でより高精細に描かれるこの世界も見てみたいからだ。

 難易度の作り方の変化、多々の新要素があるが、「DARK SOULS II」は期待を裏切らなかった。公式サイトにあるフレーズのひとつ「絶望という名の希望が、再びはじまる。」は、まさに本作を表現している。この絶望を、それがゆえに豊かなゲーム体験を求めてやまない。このシリーズだけが持つ、肌にヒリヒリとくる火のような魅力に、ぜひとも身を投じてもらいたい。

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(山村智美)