PCゲームレビュー

Civilization V: Brave New World

人類史の“文化”に光を当てる拡張パック第2弾
交易、芸術、思想が文明戦略に深みをもたらす!

ジャンル:
  • シミュレーション
発売元:
  • テイクツー・インタラクティブ・ジャパン
開発元:
  • 2K Games
プラットフォーム:
  • WIN
価格:
3,999円
発売日:
2013年7月12日
プレイ人数:
1~16人
ダウンロードサイズ:
8GB

赤の広場の兵士たち。本作では人類史の文化や思想に光を当てる
なおWindows 8ではタッチ操作にも対応

 7月12日、文明シミュレーションゲームの決定版「シヴィライゼーション 5(以下『Civ5』)」の最新拡張パック、「Brave New World(『素晴らしき新世界』、以下『BNW』)」日本語版がテイクツー・インタラクティブ・ジャパンから発売される。ダウンロード専売となっており、AmazonのPCゲームダウンロード販売コーナーおよびSteamで購入可能だ。

 「BNW」は本作の拡張パックとしては第2弾となる。第1弾の拡張パック「God and Kings」に引き続き、本作における戦略の幅を拡げることに注力してデザインされた公式のDLCだ。構造としては「Civ5」本編に「God and Kings」を加えたコンテンツに、さらに拡張を加えるというものになる。プレイには「Civ5」本編があればいいが、本編に2つのDLCを加えることで「Civ5」が完成する。

 「God and Kings」にて宗教・諜報などの概念が大幅に拡張され、主に中世から近代にかけてのゲーム性が大幅に広がったことに加えて、今回の「BNW」では人類史を彩る文化面に着目したゲームシステムが導入される。

 国家間の交易戦略や、偉大な芸術家たちによる傑作、観光によるマインドの伝播、そして近現代史を語るに欠かせないイデオロギー対立。新たに「国際会議」という概念も追加され、外交・文化面を絡めた勝利戦略にいっそうの面白さが加えられているのだ。

 なお、動作には「Civ5」本編が必要となるが、「Civ5」には通常版の廉価版のほか、「BNW」以外のすべてのデータをひとまとめにした「Sid Meier's Civilization V Gold Edition」が用意されているので、「Civ5」未購入者はこちらがオススメだ。

各種の追加要素が文化・外交面のプレイを大幅に促進!

新文明も9つが追加。選択肢が多すぎる!

 オリジナルの「Civ5」が登場したのは早いもので、もう3年も前のことだ。本誌でもレビュー記事をお届けしたが、その中で本作の最大の問題点は、ゲーム的に“好戦的すぎる”ことであると指摘した。その理由は戦略目標を達成する方法がおおむね戦争しかないという構造的な問題にあったのだが、その後本作は拡張パック「God and Kings」そして今回の「BNW」を通じて、戦争以外の戦略オプションを充実させることでプレーヤーの期待に答えようとしてきている。

 さて、この拡張パック「BNW」で追加される要素を簡単にまとめてみよう。主につぎの6項目が新たなゲームシステムとして導入され、また、その特徴を活かせる9個の新文明が登場する。


・観光
 世界遺産や芸術家の作る傑作、考古学によって発掘する歴史的遺品などが生み出す文化的圧力。国境開放や交易路の開設、異なる宗教圏からのアクセスが存在することで観光客が増加し、宗教、思想などの文化的圧力を他国に与える事ができる。

観光力は都市の遺産や傑作など文化的創造物によって生み出される。高い観光力は異なる思想や宗教の文明に対する圧力にもなる

・傑作
 傑作は観光システムを有効に働かせるための重要な資源となる。3種の文化的偉人「大芸術家」、「大音楽家」、「大著述家」を消費し、図書館、博物館のような施設に傑作を納めることができる。傑作は文化や観光力を生み出し、同種の傑作は他国との交換も可能。

新しい偉人「大著述家」が歴史的な文学の足跡を残す。これは「徒然草」の一説らしいが、古文→現代語→英語→日本語の多重再翻訳のためか原型なし(笑)。「不定と心得ぬるのみ、実にて違はず」のこと?

・考古学
 テクノロジー「考古学」によって解禁されるユニット「考古学者」を使うことで、マップ内の戦場跡や蛮族キャンプ、古代遺跡などがかつて存在した場所に発生する史跡スポットを発掘調査し、文化・観光価値を生み出す考古学的遺物を獲得できる。

過去の歴史的スポットに史跡が出現。「考古学者」ユニットで発掘調査し、文化的ボーナスを獲得できる

・思想
 伝統、開放、敬虔、文化後援などの「社会政策」システムに追加される近現代の社会思想システム。工業化を達成することで解禁され、「独裁」、「自由」、「秩序」の3つの基本イデオロギーから方針を選び、個別の「教義」を選んでいくことで思想を構築していく。世界で始めて特定のイデオロギーを採用する文明は、無償の「教義」を2つ獲得可能。世界的に不人気のイデオロギーを持ち、観光圧力も受けている場合、文明内に多数の不幸が発生し革命が促されることもある。

思想は工業化を達成すると選択可能に。それぞれのイデオロギーにツリー上の「教義」があり、様々なボーナスを獲得できる

・世界議会
 外交勝利に直結するシステム。ルネサンス期から全文明が参加する会議が開催されるようになり、投票によって各種の世界的条約を取り決めていく仕組み。各文明が行使できる票数は議会の議長国に選出されたり、都市国家の同盟数によって増え、時代が進むにつれてその影響も大きくなっていく。現代に入り国際連合が設立された後、「世界のリーダー」投票に過半数を獲得すると外交勝利が達成される。

ルネサンス期に開設される世界議会では内政・外交に関する様々な国際条約を議決できる。行使できる票数は都市国家の同盟数など様々な要素より影響をうけ、議長国になれれば多大な恩恵がある

・国際交易路
 道路や河川・湾港の接続による自動的な金銭産出が廃止された代わりに、新ユニット「隊商」、「貨物船」を使って明示的に都市間の交易路を開設することが可能に。交易路からは都市の規模、文明の発展度などに応じて金銭・科学力の収入が得られると同時に、交易対象都市にも恩恵が与えられる。交易路に乗って相互の宗教圧力が加えられるほか、都市国家との関係維持にも利益がある。

新ユニット「隊商」と「貨物船」で陸海の交易路を開設。他文明との交易では金銭および研究力が得られ、国内都市間での貿易では生産力や食料のブーストを得ることが可能と強力な要素だ

 文化面の追加要素をまとめると、「考古学」、「芸術」で文化力を高め、「観光」を通じて文化圧力が文明間を行き来する仕組み。文化圧力は交易路に乗って(観光客が増えることにより)さらに影響力を高めることとなり、その結果として各文明の思想の選択、外交関係に影響を与えるというわけで、全てが連動しているわけだ。

 特に面白いのは「世界議会」の存在。定期的に招集される議会で様々な取り決めが可能だが、いちど決めたことは全世界で施行され、それによって利益を得る文明があれば不利益を被る文明も出てくるというのがポイント。

 例えば技術後進国に有利な取り決めや、軍事国家に格段の不利を与える条約など、各国の内情によって効果が異なるものがほとんどなのだ。上手く使えば自分の文明が最も大きな利益を得たり、ライバルに対して不利な条件を課すことも可能と、なかなか奥深い。

 これを生かせば、都市数個しかないような小国でも、やりようによっては大国を大いに悩ませつつ、勝利を目指すことが可能だ。文化力と観光力を高め、都市国家と同盟を結び、国土の広さや剣の力に訴えることなく世界の中心になろう。「Civ5」では考えられなかった様々な戦略が試せることで、「シヴィライゼーション」シリーズならではの遊び甲斐が大幅に促進されている。

世界議会での票集めも外交要素のひとつとなった。他国首都に対してスパイの代わりに外交官を配置することで提案への賛同を促す工作なども可能
もちろん戦争も有力な戦略オプションのひとつ。多国間で同盟関係を作り、トップを走る文明に戦争をけしかけ疲弊を促すのもいいアイディアだ
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(佐藤カフジ)