3DSゲームレビュー「真・女神転生IV」
真・女神転生IV
シビアながらも理不尽ではないプレスターンバトル、悪魔会話の魅力
(2013/6/17 00:00)
シビアながらも理不尽ではないプレスターンバトル、悪魔会話の魅力。悪魔合体にハマる日々が再び!
本作の戦闘はシンボルエンカウント方式。戦闘は「真・女神転生III-NOCTURNE」を踏襲したプレスターンバトルで進んでいく。味方の行動順と行動数が見えていて、敵の弱点属性を突いたりクリティカルが出ると行動数が増え、逆にブロックされたり吸収・反射されるような攻撃をしてしまうと行動数が激減する。行動数がなくなれば敵のターンに移っていく。
今作で新たに加わったのは「ニヤリ」というもの。相手の弱点を突いたり、敵の攻撃を耐性で防いだりした時にたまに出るもので、いわば有利さを確信した不敵な笑み。この「ニヤリ」が出ると、次に行動する時まで能力が高まり、さらに有利になる。ニヤリ状態の攻撃は大ダメージになるので、非常に頼もしい。
一方で、こうした条件やシステム、もちろん「ニヤリ」も、主人公たちと同様、敵悪魔にも発生するので、例えば敵に先制攻撃されて弱点属性を突かれ、ニヤリまで飛び出して攻撃を受け続けると、こちらにターンがまわってきた時には半壊状態なんていうことも起きる。厳しいシステムではあるが、そうならないように仲魔の弱点を消す耐性能力を合体でつけていったりと対策をするのが重要だ。そして、それが悪魔合体とスキル継承でいくらでも工夫できるところが本作の醍醐味と言っていいだろう。プレーヤーの工夫次第であり、それだけに魅力にハマった人は徹底的にやりこみたくなるし、やりこめるだけの奥深さも用意している。
悪魔と会話して「仲魔(悪魔の仲間)」に引き入れるのもシリーズの特徴だ。バトル中に悪魔に話しかけ、悪魔側からの問いに答え、交渉してパーティーに引き入れていく。会話のバリエーションは悪魔ごとにあって、リアクションも様々。それぞれの悪魔に性格を感じさせる。
例えば、「死が怖いか」と聞かれ、「怖い」と答えると、「俺が一緒に行って、死ぬその時までそばにいてやる」と言って仲魔になってくれるものもいれば、「今すぐ死なせてやるから怖くないぞ」と言って襲いかかってくるものだっている。そうした思いがけない反応が楽しくて、その楽しさが会話の醍醐味。今作でもその魅力はたっぷりあり、むしろシリーズ中最高レベルと言っていいかもしれない。ユニークなやりとりが豊富にある。
また、悪魔との会話から「クエストを依頼される」という思いがけない事も起きる。今作ではメインストーリー以外に、東のミカド国の「Kの酒場」や、東京の各街にある人外ハンター商会という酒場のような場所で「チャレンジクエスト」というクエスト依頼が受けられるのだが、このチャレンジクエストの量も膨大。先のように悪魔から依頼されるものもある。たっぷり遊びこめるだけの種類がある。
仲魔を合体させ、より強力な悪魔を作る「邪教の館」も、今作ではガントレットの1機能「バロウズアプリ」になっていつでもどこでも合体できるようになった。電子化された邪教の館の主“ミドー”がノイズ混じりの声で出迎えてくれる。
今作では合体の組み合わせはシリーズ作の組み合わせ表ではなく、検索条件を入れて結果の一覧から選択するという方式になった。これがかなり便利で、条件なしの2身合体なら特に条件を入れずにそのまま一覧を出せばいいし、作りたい種族や悪魔、合体に使う悪魔など、細かく条件指定して、結果を絞り込むこともできる。また、悪魔全書(仲魔にした悪魔をマッカを払って呼び出せる)の悪魔も合体素材に入れるという条件にできるので、手軽にその時に可能な、全ての可能性を追えるようになっている。
合体システムはだいぶ簡略化されシンプルになった。2身合体以外は全て「特殊合体(指定の悪魔を使って特別な悪魔を作る)」になっている。また、悪魔のスキル継承においても制限がなく、継承にランダム性が無くなった。かなり簡略化されたが、そのぶんわかりやすさと遊びやすさは大幅に高まっている。システムがシンプルになった一方、仲間にできる悪魔の総数は約400種類以上とシリーズ最多であり、スキルの数も膨大。シンプルなシステムで膨大な数を味わい尽くすという方向性になっている。
悪魔合体で自分の理想的なスキルを持った悪魔を作っていく魅力は、言うに及ばず。戦闘がシビアだからこそ、連れ歩く悪魔を吟味する必要があるし、その努力がきちんとプレイに影響する。より優秀なスキルを持たせようと自然に考えるようになり、「この悪魔は○○属性が弱点だから……合体素材のこいつに属性耐性を持たせて受け継がせて……」といった、合体前の素材から吟味していくことになる。そうすると、やればやるほどに欲が出てくるもので。ビジュアル的にもお気に入りな悪魔に豪華なスキルを詰め込んだり、使用用途に合わせて回復系を詰め込んだり、属性耐性を詰め込んでターン数稼ぎ役にしたり……果てないやりこみの道が広がっている。
悪魔のスキルは、主人公のスキルにも重要な役割がある。今作では悪魔がレベルアップして修得予定のスキルを全て覚えると「ウィスパーイベント」という、悪魔が主人公にスキルを伝授するイベントが発生する。ウィスパーイベントは1体の悪魔に1度しか起きないが、いろいろな悪魔から覚えさせていけば、主人公に強力なスキルを揃えられる。また、同じスキルを伝授するとスキルのランクが上がって、消費MPが減ったりスキルの威力も上げられる。仲魔には、主人公に覚えさせることも考慮してスキルを継がせていくという面があった。
今作はシリーズ作のシステムを洗練し、簡略化するところは簡略している。受け継ぎつつも新しく、今風に。このスタンスが感じられるが、快適にプレイする機能の多くは、ガントレットの「バロウズ」にアプリとして搭載されている。
例えば、バトルを自動で戦ってくれるオートバトルには「弱点オート」というものがある。「弱点オートプラグイン」のバロウズアプリを取得すれば、弱点属性が判明している敵には自動で弱点を突いて戦ってくれる。雑魚敵ならこれで一層できるぐらいの便利機能だ。
アプリには他にも、悪魔からお金をまきあげる「ファンド」であったり、移動中にHPやMPを回復してくれる「リカバリ」、悪魔全書から悪魔を呼び出す時のマッカ量を下げる「全書レートダウン」など様々な機能がある。悪魔のストック数や主人公・悪魔のスキル保持数などもバロウズアプリで増やせる。
バロウズアプリは主人公がレベルアップしたり、特定のアイテムから得られる「アプリポイント」を消費して取得する。どのアプリから拡張していくのかはプレーヤー次第だ。
根本的な難易度についても、プレーヤー次第でグッと下げることができる。まず、何度か全滅するといつでも難易度変更が可能になる。本稿は基本的にノーマルの「新人」でプレイしてレビューしているが、試しに下の難易度である「候補生」にすると、劇的に難易度が下がった。戦闘はボスであってもほとんど苦戦することもないぐらいで、簡単になりすぎるとすら思うかもしれない。逆に1周クリア後には、より高い難度が選べるようになるので、歯ごたえのある難易度を、自分の育てた悪魔で打ち破りたいという人は2周目以降にぜひ挑戦してもらいたい。
もうひとつ難易度緩和という点では、追加コンテンツとして販売されている「地獄の沙汰も~」シリーズのチャレンジクエストがある。このクエストは経験値を取得できるアイテムやアプリポイント、換金アイテムをバンバン落とす敵が出現する場所に行けるというもの。ただし、育てていく楽しみもあっという間にスキップしてしまうことになる。「プレイする時間があまりないんだけど物語を楽しみたい」とか「たくさんの仲魔を一気に育てたい」という人にオススメするコンテンツだ。
他にも、全滅時にはカロンがマッカかゲームコイン(3DSの基本機能で歩数で貯まっていくポイント)を払うことでバトル直前から復活できたり、バトル中に主人公が死んでも他の仲魔で乗り切れば全滅にならず、バトル後に主人公がHP1で復活したりと、プレイのやり直しが起きないようにかなりの配慮がなされている。シビアさから本シリーズを敬遠していた人も、今作はスムーズに遊べるだろう。
「真・女神転生」シリーズと言えば、マルチストーリーでありプレーヤーの選択が物語を決定づけていくのも特徴。本作でも、もちろんそれは健在であり、多くの悩ましい選択を強いられることになる。神と悪魔の戦いに巻き込まれたプレーヤーは、様々な思想にふれ、どんな答えを選ぶのか。神か、悪魔か、あるいは……?
本作でも、選択の結果分岐した物語はそれぞれに大きな方向転換を見せていく。1周しただけでは終わらずに別の分岐も見たくなる。そういう魅力がしっかりとあり、周回プレイすることで本作の世界観やモチーフにある構図などが、より深く掴めてくる。そうするとまた、本作の魅力が増したように思えて、ますます本作にハマっていく。そうした上手い連鎖反応が起きていく。
本作では3DSの機能である「すれちがい通信」も使っている。手持ちの中から、すれちがい通信に出す仲魔を選び、すれちがうとその仲魔が成長する「白カード」、またはすれちがった悪魔と無差別に合体して帰ってくる「黒カード」にするかを決める。アプリポイントを手土産に持ってくることもあるなど、お得な機能だ。すれちがうことで発動できる特殊なスキルもあるようだが……。基本的にはおまけ要素に留まっていて、たくさんすれちがわないと手に入らない悪魔がいたりといった要素はない。
最後に楽曲の魅力について。今作では、サウンドディレクター土屋憲一氏、コンポーザー小塚良太氏が手がけているが、楽曲も見事。シリーズ作のテイストをたっぷりと匂わせ、それでいて新しさも持っている。曲を使った演出も見事で、プレーヤーを驚かせる衝撃の展開には“曲で気づく驚き”というアプローチも入っている。シリーズ作のファンの人にはぜひそこにも注目してもらいたい。オリジナルサウンドトラックCDの発売を楽しみに待ちどおしいばかりだ。
シリーズの魅力を新たなアプローチで楽しめる屈指の良作
「真・女神転生III-NOCTURNE」のシステムで初代「真・女神転生」の壮大さを構築したような。「真・女神転生」シリーズでしか作り得ない、独特な魅力。それを4作目となる本作も、これまでにないアプローチでしっかりと持った最新作。サムライという未知の来訪者目線という新しい試みもあり、本作だけのユニークさも備えている。スピーディーな読み込みによるプレイのテンポもいい。
人それぞれに好みは当然あると思うが、「真・女神転生IV」は立派にナンバリングタイトルだと感じられた。個人的にはシリーズ作のいずれもRPG作品として良作揃いと感じている。「メガテン」シリーズでしか描けないその魅力、独自性は、今作でも十二分に発揮されている。
遊びやすさにおいても配慮がしっかりとなされているのは今どきに合わせた進化だ。DLCを含めて、あらゆる手段を駆使するであればだが、誰でも絶対に最後までプレイできる。一方で、難易度緩和のシステムを使わず我慢するという自制心は必要になるが、歯ごたえのあるプレイもちゃんとできる。
個人的に好みの問題があるのではないかと感じた箇所は、ひとつは“新規グラフィックスになった悪魔のデザイン”であり、もうひとつは、“スキル継承に制限がなく、目的の悪魔が簡単に作れるところ”だろうか。このふたつは一長一短だとも思えるので、一概に良い悪いとは言えない。
ボリュームについても携帯機としては驚きのものがある。プレイ時間は、サブクエストをどれぐらいやっていくかやルート、難易度設定次第ではあるが、だいたい30~40時間だろうか。もちろん1周だけに留まらず、引き継ぎ要素を使って2周、3周とプレイしていけるので、たっぷりやりこめる。DLCでの追加コンテンツも現在のところ第4弾までとあるので(第3弾が6月6日、第4弾が6月13日予定)、そちらも楽しみだ。
世界中の神話をモチーフにした深淵な世界観が、東京という現代世界と融合した、「真・女神転生」シリーズだけが持つ独自の魅力。神と悪魔と人間の間に立ち、プレーヤーは全てを知っていく。繰り返しになるが、独特のアプローチがあるだけに様子見をしていた人もいるかもしれないが、シリーズファンの人も、シリーズ未プレイの人にも、「RPG好きならこれは遊んでおかないともったいない」と言わんばかりに、強烈にオススメしていきたい。魅力溢れる作品だ。
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