「バティミッション BOND」レビュー

バディミッション BOND

異色の2人がバディで事件を解決!デジタルコミックで体験する新しい「相棒」物語

ジャンル:
  • アドベンチャー
発売元:
  • 任天堂
開発元:
  • コーエーテクモゲームス
プラットフォーム:
  • Nintendo Switch
価格:
7,128円(税込)
発売日:
2020年1月29日

 コーエーテクモゲームスが開発、任天堂より1月29日に発売予定のNintendo Switch用アドベンチャー「バティミッション BOND」。警察の物語が描かれる中でよく題材として使われている「相棒」は、多くは警察官同士の相棒物語が多いと思う。しかし、本作で描かれているのは「警察官」、「怪盗」、「忍者」、そして「詐欺師」がバディを組むという異色の「相棒」ものだ。

 誘拐事件から始まる本作は、立場や生き方が違う4人が数奇な運命で出会い、いろいろな事件を共に捜査、潜入をして解決していく。そして、それぞれの思惑を抱えながら謎の大きな組織に立ち向かっていくという友情ありアクションありの物語となっている。

 ストーリーは主人公「ルーク」と「アーロン」が出会い、2人が出会うきっかけとなった事件に関与している謎の組織「DISCARD」の拠点とされる極東の宝石箱「ミカグラ島」へ潜入。「ミカグラ島」へ向かう道中で出会った同じく「DISCARD」を追う「モクマ」、「チェズレイ」も仲間に加わり、「DISCARD」壊滅のために「ミカグラ島」を駆けめぐり、ストーリーが二転三転しながらも「DISCARD」の黒幕と思しき人物にたどり着く……というもので、まさに少年漫画のように息もつかせぬ展開が続いていく。

 本稿では、プレイしてわかったストーリーの重厚さや捜査パートの魅力についてお伝えしたい。

【バディミッション BOND 紹介映像】

マンガのコマ割りで描かれるストーリー!魅力的なキャラクターにも注目

 本作はリカルド共和国の首都エリントンというヨーロッパの国を感じさせる街並みの都市が最初の舞台となる。主人公のルーク・ウィリアムズはエリート警察官でありながら、小さな事件にも手を抜かない正義感の塊のような人物だ。しかし、その強すぎる正義感から職場ではかなり浮いているというザ・少年マンガの主人公という感じだ。もう1人の「アーロン」はかなりワイルドな風貌でかなり口が悪いのが特徴だ。この2人がある誘拐事件をきっかけに出会い、「バディ」を組み事件を捜査していくというのが本作のはじまりだ。そして、「ミカグラ島」に向かう道中で出会うお酒とナンパが大好きなおじさん「モクマ」と一見穏やかそうな紳士に見えて、人格が破綻してしまっている「チェズレイ」とともにTeam「BOND」として謎の巨大組織「DISCARD」壊滅を目指す。

 本作は出てくるキャラクター達の背景もしっかり描かれている。特にルークの殺されてしまった父親についてやチェズレイの異常な執着心についてなど、主要メンバー4人の過去や心の内が克明に描かれ、その4人の思惑が複雑に絡み合っていくので、人間模様も見どころの1つとなっている。

本作主人公の「ルーク」
「アーロン」
「モクマ」
「チェズレイ」

 本作はデジタルコミックスを読み進めるようなシナリオパートと、起こった事件に対する捜査・解決を目指す捜査パートの2つが入り混じりながら進行していく。シナリオパートの最大の特徴はストーリーがデジタルコミックのスタイルで進んでいくことだ。効果音もマンガのように文字で起こされており、アニメーションとマンガのコマ割り、そしてキャラクターの声が入ることで、マンガの世界の中に飛び込んだような印象を受ける。

 また、本作のキャラクターデザインは「アイシールド21」や「ワンパンマン」の作画を担当する村田雄介氏が担当しており、さながら少年マンガを読んでいるかのような気分になれるので、ゲームを進めていてもわくわくする。

 登場してくるキャラクターたちは、主要なキャラクター以外もルークの上司であり嫌味な腰ぎんちゃく的な雑魚キャラ感があるが、腹の内が読めない「ジェイスン警部」、誘拐されていた、優しそうだがどこか影のあるアーロンの義姉「アラナ」など個性的で一癖二癖もありそうな濃いキャラクターが多く、ストーリーの中でもいいスパイスとなっていておもしろい。

筆者は重要でなさそうで、実はストーリーの重要なポジションにいそうな気がするルークの上司「ジェイスン警部」のキャラクターがイチオシ。ぱっと見の腰巾着感もまたいい

 ちなみにメインストーリーの「ミッション」は、各ミッションごとにコミックスの表紙のようになっており、あらすじも書かれているためミッションをひとつひとつ見ていくだけでもマンガを1冊1冊選んでいるような楽しみがある。

 本作はチャプター0から一貫して通る大きなストーリーとチャプターごとに起こる事件が複雑に絡みながら進んでいく。1つの事件を解決していくたびに新たな事実を知り、新たな疑念を生まれるかなり重厚なストーリーが展開されていくので、ストーリーをしっかり楽しみたいプレーヤーにもおすすめだ。

「下調べ」と「捜査」、そして「潜入」で事件を解決!

 ストーリーが進んでいくと事件の現場へと潜入することになる。そのために必要なことが「シンキングタイム」と呼ばれる下調べ、そして潜入ルートを決める「捜査」そして実際に現場に潜り込む「潜入」だ。

 まず、「シンキングタイム」では事件の全体的な下調べをしていく。事件が起こった場所や潜入場所の特定、潜入のルートの検討、潜入場所に詳しい人物の特定、聞き込み先の絞り出しなど、ストーリーの中に散らばっているヒントを掘り起こしながら特定していく大事なパートだ。ミッションで起こった事件について、大切なことは3択から答えを導いて下調べ完了だ。回答に時間制限はないので、安心してじっくり思い出しながら解くことができる。

潜入ルートを探しだす
事件の手がかりを探す
わかったことをまとめていく

 「シンキングタイム」である程度目星がつくと、続いて「捜査」へと移る。「捜査」では下調べをもとにいろいろな場所に足を運んで聞き込みを行なう。

 聞き込みは「バティ」を組んで行うため、まずは聞き込みに行く人物を2人選ぶことになる。聞き込みには捜査したい場所までの距離がすごろくのようにマス目(スポット)で決められており、「行動力ゲージ」をマス目分消費して捜査したい場所に向かう。行動力ゲージは捜査するキャラクターの人数×3と決まっているため、捜査できる場所や回数が限られている。また、聞き込みはラウンド制となっており、行動力ゲージが全消費されると1ラウンド終了となる。聞き込みには目標ラウンドが設定されており、目標ラウンドを超えるとペナルティが発生。目標ラウンドや行動力ゲージを考えながら効率よく捜査したい場所をめぐらなくてはいけないので、かなり頭を使うパートといえる。

 また、ラウンドごとに「バディ」のメンバーを入れ替えることができるので、聞き込みスポットにあったメンバーをルートを考えながら組み合わせることがポイントとなる。

聞き込みでは行動力ゲージとラウンドをしっかり意識しないといけない
ラウンドごとに「バディ」を組み替えられる

 続いて聞き込みで得た情報をもとに潜入ルートと潜入方法が決まる。聞き込みはその場にいるメンバーの中から最も最適と思われるメンバーを選出して聞き込みを行なうので、場の状況、空気を読んで最適な人選が求められる。ストーリーの中で、「バティ」を組むキャラクターたちがどういう人物なのかしっかり把握しておくことも大事なカギとなる。大事な情報を聞き出す会話は選択肢で出題されるので今までの捜査を基に最適な会話を選び、相手から情報を引き出すのだが、選択肢も今までのストーリーのどこかにヒントが必ずあるのでじっくり考えてほしい。また、捜査に行き詰った時は捜査手帳を調べたりするのもおすすめだ。

その場にあった聞き込みをする人物を選出する
上手く選択肢を選んで、相手から情報を引き出そう
わからなくなったら捜査手帳を開いて、聞き込むことを再確認!
潜入ルートが決まったらいざ潜入!!

 「潜入」では今まで捜査してきた準備をもとに実際に現場に潜入し、事件を解決へと導く。事前の下調べ、聞き込みで得た潜入ルートから潜入し、時に扉のパスワードを解き、時に犯人たちと格闘することもある。また、他のパートと大きく違うのが、3Dの潜入先にキャラクター達を操作して潜入するということだ。潜入するキャラクターを選び、実際にキャラクターを動かし、現場へと潜入していくのでドキドキ感があって楽しい。また、下調べや聞き取りで調べていた情報を現場で確認しながら進んでいくので、達成感も感じられる。

潜入するキャラクターは2人
キャラクターを操作していざ潜入
捜査した情報を基に潜入しやすい環境を作る
潜入中にはロックの解除やキーコードの入力が必要になることも

 捜査と潜入はかなりしっかりとした手順が組まれていて、特に「捜査」ではプレーヤーの選択によって潜入ルートが変わり、時には必要な情報が聞き出せず捜査失敗……ということもあるのでかなり大変だ。しかし、各パートともに、情報を再度確認できる「思い出す」という行動ができるので、やるべきことを途中で忘れてしまったり、わからなくなっても、焦らず落ち着いて「思い出す」を使うと進行がスムーズだ。

聞き込みで選択肢を間違うと「捜査失敗」
選択肢に自信がなくなったら「思い出す」で再確認

 ただし、ミッションによっては特殊捜査ミッションと呼ばれる聞き込みのみの潜入ミッションがないものもある。聞き込みは必ず1ラウンドのみ、聞き出す必要がある情報は3つという限定された条件下で行なうものだ。1ラウンドだけなので通常の聞き込みよりもシビアで、どこかで「捜査失敗」してしまうとすべての情報が揃わないという過酷なミッションだ。

 ストーリーでは全編を通して「ヒーローゲージ」というものが表示されている。「ヒーローゲージ」は正しい選択肢を選ぶ、最適な人選をして情報を聞き出す、潜入時のパスワード入力がうまくできるなどするとどんどん加算されていく。逆に聞き込みに失敗する、聞き込みの目標ラウンドを超過したり、戦闘時のコマンド入力のミスなどをすると減っていってしまう。かなりシビアに減らされてしまうゲームだが、この「ヒーローゲージ」の到達点が各ミッションのクリアランクに直結する。クリアランクに応じてサイドエピソードやバディエピソードが解放されていくので、「ヒーローゲージ」を減らさないようプレイすることも大切になる。

各ミッション終了までに右上の「ヒーローゲージ」を貯めよう

 主だった捜査ミッション以外のストーリーでも調べ物や手がかりを探すことや、キャラクターの行動を操作することがあるので、ストーリーを楽しみつつも、要所要所で捜査している感覚を感じられるのも楽しい。

 今回の体験では、デジタルコミックのようなシステムで描かれていることもあり、ゲームをしながらマンガの世界に飛び込んだような感覚でとにかくわくわくした。また、マンガの世界の中で、プレーヤー自身が潜入ルートを決めて事件を解決に導くのはちょっと不思議な体験にも感じた。物語の一部をプレーヤー自身が決めるというのはゲームならではのことではあるが、そこにマンガの世界が組み合わさると不思議な感覚にとらわれるおもしろい体験だと感じた。警察ものや探偵ものの漫画や小説が好きな方はもちろんだが、マンガが好きな方にも広くおすすめしたい作品だ。