2020年7月22日 11:13
ASUSは、デュアルモニター搭載型のゲーミングノートPC「ROG Zephyrus Duo 15 GX550LXS」の国内発売を決定した。これまでにビジネス向けのノートPC「ZenBook」シリーズでデュアルモニター搭載モデル「ZenBook Duo」などがリリースされてきた。「ROG Zephyrus Duo 15 GX550LXS」は、そこで培われた技術を生かし、ゲーミングモデルとして完成した製品だ。
発売は8月7日を予定している。価格は636,182円(税別)。発売に先駆けて「ROG Zephyrus Duo 15 GX550LXS」4K液晶搭載モデルの実機をお借りすることができた。その実力を見ていこう。
性能は紛れもないフラグシップ
「ROG Zephyrus Duo 15 GX550LXS」は一目で分かるとおり、サブモニターを搭載した2画面タイプのノートPC。国内展開モデルは、メインモニター4K UHD(3,840x2,160)解像度に対応し、キーボード側に備え付けられたサブモニターは3,840x1,100解像度に対応する。サブモニターはタッチ操作に対応し、メインモニターでゲームをプレイ中にもすぐに操作できる便利な仕様となっている。
サブモニターは「ScreenPad Plus」と呼ばれ、画面左端に展開可能なボタンが常駐。ここから各種機能を呼び出せる。たとえばよく使うソフトウェアを登録しておけば、タッチ操作ですぐに起動できる。また、テンキーとして使用するための専用ツールや手書きツールも標準装備。入力補助ツールとして活用できるのは既存の2画面モデルと同様だ。
キーボードも「ZenBook Duo」シリーズで採用されたレイアウトを踏襲しており、サブモニターの分だけ本体手前に配置され、右端にタッチパッドを備える。タッチパッドはパッド内の左上が切り替えスイッチとなっており、ここをタッチすることでタッチパッドモードとテンキーモードを切り替えられる。別途マウスを接続すれば、フルキーのキーボードとして使うことも可能だ。
2画面が目を引く一方でスペックはゲーミングノートPCのフラグシップとして一切妥協のないハイエンド。CPUはIntelの第10世代「Coure i9-10980HK」、GPUは「GeForce RTX 2080 SUPER Max-Q」を搭載。メモリ32GB、ストレージは1TB SSDを2つRAID 0構成。モニターは2つとも4K対応だ。基本スペックは以下の通り。
- CPU:第10世代Intel Core i9-10980HK 2.4GHz/5.3GHz
- GPU:NVIDIA GeForce RTX 2080 SUPER Max-Q
- メモリ:32GB
- ストレージ:2TB SSD RAID 0(1TB×2)(PCIe 3.0 x4)
- メインモニター:15.6型ノングレア IPS液晶パネル(解像度:UHD 3,840x2,160、リフレッシュレート:60Hz)
- サブモニター:14型ノングレア IPS液晶タッチパネル(解像度:UHD 3,840x1,100、リフレッシュレート:60Hz)
- バッテリー:4.8時間駆動
- サイズ:幅360x奥行き268x高さ23.0mm
- 重量:2.5kg
- 海外参考価格:3,699.99ドル
- 発売日:未定
【ROG Zephyrus Duo 15 GX550の製品仕様】
外部インターフェースは本体左右と奥側に振り分けられている。右側にはUSB3.0を2基とUSB PD規格の給電に対応したThunderbolt 3(Type-C)を1基備える。左側面は電源ジャックとイヤホンとマイク用の3.5mmジャックを各1つずつ。本体奥にはUSB3.1 Gen2ポート1基と有線LANポート、HDMI出力ポートを1基ずつ備える。
本体正面以外にインターフェースが振り分けられているため、有線マウスやキーボード、ヘッドセットなどを接続しても配線はかなりスッキリとする。比較的大型機であるが故のメリットだ。また、USB PD対応Type-Cを備える点も心強い。結構な重量物であるACアダプターを持ち歩かなくてもよいからだ。
一方で最近のノートPCなら標準装備とも言えるインカメラを搭載していなかったりと、ゲーミング以外で使おうとすると若干の不便もある。キーボードが手前に来ていることで窮屈な姿勢となりタイピングがしにくいという難点も抱えるが、本機では専用パームレストが付属。軟質素材で手首を保護するとともに、一般的なキーボードのように手を十分開いて入力が可能になる。
冷却性能が大幅パワーアップ。全力でゲームに打ち込めるマシンに
ASUSから発売中の「Zenbook Duo」系のノートPCでは、サブモニターはキーボード面に水平に備え付けられていた。基本姿勢でノートPCに向かうと、目とサブモニターとの間に角度がついてしまい、視野角の影響で若干視認性が低下するという問題があった。また、より大きな問題として3Dゲームなどを起動した際に熱がこもってしまい、サブモニターの劣化につながるという懸念もあった。
「ROG Zephyrus Duo 15 GX550LXS」では、ゲーミングPCとしてこれらの問題点を解消している。サブモニターは独自のヒンジ構造により、PCを開いた際に連動して跳ね上げられる構造となった。人間工学に基づいて13度の傾斜で固定され、画面がしっかりと見える。また、筐体と分離されたことで熱の伝播も緩和。サブモニターをタッチした際に指先に熱を感じることもない。
さらに、筐体とサブモニターの隙間をのぞき込むと直径28.5mmの大型吸気口が2口備えられていることを確認できる。これにより、PC全体の冷却性能を強化。2017年以前の従来モデル比で30%ものエアフロー改善に成功しているという。
ほかにも、液体金属グリスの採用やヒートパイプ、ヒートシンクの体積を増加。ハードウェアの最適化とソフトウェアの最適化を組み合わせることで「INTELLIGENT COOLING 2.0」という新たな冷却システムを構成。作業に応じて、オーバークロックと冷却ファンの回転数をワンクリックで適切な値に切り替えられる。
ソフトウェア側でPCの最適化を担うのが、ASUS ROGのゲーミングPCではおなじみのソフトウェア「Armoury Crate」。本機では専用の起動ボタンがキーボード上に設けられ、即座にアクセスできる。
メイン画面からは現在のPCの稼働状況が一目で確認できるほか、サイレント・パフォーマンス・Turboのモード切替が可能だ。各モードの性能はチャートで分かりやすく表示される。サイレントがブラウジングなどの軽作業用、パフォーマンスがゲーム用。Turboはベンチマークやエンコードなど高負荷作業用だが、オーバークロック状態となるため長時間稼働には向かない。また、ハードウェアの使用状況を視覚化するリソースモニターの機能も備えており、後述の実プレイにおいて活用例を見ていく。
PC版「DEATH STRANDING」を4K解像度で満喫
今回レビューに用いるゲームタイトルは、7月14日に505 GamesからPC版が発売された「DEATH STRANDING」。広大な3Dオープンワールドを描く本作は、システム要件がなかなかに高い。PC版ではNVIDIAのAI技術を活用したグラフィックス最適化技術「NVIDIA DLSS」に対応。最高の画質を得るにはGeForce RTXシリーズが推奨される。
「DEATH STRANDING」の舞台は「アメリカ合衆国」。タイトルである「デスストランディング」と呼ばれる現象により、都市はほとんど崩壊してしまった世界だ。プレーヤーはそんな世界で配達人となり、分断された人々を繋ぐ役目を担う。
ゲームの醍醐味は人から人へとモノを運んでいく中で、その道すがら見られる風景や、自分以外のプレーヤーが開拓した道のりなどを見ていくところにある。特に面白いのが他者の痕跡で、何人ものプレーヤーが通過した経路は地面がならされ、草が倒れたりテクスチャが道っぽくなったりととにかく芸が細かいのだ。
こうした繊細な世界を見るには、やはり4Kの高解像度でなければ失礼というもの。4Kかつ最高設定で「ROG Zephyrus Duo 15 GX550LXS」がどこまでやれるのか見ていこう。
大きいのは「NVIDIA DLSS」の設定
ここからベンチマークをしつつ実際に「ROG Zephyrus Duo 15 GX550LXS」を用いて本作をプレイした感触を述べていく。今回設定別に3つの計測を行なっている。設定を変えつつ、本編2章を大体通しでプレイした。
1つ目は、PCの設定を「Armoury Crate」から「パフォーマンスモード」。ゲーム設定を、フルスクリーンの3,840x2,160解像度、垂直同期をOFFにし、フレームレート上限を240。モデルディテールを最高、ストリーム用メモリを高。ほかのオプションもONにし、NVIDIA DLSSをパフォーマンス設定とした。
この設定は結果的に、「ROG Zephyrus Duo 15 GX550LXS」で「DEATH STRANDING」をプレイするなら最適と思われる。30分間の計測で平均FPS71.0と非常に安定しており、本機のリフレッシュレート60Hzを割り込むシーンがほとんどなかった。トラックやバイクで野原や国道をかっ飛ばしてもオブジェクトの読み込みによるカクつきは一切なく、非常に快適にプレイが可能だ。
続いて、先の設定からNVIDIA DLSSを「クオリティ」へと変更。30分間のFPS計測を行なった。こちらはNVIDIAのAI技術を生かした最適化で映像をさらに綺麗に描画する設定。その分負荷は大きくなる。
計測結果は、平均FPS64.0。NVIDIA DLSSの「パフォーマンス」設定と比べると平均値が目に見えて下がっており、降雨地域などでは60FPSを割り込むシーンも多く見られた。画面が綺麗になったかと問われると、正直ここが良くなったと指し示せないレベルだ。この設定はFPSの低下に見合わないように筆者は思う。
最後に「Armoury Crate」を通じてTurboモードを起動。設定は最初のテスト同様NVIDIA DLSSを「パフォーマンス」とした。30分間の計測で平均FPSは75.0を記録したが、アツアツのコーヒーが入ったマグカップレベルにまで筐体温度が高まり、とてもキーボードはたたけない状態になった。最終的にはCPU温度が93度、GPU温度が86度を記録しサーマルスロットリングによりムービーの描画が乱れ始めたところで、使用を断念。Truboモードで安定稼働できたのは約3時間だった。
パフォーマンスモードでも画面のリフレッシュレートである60FPSを十分クリアできるため、Turboモードの連続使用はお勧めできない。最悪、製品寿命を縮めてしまうだろう。余談だが、PCから15cmほど離れた卓上温度計によると室温が2度上昇していた。
サブモニターの使い方はコンテンツ次第で柔軟に対応
今回のプレイではサブモニターはベンチマーク用の使い方として、専用ソフトウェアの「Armoury Crate」でリソースモニターを表示。PCの稼働状況を監視する。画面左にはFPSの計測に用いたソフトウェア「Action!」を配置。このツールはストリーミングや画面の録画、スクリーンショット撮影にも対応している。サブモニターに置けばタッチパネルで即座に操作できるため本機との相性は非常に良い。
ほかにも、メインモニターでフルスクリーンのゲームをプレイしながら、サブモニターではYoutTubeで攻略動画を再生するという使い方もおすすめしたい。攻略動画の動き方をトレースする際、ゲーム操作しながら動画の一時停止と巻き戻しを頻繁に行なうが、動画の方の操作はタッチで直接行なえるので効率がいい。
また、オンラインゲームをプレイする際にはサブモニターでDiscordなどのコミュニケーションツールを表示すると、オーバーレイを使わなくても発話者を確認できる。また、マイクを接続していない聞き専ユーザーからのチャットにも対応できて便利だ。ゲームとは若干外れるが、マシン性能とタッチ操作を生かして動画編集などにも活用できる。
高性能と引き換えに外での使用は犠牲に
ゲーミングPCとして非の打ち所のないマシン性能に加え、2画面という他にない魅力も持つ「ROG Zephyrus Duo 15 GX550LXS」。自宅で使う分には問題とならないが、外で使うとなると2つの欠点が見え始める。
まずはバッテリー持ちの悪さだ。フル充電で4.8時間という駆動時間は、一般的なノートPCが10時間前後であることからすると極めて短い。本機単体で大学での講義やビジネス用途と兼用させるのは少々厳しい場面もあるだろう。幸いUSB PD給電に対応しているので、モバイルバッテリーを携行することでバッテリー持ちを補助することは可能だ。
もう1つは、携帯性の悪さ。メインモニターの液晶サイズは15.6型だが、本体寸法は幅360mmに奥行き268mmと、奥行きに関しては17型ノートPC相当にまで大型化している。サブモニターが跳ね上げ構造となったため、メインモニター下部ベゼルに余白が設けられており、本体が伸びてしまっているのだ。15.6型を上限としたバッグでは収納が厳しいものもあった。17型まで対応したバッグ、ケースであれば問題なく収納できる。
出張族ゲーマーにおすすめしたい逸品
「ROG Zephyrus Duo 15 GX550LXS」は、これまでにASUSがZenBookシリーズで発売してきた2画面ノートPCの派生としての待望のゲーミングモデル。ゲーミング向けの単なるスペックアップにとどまらず、サブモニターを中心に各種の改良が施され、強力な性能と冷却のバランスを取った最適化がなされていることが分かった。ゲーミングモデルとしての完成度を高める一方で、ゲーム以外の用途にはあまり向かないというとがった仕様となっている。まさに“ゲーミングマシン”というところか。
携帯性を考慮すると、自宅のゲーム用PCを本機で置き換えるというのが主な用途となるだろう。また、長期の出張時など、PCを2台持ち込むような旅であればセカンドPCとしても有力だ。旅先で、2画面を活用してゲームをプレイしながら動画を視聴したりと、あらゆるコンテンツをストレスなく楽しむことができるというのは、ほかの機種にはない本機ならではの魅力だ。
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