「PROJECT CARS 2」レビュー

PROJECT CARS 2

走りの質、幅、迫力。このレースゲームはもの凄いぞ!

ジャンル:
  • リアル・レース・シミュレーション
発売元:
  • バンダイナムコエンターテインメント
開発元:
  • Slightly Mad Studios
プラットフォーム:
  • PS4
  • Windows PC
価格:
7,200円(税別)
発売日:
2017年9月22日
「PROJECT CARS 2」レビュー さあ、シビれるレースをはじめよう
さあ、シビれるレースをはじめよう
「PROJECT CARS 2」レビュー 美しく描かれるスーパーカー
美しく描かれるスーパーカー
「PROJECT CARS 2」レビュー 悪天候もなんのその
悪天候もなんのその

 今年の大作レースゲームラッシュ。その王座を狙う真打ちが登場だ。PS4版は9月21日、PC版(STEAM)は9月22日にバンダイナムコエンターテインメントからそれぞれ発売された「PROJECT CARS 2(以下、『PCars2』)」は、味わい深い走りを楽しめる本格レースシムと、幅広いシチュエーションでの迫力たっぷりの試合を楽しめるレースゲームの両方の遺伝子をこれまでになく高いレベルで兼ね備えた1本だ。

 「Project CARS」は2015年に誕生したばかりで、シリーズとしての歴史は浅い。が、開発元のSlightly Mad Studiosは、本格レースシムを長年にわたり開発してきた超ベテラン開発者たちが集まってできたスタジオだ。主要スタッフはPC用レースシムの金字塔として名高い「GTR」シリーズを手掛けたSimbinがルーツで、スタジオ成立後はじめて手掛けたのはエレクトロニック・アーツから発売された「Need for Speed: SHIFT」。アクションレースゲームシリーズとして有名な「NFS」シリーズの中でも、空気を読まないレベルでレースシミュレーターに寄せた作品として記憶に残る。

 そしてSlightly Mad Studiosは「SHIFT: Unleashed」を最後にエレクトロニック・アーツと別れ、純粋なインディースタジオとして2012年にクラウドファウンディングによる次世代レースシムの開発をスタート。そうして2015年、生まれたのが「Project CARS」だった。

 その頃からSlightly Mad Studiosの作品は、時代の最先端を行く機能を盛り込むことが特徴だった。レースゲームにおける4Kサポート、VR対応、天候による路面変化のシミュレーションなどなど。本作ではそのドクトリンをさらに推し進め、かつてないほど贅沢な要素が盛り沢山のレースゲーム/シムとして完成している。

 マイクロソフト/Turn 10 Studiosの「Forza」シリーズや、SIE/ポリフォニー・デジタルの「グランツーリスモ」シリーズなど、このカテゴリーにおける巨人たちを脅かすに充分な、もしかすると圧倒するほどの品質を備えたタイトル。それが本作「PROJECT CARS 2」だ。

 なお、本作はPC(Windows)、プレイステーション 4、Xbox Oneの3プラットフォーム(日本ではPCとPS4)にマルチ展開する作品だが、最もリッチに楽しめるのはPC版である。もちろん、ハイスペックなPCが必要ではあるが、3画面12K解像度のサポート、VRサポートなど各種の先進機能はPC版でのみ利用できる。

 こういった事情もあり、今回のレビューはPC版でのプレイをベースにお届けする。

「PROJECT CARS 2」レビュー 本作のグラフィックスはご覧の通り。最も映像が美しいゲームのひとつといえる
「PROJECT CARS 2」レビュー 本作のグラフィックスはご覧の通り。最も映像が美しいゲームのひとつといえる
「PROJECT CARS 2」レビュー 本作のグラフィックスはご覧の通り。最も映像が美しいゲームのひとつといえる
「PROJECT CARS 2」レビュー 本作のグラフィックスはご覧の通り。最も映像が美しいゲームのひとつといえる
本作のグラフィックスはご覧の通り。最も映像が美しいゲームのひとつといえる

幅広い車種、レーザースキャンされた超精密コース、そして天候変化も最先端!

「PROJECT CARS 2」レビュー 最も分厚いラインナップになっているのはGT3クラス。世界中のカーメーカーが火花を散らす競技カテゴリーだ
最も分厚いラインナップになっているのはGT3クラス。世界中のカーメーカーが火花を散らす競技カテゴリーだ
「PROJECT CARS 2」レビュー 本作中で最多のコースレイアウトを収録しているのはニュルブルクリンク
本作中で最多のコースレイアウトを収録しているのはニュルブルクリンク
「PROJECT CARS 2」レビュー 水たまりに足をとられながらのパワースライド!
水たまりに足をとられながらのパワースライド!
「PROJECT CARS 2」レビュー 雪の中、オープンホイールでレース。かなりの無茶振り(ノーアシストでは筆者には無理でした)
雪の中、オープンホイールでレース。かなりの無茶振り(ノーアシストでは筆者には無理でした)
「PROJECT CARS 2」レビュー 雨の「Sakitto」。立体交差前のコーナーは水がたまりやすく、罠になる
雨の「Sakitto」。立体交差前のコーナーは水がたまりやすく、罠になる
「PROJECT CARS 2」レビュー 9種類にカテゴライズされたレース内容
9種類にカテゴライズされたレース内容

 さて、本作「PROJECT CARS 2」の大作ぶりを顕著に示すのが、そのコンテンツの質と量だ。車は180車種以上。そのへんの町でも見かけるロードカーから、1台数千万円~億超えのスーパーカー、競技用のカート、GTカーに、ラリーカー。オープンホイールのフォーミュラカーまで豊富に取り揃え、ありとあらゆるクラスのレースに挑める。メーカーも、フェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェ、BMW、メルセデス、フォード、トヨタ、ホンダ、ニッサン……とにかくたくさん。もちろん全車両、コックピット視点搭載。

 コースロケーションは60種以上、コースレイアウト数も前作を凌ぐ。前作ではDLCで初めて追加されたレーザースキャンによる超精密再現コースが本作では大半を占めており、あの長大な難関コースで知られる例のコースもレーザースキャンで超リアルに再現。さらに、今作からはダートコースの再現も可能となったため、ラリークロス競技用のサーキットも複数収録している。

 そしてさらに最先端をいくのが進化した天候変化システムだ。前作から引き続き搭載の雨はもちろん、今作では雪も表現可能になった。雨や雪の影響で路面状況はリアルタイムに変化し、豪雨・豪雪ともなれば路面はぐちゃぐちゃになり、全く違ったレースが展開する。

 これらの要素が組み合わさることで、実際に体験することになるレース模様はまさに無数の組み合わせだ。ドライコンディションで始まったレースが、途中で大雨に変化するというリアルタイムの変化も取り入れているため、長丁場のレースではピットストップでのタイヤ交換など、戦略的なレースの組み立ても楽しめるようになっている。

 インディカーのようなオーバルコースで400km/h近くでレースを繰り広げるのが好きな人にも、本作はうってつけだ。各種のオーバルあるいはオーバル・ロード混合コースの収録数は、オーバルに強い「iRacing」に迫るレベル。かといってレースゲームの王道であるロードカー、GTカーでのレースが薄いわけでもなく、GT5からGTE、そしてLMP1まで分厚く取り揃えつつ、世界の有名サーキットも分厚く取り揃えている。

 サーキットのラインナップはSlightly Mad Studiosが英国のスタジオであることから英国のものが特に豊富だが、北米・南米の主要サーキットもしっかり入っている。日本のサーキットは富士スピードウェイ、スポーツランドSUGOを実名で収録。あとは岡山国際サーキット、ツインリンクもてぎあたりがDLCで追加されてくれば完璧なのだが!

 こういった豊富な車種とコースを十二分に楽しむべく、競技カテゴリーも9種類が用意されている。他のゲームでもよくあるものから順に並べると、ロード、ツーリングカー、GT、トラックデイ、耐久レース、カート、オープンホイール、インディカー、ラリークロス、となる。特にオープンホイールや、インディカー、そしてラリークロスは、他では専用のゲームになっていることがおおいのだが、本作ならそれらも含めて全部1本で楽しめてしまうのがいいところだ。

 こうも幅広い品揃えをされてしまうと、プレーヤーの好みさえ変えてしまう。例えば筆者はGT3~GTEクラスでのタイムアタックやレースが好きで、いつもはそればかりやっているのだが、試しにラリークロスをやってみたら、土や石ころを蹴散らしてドリフトしまくりながらグルグルと走り回るその迫力!AIカーもリタイヤしまくる激しさ!「案外おもしろいじゃん!」となって、好きな競技カテゴリーが増えていくという塩梅である。次はインディカーに挑戦してみよう!

「PROJECT CARS 2」レビュー 王道のGTレース
「PROJECT CARS 2」レビュー 王道のGTレース
王道のGTレース
「PROJECT CARS 2」レビュー オーバルもモダンからクラシックまである
「PROJECT CARS 2」レビュー オーバルもモダンからクラシックまである
オーバルもモダンからクラシックまである
「PROJECT CARS 2」レビュー 悪路をねじふせるラリークロス
「PROJECT CARS 2」レビュー 悪路をねじふせるラリークロス
悪路をねじふせるラリークロス

大幅に進化した車両挙動。アシストなしでのハンドリングは本格シムそのもの!

「PROJECT CARS 2」レビュー やはり車両の挙動こそがレースシムの命
やはり車両の挙動こそがレースシムの命
「PROJECT CARS 2」レビュー ハンドルもペダルも丁寧に。タイヤを活かし切ることでのみ高タイムを出せる
ハンドルもペダルも丁寧に。タイヤを活かし切ることでのみ高タイムを出せる
「PROJECT CARS 2」レビュー レコードライン上は明らかにグリップが増す。丁寧にライン取りをしていこう
レコードライン上は明らかにグリップが増す。丁寧にライン取りをしていこう
「PROJECT CARS 2」レビュー 挙動がしっかりしているので、ビタッとしたコーナリングも決めやすく、気持ちがいい
挙動がしっかりしているので、ビタッとしたコーナリングも決めやすく、気持ちがいい

 さて、レースゲーム/シムの命となるのが車両挙動、走り味だ。本作は前作から多数の進化を遂げ、コンテンツ量も倍増しているが、特に、この部分が劇的かつ決定的に進化したといっていい。

 前作「Project CARS」に見られた、「NFS: SHIFT」から続いてきたSlightly Mad Studios特有の味付けというか、車がやたらとスライドしながら走るクセみたいなものは、本作ではすっかり消えている。グリップすればしっかりグリップするし、スライドさせればスライドする。そのメリハリがきちんとついて、自分がいま、したい走りをきちんとできるようになっている。

 バンプに対する応答や、トラクションを掴みきれない時の動きなども、説得力抜群だ。車種によって走り味が大幅に変わってくるところもいい。低馬力のロードカーでは滑らかなハンドリングを楽しめ、ハイパワーなGTカーでは怖くなるほど荒々しい挙動を堪能できる。ラリーカーでダートコースを走るときは、力任せのパワースライドの中にもしっかりと細やかなロードインフォメーションを感じ取ることができる。

 全体的に言って、本作の車両挙動は本格シムとして名高い「iRacing」や、「Assetto Corsa」に極めて近いものになった。どれがより“リアル”かはわからない。なにしろ、筆者は一介のゲーマーで、競技用車両でサーキットを走ったことなんてない。でも、本格シムをやり続けてきて、身にしみた挙動が本作にもあることはわかる。全てのアシスト機能をオフにして、全力走行をしてみるとそれは感じられる。

 敢えて比較していうなら、同じくらい“リアル”に感じられる中でも、「iRacing」は比較的穏やかでスムーズな走り味で、「Assetto Corsa」はごく小さなバンプやタイヤの歪みも捉え、縁石に乗り上げるとふっとばされるような荒々しい走り味。そして本作「PROJECT CARS 2」は、その中間あたりの走り味というふうに感じた。だが、車種によって大幅に味わいが変わってくる。Ferrari 488 GTEでニュルブルクリンク北コースをアタックしたら、手におえないほどの荒々しさに、全身の毛が逆立つような思いをしたほどだ。「やべえ!ヤベエ!」とか思いつつ、必死になっていたらいつのまにか1周走りきっていたという感じである。

 これが、より低速で走行する車だとまた全然違う。キャリア・モードの序盤で乗ることになる低馬力かつ安全マージンの大きい車だと、本気でスピンさせるつもりでもないかぎり、極めてスムーズな乗り味である。縁石に乗り上げても“モコッ”という感じで、柔らかいサスペンションが衝撃をしっかり吸収していることを手で感じ取ることができる。

 かといって運転が簡単かというとそうでもなくて、遅い車であっても良いタイムを出すためには、スムーズなブレーキング、じわりとしたハンドルとスロットル制御など、とても丁寧な操作が必要だ。慌ててスロットルを開けると、後輪が滑ってドリフト気味の立ち上がりとなり、タイヤが空転してタイムロスは避けられない。このあたり、ある程度パワーでねじ伏せられる大馬力の車とは違った奥深さがあり、すごく面白い。

「PROJECT CARS 2」レビュー ニュルブルクリンク北コースの全力アタック。ワンミスで大惨事になるのが醍醐味。猛烈な勢いでサイドから縁石に突っ込むと、ちゃんと車がゴロゴロ転がる
「PROJECT CARS 2」レビュー ニュルブルクリンク北コースの全力アタック。ワンミスで大惨事になるのが醍醐味。猛烈な勢いでサイドから縁石に突っ込むと、ちゃんと車がゴロゴロ転がる
ニュルブルクリンク北コースの全力アタック。ワンミスで大惨事になるのが醍醐味。猛烈な勢いでサイドから縁石に突っ込むと、ちゃんと車がゴロゴロ転がる
「PROJECT CARS 2」レビュー セッティングメニュー。細かく自分でやるか、レースエンジニアに頼むかを選べる
セッティングメニュー。細かく自分でやるか、レースエンジニアに頼むかを選べる

 もちろん、セッティングによっても大きく変わってくる。駆動系から足回り、ボディ、エアロパーツ等のセッティングも、考えられる限りあらゆる項目が調整可能だ。タイヤの角度いろいろ、サスペンションの長さ硬さいろいろ、ウィング角、エンジン設定、ギア比、その他いろいろあるけれど、詳しくない人でも大丈夫な仕組みも用意。

 レースエンジニアのアドバイスを受けるという設定で、「もっとスピードを出したい」、「コーナリングを良くしたい」といった質問を選ぶことによって、適切な設定方法を教えてくれるほか、自動で必要な設定をしてくれるシステムがあるのだ。たとえば「それなら最終ギア比を上げたほうがいいな。あるいはタイヤ圧を上げるのも手だ」というふうに、具体的に教えてくれた上で、自動設定するかどうかを選べる。なんという親切さ。これならカーメカニック初心者も次第に詳しくなっていける。

「PROJECT CARS 2」レビュー レースエンジニアに任せる場合、4つの大項目から改良したいものを選択
レースエンジニアに任せる場合、4つの大項目から改良したいものを選択
「PROJECT CARS 2」レビュー プレーヤーのリクエストに応じて、適切な設定を教えてくれ、さらに自動設定するかどうかも選べる
プレーヤーのリクエストに応じて、適切な設定を教えてくれ、さらに自動設定するかどうかも選べる
【【PROJECT CARS 2】488GTE/Nordschleife 世界1位のゴーストと戯れる】
【【PROJECT CARS 2】トヨタ86 VRテストドライブ / Toyota 86 VR Test Drive】

ダメージモデルにはゲーム的な味付けがある

「PROJECT CARS 2」レビュー 集団の中にいると追突が怖いところだが、もらい事故のダメージは軽減あるいは無効化される
集団の中にいると追突が怖いところだが、もらい事故のダメージは軽減あるいは無効化される

 ただし純粋なシムとは違ったところもある。車両ダメージの扱いだ。本作では、接触時等の車両へのダメージを、オフ・外見のみ・性能に影響・フルの4段階で設定できるが、フルにしても接触時のダメージは実車映像で見るものより控えめである。

 特にゲーム的な工夫となっているのは、“もらい事故”の扱いだ。自分からドーンと突っ込んでぶつかると一発でボンネットは吹っ飛ぶしガラスは割れるし車軸も曲がってまともに走行できなくなるのだが、他の車が突っ込んできて車両のリアやサイドにドカーンとぶつかられても、ほぼダメージなしという扱いになる。このおかげで、レース中にAIカーに突っ込まれてリタイヤ、というストレスフルな状況が起きなくなっているわけだ。

 というわけでダメージの扱いまで含めると本作は純粋なシムとはいえないかもしれないが、幅広いユーザーが参加するオンラインレース等の快適さを考えれば、かしこい仕様だと言える。とはいえ、できれば、レースシムガチ勢のために“もらい事故”もフルダメージとなるオプションがあると、「iRacing」のプレーヤーもこっちに来るかもしれない。

「PROJECT CARS 2」レビュー 特に悪天候でのレースでは、接触に注意。自分から突っ込むと、すぐに致命的な損傷を受けてしまう
「PROJECT CARS 2」レビュー 特に悪天候でのレースでは、接触に注意。自分から突っ込むと、すぐに致命的な損傷を受けてしまう
特に悪天候でのレースでは、接触に注意。自分から突っ込むと、すぐに致命的な損傷を受けてしまう

初心者も安心の親切設計

「PROJECT CARS 2」レビュー ゲームプレイ設定画面。簡単操作から、リアル操作まで、幅広い調整が事細かに可能
ゲームプレイ設定画面。簡単操作から、リアル操作まで、幅広い調整が事細かに可能

 このようにリアルさばかりを強調すると、なんだか難しそうと思われるかもしれないので補足しておこう。本作は初心者対応も万全だ。コースアウトしないようにステアリング操作を補助してくれるステアリングアシスト、どんなコーナーも曲がりきれるように減速を助けてくれるブレーキアシスト、タイヤの空転を抑えてくれるアンチロックブレーキシステムに、トラクションコントロールシステム、そしてスタビリティコントロール。

 すべてのアシスト機能をオンにして、さらに車両トラブル(メカニクスの不良などを再現)、タイヤ摩耗、燃費といったシム的機能をオフにしていくと、完全にアクションレースゲーム風味で遊べる。それも、挙動自体は本格シムのまま、簡単操作でスピードと迫力を堪能できるのだ。こういった豊富なオプションが用意されているのも、本作の素晴らしいところである。

フォースフィードバック

「PROJECT CARS 2」レビュー フォースフィードバックの設定画面。メニュー内でおおまかなカスタマイズが可能
フォースフィードバックの設定画面。メニュー内でおおまかなカスタマイズが可能
「PROJECT CARS 2」レビュー ステアリングコントローラーは最新のものを含め、幅広く対応している
ステアリングコントローラーは最新のものを含め、幅広く対応している

 高級なステアリングコントローラー(ハンコン)を利用する際に、ゲーム毎に味付けが違うのがフォースフィードバック(FFB)の表現だ。本作はFFBの設定を「情報伝達」、「臨場感」、「ダイレクト」、「カスタム」の4種(カスタムはPC版のみ)から選ぶことができるが、全体的な傾向というのもある。

 本作のそれは「iRacing」に近く、マイルド系だ。傾斜やバンプに足を取られたり、細かな凹凸でガタガタと揺れたりといった部分の表現は比較的ゆるやかで、そのかわり、タイヤが向きたがっている方向にハンドルが回転しようとする力はわりと強く働く。基本的に低周波の揺れであり、ビリビリと高周波の揺れが多い「Assetto Corsa」とは対極にある感じだ。

 このため、タイヤがトラクションを失うギリギリの限界、といった情報をFFBから受け取るのは難しくなっている。わからないわけではないが、応答がかすかなレベルに留まるため、細心の注意を払わないと見逃してしまうような感じである。基本的には、他のシムよりもややFFBの出力を大きめに設定してプレイすることをオススメしておきたい。

 なおPC版では、FFBの応答特性をテキスト形式の設定ファイルで細かに調整することが可能だ。この設定は160行以上にもわたる詳細かつ複雑なものになっているため、いまのところきちんと検証できていないが、やりようによっては他のゲームやシムに近い挙動を再現することもできるかもしれない。このあたりはおそらく、発売後にシムレーサーのプレーヤーコミュニティが多くの実験と検証、共有をしてくれることと思う。

VRはPCのみ2機種に対応。Oculus Riftが圧倒的に良い

「PROJECT CARS 2」レビュー VRプレイの模様。他車との距離感がつかみやすく、迫力も増す
VRプレイの模様。他車との距離感がつかみやすく、迫力も増す
「PROJECT CARS 2」レビュー 並んだライバルを横目で確認しながら走る
並んだライバルを横目で確認しながら走る
「PROJECT CARS 2」レビュー Riftを装備したレビュー環境。これだけ揃うと「PROJECT CARS 2」は死ぬほど楽しい
Riftを装備したレビュー環境。これだけ揃うと「PROJECT CARS 2」は死ぬほど楽しい

 レーシングシムでは必須装備となりつつあるVRヘッドセットだが、本作はOculus RiftとHTC Vive(もしくは他のSteamVR互換機)の2機種に対応している。残念ながらPlayStation VRは、ローンチ時点では非対応だ。

 筆者もVRなしでは満足に走れない体になっているので、RiftとViveの両方で試してみた。結論としては、Viveはあまり良くない。どれだけグラフィックスオプションを下げて、のっぺり画質にしても、フレームレートが満足に出ず、ガクガクとした動きになってしまう。一方、Riftのほうでは、なにも触らなくても、完全90fps張り付きの滑らかな動作が得られる。画質も素晴らしい。

 実は、この傾向は前作から変わっていない。前作でもViveはカクつきが目立ち、Riftは快適そのものだった。そのせいで、どうもViveはレースゲームに向かないという印象が強まりつつある。なにしろ、同じくRift/Vive両対応している「iRacing」および「Assetto Corsa」でも、同じような(Riftでは快適、Viveではフレームレートが落ちる)という状況を体験しているからだ。

 というわけで、Viveオーナーの皆さんは、もし本作をVRでプレイするなら、血の涙を流しつつでもRiftを追加導入することをおすすめする。Riftのトラッキングシステムは極めてコンパクトなので、レーシングシートに取り付けるのも簡単だし。

世界の仲間たちとつながる!コミュニティイベント、そしてe-Sports

「PROJECT CARS 2」レビュー オンライン要素のハブとなる「コミュニティ」タブ
オンライン要素のハブとなる「コミュニティ」タブ
「PROJECT CARS 2」レビュー 本作のコミュニティシステム「ドライバーネットワーク」のIDとなる競技用レースライセンス
本作のコミュニティシステム「ドライバーネットワーク」のIDとなる競技用レースライセンス
「PROJECT CARS 2」レビュー 発売日以降、予定されているコミュニティイベント。レースライセンスと連動していくようだ
発売日以降、予定されているコミュニティイベント。レースライセンスと連動していくようだ
「PROJECT CARS 2」レビュー 自分で作れるカスタムレースでも、参加可能なライセンスレベルの設定ができる
自分で作れるカスタムレースでも、参加可能なライセンスレベルの設定ができる

 本作は最先端のレースゲームらしく、オンライン要素も非常に充実している。レビュー時点では発売前なので残念ながらオンラインレースは体験できていないのだが、オンラインで楽しめる様々な要素が存在していることを確認することができた。

 自前でオンラインレースを開催できる「カスタムイベント」では、練習セッションや予選の有り無しから、天候、時間帯、出走台数、その他いろいろ、ゲーム内で可能なあらゆる設定ができ、初心者からコアな人まで大丈夫である。最大出走台数はPC版は32台、PS4版は16台。全員プレーヤーで参加することも、足りない分をAI埋めることも可能だ。

 もちろん、公式イベントもある。そこで重要となるのが、本作のドライバー・ネットワークというコミュニティ機能の存在だ。プレーヤーはIDとしてそれぞれ競技用レースライセンスというものを持っていて、名前、ニックネーム、国籍、そして競技ライセンスポイントというものが属性として付加されている。これについて、ゲーム内では、オンラインレースでクリーンに戦っていくとライセンスのレベルが向上していくという解説があった。このあたりは「iRacing」に近い仕組みのようだ。

 オンラインレース専門のシムである「iRacing」では、クリーンなレースを行なうことでドライバーレベルが向上していく仕組みがある。コースアウトや接触等のインシデントは厳しく累計され、危険行為等が一定の段階になるか、他のプレーヤーからの申し立てにより、ライセンスがレベルダウンしたり、出走資格を剥奪されたりする。こういった仕組みがあるため、「iRacing」の上位クラスは極めてクリーンでハイレベルなレースが展開しており、プロのレーサーも大勢プレイしているほど、e-Sportsとしての地位も高い。本作「PROJECT CARS 2」はそのエッセンスを取り入れているようだ。

 本作におけるライセンスと連動しているのが「コミュニティイベント」だ。これは本作のドライバー・ネットワーク上で開催される、いわば公式のレースイベントである。レビュー段階ではまだ開催されておらず、詳細はよくわからないが、「予定」の欄を見ると、発売日の9月22日(日本時間。世界標準時では21日)から1週間にわたり、まずは本作のローンチイベントとして4つのレースイベントが並列開催されるようである。また、29日からはバンダイナムコエンターテインメント公式大会が実施されるようだ。

 それぞれ、使用コース、使用車種はあらかじめ予定画面から確認できるようになっており、事前練習も可能。出走条件はドライバーライセンス「U100」以上となっており、おそらく、これが実質全員参加できるランクになるのではないだろうか。

 出走して、クリーンに戦って、なんらかの結果を残せば、このライセンスポイントが向上していくのだろう。逆に、他のプレーヤーにガンガンぶつけて、妨害するようなレースを行なえば、評価を失っていくという仕組みになるはずだ。

「PROJECT CARS 2」レビュー ローンチイベントが終わるとすぐに、バンダイナムコエンターテインメントの名前が冠されたイベントも。その後もさらにイベント予定が続いており、ヒマになることはなさそうだ
「PROJECT CARS 2」レビュー ローンチイベントが終わるとすぐに、バンダイナムコエンターテインメントの名前が冠されたイベントも。その後もさらにイベント予定が続いており、ヒマになることはなさそうだ
ローンチイベントが終わるとすぐに、バンダイナムコエンターテインメントの名前が冠されたイベントも。その後もさらにイベント予定が続いており、ヒマになることはなさそうだ
「PROJECT CARS 2」レビュー メニュー内の「eスポーツ」画面
メニュー内の「eスポーツ」画面
「PROJECT CARS 2」レビュー 公式のe-Sportsサイト。こういったものとゲームが連動している
公式のe-Sportsサイト。こういったものとゲームが連動している

 こうした仕組みを組み合わせて、本作ではe-Sports展開にも本腰をいれていくようである。本作にはメインメニュー上に「eスポーツ」というカテゴリーがあり、そこではTwitchでのリアルタイム配信や、Youtubeのビデオアーカイブへのアクセス、あるいは公式サイト上のニュース、e-Sportsイベントの予定・結果といった情報へアクセスできるようになっている。

 本作はすでにRedbull 5Gという複合型eスポーツイベントのレースゲーム部門に採用されることが決まっているため、そういった公式大会の模様がこの画面から簡単に見られるようになるのだろう。上述した「コミュニティイベント」でも、公式のe-Sports大会が開催され、多くのプレーヤーに門戸が開かれることになるのは確実である。

 レースシムは世界中にファンがいて、大きな大会は賞金も高額である。いまのところ、レースシムのe-Sports展開における王者の座には「iRacing」がいるが、その座を本作「PROJECT CARS 2」が奪っていくことになるか、プレーヤーとしても、視聴者としても大変楽しみである。

 いずれにしても、筆者個人としては、本作の走り味が心底気に入ったので、これまで遊んでいたレースシムはしばらくほったらかして、当分、いろいろなコース、車種で走りまくる予定である。もちろん、オンラインレースも。発売後、皆さんといっしょに走るのがほんとうに楽しみである。

不満点は?

 といった感じで、本作「PROJECT CARS 2」は間違いなく、会心の出来のレースゲームであり、最上級クラスのレースシムである。前作の弱点を多く補い、強みを拡張して、レベルを問わずすべての人が楽しめる作品に仕上がった。e-Sports的に盛り上がるのも間違いない。

 とはいえ、全部がパーフェクトというわけでもない。懸念点をいくつかにわけて書いて、この記事を終わりにしよう。

1.UIのカスタマイズ性が不十分

「PROJECT CARS 2」レビュー HUD上の各要素はある程度自由に配置できるが、サイズや各項目内容の調整はできない
HUD上の各要素はある程度自由に配置できるが、サイズや各項目内容の調整はできない

 本作ではスピードメーターやレースタイム、レース順位など、様々なHUD上のUI要素を自由にレイアウトすることが可能だ。これは特にVRヘッドセットでプレイするときに役に立つ。スピードメーターや、コースレイアウトの情報など、視線をそらさずに見たいものは、視野中央にぎっしりと配置したいからだ。

 配置が自由にできるのはありがたいのだが、とはいえ、表示サイズや内容そのものの調整は不可能である。たとえば、ラップタイムをもっと大きく表示したい、というような要望には答えられないし、セクター毎のデルタタイムを表示したい、というのも、そういうUIアイテムがないので無理だ。タイヤとエンジン状況の表示アイコンも、もっと詳しく表示できるオプションが欲しい。HUD切り替えボタンで、テレメトリーモードにはできるのだが、通常画面にもっと詳しく、というのはできないのである。

 「PROJECT CARS 2」ではHUD切り替えボタンで、テレメトリーモードにはできるのだが、通常画面にもっと詳しくというのはできないのである。そちらになれると結構不自由に感じるところだ。MODサポートを可能にしてほしいとはいわないまでも、もう少しUIのオプションを幅広くしてくれると嬉しい。

2.音響がしっくりこない

「PROJECT CARS 2」レビュー リプレイ視点では、スコーンと遠くに抜けていくような音響を期待するが……
リプレイ視点では、スコーンと遠くに抜けていくような音響を期待するが……

 本作のエンジンサウンドは非常に素晴らしい。GTカーやインディカーの吠えるような音は耳から体の芯までしびれるようだし、普通の車の聞き慣れたエンジン音も、味わいがあっていい音だ。でも、どうにも音響がしっくりこない感じがある。というのも、エンジン音自体はよくても、車内で聞こえる音、車外で聞こえる音の変化のメリハリが薄いのである。

 リプレイシーンなどで、遠くから近づいてくる車の音は、やはり遠景に吸い込まれるような音を期待するけども、本作では車中で聴く音とあまり変わらない、すぐそこで鳴っている感じ、というのが少なくとも筆者の印象だ。このあたりがすごく良く出来ているのは、最近では「F1 2017」だろう。コックピットで聞くエンジン音と、観戦ビューで聴く音は全く違って、それぞれ適切な音響効果が付与されている。

 それから、車体のきしみや、底打ちなどから生じる、ガチャガチャ、ギシギシ、ガスッといったメカニカルノイズの不足も感じる。本作でも、音響プログラムの改良など、さらにできることはありそうだ。

3.融通の効かないAI

「PROJECT CARS 2」レビュー ただしラリークロスは苦手なAIたち。なんかへんな詰まり方をする
ただしラリークロスは苦手なAIたち。なんかへんな詰まり方をする

 本作のAIは、基本的には運転がすごく上手だ。いかなるシチュエーションでも、例えば豪雪+オープンホイールのようなプレーヤーにとってはほぼ操縦不能レベルの状況でも、完璧なライン取りで、いっさいミスをせず走る。

 キャリア、クイックレースその他のAIカーが出てくる状況で、自由にAIのレベルおよび積極性は調整できるものの、レベルを下げても完璧なライン取りはそのままで、ヘタになるわけではない。レベルの違いは、おもに車のトップスピードの違いとして現れる。同車種、セッティング固定のレースでもそうなので、勝てるレベルに調整すると、アンフェアな感じがするのは否めない。

 また、ラインを守ろうとする習性が非常に強いため、プレーヤーがミスを犯してレースライン上で充分なスピードを出せていないときなど、距離が詰まっていると後ろから容赦なくぶつかってくる。現実においては、接触は絶対避けたいことなので、いったんコース外に逃れてでも回避していくシーンを映像で見ることがあるが、それをしてくれない。このため、苦手なコーナーに入るとき、早めにブレーキを入れると、後続の車に突っ込まれたりして大変である。

 おまけにもうひとつ。練習セッションでも、AIはしょっぱなからレーススピードで走行する。プレーヤーが、暖機運転のつもりでゆっくり走っていると、思わぬタイミングで追突されることもしばしば。また、同じく練習セッションで、プレーヤーが低いランクのAIカーよりも明らかに高速で走っている時。遅いほうがラインを譲ってくれと思うところだが、そういう融通がきかない。コーナリング時に思いっきり邪魔になる。そういうときはしょうがないので、こちらがレースラインを外してから抜かすか、減速して距離を取ってからもう1周アタックすることになる。

 このあたりのAIの人間くささみたいなところは、いまのところ他のレースゲームのほうが優れているように感じる。本作でも、もっとAIが“賢く”なるように、改善をしていってほしいと感じている。

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