【特別企画】
「Project CARS 3」ファーストインプレッション
ゲームシステムは大幅に変化! GRスープラで走って感じたその醍醐味とは!?
2020年7月30日 23:00
- 【Project CARS 3】
- 8月28日発売予定(Xbox One/Steam)
- 9月10日発売予定(PS4)
- 価格:
- 7,600円(税別、PS4/Xbox One)
- オープン(Steam)
この7月、そのリアルな挙動で世界のレースシムファンの度肝を抜いた「Project CARS(以下、pCARS)」の最新作「Project CARS 3(以下、pCARS3)」がついに世界のゲームメディア向けにお披露目された。「Project CARS」のシリーズということでいやが上でも期待が膨らむ。
今作もPC(Steam)だけではなく、PS4やXbox Oneのマルチプラットフォーム展開が予定されており、今回はPC版を体験することができたので、早速インプレッションをお届けしたいと思う。なお、今回はPC上で試遊バージョンを使用している。製品版では、仕様変更が行なわれる可能性があるのでご注意いただきたい。
まずはゲームシステムから。これまでの「pCARS」や「Project CARS 2(以下、pCARS2)」ではあくまでも”ストイックに走る”ためのゲームだった。それこそ初代においては有志が”MOD”と呼ばれる車両やコースのデータを提供しあい、「pCARS」自体が持つ極上の物理エンジンをもってホンモノのクルマのシミュレータに仕上がっていった経緯を持つ。「pCARS2」ではそこをベースにオフィシャルとしてデータを集約してパッケージ化することでPS4やXboxにも展開されていった。
そしてこの「pCARS3」では大幅なゲームシステムの変更が行われた。前作までのストイックな内容からどちらかといえばアーケードやコンシューマーに寄せたと言えばいいだろうか、キャリアモードがメニューのトップに来ている。”XP”と呼ばれる経験値とゲーム内クレジットを稼いでクルマを購入やチューニングに使ってレースに勝っていく、という内容になったのだ。
収録される車種は200以上、コースは120以上とのことで世界中の有名なサーキットはもちろんのことオリジナルサーキットも多数収録されている。「pCARS」ファンにおなじみのコース「Sakitto」(鈴鹿サーキット)もちゃんとあるのでご安心を!
ちなみに、「pCARSシリーズ」パブリッシャーの「SLIGHTLY MAD STUDIOS」は「CODEMASTERS」の傘下になったとのことで、おそらくそういった体制の変化もあってこのように大胆な仕様変更が行われたのではないかと推測される。確かに、今回のゲームシステムは「CODEMASTERS」の有名ラリーゲーム「DiRT Rally」シリーズなどにみられるシステムと同様だ。
レースシムファンが待ち望んだナンバリングタイトルの進化とは
まずはキャリアモードからご紹介しよう。タイトル画面を抜けると自分のアバター設定がスタートする。性別やレーシングスーツ、カラーリングを変更できる。そして出されるメニューを進めていくといきなりレースが始まった。「Monument Canyon Run」というアメリカのグランドキャニオンを舞台にしたサーキットになっている。クルマは「シボレー・コルベット」のようだ。
多くのPCレースゲームは走る前に「コントローラのセッティング」や「画面の設定」やもろもろの設定を多数こなしてからスタートするものだが、そんなものすっとばしてレースがスタートしていく。何も設定はしていないがハンドルとパドルシフト、アクセル・ブレーキは使えるようだ。画面も筆者宅の3画面モニターを自動認識しているようで3画面いっぱいに表示してくれている。
コース自体も始めて走るコースではあったしクルマの挙動もわからぬまま前のクルマたちについていく。全車はパック(集団)で走行しており、その数10台以上。実際のレースではなかなか見られない光景だが、これが「pCARS3」のライバル車AIのようだ。コースがわからないのでオーバースピードでガンガンコースアウトしてしまい最後尾でのフィニッシュとなってしまった。
納得がいかなかったので再挑戦。じっくりと前のパックに近づいていき今度は重めのブレーキングできっちり車速を落としながらコーナーに突っ込んでいくときれいに曲がってくれた。こういうところはリアルレーシングシミュレーター由来の挙動を示す。そのような走法で何台かライバル車を抜きながら上位へ上がっていくととあるコーナーで突っ込まれてその場でスピンしてしまった。あまりに慎重にコーナリングするとスパッとライバル車がねじ込んでくる。なかなかのキレた走りだ。
やはりアーケードライクというべきかAIがこなれていないのか、どちらかというとライバル車をゴリゴリ押し分けながら進んでいく走法が最適のようだ。その走法で何度かレースを行い、早めにトップを取ったらそのまま逃げの一手!それでトップチェッカーを受けることができた。そしてXPとクレジットをもらい、そのクレジットで購入できる範囲の「トヨタ86」や「ランサーエボリューション」といったいくつかのクルマの中からトップスピードと加速のパラメーターがよかった「ホンダ シビック タイプ R」を購入してキャリアモードが始まるという流れだ。
キャリアモードではスプリントレースやタイムアタックなどいくつかのミッションが用意されていて単純な作業ゲームにならないような作りになっている。それがまとまって1つのクラスを形成している。それぞれのミッションをクリアするとXPとクレジットが入手できる。これを繰り返すことにより、クレジットを貯めてクルマの購入やパワーアップに使ったり、ランクアップして、挑戦できるクラスや購入できるクルマが増えていく。クルマについてはプレイ初期段階ではほとんどがロックされているが、シルエットを見るとスーパーカー、ハイパーカーなど心が躍るようなぜひ乗ってみたいクルマがたくさんあった。
それぞれのミッションには3段階の目標(いわゆる実績)が設定されている。例えば「〇位以内でゴール」とか「ラップタイム〇〇秒以内でクリア」、「コーナーを5つクリアする」といったものも。そしてコントローラーの設定で「ビギナー(0%)」「ノービス(3%)」「ベテラン(6%)」「プロ(10%)」がありアクセルやブレーキなどの補助の入り具合などのドライビングアシストのレベルを選べ、そのレベルによってレース終了後に得られるXPに()内のパーセンテージがボーナスされる。
リアルレーシングシミュレーターを祖とする「pCARS3」ではあるが、それぞれ試してみたが違いは極端には大きくないように感じられたが、確かにドライビングは難しくはなるのでハイリスク・ハイリターンではある。試しに「プロ」でプレイしてみてうまくやれるなら「プロ」にしておけば効率よくXPが稼げる。
「pCARS2」から導入されている”LIVE TRACK 3.0”も継承されている。これはレース中の天気が刻々と変わるシステムで、ドライでスタートしたレース中にどんどん荒天していきウェットに変わるなどダイナミックなレースが展開される。逆にウェットからドライ方向になると走行するたびにレコードラインが乾いていくこともあるようだ。残念ながら時間の問題で今回の試遊会では体感できなかったが実際のレースでも起こりうる状況を体験できるのはとても楽しいと思う。
キャリアレースを進めていくと「スポーツランド 菅生」のレースが登場!しかもヘビーウェットのようで”魔物が棲む菅生”の異名の通りの展開だ。前述の”LIVE TRACK 3.0”の効果によって同じレースを繰り返してもその天候が様々に変わる。やはりレース一発目で勝つことはできなかったが、何度もチャレンジするとコースの攻略方法やヘビーウェットでのクルマの挙動も理解できてきた。2速発進の方が加速もスムーズでリアルさを感じる。若干4輪ドリフトでコーナーを抜けていけたらとても気持ちがよかったことをお伝えしておきたい。
コースのあちこちに水たまりをみつけるとステアリングを握る手もぐっと力をこめ、アクセル・ブレーキもだいぶ慎重になってくる。コーナーのイン側をあからさまにカットしたりコース外を走行するなどした場合、ペナルティとしてスピードが落とされ、ライバル車たちが自車を素通りしていくようになり、最後尾まで落ちてしまう。こうなると優勝するのはだいぶむずかしくなるので注意が必要だ。
そしてこの”LIVE TRACK 3.0”だが、レース中クルマを止めてしばらくほっとくと時間が進み、夜から次第に朝になって明るくなってきたりしてゲーム内ではあるが世界を再現するその効果はやはりすさまじいものがある。荒れた天気だと霧や風雨も表現され、風にあおられて揺れまくる木々は見ているのが楽しくなるほどの効果を感じられる。レースゲームはここまで進化しているのだと改めて感心させられた。
今回試遊のメインイベントで使用できたのはこのクルマとコースの組み合わせ!
続いてメインメニューから”カスタムイベント”を選択する。これはクルマ・コース・天候・日時・AI車・レース形式などを自分の好みで組み合わせて作れるイベントのことだ。
クルマは先日の2020スーパーGT開幕戦で驚異の1~5位独占を果たした「トヨタ GRスープラ」、そしてコースは中国上海に設定された市街地コース「Shanghai Henan Loop」。ちょうど東方明珠タワーの対岸に位置するサーキットだ。天気は晴れだが夜の走行となっておりとても気を遣う。そしてライバルAI車15台とプlll1台の計16台がひしめき合う全5周のスプリントレースだ。
何も特別な変更はせずそのままレーススタートさせてみる。ドライビングアシストは”プロ”のまま。すると「pCARS」の本性が牙をむく。そう、「GRスープラ」はFRという後輪駆動方式のクルマである。FR(Front engine / Rear drive)はクルマの前にエンジンがあり後ろのタイヤを駆動させる高級車やスポーツカーによくある駆動方式だ。「GRスープラ」はこの駆動方式で340馬力を発生するハイパフォーマンスのクルマである。
クルマに詳しい方ならお気づきかもしれないが、ご想像の通りタイトコーナーであっけなくスピンしてしまった。キャリアモードは「ホンダ シビック タイプ R」だったのだがこのクルマはFF(Front engine / Front Drive)つまり前輪駆動という方式で、スピンしにくい構造だったのだ。スピンした瞬間、”「pCARS3」は一流のレーシングシミュレーターのDNAを継ぐもの”なのだとはっきりと思い知らされたのだった。
それでもチャレンジあるのみ!と何度も挑戦するもやはりパック走行のライバルAI車達には手も足も出せない状態がだいぶ続いた。ここは苦渋の決断をせざるを得ない……ドライビングアシストを徐々に強めていくことにした。
徐々に、結局”ビギナー”にまでしてはみたものの、高速域からのハードブレーキングだとリアがふらついたりブレーキを残したままのコーナリングでは自爆スピンを誘発するし、加速のときにちょっとでもアクセルを踏みすぎるとそれもまた自爆スピンになってしまってどうにもうまくいかない。できることはやったのであとは鍛錬あるのみ。ハンドリング、アクセル・ブレーキをさらに慎重になめらかに確実に行っていくしかない。実際のスポーツ走行と同じだ。
そしてこれはライバルAI車の挙動の話になるが、βバージョンということも考慮することにはなるがだいぶ攻撃的なAIのようだ。このカスタムイベントにおいてAI車の”強さ”・”攻撃性”という見慣れない設定項目があるのだがそれぞれ「ベリーロー」、「ロー」、「ミドル」、「ハイ」、「ベリーハイ」と5段階に設定できる。
”攻撃性”というパラメーターが直接影響している感じはなかったのだが、走行ラインはトレースするもののライバル車との速度差はあまり考慮されていないようだった。慎重にコーナーをクリアしていたり、場合によっては直線においても速度を合わせることはなくリアへクルマを押し込んでくる、結果押し出しのスピンアウトになってしまう。
その押し出しスピンをしかけられると、ほぼ間違いなく180度回ってしまい進むべき方向とは真逆になってしまう。そして速度や状況を判断していない後続のAI車達はノーブレーキのミサイル状態で突っ込んできて弾き飛ばされてしまうのだった。
βバージョンということでAIの熟成はされていないのだと思いたい。ぜひ製品版に期待したいと思う。というわけでAI車のパラメーターも「ベリーロー」にして、これで実力はイーブンとさせていただきレース再開!
その甲斐もあってレースは実力拮抗のいいレースが展開された。こちらも慎重に慎重を重ねたドライビングで立ち向かってなんとか首位のクルマに追いつき、パスすることに成功!みごとに1位をゲットすることができた。数時間結果が出なかったのでこの勝利は格別のものがあった。コクピットでおもわずガッツポーズ!レーシングゲーム好きとしてはドライビングアシストとAIの設定を徐々に変えながらそれでも1位が取れるようにプレイ続けるのみ。気が付けば本作にずっぽりハマっている筆者がいた。
試遊してみて、改めて「pCARS」とは何かを考えてみる
筆者はシリーズのファンとして、「pCARS3」においても初代のように究極の物理エンジンを現代に合わせた仕様で進化させて、さらに”MOD”を飲み込みながら進化していてほしい。そういう思いをもって今回の試遊に参加させていただいたわけだが、それは見事に打ち砕かれた。
「pCARS3」は、開発元がCodemastersの傘下になったこともあるのか、ゲーム性がリアルシミュレーター系から誰でも楽しめるカジュアルレースにシフトしている。筆者のようなシリーズのファンからすれば「これは違うなぁ」という感想を持たれる方もいらっしゃるかもしれない。
筆者も今回キャリアモードをプレイしながらそう思っていたが、カスタムイベントに手を伸ばしてみたところ、これがなんとも「pCARS」の物理エンジンの味を残したままここまで手軽にレースができるようにしたものだと思えるようになってきた。
特に、FFからFRに乗り換えてその駆動方式の違いをガッツリ感じられたのは、その物理エンジンがしっかりしていることの裏返しであり初代から脈々と受け継がれているDNAを感じることができたのだ。
前作同様、コンシューマーハード上でも展開することやコードマスターズカンパニーとなったことを考えればこの極上の物理エンジンをもってもっと手軽に”楽しい”クルマの挙動を伝えてくれることに敬意を表したい。そうでなければPC上の狭い世界を満足させるだけなのだから。
今回試すことはできなかったが、オンラインモードもあるなどeスポーツ向けにも使えるのではないだろうか。実際のクルマの挙動に限りなく近い「Project CARS 3」で練習して実際のレースに出てもいい結果を残せるだろう。そうでなくともこの挙動を味わえるレースゲームをオンラインで楽しめるというのは勝つ喜びはもちろん、負けた理由もはっきりわかるので一段上の満足感を得られると思う。それが「Project CARS」だ。