「NieR:Automata」レビュー

NieR:Automata

何度も驚かされる奥深い物語
爽快なアクションと世界観に酔えるRPG

ジャンル:
  • RPG
発売元:
  • スクウェア・エニックス
開発元:
  • プラチナゲームズ
プラットフォーム:
  • PS4
価格:
7,800円(税別)

発売日:
2017年2月23日

※このレビューはネタバレ注意です。

 「NieR:Automata(ニーア オートマタ)」がついに発売された。本作はディレクターのヨコオタロウ氏でしか描き出せない独特の魅力を持ったRPGである。そのもの悲しくも美しい世界観、ストーリーテリング、キャラクター描写は深く強くプレーヤーの心を揺さぶる。

 告白してしまうと、筆者はヨコオ氏の作品に触れたのは本作が初めてだ。筆者はE3のインタビューから本作を心待ちにしていたが、今回は「『NieR:Automata』で初めてヨコオ氏の作品に触れる人と同じ目線でプレイしたい」という気持ちがあり、あえて他のヨコオ作品をプレイしなかった。

 結論から言えば筆者は本作をプレイしたことで「NieR:Automata」の世界に一気に引きこまれ、囚われてしまった。できることなら家に引きこもって、ずっとプレイしていたい、この世界をずっと旅していたい。そして以前のシリーズ作品もプレイしたくなってしまった。今回のレビューではヨコオ作品に初めて触れた筆者のゲームの感触と、ゲームの基本要素を中心に語っていきたい。この世界が気になった人は、ぜひ本作を手にとって欲しい。

 もちろん、全く知識を入れないでプレイするのも楽しい。どうしても少しのネタバレはしてしまうので、プレイしてからレビューを読むのもアリだと思う。

【NieR:Automata/ニーア オートマタ: PlayStation Experience トレーラ】

地球を取り戻すため、最新最強のアンドロイドが戦いに挑む

 人類は地球から放逐されていた。ある日突然やってきた異星人とその尖兵「機械生命体」との戦いに敗れた人類は、地球を追い出され、月に逃げ延びていた。彼らは地球奪還を目指し自らの姿に似せた戦闘機械「アンドロイド」を作り、地球に降下させるが、その戦いは膠着状態となったまま、長い時が過ぎた。

主人公2B。感情を殺し、冷たい雰囲気を放っているが、様々な事柄が彼女に変化をもたらす
2Bを支える9S。実は彼は“ツッコミ役”としても優秀だ
レジスタンスキャンプでは長い間戦い続けるアンドロイド達と出会う
機械生命体のパスカル。彼(?)達は、戦うことをやめた平和主義者だという

 人類はこの状況を打破すべく最新アンドロイドによる部隊「ヨルハ部隊」を投入、ヨルハ部隊の1人であり、主人公の女性型アンドロイド2B(トゥ・ビー)は、彼女をサポートする9S(ナイン・エス)と共に、機械生命体と戦いながら、この地球の“現在の姿”を見ていく中で、様々な影響を受けていく……。

 「うわーこれは書けないな!」ゲームをスタートした瞬間に筆者が叫んだセリフである。筆者は最近でも「Dishonored 2」や、「ウォッチドッグス2」、「マフィア III」などのレビューを担当している。自分でもストーリー性の強いゲームのレビューを得意としていると自負しているのだが、「NieR:Automata」は書くのに困った。

 「NieR:Automata」の最大の魅力は“驚き”である。プレーヤーが予測したものがドンドンひっくりされていく。それはストーリーのみならず、キャラクターの言動、世界そのもの、さらにゲームシステムさえも先入観を大きく揺さぶってくるのだ。このため、他の作品のように、序盤のいくつかのエピソードを紹介してゲームの雰囲気を伝える、というのがとても難しい。

 例えば先行配信されている体験版「DEMO 120161128」が本編のどこに入るかは、とても言えない。体験版では2Bと9Sが、まるでゲームのエンディングではないかという“覚悟の決断”を下す。体験版をプレイした人からは「これ、ゲーム本編のエンディングじゃないの?」という声が上がったが、筆者も体験版をプレイした時、「これから2人はどうなるの? というか、この後本当に続くの?」と思った。ぜひ、体験版はプレイして欲しいし、この体験版という“ピース”が本編のどこにはまるか、確かめて欲しい。

 2Bと9Sが訪れる世界はプレーヤーにとっても未知の土地だ。植物に被われた廃墟や、砂に飲み込まれていく都市が見える砂漠地帯は、「人類が去った後の世界」として見る者にもむなしさを感じさせる。

 この荒れ果てた世界を闊歩しているのが、機械生命体だ。彼らの多くはボール状の頭に小さな目、ドラム缶のような寸胴のボディが載っている、見ようによってはかわいらしい姿だが、多くの個体が2B達を見ると猛然と襲いかかってくる。しかしそれ以外は彼らは何もせず、無目的にフィールドを歩き回っているのだ。彼らは何のために、何をしているのだろうか。

 2B達を支援する“レジスタンス”もアンドロイドである。この世界に人間はいない。アンドロイド達の個体の中には気が遠くなるような長い時間を戦い続け、体中のパーツを交換し、オリジナルのパーツはほとんどないものもいるという。各地ではアンドロイド達の朽ちた体もたくさん見つけることとなる。この果てしない戦いはいつまで続くのか。

 2B達はこの戦いを終わらせるために投入された。アンドロイドは、人類は、そして機械生命体は……、2B達が戦いを進めていくごとに様々な事柄が明らかになっていく。1つの鍵となるキャラクターが、機械生命体の1人「パスカル」だ。彼(?)は平和を望む人物であり、同じ志を持つ機械生命体と共に平和の道を探している。彼らとの出会いは2Bと9Sの運命を大きく変える。そして世界そのものも大きな変革を迎えていくのである。

 繰り返すが「NieR:Automata」の最大の魅力は“驚き”である。アンドロイド、人類、機械生命体、異星人……これらの存在はどんどん“別の顔”を見せていく。新しい真実によってプレーヤーが思っていた価値観が大きく揺らぎ、全く新しい視点が与えられる。何を信じれば良いのか、自分の視点は正しいのか、プレーヤーはゲームの中の2Bと同じように何度も問いかけながら世界を歩いて行くこととなる。1つの謎が明らかになると、さらに大きな謎が生まれる。「この先に何があるのか」そう思いながらゲームを進めていく楽しさが、「NieR:Automata」にはたっぷり詰まっている。

【地球の風景】
植物に覆われた廃墟都市
荒涼とした砂漠地帯。多くの人々が住んでいたであろう地域も
ショッピングモールだった場所は、巨木に覆われている
様々な場所を2人は進んでいく

思いっきり切り刻み、たたきつける、爽快感の強い戦闘

 ストーリーを進める楽しさ、世界を探索する楽しさ、RPGとして欠かせないこれらのポイントに負けないアピールポイントが“戦闘”である。アクションゲーム開発で大きな実績のあるプラチナゲームズならではの高いアクション性は、「NieR:Automata」で大きなウリである。何よりもレスポンスが気持ちいいのだ。嵐のような連続攻撃で数で襲い来る機械生命体をなぎ倒し、破壊する、この圧倒的な力の感覚は、プレーヤーを酔わせる。

巨大な武器を思いっきり振るう。戦闘はとても爽快感が強い
敵の攻撃に合わせて回避すると、“粒子化”して完全回避ができる。この後特別な攻撃が可能だ
武器は2つ装備することができる

 □ボタンで弱攻撃、△ボタンで強攻撃、R2ボタンは“避け”で、特に敵が攻撃した瞬間R2ボタンを押すと2Bの体が残像を残して“粒子化”して攻撃を完全回避でき、その後攻撃ボタンを押すことで特別な攻撃が出せる。小型剣の場合は敵を空中に切り上げ追撃のチャンスを作るし、槍の場合は回転させ周囲の敵を吹っ飛ばす。弱攻撃、強攻撃にどの武器を割り振るかでも攻撃が変わる。

 もう1つの攻撃方法が「ポッド」を使った遠距離攻撃だ。L2でロックオンし、R1で攻撃を行なう。基本のポッドはバルカン。筆者はミサイルタイプも入手した。さらにL1で特殊攻撃が使える。レーザーや巨大なハンマーを振り下ろすもの、一定時間剣を振り回すものなど様々だ。接近戦と遠距離攻撃を駆使し、スピーディに敵を殲滅していくのが楽しい。

 武器はそれぞれ個性的だ。剣も通常の大きさから大型のものもあり、剣カテゴリーには斧もある。そしてカテゴリーは槍、さらには格闘用のガントレットもある。これらは「のびたコイル」、「凹んだソケット」など収集アイテムによって「強化」が可能で、これらの素材を手に入れるためにもサブクエストや、探索にも熱が入る。

 武器は「双子の牙」、「白の契約」、「百獣の剣王」など名前や見た目がかっこよく、振るったときのモーションもいい。加えてヨコオ氏のゲームの共通項としてそれぞれの武器に「物語」が用意されているのだ。物語には武器の過去の逸話、寓話めいた物語、さらにはユーモアたっぷりのものまで用意されている。これらは武器を強化していくと明らかになるので、やり混み要素としてとても楽しい部分だ。

 さらに、敵である機械生命体の面白さにも触れておきたい。砲台型の浮遊装置に乗った敵や、チェーンソーを持った敵、仮面をつけた敵など色々あるが、巨大な体と大きな両手を振り回す敵や、空飛ぶヘビのような敵もいる。敵の攻撃パターンも多彩で、地域によって微妙にアレンジされている。だるま落としのように異常に胴が長い敵などもいて、意味の分からない感じも楽しい。

 時にはいきなり奇襲してきたり、集団で囲むように現われたりと奇襲を加えてきたり、陣形を整えてきたりする。ボス戦以外にも、ジェットコースターの上で戦うなど、凝ったシチュエーションも用意されている。

【激しく、楽しい戦闘】
武器の種類、組み合わせでモーションが異なる。多彩なアクションで敵を殲滅できる
機械生命体は“地域色”が楽しい

チップを入れて機能強化。やり込み要素の強いチップシステム

 武器に加え大きなカスタマイズ要素が「プラグイン・チップ」だ。アンドロイドは様々な「チップ」を入手し、組み込んでいくことで強くなっていく。チップには「ダウン攻撃UP」、「クリティカルUP」、「HP最大値UP」など様々な種類がある。敵からドロップされるほか、様々な場所で倒れてしまった同胞アンドロイドの遺体から回収することも可能だ。

容量に合わせてチップを組み込んでいく
チップは合成することでより強力に
「衝撃波」のチップを組み込むと、近接武器でも遠距離攻撃が可能に

 これらのチップを2Bに組み込んでいくのだが、2Bには“容量”が設定されており、チップにはそれぞれコスト(サイズ)があるので、何が必要か考えて組み込んでいかねばならない。「HPゲージ」、「セーブ可能表示」などインターフェースの基礎といえる部分もチップ化されており、これをあえて外してパワーアップを図るという方法もある。

 チップのコストは幅があり、コストが低めのチップを入手することもできる。このコストは「合成」で重要となる。コスト6の「衝撃波」とコスト7の「衝撃波」を組み合わせるとコスト8の「衝撃波+1」となる。そして「衝撃波+2」を合成させるためには2つの「衝撃波+1」を合成させる。このようにどんどん強力なチップを作っていくことができるのだ。

 ベースとなるチップのコストが低い方が、合成して強力になってもコストを抑えられる。同じ効果を持つチップでも、コストが倍近く違う場合もあり、そうなると装備できるチップの数は全然変わってしまう。コストを意識したチップ合成、プレイスタイルに合わせたチップ選択を心がけたいところだ。

 2Bの容量はある程度は増やすことができるが、とても万能にはできない。筆者の場合は「近接武器攻撃力」、敵にダメージを与えた分だけ回復する「攻撃HP回復」、HPが0になったときに回復薬を自動で使う「オートアイテム」といったチップを使っている。より強力なコストの高いチップを使うためにはもっとセットするチップを吟味する必要がありそうだ。

 ちなみにチップは、3パターンまでセットを記録でき、いつでも切り替えられる。射撃中心で戦うときは「セットB」、ボスと戦うときは「セットC」など用途に合わせた組み合わせを用意することで、より優位に戦えることとなるだろう。

【カスタマイズの楽しさ】
強力なチップはコストも大きくなる。限られた容量でどう強化していくかを考えていく
ポッドもカスタマイズ可能。種類の異なるポッドを入手することも
時にはカメラの位置が大きく変わり、ユニークな視点での戦いも

何度も驚かされる楽しさ。作家性の強い物語ならではの味わい

 もう1度強調するが、「NieR:Automata」は、驚きに満ちたゲームだ。様々なイベントに登場するヨコオ氏のマスクも、イベントで作品の魅力を語るプロデューサーの齊藤氏の言葉1つ1つも、ゲームをプレイすることで彼らの“真意”がわかったと感じる瞬間がある。「あのときの言葉は、こういうことだったのか」ゲームをプレイしてにやりとしてしまう。長くヨコオ氏の作品を追いかけている人は、さらにこの楽しさが深いだろう。

物語の鍵を握るキャラクター。彼の正体は?

 その最たるものが、先日公開されたムービー「NieR:Automata/ニーア オートマタ: MOVIE 119450310」だ。このムービーでは興味深いシーンが続く。ぼろぼろの姿の2B、意味深な台詞の数々……プレーヤーがそれまで本作に持っていたイメージそのもの揺るがす、衝撃的なシーンが連続する。「発売前にこんなに重要なシーン見せていいの?」と誰もが思うだろう。しかし齊藤氏はこの映像に関して、「ぜひ何度も見て、いろいろ想像してください」と発言し、カメラの前でニヤリと笑ったのだ。

 ゲームをプレイする上で、“ネタバレ”はやはり難しい。極端に嫌う人の気持ちもわかる。しかし、なぜ作り手である彼らがこの映像を見せたのか。それはプレイすることでわかる。……断言しよう。このムービーで浮かぶイメージや、物語の予想は、プレイすることで、必ず、絶対、覆させられる。

 制作スタッフは、「プレーヤーたちが予想するストーリーを、展開を、必ず上回ってみせる!」という自信があったからこそ、「NieR:Automata/ニーア オートマタ: MOVIE 119450310」を公開したのである。筆者もそうだが、プレーヤーたちはゲームを進めながら何度もこのムービーを見るだろう。そしてゲームの進行度に合わせて、ムービーの印象が変わることに驚くはずだ。この驚きはとても心地よく、楽しい。

【NieR:Automata/ニーア オートマタ: MOVIE 119450310】

 「NieR:Automata」はボリュームたっぷりのゲームだ。筆者もまだ旅の途中である。今の時点で興味深いのは機械生命体の“心”だ。異星人に生み出された戦うための機械。しかし、長い長い戦いの時を経て、彼らは変化を迎えている。2B達が出会うパスカルは、興味深い個体の1人だろう。彼らは仲間とともに戦いを放棄した村を作り上げているのだ。

人間のような“つながり”を持つ機械生命体。彼らはどうして変化したのか
様々なサブクエストで物語は掘り下げられていく
その名もずばり「倉庫番」というサブクエスト

 そこには機械生命体の「家族」がいて、「姉妹」もいる。彼らは「工場」で生産されていることを2B達は知っている。しかし彼らは特別なつながりを、そして“情愛”を見せる。彼らはまるで人間そのもののような“心”を示すことがある。

 一方、アンドロイド達は無理をして“人間らしさ”を殺している。特にヨルハ部隊には「感情を持つことを禁じる」という“規約”があり、2Bが感情表現豊かな9Sをしかることがある。しかし、2Bもまた9Sをかけがえのない仲間だと思っていることを感じさせるところがある。2Bと9Sの関係がどうなっていくかも、物語の注目点である。

 筆者は本作を「優れたSF作品」と評価している。筆者が定義するSFとは、“あえて極端な前提を作り、人間とは何かを問う”作品ジャンルである、この定義において、「NieR:Automata」は優れたSF作品だと感じた。

 アンドロイドは人間に似せられて作られた機械だが、感情を殺すように強制されている。一方、人間のように話し、単純だがむき出しの感情を見せる機械生命体の方が、“人間らしく”見える。情愛を見せる機械生命体は広い意味で“人間”なのか、それならば人間とは何なのか? こういった疑問を考えるのはとても楽しい。この問いに、「NieR:Automata」が何を提示するのか、筆者は本作を隅の隅まで楽しみ、問いかけを続けていきたいと思う。

 「NieR:Automata」は、やはりその深い世界観と、ストーリーが魅力だ。プレーヤーを大きく驚かす展開に満ちており、その衝撃はさらに大きな謎につながっていく。ストーリーを支えるゲーム部分は、プラチナゲームズのアクションゲームへのこだわりが感じられる。

 しっかりとしたゲームの土台に加え、「こんなアイディアはどうでしょう?」という現場からの提案をディレクターとプロデューサーが大喜びでゲームに盛り込んだハチャメチャさも感じさせる。

 そして何より、ヨコオ氏のかなりブラックで、ゆがんだ感じのユーモアと共存する、恐ろしくまじめな、自身の心を深く深くのぞき込むような、テーマへの求道的な問いかけがいい。この独特の味わいのあるゲームを楽しんでほしい。「NieR:Automata」には、ぐっとのめり込める、魅力的な世界が広がっている。

【様々な場面】
本作の機械生命体は、本当に興味深い。ここに大きな謎がある
ボスとの戦いはアクション要素を満喫できる
様々なフィールドで、2Bの戦いは続いていく
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