ニュース

プレイすることで意味が生まれる、「NieR: Automata」開発者インタビュー

気持ちの良い戦闘システムと、世界の意味を探す物語の融合

6月14日~16日 開催

会場:Los Angeles Convention Center

 スクウェア・エニックスのE3ブースでは17日(現地時間)、イベント「NieR: Automata Discussion with the Developers and PlatinumGames' Takahisa Taura」が行なわれた。これにはプロデューサーの齊藤陽介氏、ディレクターのヨコオタロウ氏、ゲームデザイナー田浦貴久氏(プラチナゲームズ)が登場、ゲームの魅力を紹介した。弊誌でもレポートしているので、ぜひ読んで欲しい。

 今回、さらにこのイベントに登壇した3人のクリエイターに話を聞くことができた。開発中の「NieR: Automata」を見るだけでなく、実際に戦闘を体験し、様々な思いを聞けたので、レポートしていきたい。

アクションの手触りをきちんと生み出すシステム、空気をしっかりと感じる世界

 齊藤氏は最初にの現状を説明した。今回のイベントでの最大の情報が、本作が2017年早い時期に発表されるというものだった。現在本作はバトルの根幹部分は仕上がっており、より面白くするチューニングが始まる。ヨコオ氏の物語、RPG部分の実装が始まってきているというのが現状だという。

本作のディレクター、ヨコオタロウ氏
プロデューサーの齊藤陽介氏
ゲームデザイナー田浦貴久氏(プラチナゲームズ)
繊細そうなアンドロイドと、どこか愛嬌がある機械生命体が凄絶な戦いを繰り広げる。強く引きこまれる世界観だ

 デモプレイの最初では、田浦氏の操作でキャラクターが“村”を進んでいく。ここは「レジスタンスキャンプ」と呼ばれる場所だとヨコオ氏は説明した。これまでの情報はアクションの要素が中心だったが、「NieR: Automata」では戦闘だけでなくこのように拠点となる場所もある。ここでは村に住むアンドロイド達とアイテムの売買や武器の強化、サブクエストの受注なども行なえる。

 「レジスタンスキャンプ」は滅んでしまった都市のような姿で、コンクリートむき出しの朽ちた建物が並び、倒壊したビルもある。奥の方に進むとカメラが切り替わり、横スクロールアクションゲームのような見た目になる。このギミックは前作にあたる「ニーア レプリカント」にもあった要素で、街中での戦闘などもこの画面で行なうかもしれないとのことだ。こういった要素、ギミックはアクションを担当するプラチナゲームズの開発スタッフにシリーズのファンが多く、積極的に取り入れ、実現した要素だとヨコオ氏は語った。

 村の外は“敵”の出る危険な場所だ。「NieR: Automata」は、宇宙人に地球が侵略され、地球人は月に逃れて長い月日が経過した世界。地球上に人間は存在せず、地上を闊歩するのは人間を模したロボット「アンドロイド」と、宇宙人の先兵である機械生命体だ。機械生命体はアンドロイドの姿を見かけると攻撃を仕掛けてくる。戦闘は移動からシームレスに移行し、プラチナゲームズならではの高いアクション性と爽快感を持ったものとなる。

 プレーヤーキャラクターは美しい少女の姿をしたアンドロイド。2つの武器を駆使して戦う。2つの武器はそれぞれボタンが割り振られており、ボタンを押す順番で様々なコンボを繰り出す。小剣から大剣につなげたり、大剣を振り回して広範囲を攻撃してから小剣で切り刻んだりと様々なアクションがある。大剣を投げつけたり、小剣を地面に突き立てたりして武器が離れる瞬間もあるが、瞬時にテレポートして戻ってくる。

 今回はさらに「格闘武器」の存在も明らかになった。グローブのような武器で、衝撃波を伴うパンチを繰り出せる。今回は小剣と格闘武器の組み合わせだが、武器は2種類を選んでセットできる上に他のセットに瞬時に切り替えられる。コンボ中に切り替えてさらに派手な技を出すことも可能だという。武器の種類はさらに増える予定であり、さらに同ジャンルの武器も多彩なものが存在する。

 武器の中にはヨコオ氏が手がけた「ドラッグ オブ ドラグーン」から継承しているものもあり、「過去の世界の威力の強い武器を再利用して使っている」という設定のものもあるとのこと。

 さらにキャラクターの周りに浮遊する「ポッド」というサポートロボットは銃撃で攻撃する。基本的にはカメラの正面に弾を撃つが、ロックオンさせることも可能だ。また銃撃は敵の弾を消すこともできる。シューティングゲームのように弾をばらまく敵の弾を相殺しながら肉薄し、近接攻撃をたたき込むといった戦いも可能だ。ポッドには掴まることで滑空することもできる。フィールドは壊れた車の屋根に乗っかって高いところに登ったり、複雑な地形を走破する要素もあるという。

 このほか回避移動が特徴的だ。方向ボタンを組み合わせることで滑るように高速移動できる。回避を活用することでジグザグ移動などよりスタイリッシュなアクションもできる。敵の攻撃をぎりぎりのタイミングでかわすことで「ジャスト回避」が発動、この回避中に攻撃することで派手で強力な攻撃が繰り出せる。敵を派手に吹っ飛ばすなど効果は様々で、活用することで誰でも格好良く戦えることを目指していると田浦氏は語った。

 現在プレーヤーキャラクターに従うもう1人のキャラクターがいる。この“仲間”は指示を出すことで積極的に攻撃したり、手を出さなくさせたりすることが可能だ。仲間には体力は設定されていない。この要素は前作のパーティと同様だとヨコオ氏は語った。戦闘は要素を詰め込みすぎないことを考えているとのこと。ちなみに“他の仲間”が存在するかどうかも現時点では秘密だ。

 さらに「砂漠をコンセプトとしたステージ」も公開された。岩と砂が視界を覆う殺伐とした雰囲気の世界だ。石油を運んでいたかのようなパイプラインなども確認できる。ここは先ほどの緑に浸食された都市部と地続きの世界であり、「NieR: Automata」は様々な特徴のある広大な世界を旅していくという。

 ここでは砂の中から機械生命体が現われる。基本的な敵はドラム缶に手足が生えたような姿で、丸い頭を持ち、赤く丸い目を光らせて攻撃してくる。錆びた金属でできている。砂漠の敵は基本デザインにポンチョを着けたような姿をしており、地域ごとに違う。

 また、敵を設定する際に、ヨコオ氏から「ギラギラ禁止令」がでたという。磨かれた金属の光沢を放つ敵を入れてしまうとSF的な雰囲気が出てしまう。本作は“ファンタジーRPG”であり、雰囲気を重視したかったとヨコオ氏は語った。機械生命体達は廃材を組み合わせたような雰囲気もある。敵の中には巨大な腕を持つ巨人のようなものもいる。大型の機械生命体はダメージを受けると外装が外れるようなダメージ表現も取り入れられている。

 敵の中には“弾幕系シューティング”を思わせるすさまじい量の弾を撃ち出すものもいる。この弾をかわし、攻略するかも大きな楽しさだと田浦氏は語った。弾幕との戦いは「ニーア レプリカント」でもあった要素とのことだ。今作ではボスバトルも合わせ、様々な弾幕との戦いが楽しめそうだ。「難しそうに見えるけど、実は簡単に遊べるという面白さを追求しています」とヨコオ氏は語った。

 操作していないときのキャラクターの仕草もセールスポイントの1つだ。砂漠では手をかざし日差しを避けるような仕草をし、都市部では服に水がかかるのをいやがるような仕草をする。様々な場所での仕草を見せてくれる。アイディアはヨコオ氏が出しているものの、プラチナゲームズのスタッフが自主的にもつくり、“自然”な仕草を実現しているところがすごいと齋藤氏は語った。

 この後「タイムアタックステージ」として実際にキャラクターを触ってみた。やはりコンボが爽快だ。単純にボタンを連打しているだけで気持ちいいし、組み合わせることで様々なモーションを見せてくれるのが攻略する気持ちを刺激してくれる。敵の攻撃をかわし、派手な攻撃で反撃する、武器を切り替えて攻撃をする、さすがプラチナゲームズのアクションゲームだと強く感心させられる爽快で派手な戦いを簡単な操作で体験できた。

 ポッドによる銃撃は威力が低いものの、連射が気持ちいい。弾幕に対して弾を撃ち込んで相殺させて隙を突き、切り込んだときの爽快感はかなりのものだ。正直、触ったばかりだということもあり、操作は適当に押しているだけの“レバガチャ”的なものだったが、スタイリッシュな技が次々と出て、敵を殲滅できるのはとても楽しかった。もっともっと触ってみたいと感じさせる体験だった。

【スクリーンショット】

人のいない、宇宙人が見えない、当事者のいない戦いにアンドロイドは何を想うのか?

 一通りゲームの説明を受けてから、質問をしてみた。「ニーア」シリーズはアクションにもこだわりを持っているシリーズであるが、プラチナゲームズと一緒に制作をすることを決めたのはなぜなのだろうか?

スクリーンショットには野生動物の姿も
敵の思い入れも相当なものがうかがえる

 齋藤氏は「今回は本当にタイミングが良かったんです。アクションRPGの“手触り感”が本当に重要だと考えていたとき、プラチナさんの若手の人たちが『ニーアが好きだ』と言ってくれたんです。だからぜひお願いします、というのが経緯です。若手の方々は、本当に自発的に色んなことをやってくれています、“彼らががんばっている”と言うことは、本当にメディアで取り上げて欲しいと思っています」。

 さらに「キャラクターデザインの吉田昭彦さんとは、ぜひ仕事をしたいと思っていた。彼が社内にいたときはできなかったんだけど、吉田さんは“アンドロイドが描ける”ということをすごくうれしがってくれました。ポッドも吉田さんのデザインなんです。デザインの楽しさもぜひユーザーさんに感じて欲しいです」と齋藤氏は言葉を重ねた。

 筆者が本作を見て最も気になったのは「敵であるはずの宇宙人が見えない」ということだ。宇宙人の先兵である機械生命体は地球の廃材を組み合わせたものであり、地球人もいない。いわばお互いが自分たち自身で戦わない“代理戦争”のような雰囲気になっている。野生動物が見えないところも気になった。

 野生動物は開発中のため今回は見せなかっただけで、この世界の地球上にはいるという。一方で宇宙人がいないのはストーリーに関わってくるためだとヨコオ氏は語った。なぜいないのか、見えないのかは、物語を進めることでわかるとのこと。なぜこんな世界になっているのか、どうしてこんな世界なのか、その理由を考えるのが面白いという。

 「ニーア」シリーズでは“東京”という地名が出てきたこともあったが、「NieR: Automata」ではイメージとして現実の地形を参考にしている部分もあるものの、細かくは設定されていない。「地球上のどこか」を主人公達は旅していくという。本作は宇宙人が攻めてきてから長い月日を経た世界が舞台なだけに、明確な現実世界との繋がりを主張するつもりはないとのことだ。

 “代理戦争”のような世界をなぜ作ったか? それこそはストーリーの根幹であり、プレイして考えて欲しいと齋藤氏は語った。ヨコオ氏はこのテーマを話すのは、結果的にストーリーを話してしまうことであり、ストーリーはゲームをプレイして体験して欲しいという。「『どうしてそうなってるんだろう、不思議だな、変わっているな』という想いこそが“手がかり”であり、ゲームを始めてその問いを自分の中に持ってもらい、答えを探してもらえれば良いなと思っています」とヨコオ氏は語った。

 次に「この作品でユーザーに感じてもらいたいことは何ですか?」という質問をぶつけてみた。齋藤氏はしばらく考えてから「絶望、ですかね」と答えた。筆者がびっくりした表情を浮かべているのを見ると、ヨコオ氏は「僕はあまりこっちから“感じてもらいたいこと”をいうのが好きではありません。色々なことから選択し、感じてもらうゲームになってくれれば良いなと思っています。楽しいことがあるかもしれない、嫌なことがあるかもしれない。プレイして何らかの意味のあるゲームにしたいと思っています」と語った。齋藤氏は言葉を受けて、「前情報やこちらの発言を出すよりもプレイして感じて欲しい、その方が良いと思います」とコメントした。

 さらに「前作も人によってずいぶんと捉え方が違ったんです。私は比較的ハッピーエンドで終わったと思っているんですが、『鬱ゲー』と言われてしまいました。『そういう風に取る人もいるんだ』と驚きましたね」と齋藤氏がいうと、ヨコオ氏はすかさず「今回はハッピーエンドですよ」と発言した。

 田浦氏は、「僕はヨコオさんの“狂気”が伝われば良いなと思います」と語ると、「狂気じゃないでしょう、普通でしょう」とヨコオ氏が抗議するが、「いやいや」と齋藤氏と田浦氏は声を合わせた。「もうシナリオは読んでいるのに2人はそういうこと言うんだもんなあ。ハッピーエンドですよ」とヨコオ氏は“ハッピーエンド”を強調した。

 そして最後にヨコオ氏は、「ファンの方はネタバレを嫌って、こういうインタビューを見ない方もいらっしゃいますが、個人的には見ちゃって、ネタバレをしちゃってても、それでも楽しめるゲームじゃないとダメだなと思っているんです。そのために面白くなるように努力をしています。話がわかったらやる意味がないゲームにはしたくない。たとえ話が事前にわかっていても、プレイすることで意味が生まれるゲームにしたいと思っています」と語り、インタビューを終えた。

【コンセプトアート】