先行レビュー

カメラ片手に美しい異世界の謎を解き明かす! 「OPUS: Prism Peak」先行レビュー

くたびれた中年男性と記憶喪失の少女による旅路

【OPUS: Prism Peak】
4月16日 発売予定
価格:3,480円
「OPUS: Prism Peak」

 集英社ゲームズが台湾のインディーゲームスタジオ・SIGONO INC.と共同開発した「OPUS: Prism Peak」が、4月16日に発売される。

 本作はNintendo Switch/Nintendo Switch 2/PC(Steam)に対応したフォトアドベンチャー。写真撮影によって世界の謎を解き明かしていくというユニークなゲーム性となっており、美麗なグラフィックスと深みのあるストーリーが大きな魅力だ。

 今回は本作を先行プレイする機会に恵まれたので、基本的なゲームシステムや面白かった要素、胸を打たれたポイントなどを紹介していきたい。

【「OPUS: Prism Peak」ゲームプレイトレーラー】

幻想的な世界に隠された真実とは……バツイチ中年男性と謎めいた少女の旅路

 作品の主な舞台となる「ボウの地」は、さまざまな動物の姿をした神霊たちが住む異世界。故郷に向かって車を走らせていた主人公・ユージンが事故に遭い、その不思議な世界に迷い込むことから物語は始まる。

 目を覚ましたユージンは見知らぬ少女・レンが正体不明の黒い怪物「ボウ」に襲われているところに遭遇。間一髪で、彼女のことを救い出す。そしてユージンはレンと共に、奇妙な旅に出発することになる……。

 ユージンは少しやさぐれたバツイチの40歳。報道カメラマンとして働いていた過去があり、突如現われたシカの神霊に渡されたカメラを使って世界の真実を見つめようとする。

 それに対してレンは無邪気で明るい少女だが、ほとんどの記憶を失っており、自分の本当の名前もわからない。また「ボウ」に食われたことで、存在が消滅しつつあるという。

 ユージンはレンを助けるために、その地で「王」と呼ばれていた人物の足跡を追うことに。行く先々で様々な神霊たちと出会いつつ、2人のあいだに絆が芽生えていく。

 なお、神霊たちはいずれも「王」と浅からぬ関係があったようだ。カメラを使って記憶を紐解いていくことで、その物語が徐々に解き明かされる。

山のような巨体をもつウシの神霊
なぜかユージンに冷たいイヌの神霊
どこか安心感があるヤギの神霊

パズル×考察! カメラを通して浮かび上がる壮大な物語

 本作のゲームシステムはかなり独創的。カメラによる写真撮影のシステムと、パズル要素や考察要素を組み合わせたものとなっている。

 本作の基本的な進め方は、フィールド上に存在するものや景色を写真に収めていくというシンプルなものだ。ただし闇雲に写真を撮るのではなく、「神の火鉢」が要求してくる写真を差し出すことが重要となる。

不思議な形をした「神の火鉢」

 「神の火鉢」の要求は2種類あり、1つはメインストーリーを進行するために必要な写真。もう1つは神霊たちにまつわるサブストーリーを進めるために必要な写真だ。いずれもヒントが文字として現われ、それらは抽象的な言葉でしかないので、その内容を推測しつつ、フィールドを探索しなければならない。

メインストーリーを進めるためのヒント
神霊の物語を解き明かすために必要な写真

 「神の火鉢」の要求に応えて写真を撮影していくことで、さまざまな情報が手に入るが、それだけでは物語の全貌は明らかにならない。ここでは文章にあてはまる言葉を選択する形で断片的な情報から浮かび上がってくる物語の真相を、自分の頭で推理する必要があるのだ。

「撮影ノート」に自分の推理した内容を書き留めていく
フィールド上には謎めいた古代の壁画も……

 また作中では「ボウの地」の出来事と平行して、ユージンの人生にまつわる回想シーンが描かれていく。祖父と山の中で過ごした幼年期に始まり、友情と初恋に彩られた学生時代、波乱に満ちた社会人生活など、その内容はきわめて濃厚だ。

 物語が始まった時点のユージンは、まるで人生のすべてを失ったかのような卑屈さだが、ゲームを進めることで「なぜ彼はこうなったのか」が鮮やかに浮かび上がってくるのだった。

探索するだけでも楽しいノスタルジックな世界

 本作の魅力としては、まず“作中世界の美しさ”に触れておきたい。

 「ボウの地」には人間の姿が一切ないが、人間社会の文明がやや荒廃した形で反映されているのが特徴。また「ボウ」の猛威によって、あらゆる場所が崩壊の危機に瀕していることも示唆されている。

人間がいなくても電車は走る

 崩れ落ちかけている廃工場、雑草が繁茂しつつある駅のホーム、打ち捨てられて人の気配がなくなった集合住宅……。そこには終末後の世界を描いたポストアポカリプスSFのような美しさがあり、どこかノスタルジックな雰囲気も漂っている。

駅舎の水たまりが反射する青空

 また、カメラのファインダーを通すことで景色の見え方が変化するところも本作ならでは。とくに途中から写真の色味や画角を変化させる特殊効果付きのフィルターが手に入るため、自分の美意識に合った形で風景を切り取るという楽しみ方ができた。

撮影状況に応じて露出やピントの調整も必要

プレーヤーを物語に引き込む仕掛けとは? “ベタじゃない”展開も大きな魅力

 さらに本作最大の注目ポイントとなっているのが、プレーヤーを物語に引き込む仕掛けの巧妙さだ。

 本作ではゲームを進めるために「神の火鉢」が要求してくるパズルと、「撮影ノート」上の謎解きをクリアする必要があるが、こうした要素はどれも神霊たちやユージン自身の物語を解釈することと不可分に結びついている。つまりゲームを進めることで、必然的にキャラクターたちの人生への理解が深まっていく仕組みになっているのだ。

 ゲーム性とストーリー性の両立が上手くいかないと、プレーヤーには「ゲームとしては面白いけど物語に付いていけなかった」、「物語は面白いけどゲームの部分がノイズになっていた」などと思われてしまいがち。しかし本作のシステムは、ゲーム性とストーリー性をとても上手く両立させている。

 その結果として、本作は1本の長大な映画を自分が主人公になって追体験したような感覚を与えてくれる作品となっていた。

 とはいえ、いくらプレーヤーをストーリーに没入させる仕組みがあっても、結末を簡単に予想できる内容だと、途中で興ざめしてしまうこともあるもの。だが本作は巧妙な語り口や意外性のある展開によって、“ベタすぎる”と感じさせることがほとんどない物語となっていた印象だ。

 胸が熱くなる友情やほろ苦い恋といった王道の展開がありつつ、家族とのままならない関係や社会の理不尽さ、現実の残酷さが生々しく描かれており、1周目のエンディングまで通してプレイしたあとには深い余韻と感動を味わうことができた。

 あえて似た感覚のゲームを挙げて説明するなら、プレーヤーを壮大な物語に没入させるタイプの作品ということで、「ライフ イズ ストレンジ(スクウェア・エニックス)」を連想させる部分があるかもしれない。ただ、人生の絶望やトラウマ的な体験を容赦なく織り込んでいる点では、「SILENT HILL f(コナミデジタルエンタテインメント)」に近い迫力も感じさせられた。

幼少期のトラウマに離婚、事業の失敗など、波乱に満ちたユージンの人生
はるか遠くにそびえ立つムメイ山

 写真撮影と謎解きを組み合わせた独特のゲーム性で、完成度の高い物語を追体験させてくれる「OPUS: Prism Peak」。とくに中盤以降では怒涛の盛り上がりが待ち受けているため、ぜひとも最後までプレイしてみることをオススメしたい。