レビュー

過去へ、さらに過去へと遡る痛切な歴史修正劇。「冒険家エリオットの千年物語」が描く、希望が世界を照らす時間遡行RPGの到達点

体験版で物足りなさを感じた人にこそ訴えたい、1000年の憎愛の物語

【冒険家エリオットの千年物語】
6月18日 発売予定(Steam版のみ6月19日)
価格:
通常版/ダウンロード版 7,480円
デジタルデラックス版 8,580円
CEROレーティング:B(12歳以上対象)
プレイ人数:1人(※ローカル2Pプレイにも対応)

 「時間を遡って悲劇を回避する」。RPGやアドベンチャーゲームにおいて、タイムトラベルはもはや王道とも言えるテーマである。現在、過去、そして未来を行き来しながら世界を救う壮大な物語に、我々ゲーマーは幾度となく胸を熱くしてきた。

 しかし、完全新作RPGである本作「冒険家エリオットの千年物語」のアプローチは、かなり異なっていた。本作に「未来」へのタイムトラベルは存在しない。ある悲劇を起点とし、ひたすらに過去へ、さらに深い過去へと遡り続け、歴史の根本的な修正を行っていくという、極めて異質で挑戦的な構造を持っているのだ。

 現在配信中の体験版でもその片鱗に触れることができるが、今回製品版のすべてのエンディングを回収するまで遊び尽くした筆者は、悲しい過去と向き合いながらも「希望」を描き切った圧倒的なシナリオと、プレイヤーの歩調に合わせた絶妙なゲームバランスに完全に魅了されてしまった。

 本稿では、全ての伏線が収束する見事なシナリオ構成と、探索と戦闘を彩る相棒の存在、そしてプレイして気になったいくつかの惜しい点も含め、本作の深い魅力を徹底的にレビューしていく。

【『冒険家エリオットの千年物語』ファイナルトレーラー】

ひたすら過去へ遡る歴史修正と、「希望はいつも”そこ”にある」というテーマ

 本作の最大の牽引力は、何と言ってもそのシナリオ構成にある。

 主人公である冒険家のエリオットは、元々は「記録にはない古い時代の遺跡を調べる」という些細なことをきっかけに、この冒険に足を踏み入れる。

 そこからやがて絡み合った糸を紐解くため、原因となった歴史の分岐点へと遡る。ここまでは王道だ。しかし本作は、一つの過去を修正すると「さらにその原因となった、より古い過去の出来事」が浮き彫りになり、次々と古い時代へと遡行を余儀なくされる。さらには、最初は一本だったはずの糸が複雑に絡み合いはじめ、奥深い物語が描かれていくことになる。

エリオットの親友で王国の学者であるユイジーヌが、古い遺跡の調査にエリオットを王様に推薦するところから物語が始まるのだ
冒険家エリオット。本作では、キャラクターイラストを務める梶本ユキヒロさんの美麗なイラストが立ち絵として出てくる。この表現はHD-2D作品では初の試みとなる

 エリオットが旅するのは、大きく分けて4つの時代だ。拠点となる現代の「加護の時代」を出発点とし、そこから一つ過去の「再建の時代」へ、さらに魔法を巡る異種族間の争いが激しい「魔法の時代」へ、そしてすべての始まりとも言える最も古い「萌芽の時代」へと、千年にわたる歴史を逆行していくことになる。

 加護の時代は、フィレビルディアの一角にあるヒューザー王国。ヒカルド王によって治められるこの国はヒューリア姫の加護の魔法によって、蛮族の脅威から守られ、人々は平和に暮らすことができている。だが、逆に言うとヒューリア姫ひとりに世界の全てがかかっているとも言える時代だ。

加護の時代。王国の城壁に加護の魔法が張り巡らされ、蛮族は王国の中には入ってこられないため、基本的に人々は平和な暮らしを送っている

 次に訪れるのは、エリオットたちが暮らす加護の時代より過去の再建の時代。かつて繁栄していた形跡を残しながらも、人間たちは滅亡の危機に瀕していた。この時代、蛮族を退ける「加護の魔法」は存在せず、人々は限られた物資と兵力で何とか生活を維持している。基本的には人々の貧しさが目立つ時代となっている。

再建の時代。加護の時代とはくらべものにならないほど、荒廃した街となっている

 再建の時代よりも、さらに過去になるのが魔法の時代だ。この時代の人類は蛮族すらも退けるほどの魔法を利用した技術によって繁栄を極めていた。しかし、やがてはそれが再建の時代につながることになるため、魔法の時代では大きなドラマが動くことになる。

魔法の時代。街は魔法の力でかつてないほど栄えている

 萌芽の時代は、エリオットとフェイが冒険する最も古い時代となる。人々は日々何とか蛮族を退けながら暮らしていた。だが、人間が蛮族と呼ぶ者たちの中には、人の言葉を話し、強力な魔法を扱う「ミュー族」という種族が存在した。ミュー族を受け入れて魔法を使い豊かな暮らしを望む民と、「蛮族になど頼ってなるものか」という民とで村は二分されてしまう。

萌芽の時代。街はミュー族の魔法を受け入れるか受け入れないかで対立状態になる

 時代を遡るごとに、魔法の是非を巡って引き起こされた異種族間の悲痛な争いや、街に渦巻く人間の生々しい暗部など、世界の成り立ちの真実が容赦なく剥き出しになっていく。掘り下げれば掘り下げるほど、歴史の業の深さが見えてくるという構造は、プレイヤーの「先を知りたい」という欲求を強烈に刺激する。

 しかし、本作は決して絶望を描くだけの物語ではない。

 劇中、幾度となく提示される「希望はいつも”そこ”にある」という言葉。凄惨な過去や悲しい出来事の連続であっても、登場人物たちがいつか必ず前を向き、希望を抱いて生きていく姿が丁寧に描かれている。悲しみを乗り越えた先にある希望が世界を優しく照らしてくれるシナリオは、エリオットの存在やすべての伏線が一本の線へとつながる終盤の展開と相まって、筆者の心に温かさをもたらしてくれた。真エンディングを迎えた後は、深い余韻に浸れるはずだ。

 ……と今さりげなく「真エンディング」と書いたが、本作はより良い結末を目指したくなるマルチエンディング方式を採用している。

 自身の選択と歴史の修正度合いによって結末が分岐し、筆者は恐らくすべてのエンディングを回収しきったと思われるが、そこまでの総プレイ時間はサブクエストの回収なども含めて、30時間程度であった。無駄な引き伸ばしがなく、この濃密なシナリオ体験を非常に遊びやすいボリュームに綺麗に収めている点は、現代の忙しいゲーマーにとって手放しで賞賛すべきポイントである。

 物語の重厚さに圧倒され、意外と「え? これだけ遊んで30時間しか経っていないの?」とも感じられる。そう感じる要因のひとつは各時代のマップがそこまで広くないことにもある。これを良しとするかどうかはどうしても分かれてしまうと思うが、筆者は探索がしやすいちょうど良い広さに感じた。「冒険の道しるべ」というセーブポイントはファストトラベルにも利用できるので、見つけたらどんどん触れて解放していきたい。

基本は冒険の道しるべに触れるだけでオートセーブされるが、手動セーブもできる

バックアタックでの確定クリティカルと、冒険を彩る愛すべき二人のヒロイン

 シナリオの重厚さに負けず劣らず、本作の戦闘・探索システムも非常に手触りがいい。

 基本はシンボルエンカウントからシームレスに移行するアクションバトルで、使用できる武器は剣・弓・ブーメラン・爆弾・槍・ハンマー・鎖鎌の全7種類。その中から□ボタンと△ボタンに好きな武器を割り当てられる。武器の入れ替えもスムーズで、例えば「ここでは爆弾を使いたいな」と思ったらさっとワンタッチで△ボタンの武器を爆弾にしたり、槍にしたり……といった使い分けができるようになっている。

 そんな中で、筆者が本作で最も愛用し、読者にも強くおすすめしたいのが「剣と弓」を組み合わせたプレイスタイルである。

 本作には、「敵に気づかれる前に攻撃を当てると、必ずクリティカルヒットになる」という極めて強力な仕様が存在する。つまり敵に気づかれない距離から攻撃できる弓が、とにかく最高だった。筆者の中では、本作の探索においてとてつもなく快適かつ爽快さをもたらしてくれる組み合わせが、剣と弓というふたつだったのである。

 ダンジョンを隠密行動で進み、死角を突いて弓で先制の一撃(確定クリティカル)を叩き込み、攻撃に気づいてこちらに寄ってきた敵へ、剣での近接コンボで一掃する。アサシンのような隠密攻撃から、剣士としてズバッとつなぐこの戦闘は、何度繰り返しても飽きることがない。

 なおガード用の盾はわざわざ装備する必要がなく、ガードボタンを押せば自動で盾を使用してくれるというのが嬉しい。

武器は、最初から7種類全てを使えるわけではなく、順を追って解放されていく。ちなみにブーメランは王国の道具屋で売っていた。できれば真っ先に買うのをおすすめしたい。弓ほど隠密攻撃はできないが、遠距離攻撃ができるので序盤はかなり役に立った

 戦闘の難易度は「イージー」、「ノーマル」、「ハード」、「ベリーハード」まである。イージーであれば、店売りの回復薬も一部の場面以外ではほぼ必要ない、くらいの難易度で、ハードくらいになると少々手応えがある。ハードを触ったのは序盤だけなので断言はできないが、終盤になればなるほど様々なアクションやガードをしっかりとこなさなければならなくなりそうだと感じた。

 本作はいわゆるレベル制ではなく、世界の各地に散らばる「生命の欠片」と呼ばれるものを集めて少しずつエリオットのライフを上げていくタイプのゲームのため、探索が非常に重要となる。言ってしまえば雑魚との戦闘をほぼ全無視して宝箱の回収などの重要要素だけをひたすら集めていくだけ、ということもすることも可能だ。ただし戦闘をしないとお金がなかなか貯まらないというデメリットはある。

生命の欠片を4つ集めると、エリオットのライフがひとつ増える

 そしてエリオットの孤独で過酷な探索の旅において、プレイヤーの最高のオアシスとなるのが魅力的なキャラクターたちの存在だ。

 実は妖精フェイと合流するまでの間、プレイヤーは王国の姫であるヒューリアの意識と共に旅をすることになる。エリオットを導き、時に寄り添うヒューリアの健気な声色も、のちに出会うフェイの無邪気さも、どちらも男女問わず万人に愛される絶妙なキャラクター造形に仕上がっている。

 ヒューリアは序盤のナビゲーター的なキャラクターなので、基本的にはエリオットを回復する魔法しか使えないのだが、この回復魔法が序盤は非常にありがたい。

ヒューリアは加護の魔法で王国を支えるため、街から出られない。そのため意識だけ共にエリオットと旅をすることになる

 ヒューリアと交代する形で共に旅をすることになるフェイは、単なるナビゲーターに留まらず、フィールドギミックを解くための「チャッカ(着火)」や、離れた足場へ移動する「ワープ」、移動速度を加速させる「シッソー(疾走)」、敵やアイテムを吸い込む「キューイン(吸引)」、フェイがエリオットのコピーとなって同じ動きをする「コピー」など、多彩な能力を習得して探索を直接サポートしてくれる。

 ヒューリアやフェイたちはその能力でのサポートだけではなく、温かい交流を交わしてくれるため、エリオットの孤独な戦いの中で大きな救いとなってくれた。

フェイの魔法もワンタッチですぐに切り替えられる。このフェイの能力がないと突破できないギミックもある。「今は進めないかな」と思ったら、フェイの能力や新たな重要アイテムを手に入れてから再訪してみてほしい
とあるイベントでフェイと出会ってからは、フェイと世界を回ることになる。フェイの声が激可愛いので、注目ポイントのひとつである

シンプルイズベスト。直感的な「魔石」によるカスタマイズの奥深さ

 RPGの醍醐味であるキャラクターの育成要素として、本作には「魔石」システムが採用されている。

 昨今のRPGはスキルツリーや装備の強化要素が複雑化しがちだが、本作の魔石システムは驚くほどシンプルでありながら、プレイヤーの個性をしっかりと反映できるスマートな作りになっている。「魔石箱」と呼ばれる重要アイテムに、探索や戦闘で手に入れた魔石をコストに応じて入れるだけなのだ。

本作で手に入れるゲーム内通貨の大半は、この魔石箱の拡張に投入することになるだろう。魔石箱をレベルアップさせるとコスト上限が上がり、より強力な魔石を入れたり、色々な組み合わせを試せるようになる

 魔石は各武器ごとにセットでき、「攻撃力上昇」「クリティカル発生上昇」といった基本的なステータス強化から、「攻撃ヒット時に敵を気絶させる」「魔法の矢が敵を追尾」といった前述のステルスプレイに直結するものまで、魔石の種類は多岐にわたる。

ブーメランの魔石の一例。これが正解というものは恐らくないと思うので、色々な組み合わせを試してほしい
弓の魔石の一例。ちなみにいちいち各武器ごとに大量の魔石の中からコストにあわせてセットするのが面倒だったら「フェイにおまかせ」という自動セットモードもある

 「今はボス戦だからガード系の魔石を積もう」とか、「探索メインだからステルス系の魔石をガン積みして、弓の確定クリティカルだけをひたすら狙おう」と、目的に合わせてメニュー画面でサクサクと魔石を付け替えることができる。

 この試行錯誤の時間は、複雑なポイント割り振りなどの煩わしさが一切なく、純粋なビルド構築の楽しさだけを提供してくれた。30時間というプレイ時間の中で、常に新しい魔石を手に入れ、強さを更新し続けられるテンポの良さも素晴らしい。

 魔石の大半は、「魔石屋」にて「魔石の欠片」を使用してランダムで生成されるいわゆる「魔石ガチャ」になるのだが、探索を進めていくと、よりレアリティの高い魔石なども見つかるので、ぜひどんどん色んな魔石を手に入れていってほしいところだ。なお魔石の欠片はダンジョン最奥にいるボスを倒すと大量に手に入るが、雑魚敵を倒してもドロップする。

魔石屋では基本的に「魔石をランダムに生成」して色んな武器の魔石を入手することになるが、コストはかかるものの「剣の魔石を作成」といった武器種ごとの魔石の生成もすることができる。武器をほぼ完全に固定でプレイしている人は、こちらを選んでもいいだろう
強敵を倒すと大量の魔石の欠片が手に入るので、集めて魔石屋に行って魔石を生成してもらおう

没入感を削ぐ過剰なロード演出とファストトラベルの仕様

 ここまで本作を絶賛してきたが、手放しで褒められない部分、プレイしていてどうしてもストレスを感じてしまった「惜しい点」についても、一人のゲーマーとして正直に触れておきたい。

 ひとつ目は、無用と思われるロード演出の長さである。

 筆者は今回、最新のハードウェアであるPS5 Pro環境でプレイした。マシンスペックや昨今の技術水準からすれば、エリア切り替えは一瞬で終わるはずなのだが、本作ではあえて世界観を表現するための「演出としてのロード画面」が挟まる箇所が多く、それが体感的にかなり長めに感じられてしまった。テンポ良く進む30時間の濃密な体験の中で、この演出過剰なロードがプレイのテンポを阻害し、没入感を削いでしまっていたのは非常に勿体ないと感じた。

何故ここでロードが挟まるのかわからない、といった場面もあった。そこにはもしかしたらこちらではわからない複雑な事情もあったかもしれないが、なんにしても場面転換のロード演出は不要だったように思う

 ふたつ目は、「ワールドマップからダンジョンの内部へ直接ワープできない」というファストトラベルの仕様だ。

 本作は同じダンジョンを、幾度となく探索することになる。進めなかった場所が通れるようになったから……はたまたやり残した探索を再開するため……理由は様々だが、同じダンジョンに複数回訪れる必要がある。しかしワールドマップからファストトラベルで飛べるのはあくまでワールドマップのどこかの冒険の道しるべまでであり、そこからダンジョンまでは徒歩となる。ダンジョンの入り口にはほぼ冒険の道しるべがあるのに、ワールドマップからはダンジョンマップが開けないので、用があるダンジョンへと一足飛びにファストトラベルができないのだ。しかもそこから深部へはさらにもう一度「ダンジョン内のマップを開いてそこから最深部のワープポイントへと飛ぶ」という、面倒な工程が必要になるのだ。

 フェイの能力や魔石のカスタマイズで移動自体は快適に行えるとはいえ、サブクエストの消化や別エンディングの回収などで再訪する機会が多いゲームデザインである以上、直接内部のポイントへ飛べない仕様は、現代のRPGの快適な基準からすると明確なマイナスポイントと言わざるを得ない。

 この2点だけはあまりに残念だったので、今後のアップデートで改善されることを期待してどうしても言わせていただきたかった。

1000年の時を遡り、明日への「希望」を繋ぐ至高のタイムトラベルRPG

 これまで数多のRPGが「時間」をテーマに据えてきたが、「冒険家エリオットの千年物語」が到達した境地は、過去のどのタイムトラベル作品とも異なるプレイフィールと深い感動をもたらしてくれた。

 現在を変えるために、あえて過去へ、さらに深い過去へと遡り続けるという果てしない逆行の旅。「加護の時代」という現代の平和な拠点から出発し、「再建の時代」「魔法の時代」、そしてすべての始まりである「萌芽の時代」へと千年の時を逆行していく中でプレイヤーが目撃するのは、かつての英雄たちの隠された業であり、魔法を巡る異種族間の争いであり、人間の弱さが生み出した生々しい暗部である。歴史という巨大な奔流に飲み込まれそうになる絶望感は、本作をプレイする上で常に付きまとう重圧であった。

 しかし、その重圧を幾度となく跳ね除け、プレイヤーの心を救い上げてくれたのが、「希望はいつも"そこ"にある」という力強いテーマと、過酷な旅路を共にするヒューリアやフェイといった愛すべきキャラクターたちだった。孤独で過酷な歴史修正の戦いの中で響く彼女たちの温かい声や無邪気なサポートは、単なるシステム的なナビゲーションの枠を完全に超えていた。この世界を、そして彼女たちを絶対に救いたい。そう強く願うための絶対的な拠り所となっていたのだ。どんなに凄惨な過去を目の当たりにしても、登場人物たちが顔を上げ、一筋の光を見出していく姿は、現代を生きる我々の心にも深く刺さる普遍的なメッセージ性を帯びている。

「希望はいつも"そこ"にある」。このメッセージを千年の時間、紡いでいくのだ

 そして、この重厚でシリアスなシナリオを最後までダレることなく牽引してくれたのが、シンプルながらも奥深いゲーム体験の数々である。様々な武器を使いこなしてのダンジョン探索は、緊張感と爽快感を与え続けた。

 また、直感的な「魔石」によるカスタマイズは、面倒な育成管理のストレスからプレイヤーを解放してくれた。「次はあの魔石を試そう」「もっと良い組み合わせがあるはずだ」という試行錯誤の楽しさが、重い物語の合間に絶妙な清涼剤として機能していた点は、RPGとしての見事なバランス感覚の賜物と言えるだろう。

 もちろん、本文で指摘したようなロード時間の過剰な演出や、ダンジョン深部への直接的なファストトラベルができないといったシステム面の荒削りな部分は、確かに存在している。PS5(筆者はProを使用)やSwitch2という最新ハードの恩恵をフルに活かしきれていない点や、同じ時代・同じダンジョンを何度も行き来するゲームデザインにおける移動の手間は、正直に言ってもどかしさを感じる場面もあった。

 しかし、それらの欠点を差し引いてもなお、本作が放つ圧倒的な熱量とシナリオの求心力は一切揺るがない。無駄な引き伸ばしを排し、約30時間という濃密なボリュームにすべての情熱を凝縮させた構成は、忙しい現代のゲーマーにとって最高の体験を約束してくれるものだ。しかも、マルチエンディングでありながらかなりユーザーフレンドリーな親切設計によって、真のエンディング、真の希望へと至る道のりがストレスなく開かれている点には、開発陣の「プレーヤーに最後まで物語を見届けてほしい」という強い願いと誠意が感じられた。

 「冒険家エリオットの千年物語」は、単なる歴史修正のゲームではない。絶望の底から希望を拾い集め、千年という途方もない時間を紡ぎ直す、美しくも痛切なヒューマンドラマである。すべての時代を踏破し、すべての伏線が矛盾なく回収されたとき、画面の向こうに広がる景色と、プレイヤーの心にもたらす余韻は、間違いなく一生モノのゲーム体験となるはずだ。

HD-2Dで描かれる見事な風景たちにも注目してほしい

 最後にひとつだけ添えておきたい。「ネコはいいぞ」。

「なんでこんなところにネコが?」というくらい、あちこちにネコがいる。ネコの居場所は、覚えておこう。のちに猫収集要素が解放される
ネコを見つけていくと「ネコ好きの旅人」から色々なアイテムがもらえる。ちなみに筆者は50匹全部見つけた

 現在配信されている体験版だけでも、本作が持つ空気感、戦闘の楽しさ、そして愛らしいヒューリアたちとの賑やかな探索の一端は十分に味わうことができる。ありきたりなタイムトラベル物にはもう飽きたというRPGファンにこそ、ぜひこの千年の旅路に足を踏み入れてみてほしい。過去の果てでエリオットたちが見つけた「希望」を、ぜひあなた自身の目で見届けていただきたい。