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「FFXIV London Fan Festival」で「FFXIV」トレーラーの“秘密”が公開

吉田氏が語る「時代の終焉」トレーラーの制作秘話や、“高井カメラ”の裏話が語られる

10月25日 開催(現地時間)

 MMORPG「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」のオフラインイベント「FFXIV London Fan Festival」の中で、「FFXIV」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏とアシスタントディレクターの高井浩氏が、「新生FFXIV」のトレーラーに特化したデベロッパーズパネルを実施した。

 吉田氏は、スクエニの映像制作集団ビジュアルワークスが作る迫力満点のシネマチックトレーラーについて、パッチ2.0とともに公開された「時代の終焉」トレーラーを例に、どのような制作過程で完成していくのかを概説。高井氏は自身が制作しているゲーム内の素材を使ったパッチトレーラーについて、NG話などを交えて解説した。

バハムートを封印する魔法陣はビジュアルワークスのアイデアの結晶

これが3つ目のステージイベントだったが、会場は毎回満員御礼だった
「FFXIV」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏とアシスタントディレクターの高井浩氏

 ビジュアルワークスはスクウェア・エニックス作品のCGトレーラーを担当する技術集団。高度なテクニックで、毎回迫力のあるシーンを作っている。その制作の第一歩は、吉田氏が書いたテキストでのシナリオだ。

 「僕は絵が下手ですので、開発とのミーティングでイラストを描いてもなんだかわかりませんと言われてしまうので、これもテキストで制作しています」(吉田氏)。このテキストを元にストーリーコンテが切られ、そこから本格的な絵作りが進んでいく。

 「時代の終焉」トレーラーには、「旧FFXIV」のトレーラーにも出てきた冒険者が登場する。今回吉田氏は2つのトレーラーにでてきた冒険者を比較して、「旧FFXIV」では若々しかった冒険者が「時代の終焉」では成長している姿を描いていることを説明した。「当時の彼は弓を使っていましたが、時代の終焉では戦士になっていて、顔に傷もあって精悍な男性に成長を遂げています」(吉田氏)。

 トレーラーが作られた時期によって、その間の技術の進化によって、より高度で自由な表現が可能になっている。公開されたばかりの「蒼天のイシュガルド」ティザートレーラーについても「彼は蒼天のイシュガルドでは竜騎士にジョブチェンジしていますが、さらに精悍さが加わっています。彼に何が起きたのか、そしてこれから皆さんに何が起きるのかを想像しながらご覧になってほしいです」と解説した。

 「時代の終焉」トレーラーでは、バハムートを高密度のポリゴンでモデリングした後、現実の風景の中にレンダリングして違和感がないかどうかを確かめている。これはこの後さまざまなエフェクトを追加するVFXの過程でリアリティを保つための重要な工程なのだそうだ。

 その後はモデリングと同じくらいリアリティの表現にとって意味を持つライティングの設定が行なわれる。さまざまな環境下で光の当たり具合をシミュレートして、リアルに見えるかどうかをテストする。

 こうしてモデリングの作業が一段落すると、次はカラーマネジメントに入る。「時代の終焉」ではダラカブが落ちてくる冒頭のシーンでは黒と赤、バハムートが登場して破壊を繰り返すシーンではオレンジ、冒険者たちが抵抗するシーンでは白と青と、それぞれの存在をイメージするカラーで画面が構成されている。

 特に冒険者のカラーについては「FFを象徴するクリスタルの色をプレーヤーサイドに重ねて欲しいというオーダーがあって、こういうコーディネイトになっています」(吉田氏)。炎や光の色だけではなく、画面全体のカラーをコーディネイトすることで、ダイナミックな映像表現が生まれてくる。

【「時代の終焉」トレーラー制作過程】
吉田氏のテキストからコンテを起こして絵を作っていく
主人公の冒険者は「旧FFXIV」から成長し、精悍になっている
バハムートの制作過程。高密度のポリゴンで作られている
完成したバハムートを現実の風景と比べて違和感をチェックする
さまざまな環境下を設定してライティングをチェックする
カラーコーディネイトで映像のダイナミックさを生み出す

 ここで普段表に出てこない制作初期のプリビズ映像と完成映像が並べて紹介された。プリビズの映像はビジュアルワークスが吉田氏に初めてプレゼンした時のもので、カット割りや演出などその後さまざまな検討が行なわれているさまが見てとれる。特に違いがはっきりしているのが、ルイゾワたちがバハムートを封印しようとするシーン。吉田氏のシナリオコンテでは「封印」として書かれておらず、魔法陣を使って封印しようとする演出は100%ビジュアルワークスのアイデアによるものなのだそうだ。

 トレーラーに出てくる冒険者たちは基本的にゲーム内にあるアクションだけを使う。唯一の例外が吟遊詩人で、戦士にプロテスをかけるシーンがある。これは、開発初期には吟遊詩人がプロテスを使えるという仕様の名残だそうだ。その後バランス調整のなかで削除されたが、トレーラーには残ってしまった。「仲間を思う気持ちが奇跡を起こしたということにしておいてください」(吉田氏)。

 トレーラー終盤では、ルイゾワが最後の力で冒険者たちを5年後の世界に跳ばす。何が起こったかわからず、光る自分の手を呆然と見下ろす冒険者のしぐさは、開発が非常にこだわりをもってリテイクを繰り返したシーンだ。ただ、このシーンをよく見ると、戦士である冒険者は自分の武器ブラビューラを置いたままワープしてしまっている。本来はもっていなければならないものなので、「侵攻編」で流れるカットシーンムービーではちゃんとブラビューラも5年後の世界に運ばれてきている。

【プリビズ映像と完成映像の比較】
粗いポリゴンの段階からチェックをして細部を煮詰めていく

 ビジュアルワークスは現在「蒼天のイシュガルド」のシネマチックトレーラーを制作中で、そのトレーラーでも更なるビジュアルワークスの進化が見られるとのことだ。トレーラーの公開時期はまだ未定だが、楽しみに待ちたい。

【制作者の細かいこだわり】
ダラガブの細部の設定
ダラガブのディティール
ダラガブの中には中心部に小さな球体があり、そこにバハムートが封印されていた
トレーラーに出てくるキャラクターは基本的にゲーム内でできるアクションだけを使っている
冒険者が5年後に飛ばされるシーンは開発のこだわりの産物
印象的なシーンには必ずイメージボードが作られる

(石井聡)