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【OGC 2014】Supercell CEOイルッカ・パーナネン氏が成功の理由を語る

Supercell独自の組織モデル、そして日本企業をパートナーに選んだ理由とは?

4月23日開催

会場:ベルサール秋葉原

参加費:5,000円

 OGC 2014では、「Clash of Clans」や「HAY DAY」などで知られるフィンランドSupercell CEOのイルッカ・パーナネン氏による「OGC10周年記念講演」が実施された。Supercellと言えば昨年10月にガンホー・オンライン・エンターテイメントとソフトバンクによる買収が発表され、ソフトバンク傘下のゲームメーカーとなっている。

 今回の講演では、パーナネン氏によってSupercellの成り立ちやコンセプト、そして被買収先に日本企業を選んだ理由などが話されていった。

Supercellが実践するゲーム作りに適した“セル集合体型”組織モデル

Supercell CEOのイルッカ・パーナネン氏
15年にわたって起業家としてゲーム業界に関わっている

 フィンランド出身で趣味はアイスホッケーとスキーというパーナネン氏は、15年間起業家としてゲーム業界に関わっている。2010年5月にはSupercellを6人の共同経営者とともに立ち上げており、「ベストの人間がベストのゲームを作る」というコンセプトを掲げ、人に優先順位を置くことで「何かいいことが起こるという信念のもと」に設立したという。

 その後会社は創業から3年で9億円近くの売上を上げる会社へと成長した。現在は日本を含めた4カ国にオフィスを構え、30カ国から集まった140人が働いている。この成功には「運ももちろんあった」というが、その他の要因をパーナネン氏3つ挙げた。

1.人、文化、ユニークな組織モデル

 Supercellでは、典型的なトップダウン式の組織編成ではなく、開発メンバーに決定権を大きく与えた組織モデルを採用している。開発チームは5人から15人程度の「セル」(個室、細胞の意)に分けられ、それぞれが独立して開発を進める。マネジメント側は各「セル」の決断を信じ、最低限のプロセスで調整を行なっていく。結果として「セル」は集合体として動き、これが会社名の由来ともなっている。

 また面白いのは、Supercellには「失敗を祝う」という文化がある。Supercellでは失敗がなければイノベーションはないと考えており、失敗そのものではなく、失敗から「学べた」ことを祝う。実際終了プロジェクトのチームには、各メンバーにシャンパンを渡してお祝いをしたそうだ。

エンドユーザーに近い立場に大きな役割が任されている組織モデル。クリエイティブなビジネスにはトップダウン型は適していないとした

2.長きにわたるサービスとしてゲームを考える

 入れ替わりの激しいモバイルゲームではあるが、数年にわたって遊んでもらえるようなゲームを提供したいという。長くゲームをプレイしてもらい、寿命の長いゲームを考えるようにしている。

 そのためにはサービスとしてのゲーム内容を改善していく中で、常に新鮮に感じてもらえることが重要だとした。実際に「HAY DAY」や「Clash of Clans」ではリリース直後から高い売上を維持し続けている。

長期展開を見据えたゆえに、リリース直後から売上の上位を維持し続けている

3.グローバルに考えること

 パーナネン氏は、会社のスタート時からグローバルで1位を目指すことを考えていたと話した。それはアジア圏でも同様で、世界でナンバーワンになることで“真のゲームメーカーになる”のが創業以来のコンセプトだったという。まだまだ先は長いが、世界を目指して前進してきたのが成功の要因ではないかと述べた。

ソフトバンクとガンホーは「完璧なパートナー」。日本ゲームは「ぜひ世界に」とアドバイス

パーナネン氏は特に任天堂のゲーム作りに対する姿勢が大好きだという
世界最大規模となった日本のモバイルゲーム市場も理由の1つだとした

 ではそんなSupercellが、なぜソフトバンク傘下として日本にやってくることになったのか?

 パーナネン氏は最大の理由として、「日本のゲームが大好きだから!」と語った。特にパーナネン氏は任天堂が好きで、ゲームをどんどん磨き、長く愛されるゲームを作ろうとする姿勢を敬愛しているという。「ここにいるだけで、多くのことを学べると思っている」と、日本のゲーム業界に敬意を表した。また日本のモバイルゲーム市場が世界で最大規模であることも理由にあるとして挙げられた。

 ソフトバンクとガンホーの買収については、両社がSupercellにとって「完璧なパートナー」だったからだとした。重視されたのはSupercellの独立性で、Supercellが長期にわたって独立性を維持し続けられることが要件の1つだったという。

 また「50年後もゲームが動いており、ゲームの中で歴史を作りたい」という最終的な目標を達成するため、長期的な議論をできることも決め手になったという。なお日本チームはまだまだ人出が足りておらず、Community Management、Player Support、Marketingスタッフを募集中だそうだ。

 そして最後に、パーナネン氏は日本のデベロッパーに向けて、日本には良いゲームが色々あるが、日本だけの展開に留まっているのではないか? と疑問を示しながら、「良いゲームは世界のみんなが好きなものなので、ぜひ世界に向けて発信してほしい」とアドバイスを送った。

 その際にローカライズは「完璧」にしなくてはいけないが、一方で自分のルーツを忘れず、ゲームの“魂”部分を変えないことも大事だとした。「ゲームの根幹は変えず、ルーツを愛して、常に磨きをかけることに集中してほしい。今のApp Storeのモデルがあれば非常に簡単だし、任天堂も成し遂げたことなのだから、みなさんにもできるはずです」と語った。

日本での展開はまだまだこれから。日本スタッフも募集中だという
【フィンランドのクリエイティビティ】
フィンランドでは、伝統的にゲームを作る文化があるという紹介もあった。風土的には寒いため家にいる時間が長く、語り部が重宝されたのだという。その中でボードゲームのような文化も発生し、その風潮が現在まで続いている。現在、フィンランドのゲーム開発は政府からの支援が受けられるほか、イベントも巨大な規模に達しているという

(安田俊亮)