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【GDC 2013】マルチプレーヤーゲームでプレーヤーの満足感を高めるには?
様々なスキルの裏に隠された開発の意図を「LoL」を例に紹介
(2013/3/31 15:28)
インディーズ出身のRaiot Gamesが開発、運営を行なっている基本無料の対戦型オンラインゲーム「League of Legends(以下、LoL)」は今はまだ日本ではマイナーな存在だ。しかし、全世界で会員数3,200万人、同接300万人を誇り、北米やお隣の韓国を始めとした世界中のプレーヤーが対戦を楽しんでいる。
そんなRaiot GamesのゲームデザインVPであるTom Cadwell氏によるセッション「Counter and Teamplay in Multiplayer Game Design」では、タイトル通り多人数で対戦するゲームの中での、カウンタープレイとチームプレイを「LoL」の様々なプレーヤースキルを例に解説した。
カウンタープレイとチームプレイがプレーヤーの満足感を高める
バトルゲームのスキルを考えるときには、3つの要素が需要になるとCadewll氏。1つめは技の派手さやわかりやすさ、反応の良さなどが生み出す楽しさ。2つめはその技を使ってプレーヤーが期待することができること。3つめはそれを使うことによって得られる成長だ。
例えば「スーパーマリオ」に出てくるファイアーボールは、派手でわかりやすいエフェクト、普通の状態よりもクリボーやクッパを倒しやすくなる、技をコントロールするためのプレーヤースキルに十分な成長の余地があると3つの条件を満たしているので、プレーヤーに満足感を与えることができる。
「LoL」のような対戦型オンラインゲームでは、プレーヤーに最も大きな満足感を与えるのは、カウンタープレイとチームプレイであり、「LoL」にもそれを狙った様々なスキルが用意されている。
相手あってのカウンタースキルなので、その部分を活かす方向に
カウンタースキルとは、敵の攻撃に反応して威力や効果が変わるアビリティの総称だ。Cadwell氏はカウンタースキルの要素を、適切か? わかりやすいか? 面白いか? という3つに分解して、それぞれについて適切でない例や修正された例を紹介した。
Corkiが使う「Hextech Shrapnel Shells」というスキルは、通常攻撃に自身の攻撃力の10%分が追加されるというパッシブスキル。安定した性能を誇るスキルではあるが、これがあるからといって反撃自体が出しやすくなるわけではないため、カウンタースキルとしてはあまり適切とは言えない例として出された。
わかりやすさでは、チームバトルで以前使われていた魔法のエフェクトがあまりにもごちゃごちゃしていて非常にわかりにくかった例をあげた。その後エフェクトは修正されて、現在の形に落ち着いている。
面白さという点では、Evelynnというステルスクラスのスキルを変更した例が挙げられた。変更前の「Shadow Walk」というステルススキルは、プレーヤーが操作するアクティブスキルで、攻撃を仕掛けるかアビリティを使うまでずっと隠れていることができた。そのため、何もできない時間が長く攻撃は一発屋の退屈なキャラクターになっていた。そこでステルスを常時発動のパッシブスキルに変更し、敵に近づくと見えるようになるというものに変更された。
次にMorganaの「Dark Binding」というスキルに見るカウンタープレイの満足感を例として挙げた。「Dark Binding」は魔法ダメージとともに敵をその場に動けなくするrootという追加効果が発生するスキル。Ryzeというキャラクターが使う「Rune Prison」という技も同じ性能をもっているが、Ryzeの技は敵をターゲットしてから発動する必中技であることに対し、Morganaのスキルはノンターゲットで相手が連れているMinionという従者NPCに阻まれる可能性があるぶん難易度が高い。
技が必中ではない代わりに、Ryzeよりもスキルのレンジが長く、発射した魔法が画面上にいる時間が長い。つまり、外れる可能性がある代わりに、当たればより大きな効果を得ることができるようになっている。Morganaの技は、敵に向かって撃つのではなく、敵の移動するであろう場所を予測して発射し、命中した時にもっとも大きな満足感を得られる。
近接系ファイターのGarenというキャラクターが持つ「Perseverence」という技は、現在は9秒間、敵のプレーヤーキャラクターから攻撃を受けずにいると、毎秒最大HPの0.4%ずつ回復していくというもの。以前は常に回復し続けるというあまりにも使い勝手が良すぎるパッシブスキルだったために、敵から攻撃を受けた後9秒間は回復が停止するという仕様に変更になった。通常の状態とは違う状態を作り出すことで、そこにメリハリや反撃の余地を生み出し、それがプレーヤーの満足感につながると考えている。
Caitlynの「Ace in the Hole」という技は、非常に威力の高い遠距離の襲撃技。詠唱した後ターゲットを設定して撃つ技で、最初は詠唱中に攻撃してキャンセルさせることが唯一の防御手段だった。だが、固いプレーヤーが後衛の味方をかばうというヒロイックなプレイを導入するために、射線上を別の敵が塞ぐとその敵に当たるという仕様に変更された。
チームの一員として貢献することで得られる満足感は何よりも大きい
チームププレイについても、適切か? チームメイトにもわかりやすいか? 面白いか? という3つの要素から考えることができる。こちらで不適切な例としてはTwisted Fateの「Loaded Dice」というスキル。チームメイトが敵を倒したときに取得するゴールドが2倍になるというパッシブスキルで、味方がいることで効果が発動するという意味ではチーム用のスキルではあるが、これがあるからといって特にチームプレイが生きる訳ではないので、チームプレイとはあまり関係がない。
Nunuの「Blood Boil」は、自分に使用することでチームメイトの攻撃速度と移動速度を上昇させるスキル。効果自体はチームプレイに役立つが、エフェクトが微妙で戦闘中のチームメイトが気づいてくれないことがある。
面白いスキルの好例としては、「World of Warcraft(以下、WoW)」(Blizzard Entertainment)のDeath Kightという種族が使う「Gorfeield's Grasp」というスキルを挙げた。このスキルは目標に設定したキャラクターから20ヤード内にいるすべてのモンスターをひきつけるというもの。周辺の敵を1カ所に集めて一網打尽にしたりと、様々な使い方があり使い甲斐のあるスキルだ。
すばらしいチームワークの体験は、ユーザーに最も大きな満足感を与えるとCadwell氏。これはオンラインゲームでパーティープレイをして、困難を乗り越えた経験のある人なら誰もが同意する事実だろう。そんなチームプレイを可能にしている「LoL」のスキルの1つがThreshの使う「Dark Passage」だ。使うと、フィールド内にランタンを投げる。味方がそのランタンをクリックすると、Threshがいる場所まで引っ張られるという支援技だ。
たとえば道を挟んで敵に追いつめられている味方に対してランタンを投げて、追いすがってくる敵から引き離したりと、味方の支援に強力な効果を発揮する。スキルを受け入れる相手とのコミュニケーションが必要な技であり、1度成功すればその後もどんどん使うようになる。
もう1つ、チームの連携による効果的なスキルの使い方として「WoW」のHunterが持っている「Trueshot Aura」と、Shamanの「Bloodlust」という技を組み合わせることによって相乗効果を生み出せるという例を挙げた。「Trueshot Aura」は100ヤード以内にいるパーティーまたはレイドメンバーの物理攻撃力を10%高めるというスキル。「Bloodlust」はすべてのアタッカーの攻撃スピードを40秒間30%増加させるというもの。ボス戦やレイドの終盤に畳み掛ける時に、お互いのスキルを示し合わせて使うことで、格段に破壊力を高めることができる。
結論として、多人数が参加するゲームの中では、1人のプレーヤーの行動が、他のすべてのプレーヤーの満足につながる。カウンタープレイヤチームプレイを通じて、そういった機会を作ってあげることが必要だと語った。