ニュース
「WCG2013」日本予選、「League of Legends」部門代表は「Rampage」に決定
将来は武道館で大会を。大会スポンサー、ロジクールのインタビューも
(2013/10/7 00:00)
テクノブラッドは10月5日、ALIENWARE ARENA in アイ・カフェ AKIBA PLACE店にて、「World Cyber Games2013(以下WCG2013)」の「League of Legends」部門の日本代表選手を決める予選大会を開催した。共催はeスポーツ専用施設「e-sports SQUARE」。
「World Cyber Games」では2010年から「League of Legends」を種目として採用しているが、日本代表が参加するのは今年が初となる。本大会はその日本代表を決める大会だ。それだけに今回の大会は注目度が高く、多くのユーザーが会場に駆けつけたほか、ニコニコ生放送の総視聴者数は9万人を越えていた。
大会優勝チームには「WCG2013」への出場権、渡航費、宿泊費の他に賞金50万円とLogicoolから「G710 Plus Mechanical Gaming Keyboard」が送られる。
オンライン予選には全16チームが参戦し、オフラインの決勝会場には予選を勝ち抜いた「PeachServer AllStars」、「IkdYsak」、「Rampage」、「TIMEOFCLOCK」の4チームが参加した。
キャラクター選択から駆け引きあり。「Draft」モードのルールをおさらい
「League of Legends」はMOBA(Multiplayer Online Battle Arena)と呼ばれるジャンルのゲームの1つ。プレーヤーは5対5の2チームに分かれ、相手の本拠地を破壊を目指す。本拠地までのルートには敵チームを攻撃するタワーが配置されているので、基本的には順番にタワーを破壊しながら進んでいく。
プレーヤーは1体ずつ「チャンピオン」と呼ばれるキャラクターを選択し戦うのだが、それぞれ特性や必殺技が異なるので、キャラクターごとの立ち回りや、味方の「チャンピオン」との連携が試合の見所だ。
また「チャンピオン」には、RPGの様な「経験値」と「ゴールド」という概念がある。これらは敵チームを倒したり、「クリープ」と呼ばれるモンスターを倒すと獲得できる。「経験値」が溜まるとレベルアップして新たなスキルが使えるようになったり、ステータスが上昇する。「ゴールド」は装備や、ポーションなどの消耗品の購入に使用する。1試合の流れの中で、相手チームを妨害しつつ自分の「チャンピオン」を育てていくのが勝利へ近づくポイントだ。
今回の競技ルールは「Draft」モードを使用し、BO3(3本勝負で先に2本先取した方が勝利)というルールを採用している。
「Draft」モードは、使用する「チャンピオン」の選択前に、両チーム1体ずつ相手側の「チャンピオン」をBAN(除外)するところから始まる。これを3回繰り返し、合計6体の「チャンピオン」がゲームからBANされることとなる。その後先攻のチームから試合で使用する「チャンピオン」を選択していくというルールだ。
この時点で「どの『チャンピオン』をBANするか」、「どの『チャンピオン』を選択するか」という両チームの読み合いが始まっている。BAN1つ取っても相手チームが得意とする「チャンピオン」をBANするのか、一般的に強いと呼ばれている「チャンピオン」をBANするかで展開が異なってくる。さらにその上で相手の出方や、チーム内の連携を考えて「チャンピオン」を選択していくのだ。
決勝戦「PeachServer AllStars」と「Rampage」の行方は……?
決勝戦に勝ち上がったのは、「PeachServer AllStars」と「Rampage」。3本勝負の1試合目、先攻の「Rampage」は「Ahri」、「Elise」、「Orianna」を、「PeachServer AllStars」は「Zyra」、「Caitlyn」、「Corki」をそれぞれBANした。このBANには、相手チームの得意とする「チャンピオン」を含みつつ、大会などでよく使用される「チャンピオン」を選択したような印象だ。
選択したヒーローは「Rampage」が「Shen」、「Thresh」、「Zed」、「Vi」、「Ezreal」。「PeachServer AllStars」が「Vladimir」、「Jarvan IV」、「Fiddlesticks」、「Fizz」、「Vayne」となった。
最初にキルを取ったのは「Rampage」。開始4分でdejiwo選手の「Thresh」が敵を自身の近くに引き寄せるスキルを使い、一気に3人に対して畳み掛けた。ここで「Rampage」はゴールドと経験値を入手し、相手チャンピオンの成長を妨害できたので少し有利な体制になった。「PeachServer AllStars」は1st blood(試合の最初のキル)を取られたものの、倒すとチーム全体が「ゴールド」を入手できる「ドラゴン」を立て続けに倒すなど、序盤の差を詰めて逆転していった。
小競り合いは発生したものの大きなキル差、タワー差は発生しないまま迎えた試合後半、28分前後で「Rampage」が4人で「PeachServer AllStars」本陣付近にプレッシャーをかけていき、そのまま集団戦に突入。「Rampage」のAotaka選手が操る「Shen」がタンクとして突っ込んで攻撃を受け止め、meromeron選手の「Ezreal」が「PeachServer AllStars」の集中攻撃をかいくぐり、後ろに回り込んで場をかき回す。結果「Rampage」は4キルを取り、そのままの勢いで本陣奥のタワーも破壊。この攻撃が決定打となり、「Rampage」が1本目を制した。
先攻後攻を交代して2試合目。「PeachServer AllStars」は「Caitlyn」、「Zyra」、「Thresh」を、「Rampage」は「Ahri」、「Shen」、「Orianna」をBANした。先ほどの試合と似ているが、「Rampage」が使用していた「チャンピオン」が2体BANされている。
これを受けての「チャンピオン」選択は、「PeachServer AllStars」は「Fiddlesticks」、「Vi」、「Corki」、「Zed」、「Singed」を選択、「Rampage」は、「Elise」、「Ezreal」、「Sona」、「Renekton」、「Fizz」を選択した。
開始3分、草むらに隠れ敵を待ち受けた「Rampage」のMirabis選手が操る「Elise」が、「PeachServer AllStars」のAruferisが操る「Vi」を的確に捉え1st bloodを獲得する。「PeachServer AllStars」のwendylolz選手、apaMEN選手がフォローに入るも、連携が上手くとれず逆に大きなダメージを受けてしまった。
ほぼ同時刻、別の場所で、「Rampage」のmeromeron選手、dejiwo選手と「PeachServer AllStars」のazrmoon選手、cherryry選手の戦闘が勃発。「PeachServer AllStars」の2選手がアグレッシブに前に出たが、meromeron選手のスキル発動のタイミングがばっちり当てはまり、dejiwo選手と個人技によって2人を押さえる。azrmoon選手らは形勢不利を悟って後方に下がったが攻撃に耐え切れずazrmoon選手がダウン、そのまま「タワー」下に逃げ込もうとしたcherryry選手も追撃を受けてダウンしてしまった。
この辺りから徐々に差が開いていき一方的な試合展開へ。その後「PeachServer AllStars」がなんとかキルを返し、「ドラゴン」を取るもチーム全体のゴールド差は縮まらず、集団戦でも「Rampage」の勢いを抑えられない。その結果更に「ゴールド」、「経験値」の差が広がっていった。
「ゴールド」差は10,000以上に広がり、集団戦でもなかなか押し切れない「PeachServer AllStars」。一方勢いに乗った「Rampage」は多少の被弾は気にせず強気に本陣のタワーを攻撃していく。その後一旦は引いて体制を立て直すと、さらに本陣を攻撃するという冷静さも見せた。終盤では「Rampage」という名の通りそれぞれが“大暴れ”を見せ、そのままゲームセット。「WCG2013」の「League of Legends」部門の日本代表は「Rampage」になった。
試合終了後「Rampage」のリーダーHarakiriBoy選手は、声出しを意識したり、海外のチームとの練習試合重ねてきたのに加え、先日から行なわれている世界大会の動画を見て勉強したのが勝利に繋がったと話してくれた。中国で開催される「WCG2013」本戦については、「中国、韓国の強豪チームが出場するのが脅威ですが善戦したいです」と控えめに意気込みを語ってくれた。
残念ながら予選を敗退してしまった「PeachServer AllStars」の選手達も、「Rampage」には日本を代表して頑張ってもらいたい、と話した後、「まだまだ練習すればパワーアップできると思うので次は優勝したい」とAruferis選手から次回に繋げるコメントをもらった。
大会スポンサーのロジクールが日本のe-Sportsにかける思いとは
こうして選手、観客両者にとって熱く楽しい1日が終わった。大会の主役は選手であり、観客なのだが、選手や大会をサポートするスポンサーの存在があるのだ。
弊誌では今回の大会スポンサーである株式会社ロジクールでクラスターマーケティングマネージャーを務める古澤明仁氏に、直撃インタビューを行ない、ロジクールが日本のe-Sportsにかける思いについて話を伺った。
――今回の大会を振り返って率直な感想を教えて下さい。
古澤明仁氏: ある程度の注目、集客を得られるとは考えていたのですが、想像以上の盛り上がりでした。会場に足を運んでくれた観客もそうですし、ニコニコ生放送では総視聴者数が9万人を越えています。まだ日本で正式にサービスされていない「League of Legends」というタイトルで、ここまでの注目度を集められたのは良い結果だったと思いますね。
――ロジクールがe-Sportsに力を入れ始めた時期はいつ頃でしょうか?
古澤氏: 海外法人のLogitechを含めると、以前からスポンサードや各種イベント協賛を行なってきました。日本法人のロジクールでも大会の賞品にデバイスを提供する、といった活動はしてきましたが、今回のような形で大会をサポートしたのはこのイベントが初めてです。
というのも、今年の4月から「Logicool G」という新しいブランドに生まれ変わったのですが、そのタイミングでこれからは製品のスペックや機能を語って売っていくのではなく、業界全体を盛り上げていくというのをもう1つの軸として考えています。
――ロジクールとして日本のe-Sports業界全体を盛り上げていくというわけですね。
古澤氏: 我々には日本のe-Sportsを盛り上げていきたいという非常に強い思いがあります。ちょうど今日ロサンゼルスで「League of Legends」の世界大会の決勝が行なわれたのですが、その大会の注目度や集客と比べると、日本のe-Sportsというのはまだまだこれからだと思います。
日本のe-Sportsを盛り上げていくには大会や運営をされているスポンサーの皆様や、その周りでビジネスをしている我々の様なデバイスメーカーがみんなで盛り上げていく必要があると思っています。プレーヤーとして「参加してみたい」、「うまくなりたい」というモチベーション作りや、大会などの場を提供するという様に環境を作っていかないと、市場としてはニッチなサブカルチャーで終わってしまうと思っています。ですので、ロジクールとしてそれらできる限りバックアップしていきたいと考えています。
――正直、現状の日本のe-Sports市場はまだ発展途上だと思います。そんな市場にビジネスとして参戦するのは困難だったのではないですか?
古澤氏: 実は4月にブランドを一新する際に、社名を伏せて10代、20代、30代、40代のゲーマーを集めてグループインタビューを行ないました。そこでわかったのが10代、20代といった若い世代のゲーマーはゲームに対して、野球やバスケットボールの様なメジャーなスポーツと同じように“カッコイイ”という印象を持っている事がわかったんですね。これが衝撃的だったのですが、これからのゲーム市場を引っ張っていく若い世代がそういう捉え方をしているなら、企業としてここに注力すべきだと判断しました。
――それはロジクールが考える、日本のe-Sportsの将来とはどんな姿でしょう?
古澤氏: これは10年や20年といったスパンで見た時の話ですが、e-Sportsがメジャースポーツでいうオリンピックのような世界的な競技になってもおかしくないと思っています。我々はそこにたどり着くためにこういった大会をサポートしたり、チームや個人をサポートすることでそういったビジョンを達成したいですね。
何年後かわからないですが、例えば武道館の様な大きな会場で大会を開催したいですね。当然理想としては弊社の名前を冠にした大会が開催できれば良いのですが、業界を盛り上げていくのは1社だけでは無理ですし、一般的に競合と呼ばれているような会社とも協力して一緒に業界全体を盛り上げていきたいですね。
これからもオフラインのイベントを開催を初め、選手がモチベーションを保てるような環境づくりをサポートしていくので、若いe-Sportsプレーヤーの皆さんも切磋琢磨してめきめきと成長していって欲しいですね。
まだまだ成長途中である日本のe-Sports業界だが、選手のレベル、観客の注目度、そしてスポンサーの熱意という点を見ると、近い将来爆発的に盛り上がりを見せるのでは、と感じた。「WCG2013」で「Rampage」の実力を世界に見せつけ、日本のe-Sports業界の熱さを世界に伝えてもらいたい。