「VANA★FEST 2012」トークセッション・1日目レポート

拡張ディスク「アドゥリンの魔境」発表。新ジョブは「風水士」


6月23~24日 開催

会場:パシフィコ横浜



 6月23日と24日の2日間に渡りパシフィコ横浜にて開催されている「A DECADE OF FINAL FANTASY XI VANA★FEST2012」にて、「ファイナルファンタジーXI(FFXI)」の開発者によるトークセッションが開かれた。

 このセッションは23日、24日の両日とも行なわれる予定で、異なる内容となる予定。初日となった23日のセッションでは、拡張ディスク第5弾「アドゥリンの魔境」が発表されるとともに、その内容の一部が公開された。


ディレクターの伊藤泉貴氏アソシエイトディレクターの藤戸洋司氏
プランナーの齋藤富胤氏プランナーの谷口勝氏



■ 「アドゥリンの魔境」の舞台は西方の未開の地!

「アドゥリンの魔境」タイトルロゴ
天野喜孝氏によるイメージイラスト

 トークセッションに参加したのは、ディレクターの伊藤泉貴氏、アソシエイトディレクターの藤戸洋司氏、プランナーの齋藤富胤氏と谷口勝氏。この4氏がステージに上がるや否や、ステージ上のスクリーンにムービーが流れ始めた。その内容は拡張ディスク第5弾「アドゥリンの魔境」を発表するものだった。このムービーは、本日開設された公式サイトで視聴できる。

 「FFXI」における拡張ディスクは、2007年11月に発売された「アルタナの神兵」以来のものとなる。発売は2013年の予定。プレイステーション 2、Xbox 360、Windowsの3プラットフォーム向けに発売される。うちWindowsはダウンロード販売も行なわれる予定。価格は現時点では未定となっている。制作は「石の見る夢」などアドオン三部作で協力した株式会社マトリックスと共同で行なっているという。

 ムービーの内容は、新エリアや新ジョブの追加、および新たな物語の展開といったものだった。これらの詳細は4氏のトークの中で順次解説された。

 まずタイトルにある「アドゥリン」とは、西方にある島の名前。正確には周辺の群島も含めた「神聖アドゥリン都市同盟」も指している。東は「テンゼン」、南は「罪狩りのミスラ」、北は「オーク帝国」と、既に断片的に語られた遠方がある中、今回なぜ西を選んだのかという理由については、「新しい遊びの仕組みとストーリーの両面から、新しいことができる大陸・舞台はないかと探して、今回は西になった。『アルタナ』が重めの物語なので、似たような展開になりそうな北は候補から外した。東と南はこれまでのストーリーに大きく関わっており、続編を期待されてしまう。5年かかっての新ディスクなのに新鮮さが薄いのではと思った」という。

 「アドゥリン」にはかなり発展した街が存在するのだが、そこから1歩出れば広大な魔境が広がっている。遠い昔、魔境の開拓をすべく活躍した初代アドゥリン王は、魔境を調べるごとに危険な場所だと理解し、森には入らないよう言い残して志を半ばにして亡くなってしまう。残った民もその遺言に従って開拓を中止し、数百年は開拓が止まる。しかしある時、再度開拓しようという話が持ち上がり、約100年ほどかけてゆるやかに開拓が進められる。ところが度重なる不可思議な現象により、その開拓計画もあえなく中止。初代王の呪い、怒りという声も上がり恐れた。アドゥリンの民は高い城壁を築き、以後はウルブカに人が立ち入らないようにした。

 開拓という目的を奪われた「アドゥリン」はその後、海洋貿易によって街を発展させてきた。それから200年ほど経った現在、またも開拓すべきという声が上がり始める。しかし過去の事象から反対するものもおり、話が進まない。そこで冒険者に白羽の矢が立ち、プレーヤー達が魔境の開拓を引き受けることになる。この開拓によって、魔境に何があり、過去に何があって今どうなっているのかが明らかになっていくのだという。

 今回の拡張ディスクでは、「最近、お話し系が少なくて寂しい」というプレーヤーの声を受けて、ミッションやクエストに新たなキャラクターを多数登場させてボリュームを厚くしているという。合わせて登場キャラクターの一部も公開された。


「アドゥリン」の街のコンセプトアート
こちらは開発中のゲーム画面のスクリーンショット。はるか西方の島国ながら、かなり発展しているのがわかる

今回公開された3人のNPCキャラクター。これまでの「FFXI」とはテイストの違うイラストになっている



■ 未開の地にアウトポストを建て、魔境を開拓する!

「開拓」とは、切り開き、発見すること
いかにも未開の地という雰囲気のコンセプトアート

 では「開拓」とは何をするのか。目的は「切り開くこと」と「発見すること」の2つ。「切り開くこと」では、とにかく魔境の奥へと進んでいくことになる。魔境にはこれまで見たことのない植物やモンスターが生息しており、麻痺の霧を発生させる植物が群生していたり、巨大な岩や樹木が行く手を阻んだりするという。

 それらの危険を乗り越え、障害物を破壊しながら、伐採、採集、採掘で素材を集めていく。集めた素材は、各エリアでアウトポストを建築するために使う。未開の地なので、最初はアウトポストが存在しない。プレーヤーがアウトポストを建てれば、そこに瞬時に移動できるようになるほか、機能的なNPCが配置される。また各エリアに設定された「開拓率」に下限値が設定され、それより下がらなくなる効果もある。

 ただ魔境には、「七支公(しちしこう)」と呼ばれる巨大なモンスターがおり、大陸を守っている。さらにその配下にも多数のモンスターがおり、魔境のいたるところに拠点がある。それらを討伐したり、拠点を破壊したりする必要がある。拠点の破壊の際には「カンパニエバトル」のような共闘スタイルになるという。

 もう1つの「発見する」というのは、「絶対何かあるだろうと思わせるような洞窟や、モンスターの拠点となる場所を見つける。また、何かに使えそうな彫像のパーツ、少し前にブームになったパワースポットのようなものを見つけて調査し、その不思議な力を引き出すなど、さまざまにある」という。自然やモンスターの脅威を取り除き、新たなものを見つけ出すのが、開拓の趣旨というわけだ。

 開拓で入手できるアイテムの中には、開発で「魔境インスタンス」と呼んでいるダンジョンの鍵が存在するという。これについては2日目のトークセッションで詳細を語るとした。

 新エリアの追加に合わせて、新しい素材や合成レシピも追加される。魚も追加される予定だが、釣りについてはWindows版で釣りにくいなどのクライアント差についても言及があり、「フレームレートを全クライアントで統一することにより、PS2と同じ感覚で釣れるようにする」としている。なお新しい魚やレシピは何を入れるかまでは決まっておらず、何か希望があれば公式Webサイトのフォーラムに書いて欲しいそうだ。

 開拓に関係する新しいキャラクターやモンスターもいくつか公開された。モンスターはジャングルなので植物や昆虫が多めになっている。他にも人の背丈の数倍はあろうかという巨大な蜂や、頑強な肉体を持つ新たな獣人なども見られた。

 「アドゥリン」には、開拓に来た冒険者を支援してくれたりクエストを発行してくれる、情報ギルド、開拓ギルド、治安ギルド、娯楽ギルド、運搬ギルド、工房ギルドという6つのギルドが存在する。各ギルドのクエストをこなすことでギルドのランクが上がり、建物の外見が変わったり、扱う商品が増えたり、「ギルドサービス」と呼ばれるバフの種類が増えたりする。例えば工房ギルドがランクアップすると、開拓が便利になるアイテムが販売される。情報ギルドではパワースポットの情報が蓄積され、パワースポットでよい効果が得られるようになる。藤戸氏が「娯楽ギルドは新しいスペシャルイベントを開催した時に……」と口を滑らせる場面もあったが、その他のギルドも今後随時紹介していくとしている。


ジャングルのスクリーンショット。これらの場所を突き進み、開拓を進めていく
巨大な蜂のモンスター大きな羽根を持つ人型のキャラクター
頑強な体躯と太い尻尾が特徴の新たな獣人族
ゲームで重要な役割を果たすというモンスター
魔境で出会うモンスター達。この2体は特殊な能力を持っているという



■ 新ジョブは2つ。うち1つは「風水士」

新ジョブの1つは「風水士」。独自の風水魔法と精霊魔法を操る

 そして会場でもムービー上映時に大いに沸いた新ジョブについて。「アドゥリンの魔境」では2つの新ジョブが実装される。今回はそのうちの1つ、「風水士」が公開された。「ファイナルファンタジー」シリーズではおなじみの、自然や地形を操って戦うジョブだ。

 「FFXI」における「風水士」は、専用の「風水魔法(仮)」を持つほか、精霊魔法も使える。遠隔スロットに専用装備の「鈴」を装備でき、それによって真の力を発揮する。「鈴を装備しないと風水魔法を上手に使えないという感じ」だそうで、仕組みとしては「吟遊詩人」や「からくり士」と似ている。

 風水魔法はスフィアのようにフィールド展開する魔法で、他の魔法や呪歌、ロールとは別扱いなので重複して効果を得られる。自分自身に風水魔法を詠唱した場合、詠唱者を中心に広範囲のフィールドが展開される。呪歌と似ているが、詠唱者が動くとそれに合わせて有効範囲も移動する(羅盤(仮)が消えるまでは、自分自身を中心にした範囲が維持され続ける)というのが異なる。

 また学者の補遺のような形で、メインジョブ限定のアビリティを使用した場合だけ詠唱できる風水魔法「羅盤(仮)」がある。パーティメンバーをターゲットして発動すると、その場所に「羅盤」が設置される。魔法の効果は設置した場所を中心に発動し、1度設置した「羅盤」は動かせない。また「羅盤」にはHPがあり、時間とともに徐々に減少。範囲攻撃などによっても減り、HPが0になると消失する。強化などは受けつけないが、アビリティで効果値や効果時間を調整できる。


風水魔法には味方の支援系と敵の弱体系がある。弱体系はレジスト判定なし
風水だけあって方角が重要になる「鬼門(仮)」

 気になる風水魔法の効果は、リジェネやリフレシュ、リゲインといった回復系や、STR、INT、攻撃力、防御力などステータスアップするもの、さらにはスロウや麻痺、魔法防御ダウン、回避率ダウンなど敵を弱体させるものもある。中でも弱体効果を持つ風水魔法は、範囲に及ぼされるフィールド判定なので、レジスト判定がないという特徴を持つ。これについては、「完全耐性がある場合は除外する場合もあるかもしれないが、バインドやスタンなど強力すぎるものを外せば、よほどのことがなければこれでいきたい」としている。

 またジョブ特性「鬼門(仮)」を持っている。これはモンスターから見た方角によって精霊魔法にボーナスがかかるというもの。北なら魔法攻撃力アップ、南なら魔法命中率アップ、東なら魔法クリティカル率アップ、西なら再詠唱時間短縮といった具合。「意識しなくても何かしらボーナスがかかるので気にしなくてもいいが、立ち位置を意識して動けばより効果的」という。

 風水士の精霊魔法スキルはB-で、単体のIV系まで詠唱できる。またスタンやドレインなど一部の暗黒魔法も使える。ガ系は使えないが、新たなカテゴリとなる「ブリザラ」や「ファイラ」といったラ系の精霊魔法が使える。ラ系は「鬼門」の影響を大きく受けるもので、使用時には立ち位置を意識する必要がある。

 トータルのバランスとしては、「ちょっと難しいテクニカルなジョブだが、その分、見返りがあるよう設計している」という。まだ開発中のため仕様は変更される場合もあるが、「魅力的なジョブにしたい」と語っていた。


萩原一至氏が描いた風水士のアーティファクトのイラスト

 なお風水士のアーティファクトやジョブ専用武器は、コミック「BASTARD!!」の作者として知られる漫画家の萩原一至氏がデザインしている。会場には萩原氏からのメッセージが届けられ、「自分自身でもプレイしているゲームのデザイン、新ジョブのアーティファクトですから、こんなのが着たかったという妄想が爆発した。早くうちのガルカに着せたい」と萩原氏の熱い思いが語られた。

 もう1つのジョブについては今回は語られていない。ムービーの中ではややスリムな印象のシルエットが見えたが、いったい何が用意されているのか。続報を楽しみにお待ちいただきたい。


萩原一至氏のデザインをもとに作られた風水士のアーティファクト

(C)2002-2012 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
ILLUSTRATION: (C)2012 YOSHITAKA AMANO
ILLUSTRATION: KAZUSHI HAGIWARA

(2012年 6月 24日)

[Reported by 石田賀津男]