インタビュー

「FFXI: アドゥリンの魔境」プロデューサー松井聡彦氏インタビュー

新ジョブについて その1「魔導剣士」。谷口氏「魔道剣士は赤盾がベース」

魔道剣士について語る谷口氏。設計者というだけあって、その想いをたっぷり語って貰った
魔道剣士
敵対心はエンチャントルーン周りの専用アビティと攻撃で稼ぐ。両手剣WSレゾルーションが撃てるのが魅力的だ

――ようやく本題の「アドゥリンの魔境」のお話に移ります。今回新ジョブとして風水士、魔導剣士を追加しますが、まず、ジョブカテゴリとして盾系とサポート系を選択した理由は何ですか?

谷口氏:盾ジョブは魔法に対する盾がないからそれを足そうということです。新ジョブ追加ってはっきり言ってしまうと“スキマ産業”だと思うのです。なのでどこが空いているかというのを探した時に、物理の盾はいるけど魔法の盾はいない。そのちょっと前に流行っていたのが、赤魔道士のサポジョブを忍者にして、空蝉を張ってターゲット取ってというものがあったと思いますが、魔導剣士はあれがベースです。

――おお、赤盾ですか! しかし、赤盾は公式見解として否定されましたよね?

谷口氏:はい、否定しました。あれは弱体魔法を使ってターゲットを取るという形でしたが、赤魔道士はもともとそういうジョブではないので否定しました。今度それをピックアップしてジョブとして確立させたのが魔導剣士です。イメージはあれが一番近いです。

 一方の風水士は従来からの「FF」にいるジョブで、ユーザーからもいろいろとご意見があったのですが、今回も風水士はどうかという話があったので、じゃあ風水士にしようということになりました。能力をどうしようかということになった時に、今までの「FF」の風水士にしてしまうと黒魔道士とそんなに変わらなくなってしまうので、見た目の設定だけすくい上げて、あとは「FFXI」用に全部アレンジをしてああいうジョブにしています。

――各ジョブについて伺っていきます。まず、魔導剣士についてです。「FF」シリーズであまりなじみのない存在ですが、なぜ魔導剣士と?

谷口氏:当初は「魔法剣士」という「FF」関連作品でも過去に登場したジョブ名でいこうという話もあったのですが、「赤魔道士」と名称のイメージが重なってしまうため、「魔導剣士」とさせていただきました。

――魔導剣士は“第3の盾”ということで、実際にプレイして見た限りでは、受け流しが高くて、魔法も使えて、魔法防御も高くて、WSも強くてと、盾というにはかなり最強な感じですよね。

谷口氏:いや、実際はそうでもないですね。受け流しは高くても100%回避するわけではないですし、やはり物理に対するダメージはナイトにかなり劣るので、その部分のサポートジョブとか支援でどう補っていくのかというジョブだと思っています。そこはナイトも一緒だと思います。物理ダメージには強いけど、魔法ダメージはどうやって軽減していこうというところがあると思うのです。そこで今だったら、一番最強のイージスを装備しようという話になっていたりしていると思うのですが、魔導剣士は物理をどう補うのかがポイントになるジョブですね。

――今回見た限りでは非常にテクニカルで、「FF」を知り尽くしている人間だけが遊びこなせるようなジョブデザインなのかなと思いました。

谷口氏:知り尽くしているというより、ちゃんと順を追って学んでいる人が使いこなせていけるようになっているジョブなのかなと思います。ですから、今はパッとレベルが上げられるようになっていますが、いきなりレベル99にしてさあやろうってできるジョブではないと思います。

――今回レベル99の魔導剣士をいきなり触ってみてそう思いました(笑)。魔法剣士はアビセアで一気に上げてしまうのでは無くて、属性などの仕様をマスターしながら少しずつ楽しんでいって欲しいかなという感じですか?

谷口氏:そうですね、他のジョブをやっているよりは、こう言ったらあれですが、ゲームをやっている感覚は強いのかなと思います。

――2つの新ジョブはソロもそこそこいけますか?

谷口氏:ソロでも戦いやすいほうではないかと思います。

――今回試遊でびっくりしたのは、吸収するアビリティの「リエモン」です。これは凄い能力ですね。

谷口氏:そうですね。あれは「FFXI」で初ですね。いうなれば“防御系最強”のアビリティなので、色々制約はつけていますが、使いどころによっては見返りの大きいものにはしています。

――これは空蝉以来の衝撃みたいな感じになるんじゃないですか?

谷口氏:でも空蝉ほどは強くないですよ、正直。

――リエモンはサポでも使えますか?

谷口氏:無理です。メインじゃないと使えないようになっています。

――じゃあこれを狙って、魔導剣士をやる形になるわけですね。

谷口氏:魔導剣士はこの属性はこれが強いからじゃあこういう立ち回りでいいのかなということが分かっている人は、ピンと来るジョブじゃないかなと言う気はしています。ただそこにたどり着くまでは、魔導剣士をプレイしていないと到達できないかなという想定はしているのですが、最近のユーザーは上手なのでわからないですね。

――アビリティはどういう設計になっていますか?

谷口氏:ルーンを使って自分に付与して、それをベースに色々攻撃なり防御なりを展開していくというのと、それ以外に自分の回避率を上げたり、パーティーをちょっと守るアビリティをルーン以外で使えるようにしてします。それも全部属性向けのアビリティになっています。

――武器が両手剣というのが非常に印象的ですが、なぜメインウェポンに両手剣を選んだんですか?

谷口氏:メインとして両手剣のジョブが1つもないからです。

――一応両手剣は暗黒騎士ではないのですか?

谷口氏:自分のイメージなんですが、暗黒騎士は両手鎌なので(笑)。

――暗黒騎士のアイデンティティが半分食われちゃうような?

谷口氏:それぐらいはいいかなと(笑)。ジョブとして暗黒騎士が魔導剣士に食われることはないと思います。魔導剣士は「FFXI」の中で一番テクニカルなジョブだと自分では思っています。自分で使っていても、使い切れない可能性があるくらいなので、日々いろいろいじってはいるのですが。そのぶん、プレーヤーが操作をした時に、うまく動かせた時の見返りは一番大きいジョブだと思っているので、その辺りで面白さは伝わるのかなと思っています。

新ジョブについて その2「風水士」。谷口氏「風水士はスフィア効果を具現化した存在」

谷口氏の話は具体的でわかりやすく、松井氏が全幅の信頼を置いている人物であることが伝わってきた
風水士
これが“裏ジュノ”の階段エリア。球状(実際には円柱状)に展開する風水魔法がより効果的に使える数少ないエリアのひとつだ

――次に風水士です。風水士は結構古い「FF」にしか登場しないジョブなので、その設計はかなり難しかったんじゃないですか?

谷口氏:そんなことはないですね。スフィア効果を持っている装備があるのですが、あれを具現化しようという話はでていたので、そこから引っ張ってきているので、そんなに難しいと感じたことはないです。

――風水士は羅盤を軸にした、言うなればペットジョブの変形みたいな、非常にトリッキーなジョブになっていますが、この設定はどこから持ってきているのですか?

谷口氏:風水士が、自分で大地の力を吸い上げているみたいなイメージなんですね。それはさすがに動かないだろという固定概念がありまして、そのまま具現化してその場に配置できるようしたらいいなと。敵は引っ張ってくればいいからそこにくればいいじゃんという考えだったので、それだけだとちょっと足りないかなと思ったので、引っ込めてまた配置し直してというところはちょっと融通が利くようにしてあります。

――風水士というとベルのイメージが強いのですけれども、手に持っているベルは鳴らせたりするのですか?

谷口氏:実は詠唱中は鳴っています。

――おお、気づかなかった。

谷口氏:詠唱中に振っていたと思いますが、あれが実は鳴っています。

――今回補助系の風水魔法を体験しましたが、その風水魔法の基本デザインについて教えてください。

谷口氏:風水士は支援のジョブにしようというところから始まって、スフィアを具現化しようというのがあったので、スフィアはどういう形かというと円形状の道具だよねというところがあって。スフィアっていってしまうと、今既存の装備品でスフィア効果ってのがあるので、あれとかぶっちゃうのですね。厳密にいうとあれとちょっと違うので名前を変えようというもので今のインデコルアとジオコルアという名前になっているのです。インデコルアが自分に対して張るもので、ジオコルアは羅盤があってその周囲に張っていくんですね。

――範囲効果が球状になっていますが、上下にも広がるというのがおもしろいと思いました。

谷口氏:それもスフィアから来ています。実はプログラム的には円柱で持っているのですが、見た目は平面でお願いしますとエフェクト担当にお願いしたんですが、エフェクト担当が「いや、それじゃつまらん」という話になって、ああいう球体にしてもらって良い物ができているという感じです。

――しかし、「FFXI」のバトルで高さを意識することってあまりないですよね。

谷口氏:ないですね。

――どういったシーンで、上や下に対して有効に使えるのですか?

谷口氏:有効に使える場所はあまりないと思います(笑)。ただ平面でもってしまうと、段差があるとき、坂とかでは効果がえられないとなってしまうので、やっぱり球体である必要があるというところです。

――なるほど、“裏ジュノ”の階段エリアとか?

谷口氏:そうですね。

――風水士のアビリティはどういう設計になっているのでしょうか?

谷口氏:風水士は羅盤を使った風水魔法と、精霊魔法が黒の次に使えるようになっているので、精霊の魔法に影響するアビリティとか、後は基本的に羅盤を操作するアビリティが使えます。羅盤の効果時間を延ばしたりとか、羅盤の減っているHPを回復したりとか、羅盤がHPを受けないようにするアビリティもあるので、その操作をしてもらうアビリティがメインになります。

――その羅盤が壊れるという仕様がユニークですよね。そこにゲーム性を持たせたかったということですか?

谷口氏:そうですね。後は、スフィアを展開した時点で、敵にレジストの概念がないのでなんでも入ってしまうのですね。それが強力すぎるので、どうにかして壊す、壊れると言うのを意識してもらって、維持することでその効果がずっと得られるというのを表したかったのです。

――というと、モンスターは羅盤を壊そうとする?

谷口氏:いえ、しません。範囲攻撃になった時に羅盤が壊れるというだけです。羅盤に攻撃をさせてしまうようにしむけると、羅盤はMPが続く限り延々と出せるので、どんな盾よりも強くなってしまいますので。

Amazonで購入

(中村聖司)