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グアルディオラ監督も驚いた!? 「FIFA ULTIMATE TEAM」のアップデート戦略
魅力的なライブコンテンツを大量に素早くユーザーに届ける!
(2015/3/8 16:24)
Electronic Arts最大規模の人気フランチャイズである「FIFA」シリーズ。年に1回必ず新作をリリースし、その度に、ヨーロッパ市場を中心に数百万本の大ヒットとなる。バルセロナのリオネル・メッシが広告塔を務めていることも有名で、世界を代表するフットボールシミュレーションだ。
その「FIFA」シリーズで密かな人気を集めているコンテンツが「FIFA ULTIMATE TEAM」だ。「FIFA」シリーズのリアルなフットボールシミュレーション要素に、カードゲーム的な要素を組み込み、選手を集め、チームを編成し、日夜開催されている大会に挑み、自らの戦術の正しさを確かめたり、レアリティの高い選手の獲得という実利を得たり、大会優勝という名誉を得たり、「FIFA」シリーズにソーシャルゲームのような楽しさを提供しているモードである。
「FIFA ULTIMATE TEAM」の凄さは、そのアップデート頻度の多さ、速さだ。もともと「FIFA」シリーズでは、選手データのアップデートに余念が無く、“ライブコンテンツ”のアップデートこそがゲームの生命線であることを理解し、それを忠実に守っているタイトルだが、「FIFA ULTIMATE TEAM」ではさらに進化させたことで、今では「FIFA」シリーズに欠かせない人気モードにまで成長している。GDCではその秘密を明かすセッション「How FIFA Delivers Live Content to User Fast」が開かれたのでその内容をご紹介したい。セッションスピーカーを務めたのはEAのJulia Keren Dhillon氏。
Dhillon氏は、まず今回のテーマである“ライブコンテンツ”の定義として、DLCではあってもパッチではなく、ユーザーが必要な時に得られ、ユーザーに満足を与えるものだとした。良い例としては「Call of Duty」(Activision)のマップパックやウェポンパック、「Forza Motorsport」(Microsoft)のカーパック、「Rock Band」(Harmonix)のサウンドパックなど、これらはユーザーに対してダウンロードを強制するものではなく、必要に応じて手に入れれば良いものばかりだが、結果としてこれらのライブコンテンツにより、現役のユーザーはより夢中になってくれるし、引退したユーザーも復帰したりする効果がある。
Dhillon氏は、こうしたライブコンテンツを素早くユーザーに届けるためには「どうしたら良いだろうか?」と問題提起した。Dhillon氏の答えは、ゲームそのものがライブコンテンツを提供するフレームワークであるべきであり、さらにライブコンテンツはスペシャルな存在で、ユーザーの関心を引きつけるものでなくてはならず、パッチのようなアップデートではなく、コンテンツを届けるというアプローチであるべきだとした。さらにコンテンツデリバリーに、エンジニアを介するべきではなく、ライブコンテンツ担当者が、簡単に配信できるシステムであるべきだという。それをすべて実現しているのが「FIFA ULTIMATE TEAM」というわけだ。
Dhillon氏は、「FIFA ULTIMATE TEAM」のトレーラーを流した後、驚きの表情を示すグアルディオラ監督をバックに、「FIFA ULTIMATE TEAM」が実施している膨大なアップデート項目を示した。あたかもオンラインゲームのような凄まじいボリュームのライブコンテンツを提供している。
とりわけキーポイントとなるのが、選手のアップデート。「FIFA ULTIMATE TEAM」では、カードを引いて選手を集めるというところが最大の価値になっており、価値の維持について最大の注意が払われている。例として挙げたのはクリスティアーノ・ロナウド選手。クリスティアーノ・ロナウド選手はレアリティの高いゴールドカードだが、「Team of The Week」や「Team of The Year」、「Team of The Season」、「Man of The Match」、「World Cup」とそれぞれのイベントで性能の異なるスペシャルカードを用意しており、選手を集めて強くなり、強いチームでさらに腕を磨いて試合に臨むことにより、レア度も性能もより高いカードが得られるというプラスのスパイラルが描けるように工夫されている。
カードの価値を下落させないために、カードパックは絶対にディスカウントせず、新しい情報をアピールし、そして現実世界のイベントと繋げることによって関心を引くように気を配っているという。直近では中国の春節に合わせて、特別なカードパックの販売と、それに合わせたスペシャルトーナメントを開催したようだ。この際のメッセージは、18から23の言語にローカライズされたものを提供し、さらにリテンションを高めている。
こうしたライブコンテンツアップデートは、開発者やエンジニアの手を介することなく、コンテンツプロデューサーと呼ばれるライブコンテンツ専門の担当者によって行なわれ、コンテンツを用意してからユーザーまでに届く手間を省きに省いている。しかもこのアップデートを3人のコンテンツプロデューサーと1人のアーティストのみで行なっているという。場内からは驚きの声が上がった。
そこまで濃密かつ高頻度のアップデートは、ゲームの人気にどの程度の影響を与えているのだろうか。Dhillon氏は、EAの人気タイトル「Plants vs. Zombies」のDAUの数字を時系列で繋げたグラフを見せた。アップデートの度に数字が伸び、全体としては右肩上がりを維持している理想的なグラフだ。
これに対して「FIFA ULTIMATE TEAM」はというと、「Plants vs. Zombies」よりも遙かに数字が大きく、かつアップデート頻度も多く、アップデートに伴う人気の向上も激しい。しかも「FIFA ULTIMATE TEAM 13」、「FIFA ULTIMATE TEAM 14」、そして「FIFA ULTIMATE TEAM 15」と作を経る毎に数字が伸びており、「FIFA ULTIMATE TEAM」のライブコンテンツアップデートが、「FIFA」のビジネスに大きなベネフィットをもたらしていることを明らかにした。
この大きく数字が伸びている理由としてDhillon氏は、アップデート頻度の高さによって、ゲームに対する高い注目を維持できているためとし、結果としてゲームに多様性や新鮮さをもたらし、ユーザー同士の関わりを深めることができていると自画自賛した。Dhillon氏は、具体的な数字は出さなかったものの、ユーザーのリテンションや満足度に加えて、新規ユーザーの獲得や、客単価の向上にも大きな効果をもたらしているようで、人気タイトルの裏には、必ず他のタイトルにはない強みや取り組みがあるということを、改めて実感することができた。「FIFA」シリーズの進化ともども「FIFA ULTIMATE TEAM」のライブコンテンツがどこまで進化するのか注目していきたい。