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「人を感動させるのが目的」、小高和剛氏インタビュー
「ダンガンロンパ」の生みの親が語るゲーム制作へのこだわり
(2015/3/7 20:12)
GDC 2015では日本人セッションの減少を感じた。議論に上がるゲームも日本では知名度があまりないゲームが多く、今年は欧米と日本のゲームのトレンドがかなり違うのかなと感じた。その中で、日本人クリエイターとして講演を行なうのが、「ダンガンロンパ」シリーズ企画・シナリオを担当するスパイク・チュンソフトの小高和剛氏だ。
小高氏は「My Ordinary Process for Crafting Extra-Ordinary Stories.(日本のサブカルチャーでうけるキャラクターとシナリオの作り方)」というタイトルで講演を行なった。小高氏の渡米に合わせ、欧米のメディアは積極的にインタビューを行なっていた。今回は弊誌でも、講演に先駈け欧米やアジアなど世界で評価を受けていることへの感想や、ゲーム、そして物語への想いに関してインタビューを行なった。なお、小高氏の講演に関しては別稿で取り上げている。こちらも読んで欲しい。
小高氏のゲーム開発への根幹の想いは「作り続ける」こと
小高氏は2010年に発売されたシリーズ第1作の「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」から、最新作「絶対絶望少女 ダンガンロンパAnother Episode」まで一貫して企画とシナリオを担当している。「ダンガンロンパ/ゼロ」や「探偵 神宮寺三郎」シリーズといった自身がシナリオを担当したゲームの小説や、漫画原作も担当しているクリエイターである。
小高氏がGDCに参加するのは今回が初めてで、初日のサミットはモバイル系を見たが、現在のところまだモバイルプラットフォームは自身の「ゲームや物語を展開する場所」ではないと感じているという。コンシューマーゲーム機で、ソフトを買ってコントローラで操作するその「手順」と、プレーヤーがゲームを買い、プレイするというスタイルにこだわっていきたいとのことだ。
しかし、小高氏の興味そのものは、突き詰めればビジネスや、スタイルではなく、「ストーリー」であり、ゲームがプレーヤーに与える衝撃、ゲームを通じて語られる物語の力をさらに強め、プレーヤーに提示することこそがゲーム作りの目的であるという。物語に対してゲームではプレーヤーは登場人物により“シンクロ”する。そのことでよりダイレクトにプレーヤーにストーリーが伝わると小高氏は考えている。
「ダンガンロンパ」シリーズは目の大きなかわいらしいキャラクターが多く、モノクマというぬいぐるみのようなキャラクターも登場する。そういったキャラクター達が殺人事件を起こし、真犯人を確かめるために「学級裁判」が行なわれる。キャラクターと展開するストーリーのギャップ、極限状態に置かれたキャラクター達の葛藤にプレーヤーは魅了され、共感していく。今回、欧米のメディアもゲームに対して非常に詳しい人が多かったという。
小高氏はソニー・コンピュータエンタテインメント香港のイベントで、香港のユーザーに大歓迎された記憶があるという。筆者も台北ゲームショウで台湾ユーザー達の熱狂ぶりを目の当たりにしている。彼らは日本語を覚えて物語を楽しみ、「ダンガンロンパ」を楽しんでくれる。欧米やアジアのファンの“好意”にはやはり圧倒されるし、うれしいと小高氏は語った。
ただ、「海外受け」という意識で小高氏は物語を作っていない。そもそも受けるかどうかという市場意識のような感覚は日本のユーザーに対しても意識せず、自分たちが面白いもの、面白いと感じるものを練り上げ、物語を作る。そのコアとなるのは「キャラクター」だ。
まずキャラクター像を作り上げてから、彼らが立たされるシチュエーションを設定し、その反応を重ねていく。時には展開する物語によってキャラクター像が変わっていったり、必要なキャラクターが増えていくこともあるが、小高氏の物語の核はキャラクターにある。彼らの反応が物語を進めていくのだという。
シチュエーションや劇的な展開などは、やはりキャラクターの力で変わっていく。物語を通じ変化していくキャラクターがいたり、序盤で死んでしまうが、過去がどんどん語られキャラクター像が変化するなど、ある事柄で変化するキャラクター像を追っていくスタイルが小高氏のストーリーテリングとのことだ。
また、かわいらしいキャラクターもいる中でのシリアスなドラマが「ダンガンロンパ」シリーズの魅力だが、小高氏はこのキャラクターデザインだからこその“振り幅”に強い魅力を感じている。このデザインだからこそ、ギャグシーンからシリアスなシーンまで様々な場面を書くことができ、それぞれの場面でマッチする。その衝撃は欧米やアジアでも感じてくれているということを小高氏は今回確認できたとのこと。
自分たちが作りたいものをずっと続けていきたい、小高氏のゲーム開発への根幹の想いは「作り続ける」というところだが、それでも“野望”としては、「大ヒットしてブームを巻き起こしたい」という気持ちは常にあり、そこを目指している。自分のやり方で多くの人に受け入れられる作品を作りたいという想いは持ち続けたい。
「ある人の言葉だったと思うんですが、1つの言葉である人は泣くし、ある人は笑う、そんな一言を生み出してみたい」という夢があるとのことだ。「究極まで突き詰めればストーリーでなくてもいい、人を感動させること、それこそが本当の目的です」と小高氏は語った。
その中で、小高氏としては“ゲーム”にこだわりたいという。デザイナーやキャラクターのモーションなど、様々なスタッフと協力で生み出されるゲームというところにも魅力を感じている。小説のように究極の部分での個人作業ではなく、時にはチームと共に考え影響され物語を作っていく。ファンからの反応も力になっている。
そしてインタラクティブ性だ。ある決断をするとき、プレーヤー自身がボタンを押す。プレーヤーがストーリーが変化する選択肢を選ぶ、こうしたプレーヤーが参加することで完成する物語こそが、小高氏が表現したいストーリーテリングだという。「プレーヤーが選ぶことで心に響く。こういったゲームプレイの可能性、物語の語りかたってまだまだあると思っています」。小高氏は語った。
最後に、ファンへのメッセージとして小高氏は「シリーズの次の展開を心待ちにしている方もいると思いますが、良い意味でファンの期待通りではなく、驚かせるものを今作ってます。ぜひ、驚いてください」と語った。