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3Dグラフィックスで2D表現!? 「GUILTY GEAR Xrd -SIGN」の挑戦
従来の手法を“殺し”、アーティストの感性を突き詰めた「アニメ風表現」
(2015/3/7 19:05)
「GuiltyGearXrd's Art Style : The X Factor Between 2D and 3D」ではアーケードと、PS4/3版が販売されている「GUILTY GEAR Xrd -SIGN-」で使用された技術が、アークシステムワークスで本作のディレクターを務める本村・Christopher・純也氏によって語られた。
「GUILTY GEAR Xrd -SIGN-」は2D格闘ゲーム「ギルティギア」の感触をそのままに、キャラクターグラフィックスを3Dモデルに変えた作品だ。その見た目は「3Dグラフィックス」であることが信じられないほどのアニメ調で、独特のものになっている。開発者達はいかにしてそのグラフィックスを実現させたのだろうか。
徹底的な表現へのこだわり。これこそが新時代の2D格闘ゲーム描画
「GUILTY GEAR Xrd -SIGN-」はこれまで2Dグラフィックスでキャラクターを表現していたものを、3Dグラフィックスで表現するという大きなチャレンジをした作品となった。解像度を480Pから1080Pにし、2Dだったグラフィックスの質感と、ゲームの感触は従来のものをきちんと引き継ぐという目標を定めた。
3Dグラフィックスにより、キャラクターを自由なアングルで描写できる「ダイナミックカメラ」による演出が可能になり、革新的なストーリーテリングの方法論を獲得することができた。3Dキャラクターを使って“アニメ的”表現を可能にする方法を得ることができたと本村氏は語った。
なぜ3Dにしなくてはならなかったか? それは2D格闘ゲーム「Blaz Blue」で開発者は2Dグラフィックスで自身の「やりたいこと」を達成し、「GUILTY GEAR Xrd -SIGN-」は“それ以上”を目指したかったためだ。
開発チームは以前3Dグラフィックスを使ったゲームの開発を中止しておりその時の技術も応用された。2Dアートを3Dグラフィックスで再現する、それはトライアンドエラーの繰り返しだった。ツールとしてはUnreal engine 3、そしてAutodesk Softmageを使用した。
「すべての3Dらしさを殺す」。それが「GUILTY GEAR Xrd -SIGN-」で掲げられた目標だった。3Dグラフィックスでありながら、2Dグラフィックスにしか見えないモデルにする。光源の計算や素材の違いなど、3Dグラフィックスではこれまで技術者達が作り上げた手法やテクニックがあるが、それらをコンピューターの計算に頼らず、アーティストがそのセンスで決めていく、3Dグラフィックスでありながら、すべてに手を入れる「手作業」で再現することを目標としたのだ。
各キャラクターは4万ポリゴン、アップもできるクオリティにする。法線ベクトルを利用した「ノーマルマップ」に頼らない。セルシェーディングに関してはすべてデザイナー自身がコントロールする。描写への強いこだわりと注力により、「GUILTY GEAR Xrd -SIGN-」のキャラクターは生み出されているのだ。
光源の管理も独特のものとなっている。ステージ上の光源ではキャラクターの顔に影が入るのが「自然」な表現だ。しかし本作では常に顔は明るく、はっきり映るように独自の光源を持たせる。計算によるリアルタイムのシェーディングより、手を入れより見栄えの良いものに調整していく、こういった方向に注力したのが「GUILTY GEAR Xrd -SIGN-」の表現なのである。特に顔の影に関しては、「アニメ風」になるように注意を払って調整している。
色調に関してもコンピューターの計算による光源変化のものではなく、テクスチャーの色指定を使って行なう。アニメの技術を持つデザイナーの協力も得て設定している。筋肉の表現などキャラクターのアウトラインは手書きで線を引くと拡大縮小時にジャギーが出るなど不自然になってしまう。ここでは各部位のポリゴン部分の“縁”に、あえて黒い部分を設定することで、拡大や縮小をしても自然なラインが出るようにしているという。従来の3Dグラフィックステクニックとは異なる、「アニメ風のキャラクター表現」を3Dグラフィックスでいかに実現するか、そこに注力しているのだ。
キャラクターのモーションにも独特のこだわりがある。ポリゴンモデルだとキーフレームを設定し、そこに至るまでの動きを補正していくのが従来のやり方だが、「GUILTY GEAR Xrd -SIGN-」ではスプライトを使ったとき、もしくはセルを何枚も使うアニメの手法を使い、キーフレームのみで表現しているのだ。これにより独特のキャラクターの“動き”が生まれる。あえて“限定”することでの動きの面白さを表現しているのである。
今回の技術は決して革新的なものではないと本村氏は語った。これまでにあった技術を使い、手作業で表現を突き詰めていった結果であり、だからこそアーティストの意図した描画を再現することができた。開発チームがチャレンジしたのは従来とは異なる、「2D表現の応用」であり、新しいスタイルの提案であり、ゲームの表現手法の提示だ。
「そしてこの手法が成しえたのは、表現にはまだまだ“創造的な自由”があるということです」本村氏は開発チームのチャレンジをこう締めくくった。