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状況に合わせ曲が増減される「LittleBigPlanet」の楽曲
6つのレイヤーが生み出す、プレーヤーの心に響く音楽
(2015/3/7 12:58)
「LittleBigPlanet 3 and Beyond: Taking Your Score to Vertical Extremes」では、「LittleBigPlanet」シリーズの音楽を担当するGenerations Productions LLCのWinifred Phillips氏が、シリーズでの取り組みを語った。
「LittleBigPlanet」シリーズの音楽の秘密は「レイヤー」にあるという。いくつもの異なるレイヤーで音楽をわけ、重ね合わせることで多彩な表現を行なう。Phillips氏はシリーズでこの手法に様々なアプローチを行なっていったという。
シリーズで培われた様々な技術の集大成となる「LittleBigPlanet 3」
Phillips氏はPS Vita版の「LittleBigPlanet」からシリーズに関わっている。この作品では3つのレイヤーが使われた。1つは「金属的な音」、もう1つが「時計仕掛け」、そして最後が「オーケストラ」。これらの基本的なメロディラインは一緒だが、状況に合わせて重ね合わせたり、単独で使う。曲が途切れることなく、動的に変化していくのだ。
何もないフィールドを進んでいるときには金属的な音楽で、敵との戦闘時など盛り上がるときにねじ巻きの音などが盛り込まれた時計仕掛けの音楽へと変わる。そしてクライマックスであるボス線ではオーケストラによる音楽が流れる。基本的な音楽のメロディは変わらないまま、状況に対して動的に音楽が変化することで、プレーヤーの心を大きく揺り動かすのである。
この音楽のレイヤーを使った手法が評価され、PS3版では一気に「LittleBigPlanet 2」では、6つのレイヤーが用意されるようになった。「トロンボーン」、「トランペット」、「ヴァイオリン」、「ドラム」、「ロボット風の電子音」、「宇宙空間のような神秘的な音楽」、これらが状況に合わせ、重ね合わされていく。
静かな場所では1つだけ、トラップや仕掛けが多いところでは曲が重なり、メインのレイヤーもいつの間にか変化していく。プレーヤーは画面に集中していながら、音楽の変調に心が同期し、ピンチの時はハラハラし、1つのレイヤーのみの時はリラックスする。音楽は重なれば良いというわけでも、少ないから寂しいというわけではなく、状況にマッチした曲が、大きな効果を生むのだとPhillips氏は語った。
DLCで提供されたPS3版「LittleBigPlanet 2: Toy Story」では、「ハイエナジー」、「ロウエナジー」という相反する曲をレイヤーとして盛り込むという考えが導入された。ムービーシーンでは曲に集中させるようなメロディアスなロウエナジーの雰囲気を持った曲、激しいアクションではハイエナジーの曲が流れる。相対する曲をレイヤーで盛り込み変調させることで、さらにプレーヤーの心を盛り上げるのである。
そして昨年末に発売されたPS4/3版の「LittleBigPlanet 3」はこれまで培ってきた技術の集大成となった。6つのレイヤーに、バロック風とジャズフュージョン。ニューエイジとブギウギ、といったように異なる曲のレイヤーを盛り込み転調させる。盛り上げるハイエナジーと、落ち着かせるロウエナジー、そして中心となる楽器の選抜など、あらゆるテクニックが盛り込まれながらも、音を重ねすぎないようにするという多彩なバランスを持った音楽が作り出された。
レイヤーの面白い使い方としてはステージセレクトの時がある。このとき6つのレイヤーは各ステージの音楽が用意されており、プレーヤーがメニューを選択するとレイヤーが切り替わりステージをイメージした曲が流れるのだ。音楽は前もって読み込まれているので、ここではプレーヤーの操作でレイヤーを切り替えることができる。「LittleBigPlanet 3」ならではの音楽の多彩さを実感できるシーンだという。
楽曲はパズルのように組み合わされる。異なる雰囲気の曲、状況に合わせて使用される曲、6つのレイヤーを駆使して、様々な状況に応じた最高の組み合わせを探していく。その重なり方は、ゲームとの慎重な動機が求められる。
今回の講演ではPhillips氏が1つ1つ実際に使用されているシーンを解説しながら語っていったのだが、レイヤーが増減していく感覚などは画面を見ないと気がつかないほどに自然だ。そして音楽に集中することで、音楽が持つ、プレーヤーの心をかき立てる力を実感することができた。動的な音楽とゲームの同期が、ここまで細密に行なわれていることは非常に興味深い。