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「クロックタワー」の遺伝子を持つ「Project Scissors」、その一端を明かす!
「もどかしさ」を表現するのにタッチインターフェイスは外せない
(2013/11/10 13:00)
「もどかしさ」を表現するのにタッチインターフェイスは外せない
――ゲーム開発はどれくらい進んでいるのでしょうか?
河野氏: ほぼ基本的なゲームのシステムは完成しつつあります。これくらいのメモリ配分で、1回の読み込みがこれくらいのマップで、こういうキャラをこのカメラで動かして、逃げるときはこういう操作で……といったところはほぼできつつあります。
――プラットフォームはPS Vitaとスマートフォンということですが、両方とも同じものが提供されるのですか?
河野氏: そうですね。PS Vitaはタッチパネルがありますから、操作系もほぼ変えなくて済む。ただやはり反響がすごいというか、私が思っていた以上に待っていてくださったファンの方々がいた。PS Vitaやスマートフォンベースの考え方で(ゲームシステムを作って)いいのかな? といますごく迷っています。
先ほどクオリティをグッと上げる話をしましたけど、スマートフォンやタブレットの水準をやめて、もう少しクオリティを上げた作品に挑戦してもいいんじゃないか? それを懐具合と相談しつつ、でも……なんだろう、みなさんが私たちにぶつけてきてくれた“想い”に応えないようなものを作ってどうするんだ? というのもあるので、今はそこですごく調整しているところですね。
――ゲームをプレイする側から見ると、コントローラーとタッチインターフェイスでは操作が違うではないですか。タッチパネルとコントローラーではゲーム性の根幹が変わってくると思うのですが、そこらへんが「Project Scissors」ではどうなるのでしょうか。
河野氏: プラットフォームに関しては、発表したもの以外は未定ではありますが、それぞれ最適化はしなくてはいけないだろうと思っています。ただUnityベースで作ってはいるので、ゲーム本編の移植自体は、それほど困らないと思っています。
――「逃げる」、「隠れる」は、コントロールの操作感がよければいい、というものではないとも思うんです。もどかしさ、うまくいかない怖さとかもあると思いますので。
河野氏: 十字キー的なものでストレートにキャラクターを動かすというのは、1度検討したのですが、夢のなかで逃げていて脚が思うように動かない感じというか、恐怖で身体が硬くなっている感じ、もどかしさを表現するのに“クリック(タッチで直接指示する)”でやるというところは外さないほうがいいのかなと思います。十字キーでストレートに動かすというのは、「一般的なゲームで無難だよね」というか、それはインディーズでやることじゃないなって。
――今回は船の中という限定的な閉鎖空間が舞台となります。そこらへんのアイデアは、はじめからあったのですか?
河野氏: けっこう予算的な問題でもあるんです。閉鎖空間にしたほうが作るマップの量が決まるので、ありがたいという(笑)。
ただ、僕は海のなかの見えない何かというのが大ッ嫌いなんです 。「ザ・グリード(1998年公開のモンスター映画)」とかその嫌な感じが良く出ていて大好物ですし。自分が海で泳いでいたとき、巨大な魚がザーッと下を泳いでいったらそれだけでチビっちゃうだろうなと。すごくわかりにくいんですが、松本零士先生の「戦場まんがシリーズ」で、飛行機の上から眼下の海に何kmもある巨大なテーブルサンゴがぶわーっと見えているラストシーンがあって、あれがもう異常に怖くてしょうがなかった記憶がある。そういう水のなかでよく見えない恐怖というのを、今回は出していこうかと思ったんです。
あと窒息死とかも怖いんですよね。私の考える「嫌な死に方」のTOP3に入るのの1つが、シャコガイに挟まれて酸素ボンベの酸素がどんどん減っていって死んでしまうというのがあるじゃないですか。都市伝説的なのかもしれないけれど、あの死に方は絶対に嫌ですね。
――そういうのが登場する可能性も?
河野氏: 「サスペリア」シリーズの2作目「インフェルノ(1980年イタリア/日本公開のホラー映画)」なんか、唯一良いって言えるシーンって、水中で1カ所だけ顔を出せる穴があいてて、穴のところまでなかなかいけないみたいなシーンがあって! そこが唯一いいシーン。
清水氏: 冒頭のほうですよね。いや素晴らしいですよね。そこまでして鍵を拾おうとするか!? っていう。物語上も気持ち上もまったくついていけないんだけど、とにかく怖いという。自由がきかない。女の人(の服)がちょっと透けるとかね。もう、欲しいシチュエーションのためだけに無理やりプロットを起こしている感じ(笑)。
――ダリオ・アルジェントはわりとそんな感じですよね。欲しいシーンのためにカットを入れちゃうみたいなところがありますよね。
河野氏: そういうところが好きなんですよね、我々は(笑)。アルジェントとかルチオ・フルチとか。このシーンが撮りたいから、脈絡ないけど入れよう! みたいな。なんて映画でしたっけ? カタツムリがいっぱい這うやつ、ルチオ・フルチの。
清水氏: あぁ、ありましたね! なんでしたっけ、アレ。
河野氏: トム・クルーズとか有名俳優を使いたいけど使えないから、女の子の部屋にやたらそのポスターが貼ってあって。意味なくトム・クルーズとかシルベスタ・スタローンのポスターがズームアップされて、タダで有名俳優を使えるいい手だ!(笑)みたいな。
――なかなか、ゲームではそれは難しいですね。
河野氏: 怒られますからね、普通に(笑)。
――ルチオ・フルチの映画ほどではないですが、入れたいシーンのためにシーンを組立てるというのは、ゲームではなかなか難しいですか?
河野氏: 私も面白いと思ったら、若干そこいらへんのつながりを無視してでもやるべきだろうと思うところはあります。そういう意味でも(船内は)ボクが怖いと思っているシチュエーションを出しやすい。(舞台が)「バイオハザード・リベレーション」と少しバッティングしちゃったんですけど、それはしょうがないなと。どうしても限定空間って限られてしまうので。
――清水監督は、死に方のアイデアは出されていますか?
清水氏: 今後、求められれば出していきたいですね。ボクもあるはあるんですよ、嫌な死に方というのが。ただ痛いのが苦手なので、自分の映画では使用していないアイデアとかあるんです。子供のときに、自分で想像して「うわぁ!」って思ってたのとか、あるじゃないですか。たとえば電動鉛筆削りに間違って指を入れちゃうとか。
河野氏: 絶対想像しますよね。
清水氏: 想像しやすいし、ボクは苦手なんですけど、そういうのはあるので。河野さん的に「おおっ!」っていうのがあれば、それは出させてもらうと思います。
――「輪廻(清水監督作品。2006年公開のJホラー)」とかも、わりとひとり消え、ふたり消え、過去に連れ去られるという……。
清水氏: そうですね。そういう因果応報的なものも、ストーリーを邪魔しない程度になんか見えたり。この人物、このキャラクターの背景にこういうものがあったからこういうことが起こって、それとはまったく別の「どうしてこんなことに囚われるのか」っていうのが起こるとか。そもそも「なぜ豪華客船なのか?」とか。そういことも、今後は具体的に作れるかもしれないですし。
河野氏: こういう座組みだと、(助っ人としてお願いした)映画監督が偉すぎて、おっしゃることを聞くしかなくて、「これ絶対ちゃうやろ!」というゲームができちゃうパターンとかあるんだろうなぁと思うんですけど、今回、清水監督とお話していて「ゲームをよくご存知ないからやはりズレた意見を仰るんだな」と思ったようなことは1回もないです。
清水氏: そうなんですか?
河野氏: 根底に“ホラー”としてしっかりいい意見をいってくだされば、だいたいゲームには合いますから。今回は映画監督が入ってメチャクチャになっちゃった、みたいなパターンはありえないなと思ってます。
――先ほどチラッとありましたが、主人公は女性ですか?
河野氏: (主人公の情報は)結構ネタバレもあったりするのですが、基本は女性です。ちょっとね、まだいえないですけど……そういった点は重要な意図がある仕掛けもあったりしてなかなか言えないのですが、基本的には女性と思っていただければいいと思います。
清水氏: 映画でもそうなんですけど、ボクも「呪怨」シリーズで初期のプロットとか脚本とかで、男性(中年)を出したりしたんです。するとプロデューサーに「単純におじさんの悲鳴をきいても……怖がってる姿を見ても……」っていわれて「あぁ、そりゃそうだ!」と腑に落ちて(笑)。
男性から見ても女性から見てもそうなんです。女性のお客さんはイケメンが殺されればそれでいいかというと、それも違うみたいなんですよね。女の人が追い詰められたほうが、女の人も共感や感情移入がしやすいんです。男って別に死んでもいいや、くらいに思われがちなんですよね。これも男性女性問わず。ボクもホラー映画を作ってて「そうか、おっさんいっぱい殺してもしょうがねぇな」と思って、女性に置き換えたり設定を変えたりは、過去にも結構ありますね。
――古今東西、ホラーで主人公が殺される男ってあまりないかもしれませんね。
河野氏: あんまりアレですよね。でも「ワナオトコ(2009年公開のホラー映画)」とか男性が主人公でも面白かったですよ。
清水氏: うん、面白いのもありますけどね。
河野氏: 「ワナオトコ2(パーフェクト・トラップ/2012年公開のホラー映画)」であんなに面白くなるとは思わなかったですね。