ニュース

SCEJA・盛田厚プレジデント囲みインタビュー

MSXの営業で「ドラゴンクエスト」をプレイしたのが始まり……

9月18日~21日 開催(一般公開日 20日~21日)

会場:幕張メッセ1~9ホール

入場料:
前売り 1,000円
当日 1,200円
小学生以下無料

 ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアは9月1日付けでプレジデントとなった盛田 厚氏の囲みインタビューを実施した。

 盛田氏は8月末にプレジデントへの就任が発表され、就任と同時に9月1日に開催された「SCEJA Press Conference 2014」でプレゼンターを務めるという大役を果たした。今回就任にあたり、「ドラゴンクエスト」に夢中となった経緯から、現状をどのように把握されているのか、そして次の一手に向けてのお話を伺ってきた。

まずはプレイステーション 4を体験して欲しい

――「東京ゲームショウ 2014」の会場の方には行かれましたか?

盛田 厚氏: はい。今日はまだ最初の1時間弱ぐらいしか居なかったのですが、盛況だったようで良かったです。

――まずは「東京ゲームショウ 2014」ということで、今回の東京ゲームショウ2014におけるソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアのコンセプトや動向などを教えていただけますか?

盛田氏: 宣伝のようで恐縮ですが「盛りだくさん」ということです。どれか1つというよりも、ほんとうに全部を見ていただきたいのです。1つはカンファレンスでもご説明させて頂きましたけども、PS4のタイトルがようやく揃って来ました。日本のユーザーの方々がお待ち頂いていたタイトルが出てくるという話ができたと思いますが、それが今回ブースでも、試遊台として出展されていますので、まずそれをご覧いただきたい。

 一方でPS Vitaのほうもきちんとタイトルが出てきておりますし、これも試遊台で準備しておりますので楽しんで頂きたい。さらに、ステージイベントも盛りだくさんで用意してますので、そのゲーム背景のところを楽しんで頂きたいのが1つ。もう1つは、商品化は先の話になりますが、「Project Morpheus」の展示も行なっています。これは新しい体験になると思いますので、体験した感想を頂けると、それをもとに我々もさらに前へ進めていくことができると思うので、そこは楽しんで頂くと同時に、是非ご意見頂けると嬉しいなと思ってます。

 ですので、とにかく来て、試して頂きたいというのがポイントだと思います。

――「Project Morpheus」はカンファレンスの段階から反響は大きかったのでしょうか?

盛田氏: はい、もの凄く大きかったですね。元々、GDC、E3やGamescomなどイベントごとに出展させていただいたのですが、今回の東京ゲームショウ 2014前の反響は大きかったです。

―― 根本的な質問なのですが、盛田さんのこれまでの経歴を伺えますでしょうか?

盛田氏: 私はソニーに入社したのがもう30年ぐらい前になるんですけども、営業部隊に配属されました。国内の営業をやっていたのですが、その時に、皆さんご存知かどうかわからないのですが、MSXというフォーマットが登場しました。これはソニーがパソコンを初めてだそうとしたトライだったんです。そのときにMSXフォーマットのパソコンを出し、(MSXが)ゲームに非常に適しているということで、ゲームパソコンとしてプロモートしていたんです。ですから、ゲームとの関わりは、凄く長いんですよね。

 少し話はそれますが、その営業現場で凄く苦労した記憶があるので、プレイステーションが売れて凄く広がったときに、ほんとうに嬉しかったですね。話を元に戻すと、MSXの販促で6年くらい国内の営業をやっていて、そのあと同じくセールス&マーケティングの業務でイギリスに赴任しました。

 その後日本に戻ってくるときに、違う分野も経験してみたかったので、経営管理部隊に入りました。そこからずっと経営管理に携わり事業部の経営管理や財務責任者など、いろいろな経験をさせて頂きました。8年ほど前にSCEに移りまして、以降も経営管理と間接部隊の責任者としてずっと携わってきました。

 日本とアジアのゲーム業界を盛り上げていきたいと凄く思っています。日本、それからアジアがゲームエンターテインメントをリードしているという状態に持っていくために、我々だけではなくて、ゲームを作っているクリエイターの方々と、業界全体でほんとうに一丸となって盛り上げていきたいなあと思ってます。それがやりたいことですね。

―― ちなみに、好きなゲームはありますか?

盛田氏: 好きなゲームというと差し障りがあるので、あまり言えない立場になってしまったのですが、MSXを売っていた時代は営業としてゲームを実際にプレイしてお店へ説明しに行っていました。家でもやり込んでプレイしたのがMSXの「ドラゴンクエスト」だったんですね。RPGをやったのは初めてで、プレイに時間がかかるし、こういうのって面白いのか? 没頭できるんだろうか? と思っていたのですが、プレイしてみると凄く没頭したんですね。ほんとうに戦っているような気持ちになりましたし。そうして今ここに至っているので、「ドラゴンクエスト」は凄く印象深いタイトルですね。

―― なるほど。だから「SCEJA Press Conference 2014」での発表は嬉しそうに発表されていたんですね

盛田氏: ほんとうに営業トークではなく(PS4でリリースされることは)嬉しかったです。

PS4は我々が目標としているところまで、まだ届いていない

―― 先日のカンファレンスで「日本のゲーム業界は欧米から見て遅れている」というようなことを仰られて、ネットではその発言に反応している人が多かったのですが、そこらへんの意図ですとか、ゲーム業界の認識についてちょっとお話ししてください。

盛田氏: プレイステーション 4を我々が日本で2014年2月22日に発売してからの勢いと、その後需要が一段落したところからの動きが、欧米と日本で比べると違っていましたね。

 欧米はその勢いが長く続いていて、それと比較すると日本は、我々が目標としているところまでまだ届いていないという認識を持っていなければいけないなというのが前述の発言の意図です。

 ですから、「遅れている」とか「市場が厳しい」ということではありません。日本のユーザーの皆様が、自分達がとにかく遊びたい、「このタイトルは出てくるんだろうか?」と思っていらっしゃるタイトルがPS4の発売当初は提示出来ていなかったので、今回はその答えの1つとして皆様に提示できました。ですから、東京ゲームショウ 2014などで体験して頂き、そしてもっと市場を盛り上げていきたいと思っています。

 日本のゲーム業界……ゲームで遊んでいる方々というのは、本当にたくさんいると思うんですよね。それはどんな形のデバイスでも、どんなカジュアルゲームでもいいと思うのですが、日本のゲームエンターテイメント市場のポテンシャルは、凄くあると思ってます。そこは(海外市場より)悪いですとか、遅れているということとはちょっと違うと考えています。

 やはりコンテンツが1番大事だと思ってます。

―― 先ほど「いいコンテンツがあれば……」という話が出ましたが、厳しい言い方をすればいくら有名IPのコンテンツがあっても、今までと同じことではダメなわけですよね? テレビの前から離れてしまったユーザーをリビングに呼び戻すだけの新しい体験も必要だと思うのですが、プレイステーションというフォーマットの中で、どこを重要視されていて、アピールしていきたというふうに考えてらっしゃいますか。

盛田氏: いくつかステップがあると思いますが、まずファーストステップとしては、今までゲームが好きで遊んできた方々にアピールしてプレイしていただく。PS3からPS4になってできるようになったことは、ハードウェアのスペックを含めてたくさんあると思っています。ですから、同じタイトルのIPであっても、ゲームの体験というのはもの凄く違うので、それはほんとうに是非体験して頂きたいです。

 そういったゲームをプレイしてきた方、今も楽しんでいる方、一旦お休みになっていてもゲームが好きという方々に、まずアピールしていくというのが第一だと思っています。そこを日本でやっていかなければならないと思っていて、今回カンファレンスではそのことをお話しさせていただきました。

 そしてその次のステップとして、PS4というのはゲームを楽しむ中で、人のプレイを見るとか、自分のプレイをシェアするとか、リモートプレイを利用してPS VitaでPS4を楽しむとか、様々な方向に広がりが出てきていると思っています。ユーザーの皆さんにその広がりをきちんと楽しんでいただくということも込みでのゲーム体験だと思っていますので、今までのゲーム体験とは違う体験というのは、PS4を含めて全体的なプレイステーションフォーマットの中で提供できると思ってます。

 ですから私たちが言うPS4は、PS4が1つの核となると思っているので、PS4を中心としたPS Vita、ネットワークサービス、PlayStation Plusなどの総合力ですね。ディストリビューションがデジタルになることでできることはさらに広がると思うので、それも含めたトータルの意味でのプレイステーション・プラットフォームを拡大させていくところが肝だと思ってます。

―― 総合力として全てを包括できる位置にあるのがプレイステーション・フォーマットの強みっていうことですか。

盛田氏: はい。そこは我々の強みの1つだと思ってます。

―― 先ほどプレイをシェアするという話があったんですけど、今、ゲーム実況など凄く人気があると思うのですが、それは、やっぱり(PS4にとっても)追い風になっているというふうに感じてらっしゃいますか。

盛田氏: はい。楽しみ方が広がってるということは、本当に凄くいい事だと思ってますので、今まで我々が考えていなかったような楽しみ方がこれからどんどんと出てくると思いますし、逆にユーザーの皆さんが楽しみ方を作っていくこともあると思うので、皆さんが自由に楽しめるようにいろんなことを提供していきたいと思っています。

 去年から展開している「共闘学園シリーズ」もそうなのですが、いろんな施策を打っていきたいと思ってます。それはほんとうにユーザーの方々を刺激し、ユーザーの方々が望むことを、どういう場で提供できるかだと思ってます。それができるようになったのがプレイステーション4であり、PS Vitaだと思ってますので、そういう意味でも凄くポテンシャルはあると思ってます。

―― ようはユーザーさんと世界を創り上げる段階のフォーマットとしてリリースできたと。

盛田氏: はい、そうですね。

日本のユーザーに向けての施策とは?

プレジデントに就任早々「SCEJA Press Conference 2014」で司会を務めた盛田氏

―― 日本と海外の市場において、ユーザーの志向の違いがあると思います。日本独自の、日本のユーザーに向けた独自の戦略はありますでしょうか?

盛田氏: やはり同じだと思うのですが、1つは仰る通り、日本のユーザーがとくに好むゲームですとか、楽しみ方があると思っていますので、そこは提供していかなくてはいけません。

 そのためには日本のパブリッシャーさんですとか、インディーズも含めたライセンシーさんなど、ほんとうに幅広い方々にタイトルを作っていただくことが非常に重要だと思っていますので、そういったコミュニケーションは密にとっていきたいし、サポートも我々がしていかなければいけないと思ってます。

 今回、東京ゲームショウでも「インディーズコーナー」がありますが、それも我々が全面的にサポートしています。日本のお客様に向けた日本向けのタイトルを日本のメーカーさんが作ることが重要だと思っていますので、それはちゃんとやっていきたいし、今回その結果を出せているのではないかと思います。

 もう1つは、逆に欧米のゲームでも凄く面白いゲーム、あるいは、日本の方々に凄く響くゲームというのはあると思います。実際問題、世界的なビッグタイトルは日本でもある程度売れるようになってきています。例えば今回、先日発売したばかりですけれども、PS4の「Destiny」は出した途端にハードウェアの台数普及を牽引しています。なので、志向の違いはもちろんあると思いますが、決して、欧米のものが売れないと言うわけではなく、欧米のタイトルでも非常に強いタイトル、あるいは面白いタイトルはやはり日本でも受け入れられていると思いますので、そこもきちんとユーザーに提供していきたいとは思ってます。

―― 日本だとかつてはFPSは受け入れられにくいジャンルの1つでしたけど、「Destiny」を見ると日本のユーザーの間に受け入れられているようです。日本のプレーヤーにも変化が起きているということでしょうか?

盛田氏: FPSに対する変化が起きているのかわからないのですが、やはりお客さんの志向は変化してきてはいます。

 もう1つは、「Destiny」などを見ていただくとわかるのですが、「FPSだからこういうストーリーでこういう展開だよね」ということではなく、いろんなジャンルがミックスされて作り上げられています。アクション的な要素やRPG的な要素ですとか、いろんなものが組み合わさったゲームができあがっており、そこには必ずしもユーザーの変化だけではなくて、ゲーム側の変化というのもありますので、それが新たな広がりを見せる要素になるのではないかと思ってます。

―― 昔に比べて日本市場向けのファーストパーティのタイトルが減っているように感じます。盛田さんとして日本のファーストパーティタイトルとして欲しいものはあるでしょうか?

盛田氏: 現実問題として売り上げ枚数を比較すると、数字として今と昔では販売数に違いはあると思うのですが、それはヒットタイトルを出せなくなったということよりも、ステップだと思うのです。

 元々、我々がファーストパーティーを持っている理由の1つに、ハードウェアの開発と足並みを揃えた形でソフトウェアも制作できるために、自分達のスタジオを持っているというのがあるんです。今回でしたら、PS4、PS Vitaを作るにあたってWorldWide Studiosとは凄く密にコミュニケーションを取りながらタイトルを作っていったんですね。

 そんな中でWorldWide Studiosには、PS4であればPS4の良さを最大限に引き出すソフトウェアを作ることが求められます。そうなるとPS4の普及のスピードにリンクしていると思うので、欧米に向けたタイトルはハードの拡大と共に売り上げも上がっていく。日本の市場は一段落した中ですから、それが反映されているのではないかと思います。

 ハードウェアの販売状況と、WorldWide Studiosがローンチのタイミングでやらなければいけないことがあるので、時と共に日本でもヒットタイトルが出てくると思います。ですから、出しにくくなっているとは思っていないです。

 ただやはり、日本固有のタイトルを出してもらいたいとは思っているので、そういった意見は我々もWorldWide Studiosにフィードバックしますし、日本のマーケットに対してどういうソフトがいいかというのはコミュニケーションをとりながら、進めていければいいなと思います。

インディーズに対しては積極的に支援していく

―― インディーズコーナーのスポンサーをされてるんですけど、その意図を教えてください。

盛田氏: ゲーム業界はハードウェアを出しただけでは当然何も成り立たないので、ソフトウェアメーカーと一緒に拡大していくというのが必須の条件になっています。そのためには、もちろん大手のビッグタイトルというのは凄く重要だと思いますけども、一方でいろんなクリエイターが、自由に自分達の発想を実現できるような形に持っていってあげるというのが、ユーザーの皆さんのためでもありますし、ゲーム業界全体のためでもあると思ってます。

 ネットワーク環境が非常に整ってきた中で、そういうことができる素地というか、インフラも整ってきていますので、いいタイミングだと思って、クリエイターの皆さんをサポートしています。これはもちろんWin/Winの関係だと思っていますので、ここは凄く注力していきたいと思っています。

―― では、サードパーティーを支援するのと同じぐらい支援していくと言うことですか。

盛田氏: ゲームをクリエイトしている方々ということにおいて区別したりはしていません。インディーズのクリエイターも凄く重要だと思ってます。実際に、インディーズのデベロッパーの方達が市場をさらに拡大していくと思ってます。いわゆる大手のビッグタイトルを出しているメーカーの方達も、学生時代にゲームを作っていて、それがビッグヒットに結びつき今に至ると思っています。そこってほんとうに重要だと思うんですよね。次の世代を育てるというか、バトンを渡していくってことだと思うので。

―― 盛田さんの考えではソニー・コンピュータエンタテインメントとMicrosoftの違いというか、盛田さんとしての経営哲学というものはありますか?

盛田氏: いい子ちゃんと思われるかもしれませんが、今回Microsoftさんがハードを発売されましたが、戦うとかというよりも、まずはほんとうに、一緒になって盛り上がっていければいいと思ってますので、みんなで切磋琢磨して、業界が盛り上がるということが、まず第一だなと思ってます。ただ、プレイステーションは日本では20年経ってますので、その20年間で培ってきたタイトルですとか、クリエイターの方達との関係というのは、我々の財産だと思ってます。

 スポーツでもそうだと思うのですが、相手のことを考えてしまうと、違うところへ行ってしまうので、ほんとうにユーザーの方を見ていることが大切だと思ってます。ユーザーにいかに響くかということを考えれば、他は気にしないほうがいいんじゃないかと思ってます。

―― 今回、「PlayStation Now」の日本でのテストのスケジュールなどが発表されると思っていたのですが、残念ながら発表されませんでした。進捗はどうなっているのでしょうか?

盛田氏: 進捗は、トータルで決めることだと思ってます。我々は日本でこういうことが必要じゃないかなっていうことはどんどんフィードバックしていきたいと思います。

―― 必要なことにはフィードバックを返して解決に向けて動いていくということですね。

盛田氏: もちろんです。私はそれがミッションだと思ってますので。日本、アジアで何をやれるのかっていうのを、考えることだと思ってます。

―― それでは意気込みを聞かせていただけますでしょうか?

盛田氏: プレイステーション・フォーマットでまずは日本のマーケットを、ほんとうに盛り上げていきたい。それは我々が引っ張っていきたいと思いますので、プレイステーションを先頭に業界全体で盛り上がっていくために頑張りたいと思ってます。

 日本だけでなく、アジアでワールドワイドにゲーム業界をリードできるようになっていくことを目指していきたいと思います。

―― ありがとうございました!

(船津稔)