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【夏休み特別企画】ミャンマーゲームマーケットレポート(ヤンゴン編)

電脳街を歩くその2。PCショップはすでに斜陽の気配。ネットカフェは低速回線でSNS専用

電脳街を歩くその2。PCショップはすでに斜陽の気配。ネットカフェは低速回線でSNS専用

電脳街のPCショップが固まっているエリアの様子
店内は様々なブランドのノートPCが置かれている。デスクトップは少ない
ヤンゴンでPentium Dual-Core G2020に遭遇。自作市場も少しは存在するようだ
iPadは1店舗だけ見かけることができた。iPhoneにおいてはまったく見かけることができなかった
ヤンゴンで若干怖い風景だったのが、たこ足状態の配電線。正規契約しているのもあれば盗電もあるということだが、これがショートして火事になることも多いという

 一方、PCショップは、37thストリート、38thストリートの奥まったところにあり、一見してBtoB向けという雰囲気で、外国人然とした我々が入ってきても、むしろ困ったという表情を浮かべるショップが多かった。PCゲームが遊べるゲーミングゾーンやPCの使い方を教えるトレーニング施設を併設しているショップもあったが、ポスターに描かれているゲームは2010年前後のものが多く、実はもう閉鎖していたりなど、数年前に1度ブームが来たときのままという印象が強かった。

 取り扱っているPCは、先ほど紹介した電力事情からバッテリー同梱のノートPCが中心で、上記メーカーのPCが目に付いた。もちろん、PCだけでなく、ルーターや各種ストレージ、CPUやGPUを扱っているショップもあったが、全体的にモバイルショップ以上にモノが動いている様子はなく、ひょっとするとミャンマーはPCが1度も普及することなく、スマートデバイスが一般市民にとって最初のコンピューターになる国になるのではないかという気がした。

 実際、先述したようにインターネット回線が非常に遅いため、電脳街にいくつかあったネットカフェでは、常時接続を必要とするPCゲームをプレイしている姿はほとんど見られず、メールやFacebook、TwitterなどのSNSに限られていた。こうした状況だと、スマートフォンを持っている人にとってはネットカフェはまったく行く必要がない。このため、ネットカフェはどこもガラガラの状態だったが、このままいけば確実に全滅するだろう。

 ソフトウェアに関してはエマージングマーケットの常ではあるが、100%コピーで、本物はひとつもなかった。ショップでは、ビデオショップのように、カラーコピーを表紙に付けた空パッケージや、カラーコピーを挟み込んだバインダー、あるいはコピーデータを入れたDVDを入れた状態で販売している。価格はPCソフトが1本1,000チャット(約100円)前後、Androidソフトが何十本かバンドルされたものが1,000チャット(約100円)、PS2ソフトやPSPソフトが800チャット(約80円)前後。

 値段はあってないようなものでまとめて買うことでディスカウントにも応じるようだ。300in1や500in1といった懐かしいバッタものも大量に在庫があったりして、アジア地域におけるコピー品の最終処理場といった印象だ。もっとも、ここで行なわれているのは、単純なコピーデータを入れたDVDの提供だけで、本来それらのコピーソフトを動かすために必要になるゲームコンソールの改造や、PS3やXbox 360などの現行世代向けのHDDへのコピーサービスなどは行なっていない。

 恐ろしいのは、どの店舗の店員も、彼らが扱っている商材が、どのようなハードで動作し、そもそも何が動作するのか理解している人はひとりもいなかったところだ。たとえば、スーパーマリオの絵が描かれた「500 in 1 GAME COLLECTION」というソフトは、何が入っててどのハードで遊べるのか誰も答えられない。海賊版ビジネスもここまで行ってしまうと、海賊ビジネスというより、単純に人々の無知につけ込んだ詐欺行為に近い。

 ヤンゴンは、街歩きという点では新しい発見ばかりで楽しかったが、ゲームマーケットリサーチという点では、これまでになく不作だった。ミャンマーは民主化の道を歩み始めたとはいえ、インフラすら十分に整っていない国ということである程度は予想していたが、停電と低速ネットのダブルパンチの影響は想像以上に大きく、ゲームマーケットが生まれていると認定するのすら難しい規模だった。

 マンダレー行きの飛行機の中で「やはりミャンマーは時期尚早だったかなぁ」と弱気になりかけたが、マンダレーは街の規模としてはヤンゴンより小さかったものの、ヤンゴンより自由闊達な感じで、ゲームに関する受容度もより高く、ミャンマーゲームマーケットの萌芽のようなものを感じることができた。詳しくはマンダレー編でお届けしたい。

【ネットカフェ】
ヤンゴンのネットカフェは、停電と低速な回線のせいで、冴えない商売になってしまっている。こればかりは店側ではどうにもできず、商売あがったりといった感じだった。料金的にもすでに中国よりも高く、ヤンゴンでネットカフェを商売として成立させるのは難しいように思う

【ソフトウェアショップ】
PCショップがあれば当然PCソフトウェアを扱うショップもある。何度も繰り返しているようにミャンマーのソフトウェアショップは100%コピー品。PCソフトのほか、PS2やPSPといったゲームのコピーも置いている。価格は1,000~1,500チャット(約100~150円)ほど。おもしろいのはAndroidやiOSのアプリもディスク販売しているところ。ネットが遅すぎるため、スマホアプリの物理流通がビジネスとして成立するわけだ

【ヤンゴン大学】
ミャンマーの最高学府ヤンゴン大学にも足を運んでみた。週末に訪れたため学生の姿はほとんど見ることができなかったが、東大の本郷キャンパスに勝るとも劣らない広大な敷地に森と融和した年代物の建物がぽつりぽつりと置かれ、大正時代ぐらいにタイムスリップしたような独特の雰囲気を醸している

(中村聖司)