EA、「FIFA」シリーズGMのMatt Bilbey氏来日インタビュー
GREE版の成功から「FIFA 13」の戦略まで、日本市場への眼差しを語る
エレクトロニック・アーツ株式会社の「FIFA」シリーズといえば、ヨーロッパを中心に大ヒットを遂げているサッカーゲームシリーズだ。
日本では株式会社コナミデジタルエンタテインメントの「ウイニングイレブン」シリーズが大きくそびえ立っており、お互いライバルとして長くシェアを争ってきた。
そのような状況の中で、GREE用ソーシャルサッカーカードバトル「FIFAワールドクラスサッカー」は日本市場で好成績を上げており、今年3月に開催された「GREE Platform Award 2011」では総合大賞を受賞し、登録者数も250万人を突破するヒット作となっている。
また将来に目を移せば、プレイステーション 3 / Xbox 360 / PSP / PlayStation Vitaをプラットフォームとしたシリーズ最新作「FIFA 13」の日本発売が、10月18日に控えている。GREE版のヒットをバネとして「FIFA 13」でも好成績を上げたい状況の中、来日したEAシニアバイスプレジデント兼「FIFA」シリーズのGMを務めるMatt Bilbey氏にお話を伺うことができた。
「FIFAワールドクラスサッカー」を開発しているスタジオPlayfish Japanシニアプロデューサーの里吉洋樹氏にもサポートに入ってもらいながら、Bibey氏が見る日本市場への手応えから、「FIFAワールドクラスサッカー」の成功、今後の戦略などについて伺っていった。
■ KONAMIに初めて“勝った”「FIFAワールドクラスサッカー」
EAシニアバイスプレジデント兼「FIFA」シリーズのGMを務めるMatt Bilbey氏(右)と、Playfish Japanシニアプロデューサーの里吉洋樹氏(左) |
――「FIFAワールドクラスサッカー」の成功はどのように捉えていますか?
Matt Bilbey氏:ここまで支持をもらえるとは思っていませんでした。日本ではKONAMIが長らくライバル関係にあり、様々なプラットフォームで展開したシリーズはこれまで1度も勝ったことはありませんでしたが、「FIFAワールドクラスサッカー」で初めて勝つことができました。
――成功の秘訣はどこにありましたか?
Bilbey氏:ゲームデザインというのももちろんありますが、「FIFA」ブランドのもと、本当にあるチーム、選手、情報を使って、全てがリアルに感じられたからだと思います。そういったライセンスをカバーできていたからではないでしょうか?
――「FIFAワールドクラスサッカー」とコンソールゲームの「FIFA」シリーズではゲームデザインが違いますが、その中でも共通のものとして残したものは何かありますか?
「FIFAワールドクラスサッカー」は会員数は250万人を突破し、「FIFA」シリーズとして初めてKONAMIに“勝った”のだという |
里吉洋樹氏:「FIFAワールドクラスサッカー」は確かにカジュアルな作りで、レースゲームで言えば「グランツーリスモ」と「マリオカート」くらい違うと思います。ただ、「FIFA」のシリーズは“リアルなサッカーを表現する”というのがブランドになっています。そこで、ゲームは「マリオカート」だけど、演出は「グランツーリスモ」のようにリアルなものを目指そう、ということを注意して制作しました。
Bilbey氏:その2つはゲームもプラットフォームも確かに違いますが、コンソールゲームの「FIFA」にも、「Ultimate Team」というカードを揃えながら戦っていくモードがあり、これと「FIFAワールドクラスサッカー」はよく似ています。
「Ultimate Team」から「FIFAワールドクラスサッカー」が学ぶところはあるでしょうし、その逆もあると思います。お互いのいい所はどんどん近づいていくと思います。またモバイルは進化していくので、その過程で2つの間のギャップは埋まっていくはずです。
――日本市場への取り組みは今後変化しそうでしょうか?
Bilbey氏:「FIFA」は、リアルなサッカーシミュレーションをゲームプレイの中でどう実現するかというのを目指してきました。ただ、日本市場に対してはそれだけでは十分ではないことも認識していますし、一方で段々と認知されだしていることも感じています。ではこのギャップをどういう部分で埋めるかというと、日本の方が好まれる使い方だったり、好んで見たい画面だったりというのも、チャレンジですが注意してやっていきたいと思います。
日本では、今までは違うゲームを作らないと勝てないという認識でしたが、KONAMIが「ウイニングイレブン」を「Pro Evolution Soccer」という名前でヒットさせて、世界で売れるということを証明しました。そこで「FIFA」としても、彼らができるなら我々も、という気持ちで取り組んでいます。
先ほども言ったとおり「FIFAワールドクラスサッカー」は違うゲームですが、これがKONAMIに勝ったというのも事実なので、「FIFAワールドクラスサッカー」がなぜ勝てたのかということも学びの1つとして捉え、また日本のユーザーから得られるフィードバックから、日本で勝つために色々なことを向上させていきます。
――「FIFAワールドクラスサッカー」はGREEで提供されていますが、Mobageや他のプラットフォームでの展開は考えていますか?
里吉洋樹氏:EAはあらゆるプラットフォームに最高のゲーム体験を提供するというのが哲学の会社です。将来的には他のプラットフォームへの提供も当然考えていくべきことだと思います。
――「FIFAワールドクラスサッカー」は選手の日本語表記がわかりやすかったので、これがヒットの要因の1つではないかと思います。これをコンソールゲーム版でも採用するという話はないのでしょうか?
Bilbey氏:まさに今日、成功の要因についての議論の中でその話をしていたところでした。近い未来にはやろうと考えています。
■ 「FIFA 13」で進化するのは“ファンの交流”。Jリーグのライセンスも「ぜひ」
10月18日に発売を控えた「FIFA 13」 |
――「FIFA 13」のお話に入りますが、PlayStation Vitaでのタッチプレイでの進化はありますか?
Bilbey氏:前回PS Vitaを採用した時ですが、小さなマシーンなのにグラフィックスもよく、タッチセンサーも搭載されていて、スタジオとして嬉しい反面チャレンジにもなりました。前回は開発時間も短かったので、できる限りの範囲でタッチセンサーに対応しました。「FIFA 13」では開発の時間が長く取れたので、作り込んでいます。
――「Ultimate Team」は最初から遊べますか?
Bilbey氏:遊べます。前回からだいぶ進化していますが、その部分は全て公開しているわけではないので、言えないことがたくさんあります。1つだけ言えるのは、iPhoneアプリが登場するということです。残念ながらこのアプリの日本語化の予定はありませんが、このアプリではオークションやカードのトレードができ、コンソール版と連動します。外でアプリを使ってオークションを行なって、家に帰ってその続きをやる、ということができるようになります。「Ultimate Team」についてはドイツで開かれるgamescomで少し詳細を明らかにする予定です。
――Wii U版も開発されているかと思いますが、Wii Uならではの体験というのはありますか?
Bilbey氏:協力の体験の部分ですね。通常はボールを操る場面と戦略を決める場面は一旦ポーズをして画面を切り替えないとだめでしたが、それが同時に行なえます。実際に子供と一緒にやりましたが、子供がボールを動かしながら、私はタブレットで監督役になっていました。これはとてもクールな体験で、驚いてもらえると思います。
――リアルということに関して、「FIFA 12」から進化したものはありますか?
Bilbey氏:私もそうですが、サッカーファンは試合を見ることでその愛をぶつけます。ただし試合は90分で終わってしまうので、さらに愛をぶつける場所として「FIFA」が存在していました。しかし、それ以外の時間でもサッカーの話をしたい場合、その場所というのがなかなかありませんでした。そういったものを、「FIFA 13」で作りたいと考えています。「EA Sports Football Club」をキーワードとして、サッカーファンがサッカーについて話せるような場所にしていきたいですね。
「FIFA 12」が発売された昨年12月よりも、7月の方がオンライン対戦数は伸びているということからも、「FIFA」シリーズの人気ぶりが伺える |
――今後の戦略を教えてください。
Bilbey氏:「FIFA 12」でのオンラインでの試合数は18億回を越え、毎日ユニークユーザーが200万人遊んでいます。また発売直後の2012年12月よりも現在の7月の方が試合数は増えています。実際に遊んでくれているユーザーに対してはもっと遊べ、もっと楽しんで、色々なことができるようにしてきましが、こういった数字からも、施策は成功しているかと思います。
一方で、マーケットを広げる余地があるなとも感じています。例えばアメリカなどはサッカーファンが増えてきているので、新しいサッカーファンの方たちが「FIFA」を楽しんでくれるような内容というのも考えています。日本もその1つですが、新しいマーケットで「FIFA」のファンを増やしていきたいと思います。
――日本の選手が海外に移籍することが多くなっていますが、どのように捉えていますか?
Bilbey氏:とても喜ばしいことだと思います。選手が活躍することで、国際代表チームが強くなり、そうするとお金が回るようになってJリーグで強い選手が出てくる素地ができるようになります。日本でもどんどんいい選手が生まれてくることを願っています。
――日本で市場を拡大するために、Jリーグ選手のライセンスを取得するのはいかがでしょうか?
Bilbey氏:現在はKONAMIが独占権を取得していますが、持たしてくれるのであれば喜んで持ちたいと考えています。みなさんJリーグや公益財団法人日本サッカー協会(JFA)に署名などをしてぜひ呼びかけてください(笑)。
――日本の「FIFA」ファンに向けてメッセージをお願いします。
Bilbey氏:PS3やXbox 360、モバイルなど、プラットフォームに関わらず、「FIFA」を利用してくれてありがとう。今後も引き続きやってもらうと同時に、親戚や友人にも勧めて、どんどん巻き込んで一緒にプレイしてください。世界で最大のゲームをプレイしているということを誇りに思ってください。
これは最後のメッセージですが、日本でも「FIFA」を作っており、一緒に「FIFA」を作ってくれる人を募集しています。ただいま積極採用中ですので、Playsfish Japanの採用情報にぜひアクセスしてください。
――ありがとうございました。
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(2012年 7月 27日)