任天堂、宮本茂氏らによるE3恒例の“Roundtable”開催

3DSで「ゼルダの伝説 時のオカリナ」のリメイクが明らかに


6月15日(現地時間) 開催

会場:Los Angeles Convention Center



同日に開催されたプレスカンファレンスに登場した宮本氏

 任天堂株式会社の米国子会社であるNintendo of Americaは6月15日(現地時間)、E3会場であるLos Angeles Convention Centerにて、“Roundtable”を開催した。

 “Roundtable”は、任天堂がE3で毎年開催しているトークイベント。プレスカンファレンスでの発表内容を受けて、宮本茂氏ら任天堂のゲーム開発者が、発表タイトルの詳細や、今後の展開について語る内容になっている。今回は主に新型携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」と、Wii用アクション「Legend of Zelda: Skyward Sword」についての話題が展開された。

 なお、これも例年どおりのことだが、イベント中の写真撮影は禁止されているため、本稿はテキストとスクリーンショットのみでお伝えする。




■ 3DSで「ゼルダの伝説 時のオカリナ」をリメイク!

 筆者が“Roundtable”の会場に入ると、任天堂のスタッフが3DSを見せてきた。そこには「ゼルダの伝説 時のオカリナ」が3Dで表示されるデモ映像が流れていた。

 宮本氏はイベントに登場すると、すぐにその話題を展開。「ここ3年くらい、ずっと開発していた。『オカリナ』のハイラル平原をどうしても3Dで見てみたかった。『オカリナ』を作ってもう12年くらい経って、当時小学校6年生だった人が24歳になった。今また、小学生くらいの人にもう1回遊んでもらいたい」と述べた。会場で触れたものは操作できないデモ映像だったが、きちんと遊べる「オカリナ」の3DS版を開発しているようだ。

 ただこのほかには、「昔から一緒にやっている人たちと『オカリナ』を作っている」と述べるに留まり、開発状況など具体的な話には触れられなかった。




■ 3DSの持つ新機能を紺野氏が解説

ニンテンドー3DS

 話を3DSそのものに戻して、最大の特徴である立体視について宮本氏は、「立体に見えるのは当たり前。ちゃんと立体視にならないと距離感がつかめず、空中に浮いているブロックをうまく叩けなくなる」と述べた。裏を返せば、3DSにはこういった心配がないということ。「『スターフォックス』は飛んでいく弾がいつ当たるかわからない、ゲートをくぐるタイミングがわからないという人がいる。これが3Dになるとすぐわかる」と、適切な立体視によりゲームの操作感が向上することも付け加えた。

 その3DSについて、総合プロデューサーを務めているのは、宮本氏でも社長の岩田聡氏でもなく、「マリオカート」シリーズや「nintendogs」を手がけた紺野秀樹氏だという。「普段はソフトウェア部隊で文句を言う方だったが、普段宮本さん、岩田さんが総合的にハードウェアを見ていることを体験して、大変だということを身にしみてわかった」といい、3DS開発におけるいくつかの話題を展開した。

「nintendogs+cats」

 まずは「nintendogs+cats」について。紺野氏は犬しか飼ったことがないそうだが、宮本氏が犬と猫を飼っていると聞いて作ってみたくなったのだという。ちなみに「nintendogs」の猫バージョンは、宮本氏がDS版で犬の見た目を猫に変えて試したことがあり、「犬の動きなので、こっちに歩いてきて尻尾を振ったりする。でも可愛いので、(ペットにはしないまでも)画面には出したいと言っていた」という。

 紺野氏は本作についての特徴を紹介。1点目は「ハードの性能がよくなったので、毛並みが可愛らしい」という見た目の向上。2点目は「犬の大きさや足の長さ、模様などのバリエーションが出せるようにしたい」という犬の個性を出す仕組みの追加。そして3点目は、インカメラをつかった顔認識を行なっているというもの。

 顔認識によって、「プレーヤーが首をかしげると犬も首を動かす。顔を近づけると犬が寄ってきて顔をなめたりする」といった新たなコミュニケーションが可能になるという。またプレーヤーの顔を覚える機能もあり、「私が遊ぶと寄ってくるが、宮本さんが近づくと威嚇するかも」と語った。

 続いて紺野氏はもう1つ、3DSの新機能として「すれちがい通信」を挙げた。これそのものはDSにもあった機能だが、すれちがい通信中には待機状態となって他のゲームができなくなる。3DSではこれを改善し、「複数のすれちがい通信対応ソフトを入れておき、本体を持ち歩くだけで全部のタイトルのすれちがい通信がどんどん行なわれるような機能を入れる」という。

 ハードウェア的な情報は明かされなかったが、おそらく3DSはハード側にすれちがい通信機能を持っており、対応ソフトを本体に入れて設定しておけば、同時に複数のタイトルのすれちがい通信機能を走らせることが可能になるようだ。感覚的には、コンテンツ情報がプッシュされる「WiiConnect24」に近く、それをさらに持ち運べるようにしたもの(すれちがい通信機能を搭載したもの)、と考えるのがしっくりくる。

 宮本氏はすれちがい通信について、「『nintendogs』では(プレーヤーが減ってきて)すれちがいにくくなってきたので、中継所を作った。インターネットを使えば簡単にできると思うかもしれないが、そこに誰かがいたということや、誰が持っていたんだろうと思う、リアルなことが妙に嬉しい」と述べている。




■ 遊びの面白さに限定回帰した「ゼルダ」最新作

「Legend of Zelda: Skyward Sword」

 続いては、「ゼルダの伝説」シリーズ最新作「Legend of Zelda: Skyward Sword」についての話題に移った。壇上には3DSに引き続き宮本氏と、紺野氏に代わって「ゼルダの伝説」シリーズプロデューサーの青沼英二氏が登壇した。

 青沼氏は本作を制作するにあたり、Wiiモーションプラスを使った仕組みから作り始めたという。「アイテムをすぐ使えるなど、今までやりたかったことができた。ほかにも見やすくなったマップなど、とにかく迷いにくくなっているところも見て欲しい」としている。

 宮本氏は本作について、「『ゼルダ』を何度も遊ぶのは、仕組みが面白いからだと思う。それがだんだんと、ダンジョンがいくつあるか、ストーリーの長さはどれくらいだとかに興味が移っていった。原点に戻って、遊びが面白いからみんなが何度も遊んでくれるというものにしたいと思った」と制作の方針を説明。さらに開発状況について、「遊びの部分は完成した。あとはステージをどれだけ作るか。いつもよりかなり早いペースで作れると思う。本当は年内発売といいたかったが、年内は開発の時間にもらった」と述べた。目指す遊びの部分はできているので、そう遠くない時期に発売できるという手ごたえを持っているようだ。

 続いて本作のストーリーが紹介された。今回のリンクは、空の上に浮かぶ島で育った。それに対して何ら不思議に思っていなかったが、あるきっかけで島の雲の下にもう1つの世界があることを知る。そこは魔物に占拠された危険な場所なのだが、Skyward Swordに導かれて、空の上の島と下の世界を行き来することになる。昨年の“Roundtable”で公開された白いキャラクター(この画像は現在も非公開)は、このSkyward Swordが人型になったもので、リンクにいろんなことを教えてくれる存在だという。

 しかし今回のE3に出展された本作を見ると、リンクが手にしている武器はおなじみマスターソード。これについて青沼氏は、「Skyward Swordが最後にはマスターソードになるという物語」と説明。続いて宮本氏が「Skyward Swordを3本集めるとマスターソードになる」と話に乗ったが、これは紋章を3つ集めるとマスターソードが抜けるという過去のシリーズからの冗談だろうか?

 そういった舞台設定から、「今回は空が重要なキーワード。空に描いた雲が印象的に動くよう、新しいグラフィックスにしている」と青沼氏は説明。グラフィックスについて宮本氏は、「これは1発でOKした。元々印象派の大ファンなので、セザンヌのような空がいい。『ゼルダ』シリーズには独自の絵を持ちたい」と語った。青沼氏は「絵を変えなければもっと早く終わったのにと怒られている」とおどけながらも、「これからもどんどん磨きをかけたい。今後もっと調和した世界になると期待している」とした。

 ちなみに青沼氏は、「ゼルダの伝説 時のオカリナ」で初めて「ゼルダの伝説」シリーズに携わっている。宮本氏は「青沼さんはオカリナで初めて引っ張られてきた犠牲者。あの時くやしい思いをしているので、今度のリメイクではぜひリベンジしたいと思っている」と語った。“くやしい思い”については青沼氏が引継ぎ、「水の神殿で遊んで大変だったと、十数年ずっと言われ続けてきた。3DSではタッチスクリーンを使って、ヘビーブーツを履いたり脱いだりの操作を快適にしたい」と述べた。




■ Q&Aでは恒例となったあのやりとりが再び

 最後に来場者からの質問時間が設けられた。Q&Aでは毎回必ずと言っていいほど出る「『ピクミン』の新作は開発していますか?」という質問に宮本氏は、「イギリスで3月に賞をもらったが、そこで『ピクミンも作っている』と言ったらそちらばかりが取り上げられた。作っていますから安心してください。でも、それが1番のニュースにならないようにしてください」と笑いながら肯定した。

 3DSについては、すれちがい通信のこともあり、「電池の持ちはどうか」という質問が挙げられた。紺野氏は「DSi相当を目指している。無線を常時チェックすることになるが、電池の持ちも重要だと思っている」と答えた。


(2010年 6月 17日)

[Reported by 石田賀津男]