日本一ソフトウェア、「夢想灯籠」発売記念イベント開催
開発スタッフと榊原ゆいさんが制作秘話を語る

3月21日 開催

【PSP「夢想灯籠」】
発売中(3月19日)

価格:5,040円(通常版)
   7,140円(初回限定版)

CEROレーティング:C(15歳以上対象)


 株式会社日本一ソフトウェアは、PSP用伝奇アドベンチャー「夢想灯籠(むそうとうろう)」の発売記念イベントを、3月20日に東京・秋葉原の代々木アニメーション学院 アキバ校にて開催した。

 「夢想灯籠」は、日本一ソフトウェアとフォグ、ブロッコリーの3社協力プロジェクトして制作されたアドベンチャーゲーム。険しい山々に囲まれた小さな集落「栄重村(さかえむら)」を舞台に、平安時代から続く鬼と人間の戦い、そして“輪廻転生”をキーワードにした伝奇物語が描かれている。

 この日の発売記念イベントでは、日本一ソフトウェア プロデューサーの井上恵一氏、フォグ プロデューサーの宗清紀之氏、セブンギア ディレクターの地引志郎氏、セブンギア キャラクターデザイナーの飯沼俊紀氏の4氏によるトークショウ、主題歌を歌った榊原ゆいさんによるミニライブとトーク、そしてじゃんけん大会が行なわれた。



■ 開発スタッフが開発の裏話や見所などを語る

「皆さんがゲームを楽しんでいただけているのか、一番不安であり楽しみ」という日本一ソフトウェアの井上氏

 開発スタッフ4氏によるトークでは、事前に参加者から開発者への質問などのアンケートをとり、それに各氏が答える形で進行した。

 最初の質問は、開発している中でつらかったことや楽しかったことについて。「ハラハラしながらずっと待っていました。特に開発の終盤のほうは500枚のCGということでかなりテンパって、最後ようやく10枚20枚単位でドカドカと終わっていったところはほっとしました」という井上氏をはじめ、「楽しいことはほぼないね。99.99%つらいことばっかり」(宗清氏)、「つらかったこと……発売されてしまえばすべては過去のことです(笑)」(地引氏)、「自分は描いているときは、つらいを通り越して何も感じないくらい。でも1枚1枚の絵を考えながら描いているときは楽しかったです」(飯沼氏)と、そろって開発中のつらさを伺わせるコメント。それでも、「力仕事が終わって、こうして皆さんと会えることが楽しい」(宗清氏)、「皆さんからの感想を聞くのが楽しみ」(地引氏)と完成後が楽しみという。

 思い入れのあるキャラクターについて、飯沼氏は「みんな好きで、それぞれに違った思い入れがあります。強いて言えばメインヒロインである各務です。黒をすごく使ったキャラクターが好きで、その魅力を感じ取っていただけると嬉しいです」とキャラクターデザイン担当らしい答え。そして、「真琴は僕が大好きなキャラクターでして、もともと真琴はいなかったんですけど、ディレクター権限でヒロインに昇格させました(笑)」(地引氏)、「私はアルです。キャラクターを見るとき、人間性とかを一切考慮しないで、見た目だけ。どこが好きかと言えば下半身の肉付きです(笑)」(宗清氏)、「私は舞です。最初からあんなに(主人公の)鷲志一筋でいるのだから、舞には鷲志と幸せになってもらわないと困りますね。あと、一緒に温泉入れるからですかね(笑)」(井上氏)と、3氏ともかなりぶっちゃけた好みを披露した。

 開発でこだわった部分や注目ポイント、おすすめの攻略順について、宗清氏は「エンディングはいくつかあるんですが、最後の3分~5分間の部分では灯ルートがよくできているなと。5分くらい前にバトルとかあるんですが、そのへんの絡みでは真琴ルートと灯ルートがおもしろい。トゥルーエンドとハッピーエンドの違いにも味があって、エンディングムービーの中でもかなり小技を効かせていますのですべてのルートを見てほしいなと思います」と各ルートへのこだわりをアピールした。

今日は開き直って本音を言っていこうかなと話す気満々な挨拶をしたフォグの宗清氏当初はイベントに出る予定ではなく、緊張していたというセブンギアの地引氏「命を削って作った作品です」と冒頭の挨拶から開発の苦労を伺わせたセブンギアの飯沼氏

キャラクターグッズの1つ「湯飲み」を紹介するブロッコリーの紺野氏

 ここで「夢想灯籠」のキャラクターグッズを紹介。第1弾は「湯飲み」で価格は840円。側面には各務の絵とともに、「黄泉に堕ちても 飲みたいお茶がある」と本作のキャッチコピー「黄泉に堕ちても 守りたい人がいる」をもじったメッセージが描かれている。このメッセージは、湯飲みという企画が持ち込まれたときに、飯沼氏が「光を持っている各務のイラストを見たときに、光の代わりに湯飲みを持たせれば」という発想ですぐに思いついてプッシュしたという。

 最後は続編の可能性について。井上氏は「未定ですが、お客様の反応次第だと思いますので、ぜひソフトに同梱されているアンケートハガキなどで『続編を作ってほしい』といった意見をお送りいただければと思います」という。飯沼氏も「実を言うと、もっと描きたいというのがあるんですね。ですからそういう声があれば。500枚以上?もっといけると思いますよ(笑)」、「枚数よりもまた違った見せ方を考えていて、2人ですでに構想も練り込んだりしていますので、それを見たいという方がいましたら、よろしくお願いします」とのことなので、続編を希望する人は日本一ソフトウェアへ要望を送っていただきたい。




■ 榊原ゆいさんがとっておきのエピソードを披露

 続いて榊原ゆいさんが登場。こちらも事前アンケートの中から質問に答える形で進行。前回の発表会のときに、「発売記念イベントのときにとっておこう」と言っていた収録時の裏話から披露した。

【収録前の大事件の話】
とっておきの裏話を披露した榊原さん

 今回はElements Gardenさんが曲を作ってくださったんですけれども、今回2曲あったので、どちらから収録しますかと聞かれ、『剣の舞』が主題歌になっているので気持ち的にこっちからと思って、『舞の方で』と答えました。そしたら、もう1曲の『時を越えて』はキャラクターの舞ちゃんの曲だったんですよ。Elements Gardenさん的には『剣の舞』は“各務の歌”、『時を越えて』は“舞の歌”と呼んでいたらしくて、レコーディングの1日目は“舞の歌”を用意していてくれたんですよ。私は完全に『剣の舞』のほうを歌うつもりで歌詞を持って、Elements Gardenさんちに行ったんですよ。

 そしてレコーディングの打ち合わせをしているところで、「今回のコンセプトは“和”ですね。それで少ししっとりした感じで」と言われて、「しっとり?『剣の舞』がしっとりかぁ。私、ちょっとなんかElements Gardenさんとずれてるな。やばい、初だ。こんなに気持ちがずれたことない」と思って。びっくりしながらも歌のコンセプトをまとめて。それで、「練習用にお渡ししたものより音も増えていますので、とりあえず1回聴いてみましょうか」ということになりました。

 そしたら、「あれ?前奏が違う。ここも変わったんだ」と思って、歌が始まったら全然違うとこから入って、「すいません。これ、なんですか?」と聞いたら、「え?舞の方の……」、「『剣の舞』ですよね?」、「え?」みたいな感じになって、「これは『時を越えて』です」と言われて「えー、今日違う!」となってしまって。

 それぞれの歌のディレクションは違う人が担当していて、『時を越えて』のディレクションは中山君、『剣の舞』は菊田君だったので、その日の中山君は無駄な出勤なんですよね。それでほんと申し訳ないという話になってしまいました。

 (端から見ていると)途中までは話がつながっていたのですが、私自身はすごい腑に落ちなかったんですよね。しっとりという時点で。でもまあ、派手な曲もあるからな。これはElements Gardenさんの中ではしっとりなんだなと納得してたところがあるんですけど。嫌ですね、人に話を合わせる大人っていうのは(笑)。


 榊原さんは、CDのジャケット写真撮影についても、150cmの長さのかつらで苦労したり、本物の鎖を持っていて手がつりそうになった話や、ジャケットで着ている衣装の着物を買いに行ったときに、買うとわかったとたんに態度が豹変した店員さんのエピソードなど、会場からもたびたび爆笑がわき起こるボリュームたっぷりのトークを繰り広げた。

 トークの後は、「時を越えて」と「剣の舞」の2曲を披露。そして、飯沼氏の絵と榊原さんのサインが入った色紙と、ポスターを懸けたじゃんけん大会が行なわれて、発売記念イベントは終了した。

「時を越えて」と「剣の舞」を歌った榊原ゆいさん。ライブで歌ってみんなと盛り上がりたいという
色紙5枚とポスター20枚を懸けたじゃんけん大会宗清氏に急遽呼び出され挨拶する音楽を担当した椎名建矢氏フォトセッションに登場した榊原ゆいさん



■ 出演者がイベントの感想を語る

 イベント終了後に、出演者への質疑応答が行なわれた。

Q. ゲームに入れたかったけど入れられなかった要素などはありますか?

地引氏: ライバルであり親友でもある将一と、鷲志、舞の3人の関係をもう少し書きたいというのはありました。一番最後のあたりでは、将一と鷲志の話はだいぶ消化させてもらったんですけど、そこへの過程をもう少し書きたかったというのが心に残っています。

宗清氏: 最初の構想の段階では、今あるエンディングとは別扱いで将一エンドというのがあったんですね。もちろんヒロインじゃないので、そっち系の話ではないんですけれど。ヒロインということではなく、本当の物語としての将一エンドがあったんですが、力及ばず……体力及ばず。ちょっと残念だったと思います。

Q. イベントの感想は?

飯沼氏: 榊原さんの話がすごくおもしろかったです。イベントもすごく楽しかったです。じゃんけん大会も勝ってしまいましたし(笑)。

宗清氏: しゃべり足りません。できれば1時間くらいいただいて。ユーザーさん1人1人ともおしゃべりをしたいのですが、物理的に無理ですので。ちょっと不満です。

井上氏: 発表会イベントと違って、お客様がすでにゲームをプレイした状態で来るというところで、中には不満の声を上げる方がいるんじゃないかといった不安もありました。でもそういったこともなく、うまくまとまった形で良かったかなと思いました。

榊原さん: 発表会、CDのサイン会、この発売記念イベントと「夢想灯籠」で3回もイベントに参加させていただいているのですが、こんなにユーザーさんの近くで空気を感じ取れる機会が多くあることはいいことだと思いますし、曲も皆さんに気に入っていただいて、ヘビーローテーションで聴いているという感想もだいぶいただいているので、ライブでぜひとも歌ってみたい曲がまたここで生まれたなというのが感想です。トークはおもしろいというか、ダメな話で申し訳なかったんですけど、じゃんけん大会はポスター20枚というなかなか斬新な設定で楽しかったです(笑)。

地引氏: 今日、本当はディレクターとして出る予定ではなかったんですけど、スタッフの方に言われて出させていただいて。逆に緊張しすぎて、マイクもないのに合いの手を入れすぎてうるさくなかったかなぁと心配しています。でも、私もしゃべるの大好きなので、しゃべりたいことはいろいろあるんですけど……もっとしゃべらせて(笑)。

椎名氏: 飛び入りな感じになってしまいましたが。音楽に関しては前任の風水嵯峨さんの件もありましたので、(ユーザーさんの)反応が恐いというか期待半分不安半分という感じです。でも、それも榊原さんのおもしろいトークを聞いて、「レコーディングに立ち会ったとき、(榊原さんは)クールに録っていたのに内心ではそんなことを考えていたんだ」という新しい発見があって楽しいイベントでした。

Q. 風水さんの後任ということで、曲作りで意識したことは?

椎名氏: 風水さんはメロディアスな方向で音を作る方だったんですね。メロディの力で場面を表現する。自分は風水さんのその点が好きだったんですけれど、“好き”と“作れる”は違うんです。自分は音そのものの雰囲気、音そのものが持つ力を活かし、どちらかというとメロディはそれほど使わない。風水さんとの違いというのも、以前の作品をご存じの方は違いを感じていただければと思います。

宗清氏: (椎名氏とは)もともと風水が好きで縁ができたわけですが。でも、違う人ですから、違う音楽になるのは当然なんです。ぶっちゃけていうと、サウンドのパートっていうのはゲームの制作期間の中で1番短いパートではないかと。企画、シナリオがある程度できてそれから(サウンドを制作する)。風水さんも彼もゲームに対して深入りをしてくるんですね。その部分は私が求めるところでもあるので、音楽の具体的なスタイルはどうであれ、どっぷり浸かってやっていただく。どんどん意見を出していただいて、下手するとシナリオまで変えていく力を音楽に期待する部分っていうのは、彼もそれをわかってて入ってきているので、やってもらえて良かったなと思います。

地引氏: 音楽は、音楽鑑賞モードの曲と本編中の曲は収録レートが違うので、ぜひ音楽鑑賞モードで聴いてください。


(C)2009 FOG/NIPPON ICHI SOFTWARE INC./BROCCOLI

(2009年 3月 26日)

[Reported by 滝沢修]