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勝負を分けたのは“原作愛”!? フランスの18歳新鋭Wawa選手が堂々の優勝!「Red Bull DRAGON BALL FighterZ World Tour Japan」レポート

11月30日開催

会場:クロスドック晴海

 その美麗なグラフィックスと原作シーンの再現率の高さが話題の「ドラゴンボール ファイターズ」(以下DBFZ)だが、その存在感はeスポーツ界でも大きくなりつつある。世界各国で大会が開催されるワールドツアーが行なわれているのみならず、格闘ゲームの世界大会「EVO」では2018・2019と2年連続メインタイトルに選出されており、「DBFZ」は今や格ゲー界になくてはならない存在だ。

 11月30日に開催された「Red Bull DRAGON BALL FighterZ World Tour Japan」は2年目となる「DBFZワールドツアー」の中で、唯一の日本開催となる大会だ。「DBFZワールドツアー」は1月にフランスで行なわれるツアー決勝を控えている。世界ランク上位15名しか招待されない決勝の枠を勝ち取るため、本大会には国内外から総勢128人の選手が参戦し、しのぎを削った。

 そんな「DBFZ」の魅力は何といっても国際色の豊かさだ。日本・アメリカをはじめ、ヨーロッパ諸国などでもプレイされる「DBFZ」は、明確な強豪国が存在せず、2年目となる今もどの国の選手が勝ってもおかしくない状況だ。そんな中、日本の選手はホーム開催となる本大会で、優勝の座を守りきることができたのだろうか。大会の様子を写真とともにレポートする。

【Red Bull DRAGON BALL FighterZ World Tour Japan】
会場には悟空の等身大フィギュアも

日仏若手対決!白熱の準決勝

 本大会は128名から1名の優勝者を決めるトーナメントを、わずか1日で行なうというタイトなスケジュールのもと敢行された。アメリカ・イギリス・スペインなど、様々な国の選手たちでプレーヤーの層が厚いことも相まって、大会は熾烈を極めた。7時間に渡って行なわれた予選の結果、TOP8に勝ち残ったのは日本人選手4名、アメリカ人選手2名、フランス人選手・イギリス人選手各1名となった。

TOP8の顔ぶれ

 8名の中でも注目株なのがフランスの18歳、Wawa選手だ。Wawa選手は10歳のころから格闘ゲームにのめり込み、古参プレーヤーとしてフランスでは有名だ。しかし2019年になってからの彼は、「Stunfest」や「Ultimate Fighting Arena」などといった由緒ある世界大会で立て続けに優勝しており、若手ながら実績も兼ね備えつつある。本国での注目度も非常に高いようで、本大会では彼にメディアが5人体制で密着していた。まさに“フランス格ゲー界の希望の星”と言ったところだろうか。

予選でのWawa選手

 Wawa選手の持ち味はなんといってもその“原作愛”だ。彼は「ドラゴンボール」好きを公言しており、実際TOP8の試合でも、新キャラクターのゴジータを使用したり、3人全て悟空の「オール悟空チーム」を起用したりと、“魅せプレイ”に妥協がない。もちろんゲームプレイも一級品で、コンボ判断やガードの固さは世界一といっても過言ではない。

 そんなWawa選手の前に準決勝で立ちはだかったのがCYCLOPS athlete gaming(CAG)所属のフェンりっち選手だ。フェンりっち選手も23歳の若手プレーヤーで、高校生時代から強豪プレーヤーとして名を馳せていた。彼は「DBFZ」においても屈指の強豪プレーヤーであり、昨年のツアー決勝では堂々の2位に輝いている。共通点の多い2人だが、決勝へ進めるのは1人だけ。勝敗の行方を観客は固唾をのんで見守った。

フェンりっち選手

 Wawa選手が最初に選んだキャラクターは、ゴジータ・GT悟空・孫悟空の3体だ。これは全員DLCキャラクターで構成された、環境最前線のチームといえよう。対するフェンりっち選手は、セル・GT悟空・超サイヤ人ベジータの3体を選択した。GT悟空は取り入れているものの、セル・超サイヤ人ベジータは共に何度か弱体化を受けているキャラクターで、決して環境に最適のチームとは言い難い。それでもこのチームを使い続けるフェンりっち選手には、並々ならぬこだわりを感じる。

 日本勢としてフランスのWawa選手の決勝進出を食い止めたかったフェンりっち選手だったが、Wawa選手は一筋縄ではいかなかった。展開の早い攻めから繰り出されるハイリターンな2択の数々は、フェンりっち選手をもってしても中々防ぎきれない。加えてWawa選手は防御もピカイチで、フェンりっち選手が表裏の2択でガードを崩そうとしても、全て防がれてしまう。若いから、というだけでは説明のつかない、驚異的な反応速度と集中力だ。

会場の声援に応えながらプレイするWawa選手

 さらにWawa選手は使用できるキャラクターも豊富だ。先ほどのチームで1敗すると、今度は孫悟飯・超サイヤ人悟空・孫悟空という全く毛色の違うチームを持ち出してくる。これにはフェンりっち選手も対応しきれず、最終試合はWawa選手がパーフェクトで勝利し、決勝へと駒を進めた。3対3のDBFZにおいて一度も攻撃を受けないで勝利することは非常に難しく、これには会場からも驚きの声が漏れた。

パーフェクトKOの瞬間

VS前世界チャンプ!Wawa選手の挑戦

 パーフェクト勝利を成し遂げ勢い付いたWawa選手、その決勝戦の相手はBurning Core所属のかずのこ選手だ。かずのこ選手といえば、前年のワールドツアーで圧倒的な強さを見せ、大会優勝数最多、そしてツアー決勝でも優勝し、名実ともに世界最強となったプレーヤーだ。いくら勢いに乗っているからといって、18歳の若手プレーヤーに易々と負けるわけにはいかない。

かずのこ選手

 かずのこ選手のチームは、魔人ブウ(純粋)・GT悟空・超サイヤ人悟空の3体だ。体が大きければ大きいほど不利になるこのゲームにおいて、最小級のキャラクターを2体採用する、理にかなった構成といえよう。対するWawa選手は孫悟飯・超サイヤ人悟空・孫悟空の3体。先ほどフェンりっち選手に対して機能したチームを続投することで、勢いそのままに勝利を狙っているのだろうか。

Wawa選手チーム(左)かずのこ選手チーム(右)

 この2人の組み合わせは、TOP8の第2回戦でも繰り広げられており、その際はかずのこ選手がギリギリの逆転劇を見せ勝利した。Wawa選手はルーザーズからの決勝進出のため、優勝には6試合の勝利が求められる。すでに1勝しているかずのこ選手が有利だが、両者の実力はおよそ互角、どちらが勝ってもおかしくない。

 試合が始まると、勝負は一進一退の攻防となった。Wawa選手は悟飯の空中からの急降下技や、孫悟空のコマンド投げを駆使した展開の早い攻めを見せる。対するかずのこ選手の攻めも負けておらず、固め性能の高い魔人ブウやGT悟空を用いた執拗な攻めで、Wawa選手の体力を奪っていく。

かずのこ選手(手前)Wawa選手(奥)

 そんな中差が出たのはやはりガード精度だろう。Wawa選手の超人的な集中力からくるガード精度はすさまじく、かずのこ選手のGT悟空・超サイヤ人悟空が繰り出す超メテオ必殺技後の表裏起き攻めを確実にガードしている。普通の人がこれを喰らってしまえば完全な2択なのだが、類まれな反応速度を持つWawa選手はこれを毎回ガードしていた。こういった細かいところからリターンの差が生まれ、決勝は3-1でリセットとなる。

Wawa選手

 先ほどまではウィナーズの余裕があったかずのこ選手も、ここにきて後がなくなる。しかしWawa選手の勢いは止まらず、かずのこ選手がWawa選手の攻め手に対応する前にアシストのタイミングをずらし、ペースを乱していく。瞬く間にゲームカウントは2-0となり、Wawa選手が優勝へ王手をかける。かずのこ選手は自身のプレイに納得がいかない様子で、試合中に「マジかよ」、「違う!」といった声が漏れているのが聞こえてきた。

納得がいかない様子のかずのこ選手

 続く7ゲーム目、Wawa選手の勢いを止めたい前世界王者が意地を見せる。Wawa選手のコマ投げのタイミングを読み、彼の防御手段のひとつであるバックステップを執拗に追いかけ、ダメージに変えていく。そしてWawa選手にゲージを使う機会すら与えないまま、かずのこ選手が勝利した。これでペースを取り戻したか、続く8ゲーム目もかずのこ選手が勝利し、ゲームカウントは2-2、どちらも優勝へリーチの状態だ。

 会場が緊張感に包まれる中、最終ゲームが始まる。これまでのように展開の早い攻めを仕掛けるWawa選手だが、ここでWawa選手の駆け引きの上手さが光る。今までアシストアシストを絡めた手数の多い攻めを見せてきたWawa選手が、ここへ来て「様子見」の選択肢をとってきたのだ。かずのこ選手としては、Wawa選手の圧倒的な攻めを凌ぐために、心理的にもリフレクトを用いざるを得ないのだが、「様子見」されることでリフレクトが空振り、隙を晒してしまうのだ。

見守るギャラリー

 大舞台での決勝戦、普通なら勝ちを急いでしまう場面だが、そこで「様子見」ができるWawa選手、まるで熟練プレーヤーのような肝の座りようだ。しかもリフレクトの空振りにはしっかりと最大コンボを決めている。決勝戦はルーザーズからWawa選手が勝利し、「Red Bull DRAGON BALL FighterZ World Tour Japan」はWawa選手の勝利で幕を閉じた。

優勝メダルを手にしたWawa選手

 大会後にインタビューを受けてくれたWawa選手は、「この大会は人生で一番難しい大会だった、勝ててうれしいよ」と語り、勝因については、「この大会ではTOP8入りが目標で、優勝できるとは思ってもいなかった。その分気楽にプレイできたから、それが勝因だと思う」と語ってくれた。また、今後の展望を聞くと「本国で開催されるツアー決勝は、地元のファンのためにも良い結果を残したい。特にGO1選手は憧れの選手だから、決勝の舞台で倒せるといいな」と語った。

優勝後、撮影に応じてくれたWawa選手