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庁舎でeスポーツ! 日本初となる"産官学"が連携したeスポーツ大会「大阪文化芸術フェス2019×eスポーツ 大カプ芸杯01」レポート
2019年10月23日 12:10
- 2019年10月22日開催
- 会場:大阪府咲洲庁舎1階フェスパ
大阪芸術大学とカプコンは10月22日、対戦型格闘ゲーム「ストリートファイターV アーケードエディション」を使用したeスポーツ大会「大阪文化芸術フェス2019×eスポーツ 大カプ芸杯01」を開催した。
大阪芸術大学とカプコンは今年からeスポーツ大会を定期的に開催しており、その規模は回を重ねる毎に拡大している。4回目となる今回は、大阪府・大阪市などで構成される「大阪文化芸術フェス実行委員会」も共催として加わり、"産官学"が連携する初のeスポーツ大会となった。
はじめに、オープニングイベントとして大阪芸術大学副学長の塚本英邦氏、カプコン代表取締役社長の辻本春弘氏、大阪文化芸術フェス実行委員長の岡本光司氏が登壇。大会開催に先立ち、各代表者による挨拶が行なわれた。
代表者の挨拶が終わると、いよいよ大会が開始。ルールはダブルエリミネーションによるトーナメントで2試合先取で勝利、グランドファイナルのみ3試合先取となる。今回は現場の空気が伝わるよう、写真を多めにカプ芸杯の様子を紹介していきたい。
本大会は賞金総額50万円、さらにはJeSUプロライセンスの発行もあるJeSU公認大会という事もあり、関西を中心に約80名のプレーヤーが集結。スポンサードを受ける日本の若手選手から海外の強豪選手までが参加するハイレベルな大会であったが、予選プールからアマチュア選手がプロ選手に大金星を上げるなど、激闘のトーナメントとなった。
また、大阪での開催ということもあり、普段から関西の対戦会で競い合う知人同士の試合も多く見られた。顔見知りならではの盛り上がりや掛け声もあり、解説のどぐら選手が「居酒屋で野球中継観てるおっさんみたい」とコメントして会場をさらに沸かせていた。
本大会は1day開催であったため、約8時間を超える長丁場となった。夕方に差し掛かり会場も照明で照らされる中、約80名を超える熾烈な戦いを制して決勝にコマを進めたのは、カワノ選手(ウィナーズ側)と、ゆずぽんず選手(ルーザーズ側)の2人。
カワノ選手は、現在開催されているストリートファイターリーグでウメハラ選手のチームに抜擢され、プロライセンスも所持する実力者。対するゆずぽんず選手も、名古屋の強豪プレーヤーとしてその名が知られている。
1セット目の第1ラウンドは序盤、ゆずぽんず選手のベガがカワノ選手のコーリンを追い詰める展開に。カワノ選手もベガのバックステップを読んで中足を決めて一気に端へと追い込むが、序盤のリードを守り切ったゆずぽんず選手がラウンドを先取。続く第2ラウンドもその勢いは止まらず、1セット目はゆずぽんず選手の勝利となった。
ここでキャラクターセレクトまで戻り、インターバルを取ったカワノ選手。2セット目第1ラウンド、開幕カワノ選手の緩急をつけた攻撃が上手く刺さるも、ここから反撃を全て食らって逆転負けとなってしまう。2ラウンド目はお互いにVトリガーを発動し、間合いを測り合う緊張感のある時間が続いたが、最後は飛びを通したカワノ選手が勝利。悪い流れを断ち切ったか、そのまま3ラウンド目も制して1-1のイーブンとなった。
3セット目第1ラウンド。空対空が冴えわたるゆずぽんず選手が地上戦も制してラウンドを先取。この勢いでセットを取りたいゆずぽんず選手だったが、カワノ選手が巧みにベガを端に追い詰めて怒涛の反撃から見事逆転。スコア2-1でカワノ選手が優勝に王手をかけた。
注目の4セット目第1ラウンドは、勢いづいたカワノ選手が飛びや投げの選択肢を通し続け、見事パーフェクトKOでマッチポイント。ゆずぽんず選手もラウンドを取り返す意地をみせたものの、最後はカワノ選手がギリギリの試合展開を制して見事優勝。優勝賞金35万円を獲得した。
カプコンはここ最近、eスポーツを全国的に普及させるため、地方に根差した活動に力を入れている。「カプ芸杯」もその一環であり、今年に入ってすでに4回目を迎え毎回規模を大きくしているのは、カプコンによる地道な活動の賜物と言えるだろう。
また、本大会は大阪芸術大学の学生が主体となって運営していた事にも触れておきたい。選手だけでなく大会を支える運営やイベントスタッフの育成も、eスポーツが発展していく上では絶対に欠かせない。このイベントが貴重な現場経験として「学びの場」になっていたのは、カプ芸杯の大きな成果だ。
このように、とても素晴らしい大会であったのは間違いないが、個人的に残念だったのは、プロライセンスを所持しているかどうかで優勝賞金額が違ったことである。(所持していれば35万円、所持していない場合は10万円+JeSUライセンスの発行)。
この賞金問題は、日本のeスポーツの発展を阻害する要因として喉に刺さった小骨のように長年に渡ってeスポーツ関係者を苦しめてきたが、去る9月の東京ゲームショウで、日本eスポーツ連合が、大会において一定の基準を満たすことで景品表示法に違反しないことがノーアクションレターにより確認できたことを発表した。つまり、JeSUが発行するプロライセンスの有無にかかわらず、10万円の規制に縛られない賞金設定が可能となったはずだった。
しかし、本大会は、開催の発表自体が“東京ゲームショウ後”だったにも関わらず、依然として東京ゲームショウ以前のレギュレーションで、プロライセンスの有無によって賞金額が異なる規定となっていた。
賞金のために大会に参加しているわけではない選手も多いと思われるが、ノーアクションレター公表後も、賞金額が異なるのはやはり違和感があるし、この話題でせっかくの戦いに水が差される感じになってしまうのはファンとして悲しい。賞金問題が早急に解決され、誰もが安心して試合に臨み、気持ちよく観戦できる環境が整う事を願うばかりである。