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庁舎でeスポーツ! 日本初となる"産官学"が連携したeスポーツ大会「大阪文化芸術フェス2019×eスポーツ 大カプ芸杯01」レポート

2019年10月22日開催

会場:大阪府咲洲庁舎1階フェスパ

 大阪芸術大学とカプコンは10月22日、対戦型格闘ゲーム「ストリートファイターV アーケードエディション」を使用したeスポーツ大会「大阪文化芸術フェス2019×eスポーツ 大カプ芸杯01」を開催した。

 大阪芸術大学とカプコンは今年からeスポーツ大会を定期的に開催しており、その規模は回を重ねる毎に拡大している。4回目となる今回は、大阪府・大阪市などで構成される「大阪文化芸術フェス実行委員会」も共催として加わり、"産官学"が連携する初のeスポーツ大会となった。

会場となった大阪府咲洲庁舎。大阪府協力の元、ついに庁舎でeスポーツ大会が開かれる時代となった。
本大会の司会を務めるのは、カプコン「ストリートファイター」シリーズのプロモーションプロデューサーであり、実は大阪芸術大学の卒業生でもある綾野智章氏。冒頭の挨拶では、当時の学籍番号を発表する大阪芸大ネタを仕込んでいた。

 はじめに、オープニングイベントとして大阪芸術大学副学長の塚本英邦氏、カプコン代表取締役社長の辻本春弘氏、大阪文化芸術フェス実行委員長の岡本光司氏が登壇。大会開催に先立ち、各代表者による挨拶が行なわれた。

塚本氏は、「カプ芸杯」を開催するようになったそもそものきっかけは、ラジオで共演した綾野氏と意気投合したからだという。今後については「これからもカプコンさんとeスポーツを一緒に発展させていきたい」と話し、継続的に大会を開催していく考えを示した。
辻本氏はeスポーツを「年齢や性別、身体能力関係なく、同じステージで競い合える未来のスポーツである」とコメント。将来的にはカプコンと各都市の地域や企業が協力してeスポーツチームを結成し、「Jリーグやプロ野球のように振興させていきたい」との展望を明かした。
岡本氏は最近ゲームを遊んでいるらしく、若者だけでなく自分たちの世代でも遊べるよう「50代以上のeスポーツ大会もできれば……」とカプコンに要望。さらに、現在建設予定である"大阪城ホールを越えるアリーナ"で将来eスポーツ大会を開催したいと、壮大なビジョンも掲げられた。

 代表者の挨拶が終わると、いよいよ大会が開始。ルールはダブルエリミネーションによるトーナメントで2試合先取で勝利、グランドファイナルのみ3試合先取となる。今回は現場の空気が伝わるよう、写真を多めにカプ芸杯の様子を紹介していきたい。

【カプ芸杯の様子】
大阪のプロチーム「CYCLOPS athlete gaming」に所属するどぐら選手(左)と、ゲームキャスターの大和氏(右)。本大会の解説と実況を務めた。
大会に臨む参加者たちの表情はみな真剣そのもの。どの対戦台も凄まじい熱気を感じた。
参加者が子供たちにアケコンを触らせてあげるなんとも微笑ましいシーン。思わず笑みがこぼれてしまう。
食い入るように試合を眺める子供たち。もしかすると、彼らが未来のeスポーツ選手に……!?
子供だけでなく大人達もeスポーツに熱中!

 本大会は賞金総額50万円、さらにはJeSUプロライセンスの発行もあるJeSU公認大会という事もあり、関西を中心に約80名のプレーヤーが集結。スポンサードを受ける日本の若手選手から海外の強豪選手までが参加するハイレベルな大会であったが、予選プールからアマチュア選手がプロ選手に大金星を上げるなど、激闘のトーナメントとなった。

【本大会の注目プレーヤーたち】
今年の東京ゲームショウアジアプレミアでは、約1,000人の参加者からTOP8に残った若手注目株、「AXIZ」所属のShuto選手。
前回のカプ芸杯覇者であり、オンラインランキングでも圧倒的世界一としても知られる「WE-R1」所属のtrashbox選手。
左からさかがみ選手、trashbox選手、ナウマン選手、Shuto選手と、若手プロゲーマーが集結。ナウマン選手とShuto選手は東京からの遠征であったが、当日は会場を間違えるハメを食らい危うく0回戦敗退となりかけていた。
中国の強豪プレーヤー、Qiuqiu選手。10月6日に日本で行なわれた大会「ONE STREET FIGHTER トーキョーチャレンジ」では並みいる日本のプロゲーマーを抑えて予選通過。ボンちゃん選手、ガチくん選手とチームを組んで優勝を果たした。
Twitterフォロワー36,000人超え、プレーヤーの配信や試合のハイライトを発信する事で有名なHiFight選手。プレーヤーとしても実力は高く、本大会では見事な試合で会場を沸かせ「ハイファイトがハイファイトされる」ことに。

 また、大阪での開催ということもあり、普段から関西の対戦会で競い合う知人同士の試合も多く見られた。顔見知りならではの盛り上がりや掛け声もあり、解説のどぐら選手が「居酒屋で野球中継観てるおっさんみたい」とコメントして会場をさらに沸かせていた。

居酒屋で野球中継を観る皆さん。どぐら選手による関西勢へのイジりも本大会の面白いポイントであった。
試合中は皆真剣だが、決着の瞬間はみな様々な表情に。この瞬間もオフライン大会の魅力の一つだ。
あまりの悔しさに顔をうずめるプレーヤーも。その悔しさをバネに、次回はぜひリベンジしてほしい。

 本大会は1day開催であったため、約8時間を超える長丁場となった。夕方に差し掛かり会場も照明で照らされる中、約80名を超える熾烈な戦いを制して決勝にコマを進めたのは、カワノ選手(ウィナーズ側)と、ゆずぽんず選手(ルーザーズ側)の2人。

 カワノ選手は、現在開催されているストリートファイターリーグでウメハラ選手のチームに抜擢され、プロライセンスも所持する実力者。対するゆずぽんず選手も、名古屋の強豪プレーヤーとしてその名が知られている。

決勝に進出したゆずぽんず選手(左)とカワノ選手(右)。決勝の意気込みを聞かれたゆずぽんず選手は「ルーザーズを泳ぎ切ったおかげで、普段より良い動きが出来てあたたまっている」とコメント。対するカワノ選手は「賞金で何を買おうか悩んでから来たんで」といきなりお金の話をし始めると、解説のどぐら選手から「あ、もういいよ」と早々に打ち切られてしまった。
カワノ選手はコーリン、ゆずぽんず選手はベガを選択。決勝戦だけあって、試合開始と同時に会場も大きな盛り上がりを見せた。

 1セット目の第1ラウンドは序盤、ゆずぽんず選手のベガがカワノ選手のコーリンを追い詰める展開に。カワノ選手もベガのバックステップを読んで中足を決めて一気に端へと追い込むが、序盤のリードを守り切ったゆずぽんず選手がラウンドを先取。続く第2ラウンドもその勢いは止まらず、1セット目はゆずぽんず選手の勝利となった。

 ここでキャラクターセレクトまで戻り、インターバルを取ったカワノ選手。2セット目第1ラウンド、開幕カワノ選手の緩急をつけた攻撃が上手く刺さるも、ここから反撃を全て食らって逆転負けとなってしまう。2ラウンド目はお互いにVトリガーを発動し、間合いを測り合う緊張感のある時間が続いたが、最後は飛びを通したカワノ選手が勝利。悪い流れを断ち切ったか、そのまま3ラウンド目も制して1-1のイーブンとなった。

 3セット目第1ラウンド。空対空が冴えわたるゆずぽんず選手が地上戦も制してラウンドを先取。この勢いでセットを取りたいゆずぽんず選手だったが、カワノ選手が巧みにベガを端に追い詰めて怒涛の反撃から見事逆転。スコア2-1でカワノ選手が優勝に王手をかけた。

 注目の4セット目第1ラウンドは、勢いづいたカワノ選手が飛びや投げの選択肢を通し続け、見事パーフェクトKOでマッチポイント。ゆずぽんず選手もラウンドを取り返す意地をみせたものの、最後はカワノ選手がギリギリの試合展開を制して見事優勝。優勝賞金35万円を獲得した。

優勝はカワノ選手、準優勝はゆずぽんず選手、3位は中国のJiewa選手という結果に

 カプコンはここ最近、eスポーツを全国的に普及させるため、地方に根差した活動に力を入れている。「カプ芸杯」もその一環であり、今年に入ってすでに4回目を迎え毎回規模を大きくしているのは、カプコンによる地道な活動の賜物と言えるだろう。

 また、本大会は大阪芸術大学の学生が主体となって運営していた事にも触れておきたい。選手だけでなく大会を支える運営やイベントスタッフの育成も、eスポーツが発展していく上では絶対に欠かせない。このイベントが貴重な現場経験として「学びの場」になっていたのは、カプ芸杯の大きな成果だ。

実際に現場で働く人たちのサポートを受けつつ、運営に携わる学生たち。受付から予選台の進行に至るまで見事にこなしていた。

 このように、とても素晴らしい大会であったのは間違いないが、個人的に残念だったのは、プロライセンスを所持しているかどうかで優勝賞金額が違ったことである。(所持していれば35万円、所持していない場合は10万円+JeSUライセンスの発行)。

 この賞金問題は、日本のeスポーツの発展を阻害する要因として喉に刺さった小骨のように長年に渡ってeスポーツ関係者を苦しめてきたが、去る9月の東京ゲームショウで、日本eスポーツ連合が、大会において一定の基準を満たすことで景品表示法に違反しないことがノーアクションレターにより確認できたことを発表した。つまり、JeSUが発行するプロライセンスの有無にかかわらず、10万円の規制に縛られない賞金設定が可能となったはずだった。

 しかし、本大会は、開催の発表自体が“東京ゲームショウ後”だったにも関わらず、依然として東京ゲームショウ以前のレギュレーションで、プロライセンスの有無によって賞金額が異なる規定となっていた。

 賞金のために大会に参加しているわけではない選手も多いと思われるが、ノーアクションレター公表後も、賞金額が異なるのはやはり違和感があるし、この話題でせっかくの戦いに水が差される感じになってしまうのはファンとして悲しい。賞金問題が早急に解決され、誰もが安心して試合に臨み、気持ちよく観戦できる環境が整う事を願うばかりである。