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【新春特別企画】2019年注目のMMORPGをまとめて大紹介!

「FFXIV: 漆黒のヴィランズ」から「黒い砂漠 Mobile」まで。再び隆盛期を迎えた期待の次世代MMOたち

 MMORPG業界にとっては、ここ数年は停滞期と呼べる時期だった。「World of Warcraft」の後を継いで次世代のデファクトスタンダードになるような有力タイトルはなかなか現われず、彗星の如く候補作が現われては墜落していく。ゲームショウで大々的に発表される期待の大作は、その後なかなか進捗に関するニュースが入ってこず、たまに聞こえてくるのはMMORPGの不振を伝えるようなニュースばかり。

 だが、2018年に入って少し風向きが変わってきた。各タイトルの最新情報が届き始め、いよいよアルファやベータテストもスタートした。中にはベータテストの評判が芳しくなく、再開発に追い込まれたタイトルもあるが、期待通りの人気を博しているタイトルもある。

 そこで今回は、2019年新春特集として、今年筆者が期待するMMORPGタイトルをまとめて紹介したい。どのタイトルも、それぞれに他にはない魅力を持っており、きっとプレーヤーの期待に応えてくれるだろうとオススメできる。中には日本語では遊べなさそうなものも含まれているが、ぜひ英語の勉強がてら挑戦してみて欲しい。

拡張パック第3弾がいよいよ登場! 「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ」

 「漆黒のヴィランズ」は、スクウェア・エニックスのプレイステーション 4/Windows/Mac用MMORPG「ファイナルファンタジーXIV」の第3弾拡張パッケージ。2018年11月にラスベガスで開催されたファンイベントで発表され、リリースは2019年初夏が予定されている。

 この拡張パッケージではレベルキャップが80まで解放され、2つの新ジョブと、プレイアブルな新種族の追加、そして「FFXI」でおなじみのフェイスシステムの実装などが予定されている。新種族についてもまだ正式な発表は行なわれていないが、1月8日に実装されたパッチ4.5のトレーラーに、「FFXII」のヴィエラ族らしき足が映っており、ヴィエラ族が実装されるのではないかと憶測を呼んでいる。また、新ジョブは「漆黒のヴィランズ」発表時に公開されたティザートレーラーにちらりと映っている、ガンブレードを持ったジョブになるのではと目されている。

 拡張パッケージに合わせて、MPとTPの統合が行なわれたり、パッチ4.5と拡張パッケージの間にデータセンター内を自由に移動できるようになる「ワールド間テレポ」が実装されたりと、新拡張パッケージに向けてゲームのシステムや根幹部分にも手が入る予定だ。

 「漆黒のヴィランズ」については、2月に開催されるパリで開催される「ファンフェスティバル2019 in パリ」と、3月に幕張メッセで開催される「ファンフェスティバル2019 in 東京」で更なる情報が公開される。

「漆黒のヴィランズ」ティザーサイト

https://jp.finalfantasyxiv.com/shadowbringers/

【「漆黒のヴィランズ」ティザートレーラー】

PC版のクオリティをモバイルでも遊べる「黒い砂漠 MOBILE」

 「黒い砂漠 MOBILE」は、韓国パールアビスが開発し、日本ではパールアビスジャパンが運営するAndroid/iOS用オンラインRPG。1月8日より事前登録が始まったばかりの新作MMORPGだ。本作はPC用MMORPG「黒い砂漠」のモバイル版だが、モバイル化にあたりゲームエンジンを作り直し、スマートフォンでの操作に最適化された内容として新たに作り起されている。

 PC版「黒い砂漠」は自由度の高いゲームシステムと、他の追随を許さない圧倒的なグラフィックス、アクション性の高い戦闘や幅広い生活系コンテンツなどたくさんの魅力を持っている。モバイル版では、オートプレイモードやスリープモードなど、外で空き時間に遊びやすいお手軽さが加味されている。

 日本での正式サービススタートの段階では、ウォーリア、ヴァルキリー、ウィッチ、ジャイアント、レンジャーの5クラスがプレーヤーキャラとして開放される。釣りや採取採掘、菜園といった生活系コンテンツや、多数のプレーヤーが協力して討伐を目指すワールドボスも実装される。本作の特徴である細かなキャラクターメイキングも、スマホ用に最適化された形で楽しむことができる。

 ティザートレーラーを見てもらえるとわかるが、モバイル版とは到底思えないような大迫力で美麗な画面に圧倒される。PC版の経験者はもちろん、PC版は要求スペックが高くて遊べなかったという人も、ぜひモバイル版で「黒い砂漠」の美しい世界を楽しんで欲しい。

「黒い砂漠Mobile」のティザーサイト

https://www.jp.blackdesertm.com/Intro/Event/Teaser

【「黒い砂漠 MOBILE」ティザー動画】

「リネージュエターナル」の進化作「Project TL」

 本作は、2011年に「リネージュエターナル」として発表されたNCsoftのWindows用オンラインRPG。2016年に韓国でスタートしたクローズドβ後にテスターから多くの批判が寄せられた結果、まったく新しいゲームとして再開発されることとなった。ゲームエンジンがUnreal Engine 4に変更され、オープンワールドのMMORPGになり、タイトルも「Project TL」と改められた。

 「リネージュエターナル」は最大4人のキャラクターを切り替えながら操作するマルチヒーローというシステムを採用していたが、「Project TL」では1人のキャラクターだけを操作するシステムに変更された。2018年5月に開催されたNCsoftのカンファレンスでは、2018年末にCBT、2019年にローンチと発表されていたが、2018年末にはCBTは行なわれなかった。同時期に発表された「Lost Ark」が好調なスタート切っているのとは対照的に、不安な印象はぬぐえない。「リネージュ」という大きなIPを背負っているタイトルだけに、新作にはない苦労もあるのだろう。ともあれ、今後の進捗を待ちたい。

「Project TL」ティザーサイト(韓国語)

http://projecttl.plaync.com/

【「Project TL」ティザートレーラー】

「BLESS」から生まれた新たなゲーム「Bless Unleashed」

 日本でもサービス中の「BLESS」の派生作品として、Room 8 Studioが開発しているXbox One用MMORPG。BANDAI NAMCO Entertainment Americaから2019年にリリースされる予定だ。「BLESS」はUnreal Engine 3のゲームだか、こちらはUnreal Engine 4で開発されており4K /UHDにも対応している。

 本作は「BLESS」のアセットを使いつつ、バトルシステムなどを大きく変更したアクション性の強いゲームになるようだ。筆者も過去に日本語版の「BLESS」をプレイしていたが、開発期間が長いゲームに特有のシステム的な古臭さを感じた。だが、ゲーム円陣やシステムを刷新することで、まったく新しく、面白く生まれ変われるポテンシャルは十分有していると思うのだ。ただ、「BLESS」は韓国では昨年11月にサービスを終了しているだけに、そこからの復活が難しいことは想像に難くない。本作がどうなるのか行く末が気になるところだ。

「Bless Unleashed」公式サイト(英語)

https://www.bandainamcoent.com/games/bless-unleashed

【「Bless Unleashed」 - Announce Trailer】

Bluholeの新作AAAタイトル「ASCENT:Infinite realm(A:IR)」

 「TERA」や「PUBG」を手掛けているBlueholeのWindows用新作MMORPG「A:IR」。本作は「空」をテーマに、飛行船で大空を冒険するスチームパンクと西洋ファンタジー融合したような独特の世界観を有している。プレーヤーは陸上での冒険の他に、飛行船を操作した空中戦を楽しむことができる。ドラゴンがいるかと思えば、パワードアーマー的なロボットが登場したりと、日本人が好きそうな要素がふんだんに盛り込まれている。

 トレーラーには家の建設や、釣り、様々なクラフティングやフライング。馬車や畑、ドラゴンとの空中戦など多くの要素が盛り込まれている。これらがすべて実現すれば、まさに次世代と呼ぶにふさわしい今までにない自由度のゲームになるだろう。日本ではゲームオンが独占配信権を取得しており、数年後には日本語で遊べる可能性が高い期待のタイトルだ。ローンチスケジュールなどはまだ全く未定だが、気長に待ちたい。

「ASCENT:Infinite realm」ティザーサイト(英語)

https://www.airthegame.com/teaser

【「ASCENT:Infinite realm」ティザートレーラー】

完成度の高いハクスラ系MMORPG「Lost Ark」

 韓国SmileGateが開発している俯瞰視点のハック&スラッシュ方式のWindows用MMORPG。2011年に発表されて以来、約100億円という巨額の開発費が投じられている。2018年11月より韓国でオープンβテストが開始され、初日に25万人以上を集める好調な滑り出しを見せている。

 本作には「Warrior」、「Fighter」、「Hunter」、「Magician」という4つの基本クラスと、そこから派生するそれぞれ3つずつの上位クラスが用意されている。コンテンツも通常のクエストやダンジョンの探索はもちろん、大規模なレイドやPvP、生産や釣り、船を操作する海洋での狩り、ミニゲームのカードバトル、楽器演奏など多彩な遊び方が用意されている。

 だが本作の魅力は何よりも丁寧に作り込まれた美しいフィールドや、俯瞰視点を活かした演出で描かれた迫力満点のバトルだろう。丁寧に作られたゲーム部分の評価は韓国でも非常に高く、不振が続いていた韓国MMORPG業界に久々に明るい話題を提供している。

 韓国以外でのサービスについては、12月にロシアのMail.Ryとのパブリッシング契約が発表された。ロシアでは2019年にCBTがスタートする予定だ。日本でのサービスはまだ未定だが、日本でも発表以来注目している人が多いタイトルだけに、早期のサービスインを期待したい。

「Lost Ark」公式サイト(韓国語)

https://lostark.game.onstove.com/Main

【「Lost Ark」OBTトレーラー】

ノードシステムが動きのある世界を創り出す「Ashes of Creation」

 「Ashes of Creation」は、「EverQuest」や「Star Wars Galaxies」などを手掛けたスタッフが中心になって設立された米国ゲームスタジオIntrepid Studiosが開発を進めているWindows用MMORPG。2017年にKickstarterで約327万ドル(約3億5,000万円)の資金を集め、現在はカリフォルニア以外に、フランスとマレーシアにもスタジオを持っている。

 本作の特徴は「ノードシステム」という独自のシステムだ。本作のマップはノードという複数のエリアに分かれている。ノードはプレーヤーが資源を集めたり、モンスターを倒したりすることで成長していき、村から街、都市へと勢力を拡大しながら発展していく。ノードには「Military」、「 Divine」、「Economic」、「Scientific」という4つの種類があり、どれを発展させるかによって都市の雰囲気や、得られる利益が異なる。

 ノードは最初は小さなキャンプから始まり、最も巨大な「メトロポリス」まで段階を経て成長していく。ノードが村以上に成長すると、プレーヤーはそこに自分の家を持つことができるようになる。さらに生産や商売、メトロポリスでは政治も行なうことができる。メトロポリスは世界に5つしか存在できないため、自分たちのノードをメトロポリスにするには、すでにあるものを破壊しなければならない。この戦いは何百人ものプレーヤーが参加する大規模なRvRが想定されている。

 バトルシステムはノンターゲットでアクション性が強く、弓や銃を使う時には、背後から見る視点の他に、肩越しのTPS的な視点になる。現在はアルファテストの段階だが、本作ではバトル部分だけを切り取ったアルファテストを「Ashes of Creation Apocalypse」というバトルロイヤルゲームとして提供している。現在は誰でも参加できるオープンテストの段階で、1月11日からテストが再開される予定だ。MMO本体は2020年までのサービスインが予定されている。さらに今後の予定として、100人対100人の攻城戦と50人のプレーヤーが都市を襲ってくるモンスターを撃退する「Horde mode」の実装が予定されている。

「Ashes of Creation」公式サイト(英語)

https://ashesofcreation.com/

【「Ashes Of Creation」Alpha One Gameplay】

セッション制のフィールドで攻防の歴史を紡いでいく「Crowfall」

 「Crowfall」は米国のArtCraft Entertainmentが開発しているWindows用MMORPG。Kickstarterで資金集めをしたタイトルの1つで、170万ドル(約1億8,300万円)以上を集めることに成功した。

 本作は大規模RvRにフォーカスした対人重視のタイトルだ。これまでのMMORPGではRvRで城を取り合っても、その結果世界の情勢が変化することはなかった。本作ではそんなMMORPGにありがちな変わらない世界をもっと動的なものにするため、フィールドが一定期間後に崩壊するというセッション制を採用している。

 本作の世界はサーバーやワールドの区切りの代わりに「キャンペーン」と呼ばれる複数の世界がある。キャンペーンはルーンゲートで結ばれた複数の浮島で、草原や渓谷、森林、廃墟などそれぞれの島が違う風景を持っている。新しいキャンペーンは春から始まり、夏、秋、冬と季節が変わっていくにつれて出現するモンスターの種類や強さ、街の雰囲気などが変化していく。1つキャンペーンは1カ月から3カ月程度で冬を迎える。その間、複数の勢力に分かれたプレーヤー同士の戦争が行なわれ、最終的に勝利する勢力が決定するとその島は崩壊する。

 プレーヤーは、「Crowfall」の世界に青く輝くカラスの姿をした魂としており立つ。そのカラスは神が遣わした英雄で、プレーヤーは神の擁護者として、他の神を擁護するプレーヤーと戦ったり、Hungerに脅かされて衰退していく世界からレアなアーティファクトを集めることを目的としている。1つの世界が滅びると、再び魂の姿に戻り、次の世界へと旅立っていく。崩壊した世界で使っていたキャラクターや装備、獲得したアイテムはすべて次の世界に持ち越すことができる。

 また「Eternal Kingdoms」というプレーヤーが集まる世界があり、自分の家を持つことができる。ここは従来のMMORPGの街のように変化することがない。プレーヤーはこの「Eternal Kingdoms」を拠点としつつ、キャンペーンに参加することになる。

 本作は現在アルファ1テスト中。2018年に正式サービスが開始される予定だったが、幾度かの開発遅延によって現在は2019年内のリリース予定に変わっている。公式サイトで販売しているパッケージを購入すれば、アルファやβテストに参加することができるので、どうしても早くプレイしてみたいという人は見に行ってみてはどうだろう。

「Crowfall」公式サイト(英語)

https://crowfall.com/en/

【「Crowfall」Eternal Champions】

番外編:ネクソンが開発中のモバイル版「ファイナルファンタジーXI」

 2018年5月にネクソンの求人情報に添付されていた画像から開発が継続していることが判明したAndroid/iOS版「ファイナルファンタジーXI リブート(仮)」。「Nexon Developers Conference 16(NDC 2016)」ではUnreal Engine 4で開発されていることが明らかになっている。また、ネクソンが8月に発表したIR資料には、韓国、日本のほか北米と欧州でのサービスが予定されていることが明記されていた。なかなか詳細が伝わってこない本作だが、大作MMORPGが次々にモバイル版を発表している昨今、一日も早い正式発表を待ちたいところだ。

MMORPG開発とプレーヤーの距離はどんどん近く。そしてモバイル化という確実な潮流

 今回は8本+1本のMMORPGを紹介した。西洋のゲームでは、アルファテストやベータテストなどへの参加権を付けたパッケージを発売前から販売することが増えている。今回紹介した「Ashes Of Creation」、「Crowfall」もその例に漏れない。いろいろなオマケが付いた値段の高いパッケージほど早期のテストに参加できる。例えば「Crowfall」にアルファ2テストから参加するには199.99ドルの「Adventure Starter Pack」を購入しなければならない。

 また、これらのパッケージを購入するとプレイ権とともにフォーラムに書き込む権利が付与される。つまりこの2万円強の投資は、早めにゲームコミュニティに参加して、開発に自分の意見を届けるための投資だとも言える。開発を金銭的に支えながら、コミュニティとしてゲームの方向性に意見していくという、客と開発という線引きを超えた関係性に参加するということに価値があるのだろう。

 長期に開発を続けるMMORPGでは開発とコミュニティの関係性が非常に重要になる。Kickstarterのようなクラウドファンディングや、各種SNS、Discordのようなチャットツールを通じて開発とコミュニティの距離は今までになく近くなっている。お金を払ってまでテスターを買って出てくれるファンの存在が今のMMORPGを支えている。

 もう1つのMMORPG業界で見逃せない動きはモバイル化だ。今回は「黒い砂漠 MOBILE」と開発中の「FFXI リブート(仮)」を紹介したが、ここ数年は「リネージュM」、「リネージュ2 レボリューション」、テンセントが発表した「ラグナロクオンライン」、「メイプルストーリー M」、「マビノギモバイル」や「ディアブロ イモータル」など大作が次々にモバイル化している。これまでPC版は敷居の高さから遊んだことがなかった人たちが、モバイルで初めてMMORPGに触れてファンになり、MMORPGユーザーのすそ野が広がってくれれば、PC版やその他のプラットフォームでも遊ぶ人たちも増えていくかもしれない。MMORPGは衰退ジャンルではなく、まさにこれから第2の隆盛期に突入していくのかもしれない。